フロム・ヘル
原題:From Hell
伝説を超える恐怖。
第58回ヴェネチア映画祭クロージング作品 第26回トロント映画祭招待作品
2001年10月19日全米初公開
2001年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/ドルビーSR・SRD・DTS・SDDS/124分/日本語版字幕:石田泰子 配給:20世紀フォックス
2010年07月02日よりDVDリリース 2007年11月21日よりDVDリリース 2007年05月18日よりDVDリリース 2005年04月22日よりスペシャル・エディション版DVDリリース 2005年04月20日『ホワット・ライズ・ビニース』特別編と二作品セット〈初回生産限定〉のDVDリリース 2005年03月16日よりDVDリリース 2004年11月26日よりDVD発売開始 2002年6月7日よりビデオ&DVD発売 2002年1月19日より日比谷映画他東宝洋画系にて公開
公開初日 2002/01/19
配給会社名 0057
公開日メモ タブロイド紙を飾った最初の"スター"であり、史上最も悪名高い連続殺人犯として記録されている切り裂きジャック。 1888年の秋、彼は10週間に5つの儀式的で凄惨な殺人を犯し、ロンドンの街を恐怖に陥れた。そして、スコットランド・ヤードの必死の捜査にもかかわらず事件は迷宮入りとなり、未だにその正体は謎に包まれている。
解説
《「いつか人々は過去を振り返り、私が20世紀を誕生させたと言うであろう」———切り裂きジャック》
彼は、恐怖であり闇であった。
タブロイド紙を飾った最初の”スター”であり、史上最も悪名高い連続殺人犯として記録されている切り裂きジャック。
1888年の秋、彼は10週間に5つの儀式的で凄惨な殺人を犯し、ロンドンの街を恐怖に陥れた。そして、スコットランド・ヤードの必死の捜査にもかかわらず事件は迷宮入りとなり、未だにその正体は謎に包まれている。
《そして、地獄の季節が始まる》
1888年、ヴィクトリア朝末期のロンドン。その夜、娼婦や犯罪者たちがたむろするホワイトチャペルの通りに、女の悲鳴が響き渡った。のどを切り裂かれた無惨な死体。その夜から一人、また一人と娼婦たちがナイフの餌食になっていく。アバーライン警部は不思議な能力に導かれるように捜査を開始するが、事件がエスカレートするにつれて警視総監ら警察幹部は捜査を妨害しようとする。美しい娼婦メアリと王室の主治医でもあるウィリアム・ガル卿の協力で、やがて事件の背後に、王室をも巻き込んだ陰謀と謎の秘密結社の影が浮かび上がってくる……。
切り裂きジャックの事件は、1世紀以上にもわたってイギリス人と世界のミステリー・ファンの心を強く惹き続けてきた。この間いくつもの犯人説が取りざたされ、1970年代には王室に端を発する陰謀説まで飛び出して人々を震憾させた。このミステリアスでセンセーショナルな説に沿って、アラン・ムーアが1999年に発表したグラフィック・ノベルが『フロム・ヘル』。映画はこれをベースにしながら、伝説的な物語に緊張感溢れる心理的なひねりを加え、凍りつくような陰謀を解き明かしていくネオ・ダーク・スリラー。
メガホンをとったのは20歳のときに『ポケットいっぱいの涙』を発表して注目された双子の兄弟アレン&アルバート・ヒューズ。子供の頃この事件を知って「あまりに恐ろしくて頭から離れなくなって以来、関連の本、映画、ドキュメンタリーなどあらゆる情報を集めてきた」という二人は、映画化に当たって慎重なアプローチでリサーチを重ねた。そして彼らは、世紀末ヴィクトリア朝のゆがんだ格調高さをスタイリッシュな映像に昇華させ、エッジでオカルティックな作品を作り上げた。
事件を捜査するアバーライン警部を演じるのは、自称”切り裂きジャック・オタク”のジョニー・デップ。彼もやはり子供の頃に事件の闇の部分に興味を持ち始め、「きちんと扱えば素晴らしい映画になるだろうと思っていた」という。
アバーラインは妻と子を亡くした悲しみから立ち直れず、アヘンを吸って現実から逃避している。同時に彼は、事件を透視する特殊な能力を持つようになる。その暗くて深い瞳の奥に、憂いと知性を湛えた静かな存在感は、ジョニー・デップ本人の個性とも重なり合う。『スリーピー・ホロウ』の捜査官とはまた一味違う翳りのある魅力で、映画のダークな色あいを決定づける。久々、正統派の美しいデップには、ファンならずともうっとりさせられるはずだ。
一方、切り裂きジャックから標的として狙われながら、アバーラインとほのかな愛で結ばれる娼婦メアリ・ケリーには『ブギーナイツ』『ロスト・イン・スペース』のヘザー・グラハム。トレードマークの大きな瞳で、チャーミングなヒロイン像を作り出している。『奇跡の海』のカトリン・カートリッジ、『フル・モンティ』のレスリー・シャープ、『ノーラ・ジョイス 或る小説家の妻』のスーザン・リンチらイギリス出身の芸達者な女優たちが、メアリの仲間の娼婦役で文字通り脇を固めている。
また、アバーラインに協力する医師ウィリアム・ガル卿には『スウィート・ヒアアフター』のイアン・ホルム、ジャックの手下ネトレイにはガイ・リッチー監督作品の常連ジェイソン・フレミング、アバーラインの部下ゴッドレイ巡査部長には007シリーズでおなじみのロビー・コルトレーンが扮している。
チェコに作り上げた大規模なホワイトチャペルのセットやプラハにある6つの城を使って1888年のロンドンを再現したのは、『恋におちたシェイクスピア』でアカデミー賞を受賞したプロダクション・デザイナー、マーティン・チャイルズ。ここにヴィクトリア朝の衣裳で当時の香りを加えるのは『マトリックス』『ロミオ&ジュリェット』を手がけた衣裳デザイナー、キム・パレット。『ロスト・ハイウェイ』のムーディな撮影でヒューズ兄弟に注目された撮影監督ピーター・デミングが、雨に濡れた夜のロンドンをしっとり艶やかに写し撮っている。また、『プライベート・ライアン』『グラディエーター』を手がけた特殊メイク効果のミレニアム・エフェクト社による惨殺死体の恐ろしさは、演じる本人たちも直視できなかったほど。そして『ノッティングヒルの恋人』『13デイズ』のトレヴァー・ジョーンズの音楽が、よりいっそう謎めいた雰囲気を募らせている。
ストーリー
1888年のロンドン。犯罪の巣窟になっているスラム街ホワイトチャペルの夕暮れ時に、通りを歩く美しい女性がいた。目の覚めるような赤毛のその女性の名はメアリ・ケリー(ヘザー・グラハム)。アイルランドから流れてきて娼婦に身をやつした彼女だが、貧乏の底辺の生活の中でもなお、目は明るく輝き、頬には生き生きと赤みがさしていた。
メアリと仲間の5人の娼婦たち、ポリー(アナベラ・アプシオン)、ダーク・アニー(カトリン・カートリッジ)、リズ(スーザン・リンチ)、ケイト(レスリー・シャープ)、マーサにとって、ホワイトチャペルは地獄のような場所だった。いくら身を売っても部屋代さえ払うことができず、公園のベンチで寝ることもしぱしば。しかも、この辺り一帯を牛耳るストリート・ギャングのマックイーンは上納金を要求し、その晩もメアリは彼からナイフで脅されたところだった。
そんなとき、アン・クルークが生まれたばかりの赤ん坊アリスを抱いてメアリを訪ねてきた。かつて娼婦仲間だったアンは、今は裕福な画家アルバートに面倒を見てもらい、アリスを生んで育てていた。アンは海外からアルバートが帰ってくるのでアリスを預かってほしいという。上納金をアルバートに出してもらうからと、強引にメアリに赤ん坊を渡して立ち去るアン。しかし、しばらくして情事を楽しむアンとアルバートが、見知らぬ男たちに裸のまま連れ去られてしまう。
その夜、メアリと別れて歩き始めたマーサの背後に忍び寄る影があった……。
同じ頃、ロンドンのアヘン窟ではアバーライン警部(ジョニー・デップ)がアヘンの幻覚の中である殺人事件を目撃していた。路地を歩く女性、背後に迫る視線、女の顔に浮かぶ死の恐怖、飛び散る鮮血、ぶどうの房の小枝、息絶えて横たわる女の体、死体を切り刻むリストン・ナイフ……。その幻想からアバーラインを呼び戻したのは、部下のゴッドレイ巡査部長だった。現実の世界でも殺人事件が起こっていたのだ。アバーラインとゴッドレイが死体置き場で見たものは、喉をかき切られたマーサの遺体だった。
娼婦たちはマックイーンらギャングの仕業だと思って恐怖に怯えていた。そして今度は、ポリーの身に魔の手が迫っていた。それが、切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)として後世に知られるようになる殺人鬼のゲームの始まりだった。
ポリーの遺体発見現場に急行したアバーラインは、それが幻覚の中で目撃した殺人事件だと気づいた。彼には事件を予見する不思議な能力があったのだ。そして彼は、ポリーの遺体の内臓が正確に抉られていたことから、犯人が解剖学の専門知識を有する者だと推理する。しかし、警視総監チャールズ・ウォーレン卿(イアン・リチャードソン)はアバーラインの意見に否定的で、屠畜業に携わるユダヤ人を調べるように言う。
ポリーの葬儀の後、アバーラインは娼婦たちから事情を聞こうとするが、ギャングの報復を恐れる彼女たちは口を開こうとしない。次の犠牲者はダーク・アニーだった。再びメアリに接近するアバーライン。2年前に妻と子を難産で亡くしたアバーラインは、一切の感情を閉ざし、アヘンの幻覚に救いを求めて生きていた。しかし、そんな彼もメアリの美しさと気丈さにいつしか心を寄せるようになる。メアリもまた、アバーラインの誠実さと優しさに惹かれていた。二人の間には信頼と愛が芽生え始めていた。
アバーラインは捜査の参考のために王立ロンドン病院を訪れ、ヴィクトリア女王の主治医も務めるウィリアム・ガル卿(イアン・ホルム)と知り合った。彼は捜査に協力的で、鮮やかで素早い手口からして犯人は外科医だろうとアドバイスする。やがてアバーラインは、当局の妨害を受けながらもアンの居所を入手することに成功した。メアリとともに訪れた施設で監禁されていたアンの額には、手術の跡が痛々しく残っていた。彼女がロンドン病院で行われたロボトミー手術の被験者だったことを、アバーラインたちは知る由もなかった。そして、廃人のようになったアンは「彼はプリンス、私はクイーン」と、うわごとのように繰り返すのだった。
アバーラインとメアリは宮殿へと向かった。ある肖像画の前まで来たとき、メアリの顔が曇る。クラレンス公(エドワード7世皇太子)と書かれたその絵の主は、アルバートと瓜二つだったのだ。メアリから、彼女たち娼婦仲間がアンとアルバートの秘密の結婚式で証人を務めたという話を聞いて驚くアバーライン。どうやら事件の鍵はアルバートの隠された素性にあるようだった。そして、その背後には上流階級の人々がひそかに参加しているある秘密結社の黒い影があった。
やがて、殺人犯は世間に挑むかのように手紙を送りつけてきた。そこには「”フロム・ヘル”——ジャック・ザ・リッパー」としたためられていた。そして数日後、アバーラインの努力も空しくリズとケイトが一晩のうちに惨殺体となって発見される。
残されたのはメアリだけ。今や、魔の手は着実にメアリの身辺に忍び寄っていた。いったいアルバートの正体は?謎の秘密結社との関係は?そして、アバーラインは愛するメアリを守ることができるのか?
スタッフ
監督:ヒューズ・ブラザーズ
製作:ドン・マーフィ、ジェーン・ハムシャー
脚本:テリー・ヘイズ、ラファエル・イグレシアス
原作:アラン・ムーア、エデイ・キャンベル
製作総指揮:エイミー・ロビンソン、トーマス・M・ハメル
アレン・ヒューズ、アルバート・ヒューズ
撮影:ピーター・デミング
プロダクション・デザイナー:マーティン・チャイルズ
編集:ダン・リーベンタル、ジョージ・ボーワーズ
音楽:トレヴァー・ジョーンズ
衣裳デザイナー:キム・バレット
キャスト
フレッド・アバーライン:ジョニー・デップ
メアリ・ケリー:ヘザー・グラハム
ウィリアム・ガル卿:イアン・ホルム
ネトレイ:ジェイソン・フレミング
ピーター・ゴットレイ:ロビー・コルトレーン
ケイト・エドウズ:レスリー・シャープ
リズ・ストライド:スーザン・リンチ
ベン・キドニー:テレンス・ハーベイ
ダーク・アニー・チャップマン:カトリン・カートリッジ
チャールズ・ウォーレン卿:イアン・リチャードソン
ポリー:アナベラ・アプション
アン・クルーク:ジョアンナ・ペイジ
アルバート:マーク・デクスター
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