原題:28 Days Later

わずかな未来は始まっている

2002年10月18日イギリス初公開

2002年/アメリカ映画/カラー/114分/ 配給:20世紀フォックス

2010年08月04日よりDVDリリース 2010年06月25日よりDVDリリース 2007年12月21日よりDVDリリース 2007年10月24日よりDVDリリース 2005年04月28日より特別編DVDリリース 2005年04月28日より『アイ・ロボット』と二枚組セットのスーパーパック特別編DVDリリース 2003年8月23日より、シネクイントにてロードショー公開

公開初日 2003/08/23

配給会社名 0057

解説



ダニー・ボイルの復活か!新作『28日後…』が大ヒットを記録したロンドンでは久々にそんな声が飛んでいた。エッジの効いたスピーディな映像と独特のユーモアを備えた『シャロウ・
グレイブ』『トレインスポッティング』で華々しく世界の映画史にその名を刻み、イギリス映画が注目を浴びるきっかけを作った立役者とされながらも、その後、ハリウッド資本を注入した
メジャー作品に進出した『普通じゃない』『ザ・ビ−チ』で賛否両論に曝されることになったボイルだが、今回は『ザ・ビーチ』の原作者、アレックス・ガーランドと再びタッグを組み、彼の書き下ろした脚本で全く新しいジャンルに挑戦した。だがこの映画をどんなジャンルに押し込めたらいいのだろう。ホラーか(ゾンビ映画でないことは確かだ)?SFか?戦争映画か?それとも黙示録映画だろうか?いや、あえて言うなら、どちらでもないのに、その全てを内包する、希望に満ちた人類滅亡映画ってところだろうか。そこにあるのは、医学が進歩した現在でも人類を脅かし続けるウィルスに、人間が本来持つ怒りと破壊の衝動と、未来に希望はあるのかという根源的な物語。そこではあなたの精神的な特賞が試される。あなたは悲観的な人間か、楽観的な人間か7人を犠牲にしても生き延びる人間か、身を挺して人を守る人間か?同じ状況で、あなたならどうする?人はたちまち丸裸にされてしまう。
全ては、”怒り”の衝動を抑える特効薬を開発しようとする動物実験が失敗し、見るもの全てを殺したくなるウィルスが研究所から漏れてしまった『28日後…』から始まる。誰もいない病院で昏睡状態から目覚めたジムはロンドンの街へさ迷い出る。そこで彼が目にするのは、人気のない、静まり返ったウェストミンスター橋とテムズ川沿いのエンバンクメント。広場にはダブルデッカー・バスが横転し、9・11後のNYのように家族の行方を捜すビラが貼られる。何が起きたのか彼に分かるはずもなかった。新聞を拾い、わずかな痕跡を探す。全島避難?伝染病?死のウィルス?
たまらず「Hello!?」と呼びかけるジムの声は、ビルの谷間に虚しく響き渡る。これまで侵略の歴史を繰り返してきた民族は敵か味方かを判断するために、まずは「Hello?」と呼びかける(日本語だと「誰かいないのか?」ってところか)。かの戦争でも、兵士たちは砂嵐の向こうから必死の思いでそう聞いたに違いない。それは言葉の通じない者への先天的な恐怖。その反面、言葉の通じない者とのコミュニケーションを望む意志でもある。
ジムは本来ならば救済の場所である教会に入り、「Hello?」と呼びかける。その声に反応したのは、目を血走らせて襲い掛かる神父と、死体の山に紛れていた”感染者”たちのラブコールだった。ウィルスは血液を媒介とし、数秒で人間の精神を破壊する。感染者は親でも兄弟でもすぐに殺さなければ自分の命もない。セリーナ、フランク、ハナといった仲間を得たジムは、感染者たちの攻撃をかわしながら、特効薬を見つけたというラジオ放送を頼りにマンチェスター郊外まで車を走らせる。わずかな希望を込めて「Hello?」と呼びかけながら。そこにどんな恐怖が待ち受けているとも知らずに…。
あまり有名ではない俳優を起用したかったというボイルは、まだ大人になれない主人公のジムにキリアン・マーフィ、強い意志を持つセリーナにナオミ・ハリス、家族の温かさを体現する父親にブレンダン・グリーソン、その娘に『がんばれ、リアム』でヴェネチア映画祭の最優秀新人賞を受賞したミーガン・バーンズを起用し、物語の鎚を握る少佐役には実力派のクリストファー・エクルストンを配した。プロデューサーには長年信頼関係を築いてきたアンドリュー・マクドナルド、撮影監督には『セレブレーション』など、ドグマ95作品の撮影で知られるアンソニー・ドッド・マントル、美術にはウィンターボトム作品でも知られるマーク・ティルデスリーを起用し、音楽はミニマルな宗教音楽が支配する中、ブライアン・イーノ、グランダディ、ブルー・ステイツの楽曲が散りばめられる。また交通を遮断した無人のロンドン市街の投影では、限られた時間内で撮影できるよう、また街中に溢れる不気味なCCDカメラの存在感を出すため、全編デジタル・ビデオで撮影され、ロンドンの見慣れた景色を変質させることに成功した。
この映画のウィルスが、肉体ではなく、精神を冒すという点に興味を覚えたと話すボイルは、最近、人がほんの些細なことでもキレるようになったことにも触れる。そう、”怒り”のウィルスはもう巷に溢れているのだ。それでもあなたは人間に希望を持てるだろうか。それでも生き残りたいだろうか。敵は人間なのか、”感染者”なのか。それともウィルスなのか。最後に残された”生存者”たちは上空を飛ぶ戦闘機に向かって合図を送る。だがその合図は”Help”ではなく、”Hello”だった。上空の彼らは敵なのか味方なのか。避難した残りの人たちはどこかにいるのか。それは誰にもわからない。それでも、人は一人で生きていけない。必要なのは希望とコミュニケーションだ。だが同時に作者と監督が、観客に向けてコミュニケーションを取ろうとしているようにも見える。”Hello!あなたは生きていますか?”そう、この映画は、絶望的な状況にも希望を感じさせてくれる。その思いは、きっとあなたにも届くはず。

ストーリー


真っ暗な霊長類研究所では、拘束され、無数の電極に繋がれたチンパンジーが、数十台に及ぶモニターを見つめている。そこには暴動、殺人、戦争といった、際限のない暴力描写が探り返される映像が流される。そこへ動物愛護の活動家数名が猿を解放しようと、闇に紛れて侵入した。それに気づいた研究員は彼らに警告する。危険だ。動物だちはウィルスに感染していると。だがその甘葉を聞き入れずに、檻を開けてしまった女性活動家に、突然、牙を剥いたチンパンジーが突進する。研究員は叫ぶ。猿は実験のために、怒りに取り葱かれているのだと。猿に噛まれた女性の形相は憎悪に満ち、他の仲間に襲いかかる。断末魔の悲鳴が響き渡る。その28日後…、バイク・メッセンジャーのジムは、ロンドン市内の病院のベッドで目覚めた。交通事故で意識を失っていたのだ。腕には点滴が施され、身体は様々な機械に繋がれている。周囲に人の気配はない。彼は備品の散らばる廊下を抜け、自販機からこぼれていた缶ジュースを飲み干すと、まだ飲めそうな缶を集めてビニール袋に入れて街へ出た。人気のないウェストミンスター橋を渡り、テームズ河畔を歩き、2階建てバスが横転する交差点を進み、”ハロー”、と人影を探す。空っぽなロンドンの街に彼の声だけが響く。
押し潰されそうな不安からか、日が暮れる前に、ジムが教会に足を踏み入れると、礼拝堂には死体の山が転がっていた。人間の最初の痕跡に狼狽する彼の目の前に、人間とは思えぬ俊敏さで牙を剥いて向かってくる神父を思わず薙ぎ倒し、死体の山に紛れてその音を聞きつけた”感染者”たちに追いかけられる。訳も分からず逃げる彼に、得体の知れない`感染者”たちは迫るが、突然、手作りの爆弾で怪物たちを阻止して、彼を助けようとするマークとセリーナに導かれ、地下鉄の売店に逃げ込む。
そこで初めて彼が眠っている間に何があったのかを知らされる。ふたりが彼と同じ”生存者”であること。ウィルスが伝染し、先程の”感染者”たちのように、血や体液が体内に入ると、怒りにとり憑かれてしまい、それは親子だろうが兄弟姉妹だろうが、10秒以内に殺してしまわなければ、次に襲われるのが自分だということ。家族はもう死んでいるだろうと説得されても、パニックに襲われて家に帰ると言い張るジムのわがままを聞き、みんなで彼の家まで行くことにする。両親は寝室で、来るべき終末を悲観して自殺していた。その家で夜を迎えることにした3人だが、”感染者”たちの奇襲に遭い、マークが感染すると、セリーナは躊躇うことなく殺してしまう。
そして街をさ迷い歩くふたりは、高月マンションの上方の窓に、クリスマスの灯りが点滅するのを見つける。だがバリケードが張り巡らされた階段を上るふたりに、また感染者たちが追っていた。とてつもないスピードで階段を上ってくる彼らに、ジムは追いつかれそうになるが、そこに機動隊の装備を身に付けた男が現れ、ぎりぎりのところで感染者たちを撃退する。部屋に入ったふたりは、気のいい父親フランクとその娘ハナに迎えられた。久しぶりの家庭の匂いに酔いしれるふたりだが、水も食糧も底を尽き始めており、ラジオから流れる自動録音が、マンチェスター近郊で軍隊が基地を作り、感染の”治療法”を持っていると繰り返すのを聞いた。そうして4人は、フランクのタクシーに乗って、いざ、無人の高速道路を北上し始める。その先に、感染者以上の、恐ろしい存在が待っているとも知らずに…。
ジムとセリーナは、父娘が足手纏いになると考えたが、父娘はふたりが必要だという。もし父親に何かあった時に、娘の面倒を頼むと。そして彼らにとっても、その父娘の愛は希望だった。荒れ果てた世界で、かつてあった世界を体現するものとして。だが彼らを待っていたのは炎上するマンチェスターの姿だった。それにラジオで言っていた検間所には誰の姿もなかった。彼らの希望は打ち砕かれた。そしてふとした拍子に、フランクの目に”感染者”の血が入り込んでしまう。フランクはすぐに凶暴化し始める。そこへ数発の銃弾が彼の身体を貫き、茂みから、銃を構えた軍人たちが姿を現した。指揮をとるヘンリー少佐が基地で出迎えると、わずかな希望が生まれたかのように思えた。彼らは庭に地雷を埋め、夜間照明を焚き、感染者たちを寄せ付けないようにしていた。
だがそんな彼らに、答えが見つかった様子はなかった。兵士たちはハイになり、逆に何かにとり憑かれているように振舞った。少佐は部下たちに女を約束していたのだ。セリーナとハナをドレスに着替えさせる兵士たちは、反対するジムを射殺しようと、死体が積まれた森へ連行する。しかし、逃走したジムは、兵士たちをひとり、またひとりと追い詰めていく。彼らは助かるのか?いや、助かってもその後どうするのか?それでも希望はあるのか?彼らのような生存者はまだいるのだろうか?上空には戦闘機の姿が。助けて!いや、HELLO!

スタッフ

監督:ダニー・ボイル
製作:アンドリュー・マクドナルド
製作総指揮: グレッグ・カプラン、サイモン・ファロン
脚本:アレックス・ガーランド
撮影:アントニー・ドッド・マントル
編集:クリス・ギル
音楽:ジョン・マーフィ
美術:マーク・ティルデスリー
衣装:レイチェル・フレミング
メーキャップ・デザイナー:サリー・ジェイ
ラインプロデューサー:ロバート・ハウ
キャスティング:ゲイル・スティーヴンス

キャスト

ジム:キリアン・マーフィ
セリーナ:ナオミ・ハリス
ヘンリー少佐:クリストファー・エクルストン
ハナ:ミーガン・バーンズ
フランク:ブレンダン・グリーソン
兵士ジョーンズ:レオ・ビル
ミッチェル伍長:リッチ・ハーネット
ファレル軍曹:スチュワート・マッカリー
マーク:ノア・ハントレー

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