★1973年、パリ・ファンタスティック映画祭グランプリ受賞

1973年/イギリス映画/カラー/上映時間87分/ 配給:ケーブルホーグ

1998/03/

公開初日 1998/03/0

配給会社名 0029

解説

行方不明の少女の捜索のため、スコットランドの本土からサマーライル島にやってきたスコットランドの巡査部長の不思議で異様な体験を描いたカルト・ホラーの傑作でシネファンタスティック誌は”ホラーの映画の「市民ケーン」”と評するなどホラー映画史に輝く作品としてその評価は極めて高い。
 サマーライル島は、領主サマーライル卿が統治する私有地であった。そしてこの島の住民しどうやら独特の宗教を信じているようだ。ストーンヘンジの傍らで踊る裸の少女たちの異様な姿も見られる。主人公ホーウィーは聞き込みを始めるが、島の支配者サマーライル卿や島の父娘や、学校の先生、図書館の司書などは、みな申し合わせたように少女について怪しげな沈黙を守るのであった。しかし図書館で調査をした結果、主人公にどうやらこの誘拐事件は島民が信じている邪教の五月祭に関係があるとの確信を持つに至る。
 そしてその日がやってきた。ホーウィーは道化の仮面を被って、密かに祭りに参加する。そこでホーウィーの見た真実とは!

 一見、素朴で善良に見える島民たちの心に根づいているらしい。意識せざる悪意的意志。そして反テロリスト的エロス。自分が育ってきた社会とは全く異なる幻想を共有する集団のなかに入り込んだ巡査部長の感じる隔離感、そして不気味なエキゾティズム・・。この独特なエキゾティズムを醸し出すための実に効果的な小道具として、素朴で魅力的なフォークロアが用いられているのだ。ミュージカル以外のジャンルで、このように効果的に音楽が使われた作品は少なく、音楽自体が恐怖を増幅してゆく。
 出演者には、ドラキュラ役者としてあまりに有名なクリストファー・リー。イギリスのテレビ俳優のエドワード・ウッドワード他、ボンドガールのブリジッド・エクランド、やはりホラー映画常連のイングリッド・ビットなどが名を連ねている。映画監督にもこの作品のファンは多く「トレイン・スポッティング」のダニー・ボイルは処女作「シャロウ・グレイブ」の中でこの作品のクライマックス・シーンを登場させている。

ストーリー

この映画は次の言葉で始る。
 『プロデューサーは小さなスコットランドの島サマーライル島の住人とサマーライル卿に宗教的習慣を映像化するための撮影を許可してくれたことに感謝します−。』ホーウィー巡査部長は、スコットランド本土の信心深い中年の警察官である。ある日、ホーウィーの管轄区のサマーライル島に住む匿名の人物から一枚の写真が送られる。写真はロワン・モリソンという名の少女で、彼女が何の痕跡も無く行方不明になってしまったと書いてある。水上飛行機で島に着いた彼は、全ての村民に疑いの目で見られる。彼にとっても村民たちは普通ではない。誰もロワン・モリソンを知らないという、ホーウィーが母親であろうと思うメイ・モリソンでさえも。
 ホーウィーはアルダー・マクガレーと、その美しくセクシーな娘ウィローが営むグリーンマン・バブに泊まる。バブにいる人々は延々と歌っている。ホーウィーはそのみだらな歌を聴くことで心を乱される。彼は食べ物を頼むがすべて缶詰なのに驚く。島は農産物の生産地として有名だったからだ。夜、散歩に出たホーウィーは沢山の裸の男女が共同墓地で重なりあっているのを見る。彼は部屋に戻り、階下のウィローの部屋へ導くみだらな歌に気づくと、サマーライル卿が若い少年に性的習慣を手ほどきさせるのに彼女の元へ連れてきたものだった。
 翌日ホーウィーは学校を訪れ、そこで先生のミス・ローズが女生徒たちに男根崇拝象徴主義についてを教えていて、男子生徒たちは外で男根の五月柱の儀式を練習しているのを見て驚く。学校にいる誰もがロワン・モリソンの消息について知らないという。しかし彼は出席簿に彼女の名前があるのを見つける。そしてミス・ローズは彼女が死んだ事を認めるが別の形で蘇っているという。
 ホーウィーはロワンの墓を見つけ、サマーライル卿に棺を掘り起こす許可を願う。彼は彼女は殺されたと疑う。屋敷の外ではミス・ローズが裸の若い女の子たちに繁殖の儀式を指導している。ホーウィーは棺を掘り起こし、中にロワンの死体の代わりに野うさぎを発見する。彼女は誘拐され今度の五月祭の儀式のいけにえにされると考える。なぜなら今年は凶作だったからだ。五月祭の行列の前にホーウィーは、アルダー・マクレガーを叩きのめし、彼の道化の衣裳を着て海岸へ向かうパレードに加わる。サマーライフ島の誰もがそこにいて歌い踊っている。ロワンはいけにえにされるために出てくるはずだとホーウィーは信じている。そしてついに姿を現したロワンは彼を助けようとする。
 しかし、そのとき彼がいけにえにされる張本人であることに気づく。ロワンの写真は敬度なクリスチャンの彼を神をなだめるいけにえのため、おびき寄せる目的で送られたものだった。
 ホーリィが巨大な絹柳の枝で編んだ人形の中に入れられると村民は覚醒の歌を歌う。やがて、火がつけられ人々はその廻りで歌い踊り始めた・・。

*ウィッカーマン:絹柳で編んだ巨大な人形のことで、ヨーロッパでキリスト教以前に信じられていた原始信仰のシンボル。

スタッフ

製作:ピーター・スネル
監督:ロビン・ハーディー
脚本:アンソニー・シェーファー
撮影:ロビン・ハーディー
音楽:ポール・ジォヴァンニ

キャスト

エドワード・ウッドワード
クリストファー・リー
ブリット・エクランド
イングリッド・ピット

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