原題:Dr. T & the Women

すべての女は聖なる存在である。

2000年10月13日全米初公開

2000年/アメリカ/122分/カラー/スコープサイズ/DTS / Dolby Digital / SDDS /字幕翻訳:菊地浩司 提供:ギャガ・コミュニケーションズ、アートポート 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2002年08月23日よりDVD発売開始 2002年08月23日よりビデオ発売&レンタル開始 2001年12月29日より日比谷スカラ座2ほか全国東宝洋画系にてお正月ロードショー

公開初日 2001/12/29

配給会社名 0025

公開日メモ アメリカ映画の第一線に、立つフィルム・メーカーとしては最長老ながら、不屈のインディペンデント・スピリットで、驚異的な創作活動を続けるロバート・アルトマンの待望の新作である。

解説



アメリカ映画の第一線に、立つフィルム・メーカーとしては最長老ながら、不屈のインディペンデント・スピリットで、驚異的な創作活動を続けるロバート・アルトマンの待望の新作である。
出世作『 M★A★S★H 』で、アメリカ映画のお家芸である”軍隊喜劇”を皮肉って以来、アルトマンは、西部劇(『ギャンブラー』)、ギャング映画(『ボウイ&キーチ』)、フィルム・ノワール(『ロング・グッドバイ』)とハリウッドの伝統的なジャンルを優雅なアイロニーに満ちた眼差しで、リ・イマジネーションしてきたが、新作『Dr.Tと女たち』では、彼がもっとも得意とする”男と女”のテーマに取り組んでいる。

Dr.Tことドクター・サリヴァン・トラヴィス(リチャード・ギア)は、ダラスの産婦人科医として頂点を極めた人物だ、金も名誉もある彼の”信仰”の対象は女性。なにしろ彼の家庭も仕事場も女、女、女。彼はその一人一人に深い愛情と思いやりを注いでいる。彼女たちにとって、Dr.Tは救世主であり、彼もその役割を嬉々として受け入れていた。しかし、旧約聖書のヨブの物語(注・苛酷な試練にじっと耐え、神仰を堅持した人物に、あるように、ある日、より崇高な力によって彼の運命が試されることになる。
娘(ケイト・ハドソン)の結婚式を控え、妻(ファラ・フォーセット)の様子がおかしくなり、Dr.T自身も、ゴルフ・クラブで出逢った魅力的な女性(ヘレン・ハント)に惹かれてしまうのだ。

旧約聖書でヨブの物証はこう終わっている。答えを求めて砂漠を彷徨っていたヨブは、つむじ風の中でこんな声を聞く。
「人生とは解くべきパズルではなく、考えるべきナゾナゾである」。
この『Dr.Tと女たち』も意想外の結末が用意されている。『ザ・プレイヤー』のメタ・ハッピーエンディングも、『プレタポルテ』のケレンたっぷりのラストも色褪せる驚愕のクライマックスを目撃すると、アルトマンという映画作家の大胆不敵さに、呆然とさせられてしまう。
キャストもこれ以上望めないほどの豪華さである。まずハリウッドーのセクシー男優で意外にもアルトマン作品に初出演のリチャード・ギア、、女性だけの世界に閉じ籠り、自足していた一人の中年男が真の自分を再発見する、この<現代のヨブ記>の主人公を哀愁すら滲ませて好演し、新境地を見せている。
そして、何といっても女優陣が素晴らしい。『恋愛小説家』でアカデミー主演女優賞を獲得したヘレン・ハントは、Dr.Tが恋に落ちるゴルフのレッスン・プロ、ブリーを演じている。エキセントリックなキャラクターが目立つ中で、唯一、Dr.Tとの<関係>を冷静に見つめる大人の女性だが、これまでの作品では見られなかった官能的魅惑を発散し、印象に残る。
『チャーリーズ・エンジェル』で一躍スターになったファラ・フォーセットは、久々の登場だが、幸福のあまり精神的退行をきたしてしまう妻という、『イメージズ』『三人の女』以来の、いかにもアルトマン的な神経症的ヒロインを演じており、見事なヌードまで披露している。
Dr.Tの義妹役のローラ・ダーンは、常連のデヴィッド・リンチ作品とはうって変わり、離婚訴訟でアルコール依存症気味の母親をユーモラスに演じ、コメディエンヌぶりを発揮している。
『あの頃ペニー・レインと』で一気にブレークしたケイト・ハドソンは、結婚を控える娘という重要な役だが、無意識のコケットリーがなんともチャーミングである。『アメリカン・パイ』のタラ・リードがもうひとりの娘役で、ケネディ暗殺陰謀説を信奉する、コーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』以来のファニーなキャラクターを嬉々として演じている。また、『クッキー・フォーチュン』に引き続きアルトマン作品に出演したリヴ・タイラーは、前作とキャラクターも体型(?)もすっかり対照的なのが面白い。
スタッフには、前作『クッキー・フォーチュン』でアルトマンの絶大な信頼を得た脚本家アン・ラップが、女性ならではの繊細な視点で豊かな奥行きのある世界を構築している。他にもプロダクション・デザインのスティーヴン・アルトマンを始め、編集のジェラルディン・ペローニ、衣装のドナ・グラナダ等の「アルトマン組」の常連が集結した。また、弟子にあたるアラン・ルドルフの最高傑作に『チューズ・ミー』のジャン・キーサーが撮影監督、アルトマン作品に俳優として数多く出演してきたグラミー賞受賞シンガーソングライター、ライル・ラヴェットが音楽を担当しているのも注目される。

ストーリー


Dr.Tことドクター・サリヴァン・トラヴィス(リチャード・ギア)はダラスの産婦人科医。ハンサムで女性の悩みにも親身になって耳を傾けるため、彼の医院はさまざまな欲望や思惑を抱えたエキセントリックな女性の患者で溢れ返るほどの盛況ぶりだ。Dr.Tに秘かに想いを寄せる婦長キャロリン(シェリー・ロング)もオーバーブッキングされた殺人的スケジュールを嬉々としてこなしている。
Dr.Tには最愛の妻ケイト(ファラ・フォーセット)との間にディディ(ケイト・ハドソン)とコニー(タラ・リード)の二人の娘がいて、ディディは結婚を控えている。アルコール依存症気味の義理の妹ペギー(ローラ・ダーン)も三人の幼い娘を連れて出戻ってきている。こんな女性ばかりに囲まれた日々を過ごすDr.Tの唯一の息抜きは男友達とゴルフ・コースを回り、野鳥のハンティングをすることだ。
だが、一見、幸福そのものにみえたDr.Tに次々にトラブルが襲いかかる。まず、ケイトが突然、ショッピング・モールで服を脱ぎだし、噴水の中で全裸になってしまう事件が起きる。Dr.Tは精神に変調をきたしたケイトを精神療養施設に入れるが、医師のハーパー(リー・グラント)に、ケイトは物質的にも家庭的にも恵まれ過ぎて、かえって前向きに生きる意欲を失い、幼児へと退行してしまうヘスティア・コンプレックスではないかと診断され、ショックを受ける。
そんな時、ゴルフ・クラブでアシスタント・プロのブリー(ヘレン・ハント)と出会ったDr.Tは、彼女に今まで知り合った女性にはない特別な魅力を感じ、次第に親密になっていく。
一方、ディディの結婚式の準備も着々と進むが、屋外でのセレモニーを希望するディディに、コニーはテキサスの天候は急変するからと猛反対している。さらに、式に向けての衣装合わせで、花嫁の付き添い役としてやってきた大学時代の友人マリリン(リヴ・タイラー)とディディの不穏な関係がコニーは気になってしかたがない。
そして、Dr.Tとブリーの仲も急速に深まってゆく。ある日、ブリーの家に食事に誘われ、二人は一夜を共にする。
コニーは診察で忙殺されているDr.Tを訪ね、ディディはレズビアンでマリリンとも肉体関係があり、この結婚は取り止めるべきだと告げる。動揺を隠せないDr.Tはブリーに相談を持ちかけるが、さらに追い討ちをかけるように、ケイトが離婚したいと言い出す始末。
いよいよ結婚式の当日。暗雲がたちこめ、強風が吹く中、ディディの望みどおり屋外での式が決行されることになったが…。

スタッフ

監督:ロバート・アルトマン
脚本:アン・ラップ
製作:ロバート・アルトマン、ジェームズ・マックリンドン
共同製作:デヴィッド・リーヴィー、トミー・トンプソン
共同製作:グラハム・キング、デヴィッド・A・ジョーンズ
撮影監督:ジャン・キーサーA.S.C.
プロダクション・デザイン:スティーヴン・アルトマン
編集:ジェラルディン・ペロー二
衣裳デザイン:ドナ・グラナタ
音楽:ライル・ラヴェット
製作総指揮:シンディー・コーワン
キャスティング:パム・ディクソン・ミッケルソンC.S.A.

キャスト

Dr.T:リチャード・ギア
ブリー:ヘレン・ハント
ケイト:ファラ・フォーセット
ペギー:ローラ・ダーン
キャロリン:シェリー・ロング
コニー:タラ・リード
ディディ:ケイト・ハドソン
マリリン:リヴ・タイラー
ハーラン:ロバート・ヘイズ
ビル:マット・マーロイ
イライ:アンディー・リクター
Dr.ハーパー:リー・グラント
ドロシー:ジャニン・ターナー

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