原題:Charisma

今、ここに20世紀の黙示録を示唆するべく未体験"NE0ホラー"が誕生

1999年日本映画/103分/カラー/ビスタサイズ/ドルビーステレオ/ 製作:日活株式会社、キングレコード株式会社、東京テアトル株式会社 製作協力:株式会社ツインズ 配給:日活株式会社

2001年8月29日ビデオ再発売 2000年2月26日より新宿テアトルほかにて公開

公開初日 2000/02/26

配給会社名 0006

解説

深い森の奥に弱々しい1本の木がひっそりと立っている。
果たしてこれを伐るのが正義なのか、守るのが正義なのか。
この木をめぐって対立する人々。
男がふらりと訪れた森とは、そういう闘争の場であった。
最初、人々はその木をカリスマと呼んだ。
やがて、人々はその男のことをカリスマと呼んだ。

Charisma=非凡な統率カで大衆を指導し、信服させる超人的な資質や権威

 まるでロシア映画か、幻想文学かのごとく神秘的な森を舞台に、共生・共存という人間の倫理間題、人間が意職下で求める本物の自由の形をテーマに描いた人間ドラマ『カリスマ』。”世界の法則を回復せよ”という謎のメツセージを受け取った主人公の刑事・薮池五郎が、ふらりと訪れた森の中で出会った1本の木.この森は、この木の根から分泌される毒素により、壊滅の一途を辿っているという。生かすか、殺すか、いや共存はありえないのか?「あるがままにだ…」いつしかカリスマと同化した薮池が導く世界の法則とは…?独特の語り口で終末を予感させる衝撃のラストまで観るものを引き込んで離さない。人間の奥に眠る本能を呼び覚まされているような、認戯する間もなく陥れられる不安が全編に渦巻く今世紀最後の問題作。
 人間の根底にある”生”への意識を、独特な表現方法で映画化するのは、97年『CURE キュア』で国内のみならず海外でも高い評価を受けた黒沢清監督。監督が本作の脚本を手がけたのは、今から10年ほど前。1992年のサンダンス・インスティテユート・スカラシップを獲得したオリジナル脚本である。そして今回の映画化に当り、監督自らの手で大幅な改訂が加えられ、時代や環境を反映した、よりミステリアスな作品に仕上がった。すでにカンヌ国際映画祭で上映された他、世界各国の映画祭に招待され、さらにこの12月にはフランスでの公開が決定するなど、”NEOクロサワ”誕生と海外での注目度が本格的に高まってきている。
 主人公薮池五郎を演じるのは、『Shall We ダンス?』『失楽園』『うなぎ』『CURE キュア』などで数々の賞を総なめにし、今や日本を代表する役者・世界の役所広司。黒沢作品3本目となる今作品では、1本の木”カリスマ”と出会い、それをめぐり闘争する人々のはざまで自らカリスマ的存在へと変化していく様を、その存在自体で見事に体現している。何かにとりつかれたかのように”カリスマ”を守り、薮池をカリスマヘと導く手がかりを与える青年・桐山直人という重要な役には、雑誌モデルからスタートし、今やTVドラマ、CM、映画で大活躍中の若手俳優期待度NO.1の池内博之が好演。またインテリで、謎めいた植物学者・神保美津子に、映画『無能の人』『男はつらいよ』『119』など、しっかりした演技カで定評のある、風吹ジュン。さらに、大杉漣、洞口依子など黒沢作品にはお馴染みの個性的な俳優陣が作品の脇をしっかり固めている。
 今、ここに20世紀の黙示録を示唆するべく未体験”NE0ホラー”が誕生した。

ストーリー

 ”世界の法則を回復せよ”代議士を人質にたてこもる青年から謎のメッセージを受けとった刑事・薮池五郎。犯人も人質も両方死なせてしまうという結果に終わったこの事件に関する善悪問題で、薮池は身を潜めることになった。そして、導かれるようにしてその”森”にやって来た。青年が残した謎のメッセージが、彼の脳裏をかすめていた。

 薮池は森の中の空き地にひょろりと伸びる1本の木と出会った。まわりに金属製の支柱やら、巨大な点滴が取りつけられたその”木”は、まるで奇怪なオブジェのようであった。実はこの”木”を囲む森では異常な現象が起こり始めていた。森林再生のために植林したはずの杉の苗が萎びてしまい、木々が根こそぎ倒れていく。それはその木の根から分泌される毒素によるものだという。作業の邪魔になるカリスマを伐採しようと躍起になっている住人たち。中曾根、坪井ひきいる植林作業員たちである。

 薮池は中曾根の仕事を手伝い、森の奥へと入って行く。そして青年・桐山直人に出会う。「あの木は、カリスマっていうんだ。きっと何千年も生きる。」桐山は森でただひとり、この”木”を守っているという。「強いものが勝つ」カリスマだけがこの森で生き残る。それが桐山の言う森の法則であった。

 森にはもう1組の住人、神保姉妹がいた。植物の研究をしているという姉・美津子は、”カリスマ”を”怪物”と表現した。森全体の秩序を回復するためには、カリスマを伐採し、又森全体を一度完全に破壊しなくてはならないと警告する。「森全体の秩序を保つこと」これが彼女の考える森の法則であった。

 この森は、一本の不思議な木”カリスマ”をめぐる住人たちの闘争の場なのである。「生き伸びようとするもの、殺そうとするもの。共存はありえないのか?」森の法則、世界の法則とはどうすれば回復されるのか…?

 いよいよ中曾根ひきいる植林班に、カリスマをコレクターに売ろうというプラン・トハンター猫島も加勢し、伐採を決行されることになった。やがてカリスマは中曾根と作業員たちによって掘り起こされ、神保姉妹によって火が放たれる。しかし薮池には見えていた。森の向こうに、途方もなく巨大な”木”がそびえ立っているのを。カリスマが本当の姿を現したのを…。

 生きがいをなくし呆然と立ちすくむだけの桐山。森の人々にも異変が起き始めた。方向感覚を失い、次々に倒れていく人々。そんな中、薮池は急速にカリスマに惹かれていき、カリスマと同化していく。
「生きる力と殺すカは同じものだ。両方が生きようとしているのだから、両方が生きればいい。」果たして薮池の導く結論とは?

スタッフ

製作総指揮:中村雅哉、池口頌夫
企画:吉田達、鵜野新一、有吉司
プロディーサー:神野智、下田淳行
アシスタントプロデューサー:山内拓哉、盛夏子
監督・脚本:黒沢清
撮影:林淳一郎
照明:豊見山明長
美術:丸尾知行
録音:井家眞紀夫
音楽:ゲイリー芦屋
編集:菊池純一

キャスト

薮池五郎:役所広司
桐山直人:池内博之
中曾根敏:大杉漣
神保千鶴:洞口依子
神保美津子:風吹ジュン

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