原題:I AM CURIOUS :YELLOW Jag ar nyfiken gul(スウェーデン語タイトル)

1967→2002 LOVE解禁

1967年10月9日スウェーデン初公開

1967年/スウェーデン/スタンダード/モノラル/122分/モノクロ/日本語字幕:齋藤敦子 配給:日活

2008年02月22日よりDVDリリース 2003年06月25日よりDVD発売開始 2002年7月6日より銀座シネパトスにて公開 2002年1月19日より渋谷シネクイントにてレイトショー公開

公開初日 2002/07/06

配給会社名 0006

公開日メモ 68年、スウェーデンからやってきた作品が、アメリカで公開をめぐる裁判問題に発展し、知識人たちをまきこんで勝訴に至る歴史的な事件を起こす。それによりポルノ解禁の先駆的な作品と位置付けられたのが本作。

解説


68年、スウェーデンからやってきた作品が、アメリカで公開をめぐる裁判問題に発展し、知識人たちをまきこんで勝訴に至る歴史的な事件を起こす。それによりポルノ解禁の先駆的な作品と位置付けられたのが本作。
日本では71年に45ヶ所カットというズタズタな状態でようやく公開。当時、最もスキャンダラスな映画として大いに騒がれたいわくつきの一作が30年以上の時を経てノーカット完全版で公開。

最後の伝説がやってくる!!
60年代ゴダールのポップ/アヴァンギャルドな作風。カリフォルニアのビーチとNY郊外のウッドストックで頂点をむかえるラブ&ピースなフリーセックス思想。書を捨てよ町へ出ようを実践するニュー・ジャーナリズムのストリート精神。ウーマン・リブからガーリー・カルチャーへ至る女性の文化的パワー。
すっかりおなじみ、重要な潮流たち。そしてなんと、これらの水が、67年のスウェーデンにおいてひとつの映画に全部注ぎこまれていた!いや、驚いてはいけない。ほんとうの衝撃とは、いつも意外な場所から現われるものなのだから。
その作品の名は「l am curious:yellow」…『私は好奇心の強い女』。

《60s ポリティカル・ポップ》
「私」とは、なんでもありで掟やぶりのヒロイン、演劇学生レナ・ニーマン。SEX大好き主義の彼女が、ヴィルゴット・シェーマンという映画監督の中年男に導かれて、なんとなく政治に目覚めていく。撮影スタッフが当時のスウェーデン運輸相オロフ・パルメ(のちの首相。86年2月28日に暗殺される!)にインタビューしている時は、まるで無関心に若い俳優といちゃついている彼女も、監督と黒人運動家マーティン・ルーサー・キング牧師(翌68年4月4日に暗殺される!)がしゃべってる記録映像には、素直に感動したり。ファニーな魅力をまきちらしながら、スウェーデンの街を暴走し、やがて田舎で瞑想(迷走?)するレナだが、SEXのことだけはいつも忘れない。そのあまりに自由奔放な生きざまは、男たちにとって一個の爆弾!?
ただし、レナはあくまで「好奇心の強い女」という役割を演じる女優である。確かに、ここではレナもシェーマン監督も本人として登場するし、いきなり撮影スタッフまで画面に現われたりする。だけどいわゆるドキュメンタリーではな<、作られたストーリーがあるフィクションだ。しかしそうではあっても、実際の街でロケ撮影したり、ドキュメンタルな要素を大胆に取り入れることで、時代の空気感をリアルにとらえることができる。「政治の季節」と呼ばれた当時、たとえばアメリカのミュージシャンたちがヴェトナム戦争にのめりこむ体制を音楽で批判していたように、意欲的なアーティストにとって、作品に時代のナマな感触を取り入れ、それを自分の政治的立場の表明だとする作業は欠かせないことだった。つまり『私は好奇心の強い女』の表現は、この時期に世界で同時多発した最先端ユース・カルチャーの形なのだ。 政治とポップ・カルチャーの直結、それが60年代後半の切実なモード。 《元祖"性表現"センセーショナル》 さて、女優/本人の境界をあいまいにしたまま突っ走るレナの勢いに引きずられ、この映画はその性表現の自由さにおいて、当時世界各国で一大センセーションを巻き起こす。自称"自由の国"アメリカでは裁判問題にまで発展し、それで勝訴を勝ち取ったことにより、世界中のポルノ解禁の先駆けともなった。けれど結局、ノーカット版が上映されたのはアメリカとスウェーデンとデンマークだけ。日本では45ヵ所カットというズタズタの状態で、71年に公開。当時本作は、最もスキャンダラスな映画として大いに騒がれたわけである。 だけど、この映画の核心はたとえば『ラストタンゴ・イン・パリ』(72年)や『愛のコリーダ』(76年)がそうであったように、むろん単なるエッチではない。いや、なんだか不穏で殺伐とした空気が立ちこめている現在、もっともっと必要なものがそこにあるのだ。 《Make Love,Not War》 そう、なぜ2002年になって、これのノーカット完全版(4ヵ所のみ修正)がようやく日本でも日の目を見ることになったのか。それは、エロスとかファッションとかの、表層的な要素だけにとどまらない、もうワンランク突っこんだ内容の深さに、その後、いく時代ものモードが追いつかず、再び追いつくには、空気感がぴりっとシリアスになる"いま"まで時間がかかったのである。満は持した!なにせこの映画、過激ともいえる展開のあと、最後にこう活字でつぶや<のだ。 "Make Love,Not War"(愛しあおう、戦うのはやめて) レナのSEXと政治をめぐるドタバタ劇は、このメッセージに集約される。愛こそはすべて。そんなシンプルかつ究極の"思想"は、混迷の21世紀にあなたの好奇心を刺激するか?

ストーリー


レナ・ニーマン、22歳の女子演劇学生。ヴィルゴット・シェーマン、42歳の映画監督。ふたりは『491』という映画以来の、主演女優と監督の仲である。
レナはシェーマンに連れられて、ソビエトの詩人エフトシェンコの詩の朗読を聞きに行っても、この次の公演で男友だちのマグヌスと演じるラブシーンのことでうきうきしている、シェーマンは内心あきれ気味。
そして翌日からレナは、シェーマン監督の新作のために、演劇学生のウラやマグヌスと、テープレコーダーを持って街ヘインタビューに出かける。政治や社会問題について、人々の意見を聞くのだ。
続いて撮影スタッフ一同は、ストックホルム郊外にあるオロフ・パルメ運輸省(39歳、のちの首相)の自宅を訪問する。アメリカのヴェトナム政策を厳しく批判している彼は、シェーマンの質問に答えて、真の平等社会の実現について説く。
その夜編集室で、レナは66年に撮影されたシェーマンと黒人運動家マーティン・ルーサー・キング牧師(当時37歳)の対談記録映像を見て感動。翌日からの街頭インタビューでは、「非暴力主義についてどう思うか?」「もしスウェーデンか占領されたらとうするか?などと聞いて歩く。
その夜レナとウラは、非暴力主義について議論しながら、オナニーの方法についても真剣に話し合う。
やがてレナは父とふたり暮らしのアパートに「ニーマン研究所」という看板を出す、そしてマグヌスたちと政治研究。さらには、むかし発行されていた保守系新聞を再刊して街頭で売り、ソビエト大使館前では階級制度の復活を攻撃するプラカードを掲げ、スペイン観光旅行社前では独裁者フランコ総統非難のデモ行進をし、空港ではスペイン旅行から帰ってきた観光客に批判的な質問をぶつける。
そのあとで、レナは父が働いている額縁屋に行く。その夜、父は、額縁屋でレナを見て関心を持ったという自動車セールスマンの青年、ボリエを家に連れてくる、彼はレナの部屋を見たいといって、レナのやっていることをいろいろ聞く。そしてふたりは、ごく自然に結ばれる。
裸で寝そべりなから、レナはボリエに、スペイン戦争の経験者である父のことを話す。そして会話の中で、いままで23人の男と寝たことを告白する。
そのあとふたりは、6月の早朝の街に出て、宮殿前の欄干上でSEXをする。
架空インタビューの中でレナは宮殿内で退位したスウェーデン国王に会う。なぜか皇太子カール・グスタフは、ボリエと同じ顔だ。
それからもレナは政治活動を続けるが、ある日、ボリエに愛する女性マリーと3歳の娘がいることを知って大きなショックを受けてしまう。
自分の気持ちを整理するために、レナは南部の田舎に隠遁する。一軒家で瞑想にふけりながら、苦行者のような日々を過ごすが、SEXの体位の勉強もするところはいかにもレナらしい。
やがてそこに、彼女の居所を突き止めたボリエがスポーツカーでやってくる。レナはたちまち彼とのSEXの歓喜にひたるのだが、彼女はマリーや彼の女友だちについて尋ね、ケンカし、ボリエはストックホルムに帰ってしまう。
すっかり心が乱れたレナは、ストックホルムに帰り、すべてを精算することにする。ニーマン研究所も徹底的に破壊し、写真のフランコ総統の両眼にナイフを突き立てる。また、レナとボリエは、野外SEXが原因の毛ジラミの治療を受ける。病院を出たふたりは、右と左に別れてゆく。こうしてレナとボリエの物語は終わった。
だが、この映画にはもうひとつ、演劇学生と映画監督の物語かあるのだ。レナは撮影所の編集室で、シェーマン監督とある女子学生の仲むつまじい姿を目撃し、いままで持っていたシェーマンのアパートの鍵を彼に返す。この物語も、これで終わり。
しかし、編集室を出たレナは、若い俳優ボリエ・アールステットの腕の中に迎え入れられる。演劇学生レナと、若い俳優ボリエの、新しい物語のはじまりである……。

スタッフ

監督・原作:ヴィルゴット・シェーマン
製作:イヨラン・リンドグレン
撮影:ペーテル・ヴェステル
音楽:ベント・エルンリド

キャスト

レナ・ニーマン
ヴィルゴット・シェーマン
ボリエ・アールステット
ペーテル・リンドグレン
ハンス・ヘルベルト
クリス・バールストレム
マリー・イヨランゾン
マグヌス・ニルソン
ウラ・リトケンス

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