サンダンスNHK国際映像作家賞受賞 ロンテルダム国際映画祭シネマート部門正式招待作品

2002年/日本/カラー/115分/DTSステレオ/ビスタサイズ/ 配給:アーテイスト・フィルム、日活

2007年12月21日よりDVDリリース 2003年05月23日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年05月23日よりDVD発売開始 2002年11月9日よりシネマライズにてロードショー

(C)2002 アーティストフィルム/日活

公開初日 2002/11/09

配給会社名 0006/0023

公開日メモ 最もデビューを待ち望まれていた歌姫UAが遂に主演女優として映画に出演!自他共に認める映画好きである彼女の為に、CMディレクターで有名な杉森秀則が自ら脚本・監督を担当する。

解説



今、3日に1軒の割合で廃業が続いていると言われる銭湯を舞台に、番台に座る「水」の女と「火」にとりつかれた謎の男が織りなす宿命の恋の物語が誕生した。ギリシア自然哲学における“宇宙の万物の源”である「水」「火」「風(空気)」「地(土)」をそれぞれの登場人物になぞらえ、磁場のごとき銭湯でこの四元素が出逢い、寄り添い、ぶつかり合う本作は、リアルな人間ドラマを超越した現代の神話を語る。

小さな町で、父親と銭湯を営む涼(UA)は自他共に認める「雨女」。親不知を抜く日も遠足も運動会も、涼の人生の大切な日には必ず雨が降る。婚約者と父を同時に亡くした日も雨が降っていた。天涯孤独となった涼が傷心の旅から家に戻ると、見知らぬ男が上がり込み悠然と食事をしていた。火を見ると落ち着くというその男・優作(浅野忠信)の不思議な魅力に惹かれた涼は、銭湯の釜場で働いてみないかと誘いかける。雨女と、釜場で火を起こす男。お互い名前も過去も問いかけないまま、二人の奇妙な共同生活が始まった…

監督は本作品がテビューとなる杉森秀則。TV局のディレクター時代にドラマ、ドキュメンタリー、報道中継などあらゆるジャンルで100本を超える番組を制作し、現在はCMディレクターとして活躍中。オリジナル・アイデアで書き上げた本作品の脚本は、ロッテルダム国際映画祭シネマート部門に招待され、サンダンス/NHK国際映像作家賞を見事に受賞。「水火風地という伝統的なモチーフを使いながら現代的な手法で描くヴィジュアル・イマジネーション溢れる企画」(ロンテルタム映画祭ディレクター、サイモン・フィールド)。「とても詩的だ!風変わりなラブ・ストーリーだが面白い。言葉ではなく映像で伝えるミニマルな物語。ヴィジュアルな元素がとても美しいと思った。」(『リプリー』『スライディング・ドア』の米プロデューサー、ウィリアム・ホルバーク)など製作前から国内外を間わす高い評価を受けていた。ゆらめたぎく水・燃え譲る炎・草原をそよぐ風・壁に描かれた富士山・水に映る空…といった瑞々しくも力強い映像には、まず自然と人間との関わりを描きたかったという監督の強い思いが込められている。
主人公“水の女”涼には、最も映画デビューを待ち望まれていたUAが数あるオファーの中から「この脚本、このキャラクターであれば」と出演を決めた。脚本段階から水のようにしなやかに生きる涼のイメージは彼女を念頭において進められたという。また、エモーショナルなエンディングテーマ『欄光』は彼女自身が本作のために手掛けている。彼女自身、劇中の設定と同じ魚座であり、雨女らしい(?)というのはファンの間でも有名なエピソード。まさに本作はUAのための作品と言っても過言ではない。一方、“火の男”優作役には、監督に「この人以外は考えられない」と云わしめ、映画俳優として不動のポシションを獲得している浅野忠信。本作品では不慣れな関西弁を自在に操り、静けさと激しさの両面を持つ難しいキャラクターを見事に演じ分け、確かな演技力を見せつける。さらにNYコレクションに参加した経験を持つモデルのHIKARUが演じるのは、涼が旅先で出逢う、風のように自由に生きる女性ユキノ。実力派の小川眞由美は地を這うように懸命に生きる翠を熱演。さらに江夏豊、塩見三省、ぼんちおさむ、都家歌六ら曲者の共演陣が存在感を示し、ソロアーテイストとしての活動が好調な元JUDY&MARYのYUKlも涼の友人役として顔を見せている。
杉森監督の冒険に時代を彩るスタッフも集結した。撮影・照明には『鮫肌男と桃尻女』『風花』『PARTY7』の名コンビ、町田博と木村太朗。衣裳には映画『幻の光』『殺し屋1』をはじめ、宇多田ヒカルの「SAKURA ドロップス」のスタイリングを手掛けた北村道子。また作品の重要なポイントを占める銭湯「ひかり湯」を、『式日』『ロックンロールミシン』などの美術を手掛けた林田裕至が見事に作り上げた。音楽は『COWBOYBE-BOP』などの菅野よう子が担当。各界の精鋭スタッフが参加し、現代の神話の誕生をサポートしている。

ストーリー



関西の小さな町で、代々続く銭湯「ひかり湯」。そこの一人娘が涼(UA)である。涼のあだ名は「雨女」———その身に何かあるときは、空は決まって雨になる。週末に結婚を控えたある日、幸せが手から滑り落ちるように許嫁と唯一の家族である父親が同時にこの世から去ってしまう。その日もやっぱり雨が降っていた。
涼は今や天涯孤独の身。しかし、それは完全な自由でもある。銭湯を売ってもいい、他の場所で新しい生活を始めるのもいい、あるいは死を選ぶのも…涼はしばらく銭湯を閉めて、旅に出ることにする。幼い頃から憧れていた富士を間近で見る旅。銭湯の壁に描かれた富士山は毎日見ていても、本物の富士山を見るのは初めて。そして富士の麓を歩いているうちに、涼は森の奥深くから聞こえてくる音楽に吸い込まれるように中へと入っていく。そこは、一度入ると二度と出られない「樹海」の森だった。その森の奥で、風のように自由に生きる女、ユキノ(HIKARU)と出会う。ユキノの事を色々聞きたがる涼に、「初めて会った人と仲良くしたかったら、名前も過去も、何も聞かないことや」とユキノは答える。2人は森を出て、湖畔を旅しながら仲良くなり、涼は過去の記憶や心の傷を癒し、新しい人生を歩む力を得る。
旅から戻った涼は驚標する。見知らぬ男・優作(浅野忠信)が家に上がり込み台所で悠然と食事をしていたのだ。驚きを隠せないものの、彼の不思議な魅力に惹かれた涼は、亡父の仕事場であった銭湯の釜場で働いてみないかと誘いかける。火を見ると落ち着くという彼にとって、願ってもない安住の場所。
こうして「ひかり湯」は再開される。常連と呼ぶには少し風変わりだが、大地に根を張るように懸命に生きている翠(小川眞由美)も再びやって来るようになった。
名前も過去も問いかける事なく、今この瞬間だけを信じ、自由に生きる日々。平凡な毎日が幸せをもたらし、涼に笑顔が戻った。そんなある日、警官が指名手配のポスターを貼りに来る。その中に優作を発見する涼。「宮澤優作 連続放火魔」。涼は初めて優作の名前と過去を知ってしまう。その夜、不思議にも2人は同じ夢を見た。洗ってもすすっても洗っても落ちることのない優作の全身についた煤。その時、天井からシャワーのような雨が降り出す…
翌朝、2人は燃料のオガ屑を受け取りに、トラックで山の伐採場へ。その森の奥で、全てを知った涼は初めて優作の身体を求める。森の中で、裸で抱き合う2人。やがて雨が降り出し、2人を優しく包み込む。
しかし「水」と「火」のバランスが一気に崩れるように、穏かな日々は不協和音を奏で始めていた。翠が指名手配のポスターに気付いてしまったのだ。翠は自分の娘だと思い込んでいる涼を守るため、狂ったように優作に殴りかかる。必死に止める涼。そして、ふらりと外に出た優作はふと見上げた煙突を上り始めた。真ん中あたりまで来たその時、辺りに雷鳴が轟き、優作の身体を一本の閃光が貫いた。浴室で翠を抱きかかえる涼。窓の向こうで燃え落ちてくる優作と眼が合った。一瞬時間が止まった。見詰め合う2人。しかし、時は再び動き出し、優作は落ちて行った。涼は静かに眼を閉じ、雨を呼ぶ。天は応えて、激しい雨を降らせる。優作の炎はゆっくりと消えていった……

スタッフ

製作総指揮:中村雅哉
製作:河村光庸、猿川直人
プロデューサー:甲斐真樹、根岸洋之
監督・脚本・編集:杉森秀則
撮影:町田博
照明:木村太朗
録音:林大輔
整音:杉山篤
美術:林田裕至
装飾:佐震孝之
衣裳:北村道子
ヘアメイク:市川土筆
助監督:猪腰弘之
俳優担当:田村浩太朗
製作担当:坂口智久
ラインプロデューサー:大里俊博
特機:実原康之
操演:島尻忠次
編集協力:宮田三清、奥原好幸
ビジュアルアーティスト:柳川瀬雅英
銭湯コーディネイター:町田忍
宣伝プロデューサー:小西啓介
協カプロデューサー:山田典子
タイトルテザイン:角田純一
スチール:高柳悟
音楽プロデューサー:金橋豊彦
音楽:菅野よう子
エンディングテーマ:「閃光」(ビクターエンタテインメント)
           作詞作曲歌:UA
製作:株式会社アーティストフィルム、日活株式会社
製作協力:日活撮影所
協力:あおぞらインベストメント

キャスト

清水涼:UA
宮睾優作:浅野忠信
ユキノ:HIKARU
清水忠雄:江夏豊
ヨシオ:大浦龍宇一
仲代:塩見三省
太宰:大久保鷹
製材所の男:流山児祥
若き日の忠雄:川又邦広
銭湯の客:町田忍
少年寺代の優作:樋圭太
聡子の子供:谷崎亜門
少女:杉山りん
安二郎:都家歌六
浪曲爺:松島一夫
煙突掃除人:頭師佳孝
警官:石井光三
聡子:YUKI
翠:小川眞由美

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