原題:La Pianiste

2001年カンヌ国際映画祭3部門受賞

2001年/オーストラリア・フランス/132分/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD/ 提供:日本ヘラルド映画、アミューズビデオ、テレビ東京 配給:日本ヘラルド映画

2002年09月27日よりビデオ発売&レンタル開始 2002年09月27日よりDVD発売&レンタル開始 2002年2月2日より正月第2弾よりシネスイッチ銀座にて公開

公開初日 2002/02/02

配給会社名 0058

公開日メモ 『キューリー夫人』など、各国の映画祭主演女優賞を6作品で受賞する名女優イザベル・ユペールが1978年の『ヴィオレット・ノジエール』に続いて2度目のカンヌ映画祭主演女優賞を本作で受賞。

解説


 『ピアニスト』はピアノ教師と年下の生徒の愛が繰り広げられる物語でありながら、その先に描かれる彼女の歪んだ愛に誰もが驚くだろう。その姿は極めて特殊でありながら、しかし規律に縛られた女性だったら、陥るかもしれないと思える程の普遍的な姿を描き、映画『ピアニスト』は2001年カンヌ国際映画祭で最も話題を集めて、見事グランプリ他、主演女優、主演男優賞のトリプル受賞となった。監督に当たるのは日本では本作を含め2作品しか公開されていないが、ヨーロッパでは強い作家性によって巨匠の名をほしいままにしているオーストリア在住のミヒャエル・ハネケ。本作はピアノ以外のことは何も許さない母の束縛によって、恋をしたこともない中年女性の初めての愛と同時に、彼女を愛しても本当の彼女を愛することに悩む男性の葛藤を描いている。愛しても愛することができない二人の切なさは観る者を圧倒し、シューベルト、ショパン、ブラームスの美しい調べにのせて繰り広げられる。主演女優賞、主演男優賞を受賞したイザベル・ユペールとブノワ・マジメルはピアノ演奏もマスターして役を演じ、世界中に感動と衝撃を巻き起こした。

 物語はウィーン。エリカは幼い頃からピアニストになるために母に厳しく教育を受け、恋人をつくることも一度も許されなかった。しかし、母の夢だったコンサートピアニストになれず、現在は名門ウィーン国立音楽院のピアノ科の教授になったことで、自分を責めていた。母はエリカが中年となった今も、彼女を監視し二人で暮らしていた。そんな彼女の前に、才能ある生徒ワルターが、小さなコンサートでピアノを弾き、彼女に恋をする。若いワルターは強引に彼女に愛を求め、いつしか彼女もワルターの姿を追いかけていた。そして、彼女はワルターに誰にも語ったことのない秘密をうち明けることを決意する…。

 エリカを演じるのは『キューリー夫人』など、各国の映画祭主演女優賞を6作品で受賞する名女優イザベル・ユペールが1978年の『ヴィオレット・ノジエール』に続いて2度目のカンヌ映画祭主演女優賞を本作で受賞。ユペールは厳格なピアノ教師とその裏に隠された赤裸々な女性像を、初めてのキスシーンまでノーメークで通し、その後は徐々に明るい口紅の色に変えて演じた。エリカを愛する年下の生徒、ワルターには『王は踊る』のブノワ・マジメル。ジャンヌ・モロー、ナタリー・バイ、ジュリエット・ビノシュ等の名女優達と共演しているマジメルだが、ユペールとの初共演となる本作での磨きがかかった演技力によってカンヌ映画祭史上最年少の主演男優賞受賞となった。彼は絶望的なエリカを優しく、残酷に愛する青年像をつくりあげ、本作に輝きを与えたといえるだろう。一方、病的に厳しくエリカを教育する母役には『若者のすべて』『パリのめぐり逢い』で知られ、今や仏演劇界の頂点に君臨するアニー・ジラルド。エリカに怒り狂う、激しい母役を体当たりで演じ、観客を驚かせた。その他、エリカの音楽学校の主任教授にはドイツ演劇界を代表する俳優兼演出家ウド・ザーメル。教授の妻には『カフカの城』『ファニーゲーム』でハネケ監督作品に常連のスザンネ・ローター等が顔を揃えた。

 監督・脚本は日本での公開作品は『ファニーゲーム』に次いで本作が2作目にあたるが、ヨーロッパの俳優たちが出演を最も熱望する監督の一人と称されているミヒャエル・ハネケ。ハネケ監督は1989年『セブンス コンチネント』で映画監督デビュ−。『ファニーゲーム』はカンヌ映画祭コンペ部門招待作品、ジュリエット・ビノシュ主演の『コード アンノウン』は、2000年カンヌ映画祭エキュメニック賞受賞となり、次々と現代社会の奥に潜む「危うさ」を独特な映像と演出で鋭く描き続け、大きな評価を受けている。本作では社会の規律に縛られ、自分を見失っていく現代女性を暴き、カンヌ映画祭で大きな話題を呼んだ。本作の原作となったドイツの文学賞受賞の作家イェリネクが出版した自伝と噂される同名の小説は、その壮絶な物語にポルノ論議が巻き起こったが、これを読んだハネケ監督は映画化を15年間熱望して監督、脚本を担当した。本作で演奏される曲は『バルタザールどこへ行く』でも使われた「ピアノ・ソナタ 第20番イ長調 第2楽章 アンダンティーノ」はワルターを演じるマジメル自身が演奏し、『バリーリンドン』でお馴染みの「ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調」も印象的に使われ美しい。トイレで初めて二人が口づけを交わすシーンではバッハ作曲「ブランデンブルク協奏曲 第4番 ト長調」がヘルムート・ミュラー=ブリュール指揮、ケルン室内楽団によって演奏されている。そして、それまでのクラシック音楽と一変しての長い無音によるラストシーンは息をのむ緊張と感動で包まれるだろう。

ストーリー

 ある日、エリカの前に一途に恋する青年が現れた・・・。
 エリカは子供の頃からピアニストになるために、母から遊ぶ時間など許されず厳しく教育されていた。現在は名門ウィーン国立音楽院のピアノ教授となっているが、母の夢だったコンサートピアニストになることはできず、自分を責めていた。父を精神障害で幼いときに亡くし、今は母と二人きりで暮らしている。彼女は、母親の支配から逃れるために、ひそかにポルノ映画館やのぞき部屋に通っている。彼女は今まで一度も異性に触れさせられた事はなく、潔癖性が発展した病的なのぞき趣味と、マゾヒズムの世界に生きてきた。
 ある日、小さなコンサートでピアノを弾いた青年ワルターが、エリカに恋をする。エリカは彼の強い視線を感じ、いつしか彼女も彼に惹かれていく。そして、レッスンが終わってから跡を追い、彼がアイスホッケーの練習にも打ち込んでいることを知る。ワルターは音楽院の大学院を受験するが、エリカだけが彼の年齢が高すぎると入学に反対する。しかし、他の教授たちが彼を推薦し合格となる。

 その頃、学内のコンサートでの演奏に緊張する女子学生アンナに優しく話しかけるワルターを見て、エリカは無性に苛立つ。エリカはアンナのコートのポケットにガラスの破片を忍び込ませる。彼女は指を切って休学となった。その事件を見ていたワルターはエリカが犯人だと気づく。その現場から「血が嫌いなの」といってトイレに立ち去るエリカを、彼は追いかけて愛を告白する。そして、二人は口づけを交わす。しかし、若いワルターの求愛をエリカは応えずに、下半身だけを求める。そのアブノーマルなエリカの姿にワルターは戸惑いながらも、受け入れるしかなかった。

 個人授業でショパンを弾く彼にエリカは長い手紙を渡す。帰宅した彼女を待ち受けていたワルターは母が止めるのも聞かずに彼女の部屋に閉じこもり手紙を読み上げる。そこに書かれていたのは彼女の孤独な叫びと共に、彼女のマゾフィティックな性の秘密が書かれていた。驚くワルターは彼女の家をでていく。彼に嫌われたことにエリカは動揺し、アイスホッケーの練習場で「愛している。あなた好みの女になる」と告白をするが、エリカ流の愛し方をワルターは、どうしても受け入れることはできない。思い悩んだワルターは在る決断をする。深夜、エリカの家を訪れたワルターは不本意ながら、彼女の求める通りの乱暴な愛を交わす。エリカは初めて官能に酔いしれながら、同時に彼の深い悲しみを感じる。そして、翌日顔を腫らしたエリカがコンサート会場に現れ、彼の来場を待ち続ける…。

スタッフ

監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
製作:ナタリー・クリュテール/クリスティーヌ・ゴズラン
撮影:クリスティアン・ベアガー
美術:クリストフ・カンター
衣装:アンネッテ・ボーファイス
原作:エルフリーデ・イェリネク(鳥影社刊)
配給:日本ヘラルド映画

キャスト

イザベル・ユペール
ブノワ・マジメル
アニー・ジラルド
アンナ・ジーガレヴィッチ
スザンネ・ローター
ウド・ザーメル

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