原題:The American Nightmare

2000年トロント国際映画祭出品 2001年ベルリン国際映画祭出品

2001年2月9日全米公開

2000年/アメリカ・イギリス/カラー/上映時間:1時間13分 提供:アルバトロス・コア 配給:アルバトロス・フィルム

2002年3月8日DVDレンタル開始/2002年3月8日ビデオ発売&レンタル開始 2001年9月29日より俳優座トーキナイトにて公開

公開初日 2001/09/29

公開終了日 2001/11/16

配給会社名 0012

公開日メモ ジョージ・A・ロメロ、トビー・フ一パー、ウェス・クレイヴン、デヴィッド・クローネンバーグ、ジョン・カーペンター、ジョン・ランディスといった監督たちと特殊効果のパイオニアであるトム・サヴィーニによる証言あるいは映画研究者たちの分析、そして歴史に残るホラームービーのシーンやニュースフィルムの映像などでその答えを丹念に探ってゆく、類い稀なドキュメンタリー映画

解説


60年代から70年代にかけてのアメリカン・インディペンデント・ホラー・ムービーは、何十年ものあいだ映画ファンを怖がらせ、そしてまた魅了し続けてきた。そう、たとえば『悪魔のいけにえ』!『ハロウィン』!『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』!『鮮血の美学』!『ラビッド』!e.t.c.!心臓が高鳴り、思わず目を覆い、身が竦んだ。いつまでも瞼に焼き付く衝撃のシーンの数々……。その怖さ、面白さはいまだ色あせることがない。それまでのホラー映画にはなかったあの特異な恐ろしさの原点は何なのか。本作は、ジョージ・A・ロメロ、トビー・フ一パー、ウェス・クレイヴン、デヴィッド・クローネンバーグ、ジョン・カーペンター、ジョン・ランディスといった監督たちと特殊効果のパイオニアであるトム・サヴィーニによる証言あるいは映画研究者たちの分析、そして歴史に残るホラームービーのシーンやニュースフィルムの映像などでその答えを丹念に探ってゆく、類い稀なドキュメンタリー映画である。監冒アダム・サイモンはアメリカン・ホラーの発芽期を克明に追い、あの戦慄が産み落とされた「時代」を語り、真実のアメリカの歴史をあぶり出した。映画史に残る傑作を生んだ監督たちが目にした現実とは何だったのか。そして、ホラーの作り手たちを駆り立てたものは何だったのかをこのドキュメンタリー映画は知らしめる。そして、70年代のホラー映画が、まさに時代を写す鏡でもあったことに気づいたとき私たちの恐怖はさらに深くなるだろう。

ストーリー



キング牧師の暗殺とケネディ暗殺という象徴的な事件が起こったとき、ロメロは「もろさということを知った、国のもろさを」という。そしてジョン・ランディスは.『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』(ジョージ・A・ロメロ監督/1968年)が、「現実感を取り入れた最初のホラーだった」と語っている。たとえばラストで警官たちがソンビを追い詰めてゆくシーンでは.太った白人が非暴力の黒人をいたぶる姿がテレビ画面に映し出されたときの恐怖を思い起こさせたと。そして、ベトナム戦争の泥沼化。アメリカという「希望」や「夢」や「自信」を打ち砕く出来事が次々と起こった時代。当時の暗澹たる空気について、監督たちはそれぞれに、まるで悪夢を思い出すかのように、苦痛の表情をうっすらと浮かべながら語っている。呪われた運命に翻弄されていた。そんな時期が続いていた」「出口が見えない時代だった」「同じ恐怖を描いていたのかもしれない」。トム・サヴィーニがべトナムに出征したときの恐怖体験を語るシーンは圧巻だ。
転がる死体をカメラのレンズ越しに見たとき彼は、「どう描けば怖くなるか感覚的にわかった」。しかし「ほんとうはあの恐怖を伝えることは不可能だ」。
アメリカの夢も品位も覆されるような事件が連日報道されるなか、その暴カ性が映画に反映されていった一方で、70年代のホラー映画には60年代から70年代の性革命も強く影響を及ぼしているという。この時代の性について多くを語るのはクローネンバーグである。「セックスという行為には政治的な意味も含んでいた。肉体的行為以上の意味があったんだ。わたしは肉体への回帰を重視する。そして私は美しさと危険性の共存、醜さと美しさの共存を描いている」。クローネンバークは、『デビッド・クローネンバーグのシーバース』や『ラビッド』といった初朋の作品でホラーと異常な性的行為をミックスさせ、ウッドストック世代によって確立されたセクシャルな自由=フリーダムを賛えた。「それは美しくもあり、恐ろしくもあった。解放のエネルギーだった。それまで閉じ込められていたものに対する可能性がどんどん開かれていったのだから」。この自由はしかし、早熟な10代の少年少女たちがセックスや酒に耽ったあげく制裁される、ジョン・カーペンターの傑作『ハロウィン』をもって背筋も凍るような終焉を迎えることになる。70年代のあけっぴろげな風潮を終わらせたことに対してカーペンターは言った。「撲はセクシャル・レボリューションを終わらせたつもりはないが、そうだったとしたら謝るしないな!」
終わらないかと思えた悪夢も、70年代の後半にほ一転する。「人々は50年代の価値観を拒否し、新たな理想を求めた」「驚くほど自由な感覚と米国の枠紀みを変えようという空気に満ちていた」「人類の文化が進化している気がした」と、監督たちは口を揃える。さまざまな価値観が揺れ、急速に変化していった時代。変革期には、得体の知れないエネルギーが生まれ出るものだ。それが、70年代アメリカンホラーを屹立させているのだろう。『ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』にはじまり昨今の『スクリーム』『ブレア・ウイッチ・プロジェクト』にいたるホラー映画史のなかでも、アメリカ70年代のホラー映画が燦然と輝いている理由のひとつについて、インディペンデント・フィルム・チャンネル(IFC)の社長ジョン・サーリングはこう語る。「70年代というのはロメロやクレイヴン、クローネンバーグといった、若く才能のある一匹狼たちがホラーというシャンルの慣習を打ち破った時代なんだ」
アメリカには自意識過剰といってもいいほどの、自国への信頼、自信、理想、そして夢がある。だからこそ、それが覆されたときの失望もまた深く、暗い影を刻印するだろう。それがアメリカのホラーにいっそうの激しさをくわえているという、クレイヴンの言葉が印象的だ。

スタッフ

監督・脚本:アダム・サイモン
編集:ポール・カーリン
撮影:イモ・ホーン

キャスト

ウェス・クレイヴン
ジョージ・A・ロメロ
トビー・フーパー
トム・サヴィーニ
ジョン・ランディス
ジョン・カーペンター
デヴィッド・クローネンバーグ

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