原題:DARKNESS & LIGHT 黒暗之光

らくちんじゃない毎日だけど、家族は勇気をくれました。恋には夢をもらいました。 海と空に包まれたいつもの夏は、大好きな人たちがいた一番大切な夏になりました。

1999年 東京国際映画祭 東京グランプリ、東京ゴールド賞、アジア映画賞 受賞 2000年 シンガポール国際映画祭 グランプリ、最優秀アジア映画賞、 国際批評家連盟賞 受賞 1999年 カンヌ国際映画祭 監督週間正式出品

1999年/台湾映画/チャン・ツォーチ・フィルム・スタジオ 102min/カラー/ヴィスタ/ドルビーSRD/日本語字幕:小坂史子 配給:ビターズ・エンド

2005年03月02日よりDVDリリース 2001年3月17日DVD発売/2001年3月17日ビデオ発売 2000年9月30日より銀座シネ・ラ・セットにてロードショー! 他、全国順次公開

公開初日 2000/09/30

配給会社名 0071

解説

《監督のチャン・ツォーチの“闇”と“光”が奏でる、生命力への讃歌》
チャン監督が常に注目するのは、“生きること”を一番に考えている人たちだ。彼は社会の片隅で生きる人々の、屈することのない生命力に強く惹かれ、それを描きたいという。監督第三作目となる今回、初めて少女を主人公に迎え、ラブ・ストーリーにも挑むという新境地を開拓しながらも、その基本は変わらず、不況の下町に生きる障害者の家族という究極の舞台を選んでいる。そして、目の見えない人たちがそれ程光を意識していないかの様に、極限まで光量を落とし、また、彼らの世界を表すように音だけが聞こえる暗転画面を取り入れている。監督によれば原題『ダークネス&ライト/黒暗之光』には、視覚的な意味だけではなく、“闇”があるからこそ“光”が見えるという意味も込められているという。そして、人生の“光”が生の喜びだとするなら、この作品は生に表裏する死という“闇”をも同時に見つめているといえるだろう。このいくつもの“闇”と“光”の層が、現代台湾でひたむきに生きる人たちを包み込み、私たちのイマジネーションを喚起させる。深い藍色の闇の中に生きる人間の輝きと、独特のエンディングは見る者の心に心地よい余韻を残すだろう。『悲情城市』(ホウ・シャオシェン監督)の助監督を務め、台湾ニューウェイブ的人間描写と写実美学を受け継ぐ正統派でありながら、チャン・ツォーチは少女の成長を通して、それを独自の深遠な愛情と希望の世界に昇華させ、新世代作家の誕生を鮮やかに告げる。

ストーリー

台北の大学は夏休み、17歳のカンイは、両親と弟のアギィ、そしておじいちゃんが住む基隆に帰省している。台北から車で小一時間、台湾語が飛び交うこの小さな港町は、数年来の不景気のあおりを受けている。カンイの父親は数年前の交通事故で目が見えなくなり、母親はその時に死んでしまった。父親は盲人の後妻をもらい、二人でマッサージ院を開いて、カンイを大学にやりながらアギィを育て、なんとか生活している。カンイはちょっと気が強くて、アギィは他愛ない口喧嘩ではいつも負けてしまうけど、二人は仲のいい姉弟だ。
カンイの部屋の窓からは基隆の港が一望できる。空の光に反射して夕暮れは紫に、夜になると藍色に変わる海の美しい眺めは、カンイの心を安らげる。この窓辺は彼女が幸せな空想を楽しむ大切な場所。海に見たてた窓ガラスには、窓辺の水槽から抜け出した亀が描かれている。カンイは毎日日記をつけ、ちょっと違う自分になりたい時にはかつらをつける。

義母は、リスナー参加のラジオのカラオケ番組で歌うのが好きで、その美声は玄人はだしだ。でも、体調の悪い夫にあまり仕事をさせまいと、最近は歌っている時間もない。

アギィは、今日も窓辺で電話ごっこをしている。同じアパートに住むやくざのソンの息子、アワンが親友で、いつも一緒に遊んでいる。ソンはカンイの両親が開業するときに資金を出してくれたり、何かと面倒を見てくれている。
みんなで食事に行くことになった。カンイが先頭になり、両親、その後を三人の目の見えないマッサージ師たちがつながって出かける。おじいちゃんが最後尾で見守り、アギィはふらふらと側を歩く。いつもの風景に近所の人たちも気軽に声をかける。
高校の時の元クラスメイトのアリンはカンイに好意を寄せているが、何度断ってもあきらめないアリンにカンイは冷たい。アリンの母はやくざの大姐で、ソンの組とは一触即発の関係だ。

ソンのもとに、アピンという18歳の少年がやってきた。兵役中のソンと知り合った彼の父親は、妻であるアピンの母親が亡くなった後、一人大陸へ帰ってしまった。置き去りにされたアピンは、淋しさから無茶をして軍の学校を退学になり、ソンだけが頼りだった。台湾語がしゃべず“外省”と差別されるアピンにとって、基隆は住み難い街だ。
ソンがアピンを連れて、カンイの家にマッサージに来た。ソンの部屋を尋ねられたときからアピンが気になっていたカンイは再会を喜ぶ。

アピンは大姐の手下のいざこざに巻き込まれ、警察に連行される。所長のグゥは、“外省”のアピンが気に入らない。ソンと大姐が警察に呼ばれ、その場は丸く収まるが、むしろグゥは根お事態にほくそえんでいる。アリンはアピンの存在が気にかかる。

カンイはアピンをデートに誘い出す。基隆のナイト・マーケットを案内し、港を見下ろす歩道橋で夜通しおしゃべりをする。その間に、アギィはアワンと二人でカンイの日記を盗み読みし、思ったとおりカンイがアピンに恋していることをつきとめ、ちょっと得意げだ。朝になり、知り会いのおじさんに頼んで船に乗せてもらうカンイとアピン。その帰り、二人は初めてキスをする。
両親は寝ずにカンイの帰りを待っていた。海に入ってずぶ濡れのカンイを叱りつけると、アギィが「姉さん、フォーリンラブだから叱らないで」と庇うが、それを聞いて父親はますます心配になる。そんな父親の気持ちをよそに、カンイはアピンとの次のデートを想像して楽しんでいる。
アリンはカンイを食事に誘う。二人が口論になっていると聞き、様子を見に来るアピン。アピンが止めに入るが、カンイはアリンと彼の友達に胡椒をぶちまけ、喧嘩別れしてしまう。それを知った大姐の手下たちは、アピンがアリンからカンイをとったと、アピンの兄貴分のアミンに言いがかりをつける。
体調の変化に、死期が近いことを感じた父は、カンイに台北に連れていってほしいと頼む。父親が母親との思い出の場所である地下道に行きたいのだと悟るカンイ。台北に着き父親は地下道の中の音を聞いて、昔と同じだと満足する。二人が戻って来ると、行き先を知らなかったおじいちゃんがひどく心配して待っていた。気がつくとアギィがいない。アリンがアギィを連れ出したと聞いたカンイは、あわてて弟を探しに飛び出る。
カンイはアリンと友達がいるバスケットボール場に怒鳴り込んだが、アリンたちはアギィのことなど知らないと言い張る。食い下がるカンイを、アリンの友達の一人が乱暴しようとし、見かねたアリンが止める。そのことを知った父親は、また心配して叱る。アギィはいつの間にか戻り、カンイを気遣っている。

アリンの母の手下たちとアミンたちが、グゥ所長の同席のもと倉庫に集る。アピンが引き起こした問題の話をつけようとするが、グゥはこれを機に二つの組に争わせよとしている。アピンの杯を受けずにグゥが立ち去ったのをきっかけに、話し合いの場は一転乱闘になる。斬られたアピンは、夕暮れの空を見上げ、最後の孤独な笑顔を浮かべ死んでゆく。
アピンを探しにきたカンイは、彼の荷物が全て運び出されるのを見て、アピンが死んでしまったことを悟る。静かに階段を降りてゆくカンイの後ろ姿は、悲しみを抑えている。
父親がとうとう倒れ、救急車で運ばれる。一晩中父親の側を離れず、見守るカンイ。家族は植物人間になってしまった父親の、安楽死の同意書にサインをする決心を固める。父親を連れ帰り、父親の髭をそってあげるカンイ。「お父さん、今から管を外すから」と最後に声をかけ、泣くのを懸命に我慢しながら、そっと人工呼吸器を外す。通夜にはソンもやってきた。

アギィは自分では姉を元気にしてあげられないことにがっかりしている。彼は窓辺で、もういないアピンに電話をかけ、寂しがっている。
お盆の燈篭を飾り、線香を焚きお祈りをして、死者を迎える準備をするおじいちゃん。花火の音を聞き、食卓の準備を止めて、窓辺に歩み寄るカンイ。楽しそうに花火を見上げ、父とアピンのことを思う。もう一度、みんな一緒に食卓を囲むことを夢見ながら、カンイの夏はもうすぐ終わろうとしている。

スタッフ

監督・脚本:チャン・ツォーチ
プロデューサー:ルー・シイユェン
撮影監督:チャン・ツアン
照明:ディン・ハイド
編集:チャン・ポーウェイ
美術監督:リー・フーション、ホー・クンチェン
音楽:チャン・イ

キャスト

カンイ:リー・カンイ
アピン:ファン・チィウェイ
父アシュウ:ツァイ・ミンショウ
アギィ:ホー・ホアンジ
義母バオフェイ:シイェ・バオフェイ
祖父:ルー・イン
ソン:リァオ・チィド
アミン:チャン・ミン
アリン:デン・ヨンリン
グゥ所長:グゥ・トンチュン

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