原題:The isle

おいで、私の中へ。

2000年ヴェネチア映画祭コンペティション正式出品 2000年モスクワ映画祭:審査員特別賞授賞 2001年ボルト国際映画祭ファンタスポルト:審査員特別賞受賞 2001年ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭:グランプリ受賞

2000年/韓国/ビスタ/ドルビー/90分/R-18 配給:GAGAアジアグループ

2005年03月02日よりDVDリリース 2002年4月20日DVD発売/2002年4月20日ビデオ発売&レンタル開始 2000年8月25日よりテアトル池袋にてロードショー

公開初日 2001/08/25

配給会社名 0025

公開日メモ これは極めて美しく、ポエティックなアートです。しかし、その本質、表現は極めてエキセントリックで無慈悲です。あなたに、この残酷美を覗く心のしたくはありますか——。

解説


これは極めて美しく、ポエティックなアートです。しかし、その本質、表現は極めてエキセントリックで無慈悲です。あなたに、この残酷美を覗く心のしたくはありますか——。
そこは、水にかこまれた、たちこめた霧のなかにある。美しい自然にいだかれた、湖とも入江とも判らぬ不思議なまどろみ。釣り客が泊り込む小屋舟が、点々ともやう風景は、なぜか郷愁を誘うが、この世のものとも思えない。
その釣り場を管理する女・ヒジン。世間との関りを拒むように一言も口をきかず、昼は釣り客をボートで小屋舟に運び、夜はコーヒーと共に身体も売る孤独な女。
男はヒョンシク。浮気した恋人を殺してしまい、自殺の場を求め、世間を逃れてここにきた。哀しくさまよう、二つの心と肉体が、徐々に、かつ急速に求め、むさぼりあうのに時間はかからない——。
ヒジンがおしだまる、という設定でもあり、ハングル語の台詞は極端に少なく、すべては映画が表現しうる最高の映像感覚のなかに凝縮されている。これこそ、本物の映画、映画の官能。ユニークなロケーションとシチュエーションを巧みに活かし、観た事もない興奮に観る者を誘い込む。
水面の上と下に漂う、男と女のエロスとタナトス。夜霧に乗じてしのびよるミステリアス。
人間の情念を冷徹に見つめる、そのエッジの効いた映像は、とりわけヨーロッパで高く評価され、韓国映画としては珍しく昨年のヴェネチア映画祭のコンペティションにも正式出品。ただし、上映途中で嘔吐する退場者や失神者も続出、という怪挙も成す。そのショックが世界を走り、今年に入ってボルト国際映画祭ファンタスポルトでの審査員特別賞受賞や、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭ではグランプリ受賞と、その快挙はとどまるところがない。今春、フランスでの劇場公開でも、熱くデイープに迎え入れられた。
“あなたは三池崇史の『オーディション』とキム・キドクの『魚と寝る女』を観たか”が、今ヨーロッパにおける映画ファンのバロメーターの一つとなっている。
気鋭の映像作家、キム・キドク監督は今作が日本初登場。『シュリ』『JSA』と、ハリウッド的大作エンターテインメントが、世界でメガヒットを記録している韓国映画界で、これが四作目となるキム監督は、常に人間の性、極限の感情をクールに描写するアート系として一目置かれる若手。なるほど、人間の孤独と残酷をこれほど美しく描いた作品は他にない。
言葉の代わりに、妖しくも魅惑的な肉体でスクリーンをおおい尽くすヒロイン、ヒジンを演じるのは、若手インディーズ系監督から熱い支持を得る、『ペパーミント・キャンディ』のソ・ジュン。また、針金細工を好む物静かだが、激情の男ヒョンシクに扮するのは、若手演技派のキム・ユソク。二人の捨て身の挑戦に、あなたのココロとカラダはどんな反応を示すだろう——。
そして、目をつぶってはいけない、エロティックで哲学的な、美しきラスト・シーン。そこは、湖でも入江でもない、究極の水の世界!
男と女は、針金でつながった二匹のサカナだ——。

ストーリー



釣り客を乗せたヒジン(ソ・ジュン)のボートが、水上に点々と浮かぶ小屋舟の間をゆれ動く。ここは魚だけではない、男たちの愛欲の釣り場、世間の逃避場だ。管理するヒジンも、世間との関りを拒むように一言も口をきかず、釣針やコーヒーと一緒に、自分の身体も売ったりする孤独な女だった。
ある日、思いつめた風情の男、ヒョンシク(キム・ユソク)がやって来る。元警官の彼は浮気した恋人を激情のあまり殺してしまい、自らも小屋舟に死に場を求めていたのだ。だが、拳銃のひきがねをひくには、ためらいがあった。
ヒジンは、そんなヒョンシクに同じ種類の人間の匂いを感じ、二人の間に微妙な感情が芽生えはじめる。二人に会話はないが、ヒョンシクは手製の針金細工を贈るような繊細な男。ヒジンはたびたび彼の小屋舟にボートを乗りつけた。ヒョンシクはヒジンの身体を求めるが、彼女は彼の要求だけは拒むのだった。あてつけるように、ヒョンシクは風俗の女、ユンア(パク・ソンヒ)を買う。二人のセックスを覗くヒジンの瞳は、嫉妬の哀しみに濡れていた。
ある時、別件で手配中の犯人を追って、刑事が小屋舟に次々と訊問に来た。もはやこれまで、と覚悟したヒョンシクは、手元にあった釣針の束を飲み込み、自殺をはかる。それをヒジンは身を挺して警察の手から守り、彼の命を救った。一つ一つ釣針を抜く。その激痛のなかで、ヒジンはヒョンシクの股間にまたがるのだった。
一方、ヒョンシクの意外なやさしさに惚れたユンアは、非番の日にやって来た。案内のボートに乗り込む彼女を、ヒジンはしかし、遠く離れた小屋舟に連れ去り、監禁してしまう。身動きとれないユンアは水中に転落する。ヒジンはユンアの乗ってきたバイクも水中に沈めた。戻らない女に怒って、ひもの男(チョ・ジェヒョン)がヒョンシクの元へ殴り込んで来る。争う二人の後から、ヒジンはひも男を水中に引きずり込む。
共犯関係を持って以来、いよいよヒジンの執拗な愛はヒョンシクを苛立たせた。ここを出ようと決意したヒョンシクだったが、ヒジンの自殺未遂に足止めをくう。半身だけそがれ、食われて、水に戻され、泳ぐ魚の姿にヒョンシクは自分を見た。
その頃、若い愛人連れのリッチな中年客(チャン・ハンソン)が高級時計を水に落とし、小屋舟の水底をさらおうとしていた。死体が浮かび上がるのも時間の問題。係留の錨を上げ、小屋舟にスクリュー・エンジンを取り付けたヒジンは、ヒョンシクと共に水の上をすべり出て行く。予想もしない破滅へと向って——。

スタッフ

監督・脚本:キム・キドク

製作総指揮:ソク・ドンジュン
プロデューサー:イー・ウン
プロダクションマネージャー:シン・チョル
助監督:キム・ヒョンソク
編集:キョン・ミンホ
撮影監督:ファン・ソシク
照明監督:シン・ジュンハ
美術監督:キム・キドク
セットデザイナー:オ・サンマン
衣装デザイナー:ジュ・ウンジョン
メイクアップ:ジュ・ウンジョン
ロケーション音響効果:ハン・チョルヒ
音響監督:イー・スン・チョル
音楽:ジョン・サンユン
製作:CJエンタテインメント、ミョン・フイルム

キャスト

ヒジン:ソ・ジュン
ヒョンシク:キム・ユソク
ウンア:パク・ソンヒ
マンチ:チョ・ジェヒョン
リッチな中年客:チャン・ハンソン

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