原題:SCHIZOPOLIS

本年度アカデミー監督賞受賞! 『エリン・ブロコビッチ』『トラフィック』のスティーブン・ソダーバーグ監督作品 少し、狂ってるくらいが、いい感じ。

1996年/アメリカ/カラー/93分/ヴィスタ/モノラル 配給:ザジフィルム

2001年12月7日DVD発売/2001年12月7日ビデオ発売&レンタル開始 2001年10月20日より渋谷アップリンクファンクトリーにて公開

公開初日 2001/10/20

公開終了日 2001/12/07

配給会社名 0089

公開日メモ 本年度アカデミー監督賞受賞!『エリン・ブロコビッチ』『トラフィック』のスティーブン・ソダーバーグ監督作品少し、狂ってるくらいが、いい感じ。

解説


『セックスと嘘とビデオテープ』で衝撃のデビュー。弱冠26歳でカンヌ映画祭グランプリを制し天才の名を欲しいままにしたソダーバーグ監督。この『スキゾポリス』は監督自ら“第二の処女作”と公言するほどの愛着を持ち続けている作品で、現在続編の準備が着々と進行している。因みに最新作『Ocean’s Eleven』にはブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、ジョージ・クルーニー他普通では信じられない豪華キャストが顔を並べている。「彼の作品なら何があっても出演したい」と言わしめるほど、ハリウッドでの彼の評価は今やもう神懸かったものがある。

「この映画は金のために作ったのではありません。意味がわからなかったら何度でも観て下さい」スクリーンの前で監督自ら挨拶するが、客席には誰もいない。『スキゾポリス』のオープニングは当時のソダーバ`グの境遇を見事に象徴している。
ソダーバーグは26歳のデビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』(89)でいきなりカンヌ映画祭パルムドールをさらって騒がれたが、その後鳴かず飛ばず。95年、ハリウッドから完全に見捨てられた彼が、親友5人と資金を集めて作ったのが、この『スキゾポリス』だ。スタッフはその5人のみで、節約のために彼らは俳優も兼任した。ソダーバーグは自ら撮影と主演に挑戦。主役の妻と子供役は逃げたソダーバーグの女房と娘が演じた。このミニマムなプロダクションのおかげでエンディングのスタッフとキャストのクレジットはたった1コマに収まってしまう。
内容は「ルイス・ブニュェルとリチャード・レスターとモンティ・パイソンの影響を反映させた」と本人が言っているとおり、ブニュエルの『欲望のあいまいな対象』(77)の二人一役を思わせるソダーバーグ夫妻の一人二役の不倫劇を軸に、『自由の幻想』(74)の写真ギャグの引用、レスターがビートルズ映画で多用したコマ落とし、モンティ・バイソン風不条理コントなどが散りばめられる。また、セットのバラシや批評家の解説などの脱構築ギャグはゴダール的だ(ソダーバーグはオフィスに『カラビニエ』のポスターを貼っている)。しかし「わけがわからない」と、アメリカ本国での公開は興行的に惨敗。空っぽの客席は現実となった。その年、アカデミー賞のパーティに行ったソダーバーグは「お前なんか知らん」と門前払いを食らった。
だが、製作規模も手法もまるで学生の実験映画のようなこの『スキゾポリス』でゼロから再出発したソダーバーグは、商業性と前衛性の両立を模索しながら、4年後には『トラフィック』でアカデミー監督賞を受賞してしまった。監督自ら撮影した『トラフィック』の手ブレ、ピンボケ、ジャンプカットだらけの映像の原点は、この『スキゾポリス』だったのである。ちなみに、その前年のオスカー受賞作『アメリカン・ビューティ』のケヴィン・スペイシーも、『スキゾポリス』のソダーバーグが原点か?
町山智浩(映画評論家)

ストーリー

フレッチャー・マンソン(ステイーヴン・ソダーバーグ)は、アジマス・シュイターズ(マイク・マローン)という“イベンチャリズムの思想家”が主宰する団体に勤めている。妻(ベッツィ・ブラントリー)と娘のいる家庭に戻れば「ハニー、ただいま」というテレビのホームドラマそのままの顔を見せるよきパパだ。たまたま同僚が心臓発作で亡くなったため、シュイターズの演説原稿を書く仕事が回ってきた。おりしも別の同僚“名無し男”(エデイー・ジェミソン)は、社内にスパイがいると大騒ぎ。実はマンソンこそ、「スパイになれ」と勧誘されているターゲットの人物だった。
一方、害虫駆除と割礼が本業で、“挿入”も“種付け”もやるエルモ・オキシジャン(デビッド・ジェンセン)という男がいた。彼は“名無し男”の家を訪ね“名無し男”の妻ダイアン(キャサリーン・ラ・ナサ)と関係すると、心臓発作で亡くなった同僚の妻宅にも向かった。そしてそのエルモの仕事を見つめる、謎のカップル(サイラス・クーパーとリアン・パティソン)がいた。マンソンはある日、自分とそっくりな男と出会う。それは歯科医師のコーチェク(ソダーバーグの二役)だった。そしてコーチェクが電話で呼び出した女は、なんとフレッチャーの妻。そして彼女はコーチェクの妻と瓜二つだったのだ。コーチェクはフレッチャーの妻と意気投合し、仕事人間フレッチヤーと別れるよう勧める。だがフレッチャーの妻が離別を決意したとき、コーチエクは“魅力的女性第2号”(ブラントリーの二役)と出会っており、フレッチャーの妻は「このうじ虫!」とコーチェクをののしって家を去る。
一方、エルモは謎のカップルからの、より良いオファーを受け、ますます過激な行動を展開する。だがエルモの行動が、とんでもない結末を呼ぶとは、まだ誰も気づいていなかった。
そして傷心のマンソンの妻を優しく迎えたのは、マンソンとコーチェクにそっくりな、フランス語をあやつる男(またしてもソダーバーグ)だった。だがマンソンが演説原稿を書き終えたとき、妻は夫との関係が修復されたことを知る。2人はシュイターズの演説会に出かけるが、そこにエルモが登場、なんとシュイターズを狙撃したのである…。

スタッフ

監督・脚本・撮影:スティーヴン・ソダーバーグ
製作:ジョン・ハーディ
製作総指揮:ジョン・リー
編集:サラ・フラック
キヤスティング:デビッド・ジェンセン

キャスト

フレッチャー・マンソン:ステイーヴン・ソダーバーグ
歯科医コーチェク:スティーヴン・ソダーバーグ
マンソンの妻:ベッツィ・ブラントリー
“魅力的女性第2号”:ベッツィ・ブラントリー
エルモ・オキシジャン:デビッド・ジェンセン
T・アジマス・シュイターズ:マイク・マローン
“名無し男”:エディー・ジェミソン
“右腕の男”:スコット・アレン
ダイアン:キャサリーン・ラ・ナサ
謎のカップル(男):サイラス・クーパー
謎のカップル(女):リアン・パティソン
インタビューを受けている男:C・C・コート二一

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