アイスランド

ニューアルカトラズは南極に建てられた最終刑務所、ここから脱出は不可能だった。あり得ぬことだが、もし外に出られてもマイナス50度以上の極寒はあっさりと凍死させる。いわば巨大な密室だった。その地下2500メートルの掘削によって判明した驚愕の事実！それは岩盤内の不活性ガスが2000万年前の環境を閉じ込めていたのだ！だがガスが抜けた今、最悪の生物を蘇えらせた！巨大で獰猛な爬虫類ラプター。次々と食いちぎられる人間たち。密室はこいつの餌場となった！
超獰猛モンスター・パニック・アクション大作、それがこの『アイスランド』だ！『アナコンダ』から『キングコブラ』『パイソン』とダントツの人気を誇る爬虫類系モンスター作品だが、本作はその『パイソン』や『ディープコア2000』『オデッセイ2001』などの製作で日本でも注目されているＵＦＯ製作作品。高いクォリティのＶＦＸ映像が堪能できる。

【チェック・ポイント！】

　極地に甦る太古の巨大爬虫類と聞いて、思わず我らが円谷プロがアメリカと合作した『極底探検船ポーラーボーラ』(76)かと思いましたが、大蛇が地底深くにあった空洞岩石の中に満たされていた不活性ガスにより眠りつづけていたという設定は、劇中の台詞にあるように『ジュラシック・パーク』(93)の影響大だろう。ビデオ・スルーの楽しいＢ級ジャンル作品を量産するＵＦＯが、『パイソン』(00)に続いて送る巨大蛇モンスター・ムービー。あくまで『パイソン』のように遺伝子操作で生み出された生物兵器ではないので、酸を吐き人間を溶かすような芸当は見せないが、舞台となる刑務所内を縦横無尽に動き回り人間を血祭りにあげていく。蛇の素早すぎる動きやＣＧＩの荒さなどは、前作のデータを流用してるのではと勘ぐらせる（勿論再利用してるさ）部分もあるが、『パイソン』でもキャスパー・ヴァン・ディーンを刺し殺すなど武器としての強力さを見せつけた尾の部分を鏃上にし、より強力・残忍にみせるなどの工夫が見られるのは好印象。一飲みにしてしまうのではなく、犠牲者を咥えた後一度地面などに叩きつけてからあらためて喰ったり、生きた人間を足の先から少しづつ噛み砕き喰うなど執拗な感じがよく出ている。また、その執拗さの果てのクライマックスも、迫力ありながら笑えるという人をくったもので悪くないぞ。
　メーカーのリリースにも書かれているとおり、本作の舞台はただ単に南極というのではなく、そこに作られた逃げ場の無い刑務所という設定だ。氷原に浮かび上がる刑務所の威容や、ローマ建築風の柱が建ち並ぶその内部（何本もの柱の周りを巨蛇が動き回る図はゾクゾクさせられる）など絵的には面白いものを作りだすことに成功している。ただ、通常の刑務所を素っ飛ばして収監されたはずの、一癖も二癖もある囚人達のキャラクター描写がイマイチ薄く、その割には巨蛇が暴れ回るまでの件が長いのが惜しまれるところだ。それこそここは、『ニューヨーク1997』(87)の“スネーク”プレスキンなみに個性的なヤツ等が生存を賭けて密室空間で戦う姿が描けかれていれば、さらに盛り上がったと思うのだが。
（殿井君人）