原題:The Turandot Project

オペラに携わる人々の夢のプロジェクトに チャン・イーモウが初挑戦!

2000年/アメリカ・ドイツ/カラー/85分/ビスタサイズ/ドルビーSR/字幕:戸田奈津子/ 配給:東京テアトル、メディア・ボックス

2004年01月23日よりDVDリリース 2004年01月23日よりビデオリリース 2001年3月30日よりシネセゾン渋谷にてロードショー公開

公開初日 2002/03/30

配給会社名 0049/0099

公開日メモ 世界を驚かせたチャン・イーモウの『トゥーランドット』は、壮大なファンタジー1998年、北京の紫禁城そのものを舞台に『トゥーランドット』が上演され、そのあまりにも美しく壮麗な演出が、全世界を驚かせた。この時もメータの指揮のもと、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団が演奏し、中国の映画監督チャン・イーモウが演出を担当した。

解説


オペラに携わる人々の夢のプロジェクトにチャン・イーモウが初挑戦!
一九九八年九月五日、オペラ史と映画史に偉大なる足跡を残す一大イベントが幕を開けた。伝説時代の中国の美しい王女と、彼女の愛を得ようとする求婚者たちの運命を描いた、プッチーニの最後にして壮大なオペラ『トゥーランドット』が、物語の舞台である北京の紫禁城で初めて上演されたのだ。紫禁城とは、一四二〇年に建設された明王朝の第三代皇帝の居城である。国の貰重な歴史遺産であり、おいそれと借りられる場所てはない。現に、あのカラヤンが企画しながらも成し得なかった夢のプロジェクトなのだ。
 指揮をとったのは、フィレンツェ歌劇場の主席指揮者ズービンメータ。彼のたっての類いで、今や世界中でその名を知られる中国を代表する映画監督、『紅いコーリャン』『あの子を探して』『初恋のきた道』のチャン・イーモウが演出を手がけることになった。チャン・イーモウが欧米のオペラを演出するのは初めてだったが、中国の才能と文化を世界に示したいという熱い思いから、このプロジェクトに挑戦することを決めた。
 また、主役級の歌手はトリプル・キャストで上演され、ジョウァンナ・カゾッラ、セルゲイ・ラーリン、ハーハラ・ヘンドリックスら一流歌手が顔を揃えた。その結果、全八回の公演で世界各国から三万二千人もの観客を動員、大成功を収めた。

さまざまな困難を乗り越え、芸術に命をかけた人々の美しさ情熱
 本作『トゥーラントット』は、この歴史的一大イベントの舞台裏を、アラン・ミラー監督が克明に追ったドキュメンタリーである。アラン・ミラーは、世界各国の音楽イベントのドキュメンタリー映画を監督し、アカデミー賞ドキュメンタリー部門で二度の受賞に輝いている。彼が映し出すのは、大成功の影のさまざまな困難と、それを乗り越えていく人々の情熱だ。
ズービン・メータは、あらゆる人脈を駆使して紫禁城上演の許可を取り付けたが、本当の困難はそれからだった。チャン・イーモウとスタッフたちが、ます直面したのは、紫禁城という広大な「舞台」をどう作り上げるかという問題だった。莫大な製作費を投入して数々の舞台装置が新たに作られると同時に、舞台を埋めるため、何百人ものエキストラが集められた。次は技術面の問題だ。紫禁城に電源や照明の設備があるはずもなく、技術スタッフのアイディアと様々な工夫が凝らされ徐々に舞台が出来あがっていった。そして、最後に残ったのが一番やっかいな問題−−言語や文化の違いから生じた、チャン・イーモウとヨーロッパ人スタッフたちとの対立だった。中国文化に強くこだわったチャン・イーモウは、全て手作りの明朝時代の衣裳9000着を追加。しかしその衣裳は本物ゆえに歌手の動きに負担をかけた。色鮮やかな衣裳の美しさを表現したいチャン・イーモウと舞台の陰影を強謝したい照明監督との対立カメラが容赦なく暴く現場の素顔は、まさに闘いの連続だった。
 しかし、ズービン・メータとチャン・イーモウの情熱があらゆる困難を次たと克服し、ついに初日を迎えるシーンでは、芸術にかける人間の崇高なまでの美しさが観る者に深い感動を与える。西洋のオペラと東洋の伝統が、最後には手を結び、見事に融合したのだ。

ストーリー


プッチーニのオペラ『トゥーランドット』を、その舞台である中国の芸術家に演御してもらいたい。全てはフィレンツェ歌劇場の主席指揮者、ズービン・メータのこのシンプルな望みから始まった。彼は『紅夢』を観て感動し、チャン・イーモウに演出を依頼する。チャン・イーモウは欧米のオペラの演出は初めてだったが、「中国人は素晴らしいということを世界に示したい」と快諾した。そして、一九九七年五月にフィレンツェ五月音楽祭で上演、ヨーロッパの観客は衣裳や小道具の全てが”本物”の『トゥーランドット』に熱狂した。
 この成功に自信を得た製作総指揮のマイケル・エッカーは、ズービン・メータに”オペラに関わる者の夢–『トゥーランドット』の北京紫禁城公演”を持ちかけ、メータはその実現のため中国へ飛んだ。何ヶ月にも及ぶ中国政府との折衝の中では、中国に批判的な映画を撮っていたチャン・イーモウの演出に難色を示す声もあった。最終的に文化大臣がメータに、「あなたを信頼する」と発言、メータは「インド産の珍しいマンゴーを贈ったからかな」とふざけてみせる。
 しかし、本当の困難はそれからだった。まず舞台装置が、広大な紫禁城に合わせて作り直された。さらにチャン・イーモウはあらゆる細部にわたるまで、徹底的にこだわった。中でも決して妥協しなかったのは時代考証だ。衣裳、小道具は全て、北京の都が作られた明の時代に合わせられた。新たに作られた衣裳は900着、細かい刺繍から縫製まで全て手作りで、四ヶ月かげて作られた。中国のオペラ歌手、京劇のタンサーが抜擢され、中国人スタッフも数多く採用された。
軍隊からも300人の兵士を古代の兵士として舞台に立てるよう特訓、歌手の歌声を「牛の鳴さ声のよう」と言っていた兵士たちが、「オペラファンになった」と最後には胸を張った。
主役級の歌手はトリプルキャスト。世界中の一流歌手が
顔を揃えたが、初日が近付くとナーバスになる歌手もいる。
「オケが聞こえなくて歌えない」「こんな醜い冠、かぶりたくないわ」。そして、照明監督のグイド・レヴィとチャン・イーモウの対立。イタリアオペラでは照明を暗くして舞台に陰影をつけるのが常だが、チャン・イーモウは、舞台全体を煌煌と照らし、チャン・イーモウの映画でも特徴的な燃えるような赤を生かした色鮮やかな衣裳と、舞台装置を観客に堪能して欲しいと思っていた。映画監督はオペラのことを何もわかっていないと言い放つグイド・レヴィに根気よく話し合いを続けるチャン・イーモウ。
ゲネプロも雨で中止になってしまうなど、まだまだ続くトラブルの山を乗り越えながら、それでも前に進むチャン・イーモウとスタッフたち。そしてついに、オペラ史上、永遠に残るであろう『トゥーランドット』北京紫禁城公演の初日を迎えた。

スタッフ

監督:アラン・ミラー
製作:マーガレット・スミロウ
製作総指揮:ウォルター・シューア、マーガレット・スミロウ
共同製作:ソノコ・アオヤギ・バワーズ、バーバラ・ロビンソン
編集:アラン・ミラー、ドナルド・クロチェク
撮影:トム・ハービッツ
録音:ピーター・ミラー、トム・マーチンズ

キャスト

ジョヴァンナ・カゾッラ
セルゲイ・ラーリン
バルバラ・フリットーリ
指揮:ズービン・メータ
オペラ演出:チャン・イーモウ

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