原題:Duets

一緒に歌えば、歓びがエコーする。

2000年/アメリカ/112分/カラー/ドルビーデジタル 配給:HRSフナイ株式会社

2002年1月4日ビデオレンタル開始 2001年12月21日DVD発売 2001年9月29日より新宿シネマ・カリテにてレイトロードショー公開

公開初日 2001/09/29

公開終了日 2001/11/02

配給会社名 0170

公開日メモ 自分の心を見失いかけた大人に贈る、"再・自分探し"カラオケ・ロード・ムービー

解説



《自分の心を見失いかけた大人に贈る、”再・自分探し”カラオケ・ロード・ムービー》

◎”KARAOKE”というサブ・カルチャー
3分間は誰でもヒーロー/ヒロインになれる!マイクを握れば、誰もが目を輝かせ、頬を紅潮させて熱唱する。”カラオケ”は、日本のみならず、今や世界中に定着している庶民に人気のお手軽エンターテイメントだ。もはや世界で最も知られている日本語は、「スシ」と「カラオケ」と言っても過言ではないくらい。しかし、カラオケの一体何が、人々をこんなに惹き付けるのだろう?「日本人はなぜ人前で歌いたがるのか?」と、軽い侮蔑を浮かべていた外国人も、今ではすっかりその魅力の虜。今や、先進国をはじめとした都市部には、必ずと言ってよいほど”KARAOKE BAR”や”KARAOKE CLUB”が存在している。この映画に描かれるようなカラオケ大会は、実際にアメリカ各地のバーで行われ、かなりの盛り上がりをみせている。
そもそも日本でカラオケが誕生したのは1972年頃、神戸のスナックで、プロの歌手の伴奏用テープを使ったのが始まりと言われている。その後76年に業務用カラオケが開発され、「カラオケ」と命名される。88年には、米国にカラオケ機器の会社が設立され、ここから怒濤のように世界進出が始まり現在に至っている。
当然日本でも学生からサラリーマンまで、ストレス発散という名目で愛され続けるカラオケ。この、歌うという行為の魅力と治癒力を、本作『デュエット』は、微笑ましくも生き生きと描き出してゆく。何かを抱えて歌う人々の、人間模様を浮き彫りにさせながら。そう、歌うことで一瞬のキラメキを手に入れる彼らにとってカラオケは、見失いかけた自分を取り戻してゆく道具や手段として大活躍しているのだ。

《愛とは、家族とは、人生とは…、と、問いかけるエンターテイメントの快作!》
主人公である3ペア・6人は、みな心に何かを抱え、何かをひきずっている。全員が”逃亡者・逃避行者”の様相なのだ。家族のしがらみから逃れようとする者、それを追い求める者、猪突猛進に進んで来た現実の狭間で自分を見失いかけ、その苦痛から逃れようとしている者、文字通り刑務所から逃げ出して来た者、妻の浮気現場と友人の裏切りから逃げ出して来た者、夢を追い掛ける反面、自分を少しずつ切り落として旅を続けようとしている者…。物語は、コミカル調で進んでゆくが、彼ら1人1人が抱える問題はかなりシリアスであると同時に、現代社会が抱える問題をはらんでいる。そんな見ず知らずだったバラバラの6人が、各地で出会い、ペアとなり、それぞれの絆を築いてゆく様は、静かな感動を胸の中に沸き起こす。
そして、大きな見どころとなるカラオケ・シーンは、胸がすく興奮を私たちにも与えてくれる。とりわけ、エグゼクティブとしてひたすら働き続けてきたトッドが自分に疑問を感じ、1人の人間として変化してゆく様子には、日頃うっぷんを、また少なからず現実に矛盾を感じている人にとって、他人事とは思えない共感を覚えるだろう。次第に自信を取り戻し、押え付けてきた自分や自我を解放し、幸せそうに歌うトッド。その姿には、拍手喝采を贈りたくなるほどのすがすがしさが漂っている。レジーとトッドのデュエット場面も、ちょっとしたコンサートに来たような素晴らしさだ。また、歌うことを生きる道具にしてきたリッキーやスージーも、歌によって他人と心を通い合わせ始め、歌を媒介に初めて真剣に自分と向かい合おうとする。終盤のレジーのソロの歌、その歌詞にも思わず胸に熱いものがこみあげてくるだろう。
3ペア6人が各地から歌って勝ち上がり、自分を少しずつ取り戻しながら、最後に決勝大会で大集合するという、まさに大人たちの自分探しアメリカ横断ロード・ムービー。ノリノリで一緒に歌を口ずさみながら、彼らの悪戦苦闘を温かく見守ってほしい。唯一歌わないビリーが、最後に媚薬を一滴垂らしてくれる心憎い演出は、ちょっと幸せな後味を約束してくれる。

《歌ってよし、演じてよしの、豪華ユニークキャスト》
周知のように、そもそも映画『デュエット』は、グウィネスの実父ブルース・パルトロウが監督、娘グウィネスと当時交際中のブラッド・ピットが共演という話題が先行していた作品だった。順調に行けば97年秋に撮影スタートの予定だったが、同年6月に2人が突然破局。にわかに映画の行方が危ぶまれた。一旦は白紙に戻り、幻の作品になるかに思われたが、2000年、映画『デュエット』は誕生した。もちろん”ハリウッドで一番素敵なカップル”と言われた2人の共演がなくなってしまったのは残念だが、しかし、それだけにじっくり練られて選ばれたキャストは、歌にも演技にも長けた実力派が揃いユニークな顔ぶれとなった。
離ればなれだった父親との絆を求めるひたむきな若い女性リヴに、グウィネス・パルトロウ。シリアスドラマも、コメディもいける幅広い演技の実力は、早くもオスカーを獲得したことからも広く認知されているが、今回、またも彼女に驚かされることになる。少しハスキーがかった切々とした唄声には、きっと誰もが目を丸くして魅了されるだろう。また、彼女が身につけるキッチュな衣装も楽しい見どころの一つ。リヴの父親で、カラオケ・ハスラーを演じるのは80年代を代表するヒューイ・ルイス。80年代N.Y.のヤッピーを描いた映画『アメリカン・サイコ』でも、時代の象徴としてホイットニー・ヒューストンと共にその音楽が登場するように、一世を風摩した大物歌手。近年は、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』『ショート・カッツ』など、映画にも進出し、強い印象を残している。本作では、味なオヤジぶりだけではなく、本来の歌手としての余裕ある堂々とした歌いっぶりを披露。彼の歌声を心ゆくまで楽しむことができるのも大きな魅力の1つ。ちなみに、リヴとリッキー(グウィネスとヒューイ)が最後にデュエットした曲がオーストラリアのミュージックシーンでチャート・インしたというおまけ付。ブラッド・ピットが演じる予定だった優男のビリーには、かわって若手人気俳優スコット・スピードマン。アメリカの人気TVドラマ『フェリシティの青春』で、主人公フェリシティが恋い焦がれるベン役で一躍トップスターに躍り出た、甘いマスクの美青年だ。映画出演の経験はあるものの、本作が本格的な映画デビューとなる。ブレイク必至の美青年なので要チェック。その他、プロ級の歌唱力で魅せるスージ一役のマリア・べロは『コヨーテ・アグリー』の姐さん役(コヨーテ・アグリーの経営者リル)が印象的な、キリリ美人女優。同じく素晴らしい歌唱カと憎めないキャラがピタリとハマったトッド役のポール・ジャマッティは、『トゥルーマン・ショー』『プライベート・ライアン』などに出演している中堅の演技派。、『Planet of the Apes/猿の惑星』にも出演しているので注目しておきたい俳優だ。ここにレジー役のアンドレ・ブラウアーを加え、彼らの見事なアンサンブルはエンディングで大団円を迎える。
今回、監督だけでなく製作もこなしたブルース・パルトロウは、長年、TV番組などを手掛けている大物プロデューサーである。父娘で一緒に仕事をするという、長年の夢を本作で叶えた。

ストーリー


●いろいろワケありの6人が、心の葛藤と闘いながら優勝5000ドルを目指して勝ち進んでゆく。その先に彼らが見つけるものとは?

《♪リッキーとリヴ、母の死で再会した父と娘の場合》
オクラホマ→ネバタ→カンザス→ネブラスカ・オマハ
テキサスのカラオケ・バー。ピカピカのジャケットで熱唱した青年に、カウンターのオヤジが嫌味たっぷりに話し掛ける。「どうせ素人芸だろう?カラテオケ?」カッとなった青年は、挑戦状を叩き付ける。しかしオヤジは更に挑発し、賭け金は吊り上がる。いよいよ舞台に立った彼が歌い始めると……、その歌いっぷりにバーは騒然。美女もノリノリ踊り出す。そう、このリッキーというオヤジ、プロのカラオケ・ハスラーなのだ。賭け金を手に美女としけこんだリッキー。しかしそこへ妻の死を知らせる1本の電話。急いでラスベガスの教会へ駆け付けたリッキーは、そこで亡き妻の娘リヴに出会い大慌て。何しろ、妊娠が分かった途端に蒸発し、今の今まで親らしいことは何もして来なかったのだから。しかしリヴは無邪気に再会を喜んでいる。リヴは、祖母・母と3代続く筋金入りのショーガールだ。しかし再会も束の間、リッキーはカンザスでショーがあるとまたも逃げ出してしまう。ところが後を追ってリヴがリッキーのホテルに現れ……。こうして2人は、一緒にカラオケの賞金稼ぎに精を出し、優勝へ向けて勝ち進んでゆく。初めは娘と行動を共にすることを拒否し続けていたリッキーも、少しずつ変わり始め———。

《♪トッドとレジー、奇妙な友情で結ばれた2人の場合》
テキサス+ユタ→ニューメキシコ→ネブラスカ・オマハ
空港ホテル。不動産開発会社の営業エグゼクティブのトッドは、急いで会議室へ向かう。疲れと多忙のせいか、部屋を間違えたのはおろか、どうやら降りる空港まで間違えてしまったらしい。大失態疲労困ばいして家に戻ったトッドを迎えたのは、子供達の完全無視。妻も、仕事で見向きもしない。トッドは今、打ち込んできた仕事に疑問を感じ始めていた。”美しい海岸を、ケバい遊園地に変えてしまった”自分に嫌悪感は膨らむばかり。そんな悩みさえ妻に聞いてもらえない。トッドは、あてもなく車を走らせる。ニューメキシコでトッドは、若い女性がマイクを握って熱唱しているバーへ入る。カラオケを初めて知ったトッドは、彼女から「ハイになれる。3分間はスター気分」と歌を勧められる。尻込みしながらも歌い出すトッド。初めはおぼつかなかったが、次第にノリ始めて大熱唱拍手や口笛に昂揚し、自分の歌声に励まされ勇気が沸き上がって来るのを感じる。トッドは、久々の開放感に酔いしれる。
一方、刑務所から逃げて来た黒人のレジーは、ヒッチハイクでシカゴへ向かっていた。ちょうどそこへ突っ走って来たトッドは、レジーを車に乗せる。独房暮らしだったと言うレジーに、俺も牢獄で暮らしていたようなもんだ、と呟くトッド。途中のカラオケ・バーで、2人はデュエットを歌ってみる。歓声が沸き上がるほど
のハーモニーを生み出した2人は、賞金5000ドルの決勝戦があると聞き付ける。いつの間にか友情が芽生え始めた2人は一緒に、一路東へ向かう。

《♪ビリーとスージー、成りゆきで同行する2人の場合》
オハイオ→ミズーリ→ネブラスカ・オマハ
シンシナティの警察署。今日も出所する人を迎えに、タクシー運転手ビリーがやって来た。運転手とはいえ、友人との共同経営だ。出所して来た老婦人は、なんとビリーの小学生の時の先生だった。七面鳥とパンストを万引きして捕まったのだと言う。しかも「アンタはデキの悪い生徒だったから、私みたいに盗みなんかできっこない」とまで言い放つ始末。暗い気分で家に戻ったビリーを待ち受けていたのは、露な姿の妻と共同経営者ラルフのバスタオル姿。家を飛び出しバーで飲んだくれるビリーの横に、突然現れたスージー。カリフォルニアへ向かう途中の彼女は、足がわりの車が目当てでビリーに近付く。酔った勢いも手伝って、ビリーとスージーは一路、西へ向けて出発する。
やっとミズーリヘやって来た2人は、スージーの体をダシにした作戦でホテルのスウィートに泊まり、スージーがカラオケで賞金を稼ぐ。そんな生き方を責めるビリーだが、親心とも友情ともつかぬ想いでスージーをほっておけない。そして、勝ち抜いてゆくスージーとともに、ビリーもオクラホマに向かうことになる。

《♪6人揃って大団円inネブラスカ・オマハ》
いよいよ賞金5000ドルを賭けた”スーパー・カラオケ”決勝大会。続々と各地の優勝者が集まり、強者どもが歌を披露してゆく。いよいよスージーが呼ばれるが、彼女の姿はバーにない。ビリーは、スージーを探しにホテルを歩き回る。これまで強気だったスージーは、トイレで緊張の余り吐いていたのだ。「私は本当の負け犬だわ」と泣くスージーに、ビリーは優しく語りかける。「誰も負け犬なんかじゃない。僕は、世界は美しく、人間は善良だと信じていたい。そう信じて生きられたら、バカと呼ばれたっていい」ビリーの励ましで自信を取り戻したスージーが舞台に戻ってくる。番は進み、リッキーの名前が呼ばれる。舞台に立ったリッキーは、これまで頑に拒否し続けてきたリヴを突然呼び寄せる。リヴの母がいつも歌っていた歌をデュエットする2人。確かに、親子の愛情を感じ合い始めていた。やがてレジーの番になった。人生をスネているトッドのため、彼はオリジナル曲をアカペラで歌いはじめる。ウットリ聞き惚れる客席。しかし、その時……。

スタッフ

監督:ブルース・パルトロウ
製作:ケヴイン・ジョーンズ、ブルース・パルトロウ、ジョン・バイラム
脚本:ジョン・バイラム
撮影:ポール・サロッシー
作曲:デヴィッド・ニューマン
音楽スーパーバイザー:リチャード・ルドルフ、マヤ・ルドルフ
編集:ジェリー・グリーンバーグ
美術:シャロン・シーモア
衣装:メアリー・クレア・ハナン
美術監督:ウィリアム・ウェスラップ
舞台デザイナー:ビル・マクマーハン
舞台装飾:レスリー・ビール
製作補:キャサリン・E・ベイダ
助監督:ジム・ブレブナー
配役:フランシーヌ・メイスラー

キャスト

スージー・ルーミス:マリア・ベロ
レジー・カーン:アンドレ・ブラウアー
トッド・ウッズ:ポール・ジャマッティ
リッキー・ディーン:ヒューイ・ルイス
リヴ:グウィネス・パルトロウ
ビリー:スコット・スピードマン
ハリエット・ガーガン:マリアン・セルデス
キャンディ・ウッズ:キルステン・ウォーレン
アーリーン:アンジー・フィリップス
ブレア:アンジー・ディキィンソン
ロニー・ジャクソン:ロシュリン・モンロ
ラルフ・ベッカーマン:スティーブ・オタウェイ
シーラ:キーガン・トレイシ一
タフィー:アン・ワーン・ペッグ
チャーリー:トム・ヒートン
バディ:アーロン・パール
ジョン:ジョン・ピネット

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