原題:La balia

日本におけるイタリア年イタリア映画祭2001「イタリア旅行」90年代秀作選

1999年カンヌ映画祭出品

1999年/106分 主催:朝日新聞社、テレビ朝日(東京のみ)、開催会場、イタリア・シネマ(イタリア映画海外普及協会) 後援:日本におけるイタリア年財団、イタリア大使館、イタリア文化会館ほか 協力:(財)国際文化交流推進協会ほか

会期・会場:(2001年末まで全10会場) 2001年4月28日(土)〜5月6日(日)有楽町朝日ホール/ 2001年5月11日〜13日東北福祉大学/ 2001年5月16日〜19日高知県立美術館/ 2001年6月8日〜10日大阪市旭区民センター/ 2001年6月20日〜29日広島市映像文化ライブラリー

公開初日 2001/04/28

公開終了日 2001/05/06

配給会社名 0467

公開日メモ 日本におけるイタリア年、イタリア映画祭にて未公開作品を10本上映。

解説

例えば木にぶらさがった精神病患者の女性たちが一斉に声を出して、降りて駆けてゆく。こうしたシーンにおける狂気の映像化の瞬間に、奇才マルコ・ベロッキオの真髄がある。精神科医の夫婦に子供が生まれ、田舎者で文盲だが不思議な魅力に満ちた女性が乳母として雇われることで、その夫婦に亀裂が生じてゆく。それだけの話であるが、当代イタリアきっての名優ファブリツィオ・ベンティヴォリオと、今やフランスの若手監督になくてはならない女優となったヴァレリア・ブルーニ・テデスキ演じる夫妻のまなざしと表情の変化だけで、見る者はただならぬ何かが起こってしまったような気になり、最後まで画面から目を離すことができない。政治的な背景は、その前にかすんでしまう。考えてみれば、人間関係から起こる狂気は、ベロッキオがわずか26歳の時に発表した『ポケットの中の握り拳』(1965)から、一貫したテーマである。『ポケットの中の握り拳』におけるルー・カステルの家族内ヒステリーは、この映画のヴァレリア・ブルーニ・テデスキまで流れている。もちろん室内のゆらめく心の流れを映像化するにあたっては、タルコフスキーの『ノスタルジア』や、タヴィアーニ兄弟の『カオス・シチリア物語』(この映画祭の『笑う男』も)のキャメラを担当したジュゼッペ・ランチによるところが大きい。それにしても、同じルイジ・ピランデッロの原作であり、同じ撮影監督でありながら、『笑う男』となんと雰囲気の異なる映画だろうか。

ストーリー

精神科医のモーリの家に初めての子どもが生まれたが、妻のヴィットリアは赤ん坊を胸に抱こうとしない。モーリは、乳母を雇うことを決心する。
モリは移民のアネッタを選ぶ。モーリは以前に、駅で恋人を追うアネッタの姿を見かけていた。彼女の恋人は、政治犯として警察に追われている。ヴィットリアは、アネッタが赤ん坊に乳を飲ませる姿を見て動揺し、すべてを失ったと思い込んで家を出て行く。
孤独に苦しむモーリは、アネッタといると心が安らいだ。
ある日、町でアネッタを見かけたモーリは彼女の後を追う。そこで見たものは、自分の赤ん坊に乳を飲ませるアネッタの姿だった。裏切られたように感じたモーリは、彼女に家を出ていくように言い渡す。赤ん坊に別れを言うために戻ったアネッタに、モーリはとどまってくれと懇願するが、アネッタは赤ん坊はもう自分を必要としていないと言い、家を出て行った。

スタッフ

監督:マルコ・ベロッキオ
原作:ルイジ・ピランデルロ
脚本:マルコ・ベロッキオ、ダニエラ・チェゼッリ
撮影監督:ジュゼッペ・ランチ
美術:マルコ・デンティチ録
音:マウリツィオ・アルジェンティエーリ
編集:フランチェスカ・カルヴェッリ
衣装:セルジョ・バッロ
助監督:ダニエラ・チェゼッリ
製作:ピエル・ジョルジョ・ベロッキオ
音楽:カルロ・クリヴェッリ

キャスト

モーリ医師:ファブリツィオ・ベンティヴォリオ
ヴィットリア・モーリ:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
アネッタ:マヤ・サンサ
マッダレーナ:ジャクリーヌ・ルスティグ
レナ:エルダ・アルヴィジニ
患者:エレオノーラ・ダンコ
ナルディ:ピエル・ジョルジョ・ベロッキオ
患者:ミケーレ・プラチド

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