原題:GINGER SNAPS

殺しはセックスと同じ。途中で止められない…

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001出展作品::http://www.nifty.ne.jp/fanta/yubari/ 2001年ロッテルダム映画祭上映作品

2000年/カナダ映画/109min 発売:ANEC/販売:グルーヴコーポレーション(DVD税抜4,700/ビデオ税抜:16,000)

2001年7月25日DVD発売/2001年7月13日ビデオ発売&レンタル開始

解説



狼男の伝説は、世界でもっとも歴史があり有名な迷信のひとつ。
ヴァンパイアー、魔女、幽霊などといった伝説とともにその歴史を何千年もさかのぼる。
時代がどんなに変わっても、未開の場所同様、世代から世代へ、人々を怖がらせてきた。

カレン・ワルトンとジョン・ファーセット共同制作によるストーリーをカレン・ワルトンにより脚色。『ジンジャー・スナップ』はスティーヴン・ホーバンとカレン・リー・ホールの共同製作、ジョン・ファーセット監督によって映画化された。出演はモンスターに変貌を遂げていく恐れに悩まされるジンジャーをキャサリン・イザベル。その姉を救おうと危険に身をさらす妹ブリジットをエミリー・パーキンスが演じ、美しい姉妹が伝説の怪奇の世界に翻弄される様を、フレッシュかつ妖艶にみせてくれる。

中世より血への渇望と制御不能の欲望により受け継がれてきた、悪魔の召使として知られる狼男の伝説は真実と信じられ、多くの人々が狼男として処刑された。狼男の伝説を取り上げ、現代風にアレンジを加えたこの映画は、血液または性的感染によって生物的かつ致命的な感染体として、恐れられている狼男の呪いを恐れる十代の少女の孤独をうまく描写している。
徐々に起こる体の変化に恐怖と混乱がない交ぜになったジンジャーは、その秘密をひた隠しにする。そのため、彼女を慕う妹ブリジットは、クリス・レムチェ演じる独り者のサムに助けを請う。

ユーモア溢れる、彼女ら姉妹の母親を演じるのはミミ・ロジャース。不遇の生活指導相談員を演じるピーター・ケルガン、ジンジャーに挑みかかる際、意外な力を発揮する小生意気な少女を演じるダニエル・ハンプトンらが脇を固めている。

また、1999年の劇場大ヒット作『キューブ』の監督ヴィンセント・ナタリも協力としてクレジットに名を連ね、まさにカナダのインデペンデント映画界の頭脳を結集した作品といえる。

【チェック・ポイント!】

 これまで少女と狼というテーマの作品としては、『赤ずきん』の童話をモチーフに人狼ものの要素を加えた『狼の血族』(84年)があった。ファンタジー&SF作家アンジェラ・カーターの原作を、原作者とこれが出世作となったニール・ジョーダン監督が脚色したこの作品は、同時期に製作された『ハウリング』や『狼男アメリカン』とは一味違ったSFX(変化していくというより、皮を破って狼が出てくるイメージ)と神秘的な雰囲気を醸し出す奥深き森のセット、そしてサラ・パターソン演じる赤ずきんロザリーンの思春期特有のセクシャルな幻想が印象的なダーク・ファンタジーだった。『ジンジャー・スナップス』は、この路線の最新作だが、主人公の少女たちのキャラクターが、実に現代的で面白い。
 16歳のジンジャーと15歳のブリジットの姉妹は、「自殺って究極の快感よね」と嘯き自分たちが自殺した姿のフェイク写真を課題として提出するような少女たち。学校や周囲には馴染め(ま)ないけど、我関せずと自分たちの世界を作っちゃってるような、そう今夏公開予定の『ゴースト・ワールド』の少女たちに近いような存在だ。
 そんな彼女たちが住む小さな町で起きる連続ペット殺害事件。町を徘徊する謎の野獣。そして、16歳にしてようやく初潮を迎えたジンジャーは、その夜その野獣に襲われ傷ついてしまう。このときから、彼女の中で獣が目覚めていく。
 傷ついたジンジャーは、この時呪われた血を受け継いでしまうのだが、その変身の周期は女としての生理の周期と重なっている。このためクライマックス直前までは完全な人狼への変身はせずに、徐々に変化していく身体(最初はお尻にちょこんとはえ、そしてトランクスの裾から先がのぞく長さに成長していく尻尾が妙にエロチック)と、エキセントリックな言動によって、性と血への渇望が綯交ぜになっていく様子が、思春期の鬱屈し不安な心情とともに描かれていく。また、人狼化抑制のために銀のピアスを用いたり(苦痛に牙を剥き耐えるあたりは、『バタリアン・リターンズ』をちょっと髣髴とさせる)と、人狼もののお約束もちゃんと押さえられている。そして、クライマックスは完全な人狼ホラーとして、姉妹によるモンスター・バトルだ。それまでの、展開とはちょっとトーンが変ってしまうが、特撮の見せ方も悪くないので飽きさせないぞ。
 なお、『CUBE』の監督でもあるヴィンセント・ナタリが、ストーリー・ボードと協力としてクレジットされている。(殿井君人)

ストーリー



15歳のブリジット・ファッツァート(エミリー・パーキンス)と彼女の姉、16歳のジンジャー(キャサリン・イザベル)は一風変わっていた。そして自分達の住むベイリーダウンズでの退屈な生活に死ぬほどうんざりしていた。いつも二人で行動していた彼女達は、少女期に見られる特有の、“死”に取りつかれ、“生涯、死さえも共にしよう”という契りを交わす。ある夜、彼女らは気に入らないクラスメートへの悪戯を企み、郊外へと向かう途中、とある森にさしかかる。そして、そこでジンジャーは奇妙な獣に襲われ、傷を追う。

奇跡的な勢いで治癒していく傷。けれども、何かがおかしい。苛つき何かにつけ否定的になるジンジャー。何かに取り憑かれているのか?今までと違う姉に戸惑うブリジット。傷跡から生える毛。背骨の付け根から現れる尾っぽ。
「姉は狼に変わりつつある…」

飢えたように血を求め、徘徊するジンジャー。血を得るためにはなりふりかまわなくなり、攻撃的な少女へと変わっていく。徐々に蝕まれていく姉に心を痛め、必死に救おうとするブリジット。彼女はアマチュアの植物学者でもあり、マリファナのディーラーでもある正体不明の男サムに助けを求める。彼らは協力して、ジンジャーの体に取り付き、蝕んでいくものを退治する方法を探し始める。

ジンジャーは、助けを請うたかと思うと、はたまた彼女を裏切り者と罵倒する。徐々に、そして確実に、ぞっとするような変貌を遂げていくジンジャー。奪われていく理性。ジンジャーの野蛮な行動は、次第にエスカレートしてゆく。一方ブリジットは姉を守ろうとするあまり、犯罪に手を染めていく。

あの夜の深い森の中から始まった忌まわしい出来事。
ハロウィンの夜、理性をなくし、獣のように、殴り合うブリジットとサム。先が見えず、救いのない諍いの末、ブリジットは悟ったのだった。この事態を終わらせるには…ジンジャー、姉を“退治”するしか方法がないと…。

スタッフ

監督:ジョン・ファーセット
脚本:カレン・ワルトン
製作:スティーヴ・ホーバン、カレン・ワルトン
撮影:トム・ベスト
プロダクションデザイナー:トッド・カミンスキー
編集:ブレッド・サリバン
特殊効果:ポール・ジョーンズ
コスチューム・デザイン:リア・カールソン
音楽:マイケル・シールズ
スタント・コーディネーター:シェリー・クック

キャスト

ブリジット:エミリー・パーキンス
ジンジャー:キャサリン・イザベル
パメラ・フィッツアート:ミミ・ロジャース
サム:クリス・レムチェ

LINK

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