原題:QUATER NUITS D'UN REVEUR

『血の記憶』上映記念! ルキーノ・ヴィスコンティ監督作品

1957年/イタリア=フランス合作/モノクロ/103min 配給:ケイプルホーグ

2006年05月27日よりDVDリリース 2002年12月14日よりシネリーブル池袋にてロードショー (撮影監督が修復を監修したニュープリント完全修復版) 2001年11月17日〜12月7日 シアター・イメージフォーラムにてモーニングショー! 1958年劇場公開作品

公開初日 2001/11/17

公開終了日 2001/12/07

配給会社名 0029

公開日メモ 『血の記憶』上映記念! ルキーノ・ヴィスコンティ監督作品

解説


幻想的な夜の港町で一人の孤独な青年が、運河にかかる橋のたもとで、夜ごと夜ごと、ひたすら恋人が帰って来るのを待っている若い娘と出会う。娘の名はナタリア。青年の名はマリオ。やがてマリオはナタリアを愛し始める。そして、ナタリアもマリオを愛し始めるようになった時、突然、ナタリアの恋人が二人の前に姿を現わす。ネオ・レアリズモの作家として知られていたヴィスコンティが、かってない幻想性とロマンティシズムを示した作品、それが『白夜』である。『白夜』はヴィスコンティが『夏の嵐』に次いで発表した長篇第5作である。前作『夏の嵐』が当時の金額で製作費15億リラ、製作期間1年余という空前のスケールの大作であったが、ヴィスコンティは自分が低予算で早撮りもできる監督であることを示そうとした。そこで彼は脚本家のスーソ・チェッキ・ダミーコ、俳優のマストロヤンニ、プロデューサーのクリスタルディと「チアス社」を設立し、ドストエフスキーの初期の中篇小説「白夜」を映画化することにした。『白夜』はヴィスコンティの作目としては珍しくオール・セットで撮影され、まるでフェリーニ作品のようにチネ・チ・チッタ撮影所にイタリアの港町リヴォルノをモデルとしたセットが建設された。作品が完成するや、『白夜』はヴェネツィア映画祭銀獅子賞をはじめ1958年イタリア銀リボン主演男優賞(マストロヤンニ)、音楽賞(二ーノ・ロー夕)、美術賞(M・キアーリ、M・カルブリア)、1958年ブンタデル・エステ映画祭作品賞、1957年グロッラ・ドーロ賞監督賞と数多くの賞を獲得した。出演者はヴィスコンティらしい国際色豊かな顔ぶれで、孤独な青年マリオには『白夜』で演技を認めらたイタリアの大スター、マルチェッロ・マストロヤンニ。神秘的で清純な美しさを湛えたナタリアには、ルネ・クレマン監書の『居酒屋』でヴェネツィア映画祭主演女優賞を受賞し、その後『カラマーゾフの兄弟』、『女の一生』、そして『サン・スーシの女』などに出演しているマリア・シェル。ナタリアが、ひたむきに愛する下宿人に扮し、僅かな出番であるが、他を圧する印象を与えるのは、フランスの美男スター、ジャン・マレー。彼はジャン・コクトーの秘蔵っこ俳優としてコクトーの名作『美女と野獣』、『オルフェ』などに出演し、来日公演では、コクトーの生涯を一人芝居で演じたこともある。その他にもヴィスコンティの処女作『郵便配達は二度ペルを鳴らす』のクララ・カラマイ、『若者のすべて』のコッラード・パー二、『道』のマルチェッラ・ロヴェーナ、『陽気なドン・
カミロ』のマリア・ザノーリらが出演。脚本は『ペリッシマ』から『イノセント』に至るまでの殆どのヴィスコンティ作品を手掛けているスーゾ・チェッキ・ダミーコとヴィスコンティ。『白夜』の主役の一人だとも言われている美しいモノクロ撮影を担当したのはジュゼッペ・ロトゥンノで、彼はヴィスコンティとフェリーニ作品の名カメラマンであり、『華麗なる陰謀』、『氷壁の女』などの海外の作品でも優れた手腕を示している。音楽はニーノ・ロータのオリジナル・スコアで、この作品のロマンティシズムと幻想性を強調している。他に挿入歌としてジーノ・ラツティツラの歌う『スクーザミ』が使用され、さらにロッシーニの『セビリアの理髪師』がナタリアの回想シーンで使われている。美術は、『ルートヴィヒ』のマリオ・キアーリと『山猫』『イノセント』のマリオ・カルブリアが担当。

ストーリー



イタリアの港町。ある晩、まだこの町に来て間もない孤独な青年マリオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は運河の橋のたもとですすり泣く若い娘(マリア・シェル)と出会う。マリオは悲しげな娘に心を惹かれ、彼女を家まで送り届け、翌晩も会う約束をとりつけた。翌晩、マリオは期待に胸弾ませて娘を待っていると、娘は彼の姿を見かけると逃げ出すではないか。すっかり気を悪くしたマリオに娘は謝罪し、自分の名がナタリアであることを告げ、毎夜、橋のたもとに行く理由を伝えるのだった。ナタリアは目の見えない祖母と何の楽しみも知らずに暮らしていた。そんなある日、ハンサムな男(ジャン・マレー)が下宿人として、彼女の前に現れ、一瞬のうちに彼女は恋に落ちた。男もまた彼女に強い愛を感じ、やがて二人は愛し合うのだが、訳あって男は一年後に必ず戻ると言ってこの町を立ち去った。そして一年経った今、ナタリアは毎夜橋のたもとで、男が戻るのを待っているのだ。マリオにはナタリアの話がお伽話のように非現実的に感じられたが、愛しいナタリアのために男に手紙を渡す役を自分からかって出る。だが、マリオはその手紙を引き裂いて運河に捨てるのだった。
そして翌晩、男に手紙を渡してくれたと思い込んで期待と不安の入り交じるナタリアが、マリオの前に現れた。手紙を捨てた後ろめたさから、最初はナタリアを避けようとしたマリオだが、彼女の誘いを断ることなど出来なかった。二人はダンス・ホールで楽しい時間を過ごすが、いつもの時間になると、ナタリアはマリオを残して一目散に橋の方へ駆け出して行く。だが、そこには誰もいない。悲観のあまり石畳に崩れ落ちるナタリアにマリオは必至に愛の告白をする。だが、興奮するナタリアにマリオの言葉は全く耳に入らない。マリオは腹を立て彼女をののしって行ってしまう。夜の街を放浪し傷ついたマリオとナタリアは再び出会う。「あなたのおっしゃるとおりでした。彼は来なかったわ…」絶望に打ちひしがれた彼女に、マリオはナタリアを愛する余り、手紙を男に渡さなかったことを告白し、ナタリアのためにできるかぎりの償いをすると伝える。二人は夢中で語り合いながら、深夜の街を歩いた。ナタリアもマリオと同じように傷つき、ナタリアの心も今、目の前にいるマリオに惹かれているのだ。ナタリアはついにマリオの愛を受け入れ、現実の世界に生きる努力をすると誓う。ボートに乗り、将来のこと、共に築き上げていく幸福について語り合う二人。いつしか雪が降りだし、美しい深夜の街で、マリオは幸福に満ち溢れる。新しい二人のこれからが始まる歓び。と、いつもの橋の上に黒い人影がある。まさか、待ち人が現れたのだ。マリオに謝り、橋へ駆けて行くナタリア。マリオは抱擁を交わすナタリアと見知らぬ男を見送って、一人歩いていく。

スタッフ

監督:ルキーノ・ヴィスコンティ
原作:F・M・ドストエフスキー
脚本:ルキーノ・ヴィスコンティ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ
撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ
美術:マリオ・キアーリ、マリオ・カルプリア
衣裳:ピエロ・トージ
編集:マリオ・セランドレイ
音楽:二一ノ・ロ一夕

キャスト

マリオ:マルチェッロ・マストロヤンニ
ナタリア:マリア・シェル
下宿人:ジャン・マレー
娼婦:クララ・カラマイ
踊る男:ディック・ザンダース

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