ベネチア発の“KITANO SHOCK”が、 トロント、釜山、ロンドン、パリ、ローマ、ニューヨークを 経由して日本へ。

1997年度作品/カラー/ヴィスタサイズ/1時間43分

98年1月24日より、 テアトル新宿、銀座テアトル西友、テアトル池袋、他にてロードショー!!

情報提供:日本ヘラルド映画

公開初日 1998/01/24

配給会社名 0020

解説

キッズ・リターンで世界的評価を得た北野武がその美学を結集して紡いだ珠玉のフィルム。ベネチア映画祭で圧倒的支持を得て金獅子(グランプリ)を受賞。タイトル「HANA-BI」は、花(Flower)=生と、火(Fire)=死(銃撃)を意味し、映画を象徴する深い意味を持っている。

 毎回、その独特で新鮮な作風で映画界に刺激を与え続ける北野武監督の第7作目にあたるこの作品は、”HANA-BI”というタイトルがつけられた。”HANA-BI”は英語では、”Fireworks”であるが、あえて”HANA-BI”と綴られており、作品のテーマと映像を象徴させる重要な意味を示している。”HANA(花)”=”Flower”は「生」のシンボルとして、”BI(火)”=”Fire”は銃撃を意味し、「死」のシンボルとして捉えることができる。この作品の中で、「花」は至るところに登場し、又、北野武自らの手によって描かれた「花」の絵が数多く挿入され、独特なイメージの世界を創り出している。
 一方、「ソナチネ」や「その男、凶暴につき」等の過去の作品において、その強烈な描写が話題となった突発的な暴力シーンも見事なバランスで織り込まれており、「キッズ・リターン」に代表される彼自身の編集の手法と相まって、「静」の世界と「動」の世界が、ともにアクセントとなった魅力的なリズムを持つ個性的な作品を実現させている。今回この作品で見られる暴力シーンは、それぞれに激しいが、しかしそこには、暴力をデジタルなゲームのように繰り返そうとする冷え切った世界に生きる者達に対する北野自身の熱い怒りが感じ取れる。鮮血に象徴されるそのリアルな暴力描写は「痛み」を伴って観ている者にも突き刺さるが、心の痛みも含め、人の持つ「痛み」を感じようともせず無視してしまうような暴力に対して、「痛み」と「怒り」をもって暴力で反撃していく主人公の姿に、今までも一貫して暴力の本質を見つめ、また問いかけてきた北野の姿勢が反映されている。作品の後半で、主人公の西が、自分の妻の前であるにもかかわらず、普通の営業マンを打ちのめし湖に頭を何度も沈めようとする理不尽とも思える暴力的シーンが登場する。しかしここにおいては、その営業マンが西の妻に向かって発した一言、「死んだ<花>に水やってもしょうがないんだよ!」というセリフに対する反応としての、過剰とも思える西の暴力行為の中に、西の置かれている精神的な状態を映し出すという、確かな演出に裏打ちされた、北野の世界を実現させているのであって、暴力シーンを単に連続して見せるだけのアクション・ムービーとは一線を画しているのである。

 また、この作品の画像のトーンは、一貫してある種の透明感を維持しており、「花」以外にも、北野自身がこの作品用に描いた「絵」(例えば、壁にかけられた竜の絵や浮世絵風の絵など)との絶妙なコンビネーションによって、不思議かつ完成度の高い映像美の世界をも実現させているのである。

 この映画には、タイトル通りの花火のシーンも登場する。主人公達の人生もまた「花火」のようである。そして、この作品全体を通してその軸となっているのは確かな「愛」である。それは重い「愛」である。独り善がりともとれる、そこにある「優しさ」はしかしピュアである。全てを背負うことを決意した男と、全てを委ねた女の旅は、二言のセリフと二発の銃声を残しながら、終わることの無い二人だけの世界へと更に旅立つ。北野はこれまでも今まで観たこともない新鮮な映像作品を、映画の世界に新しい風を吹き込んできたが、ここにまたこの「HANA-BI」によって、彼自信がかつての監督作品全てまでも超越した境地を実現してくれた。

ストーリー

刑事・西(ビートたけし)はただひたすら自らの職務を遂行する為に走り続けてきた男だった。だが、子どもの死や不治の病に侵されて行く妻を見るにつけ、ふと立ち止まり後ろを振り返るようになっていた。そのうえ親友で同僚の刑事・堀部(大杉漣)の好意に甘えて妻を病院に見舞った日に、堀部は殺人犯の銃撃を受け下半身不随の重症となり、部下は西の身代わりとなって殉職してしまう。自分の生が周りの者の死をも誘発することを深く考えはじめる西。
 物語は青い海と白い砂浜のエンディングに集約されて行く。愛する者のすべてを、生も死も全てひっくるめて引き受けることを決意した男と、そんな男を信じて、自分を委ねることを心に決めた女・・・ラストの「たったふたことのせりふ」が心に刻みつけられる。

スタッフ

監督・脚本・編集・挿入画: 北野 武
音楽監督: 久石 譲
プロデューサー: 森 昌行
柘植 靖司
吉田多喜男
撮影: 山本英夫
照明: 高屋 斎
美術: 磯田典宏
録音: 堀内戦治
編集: 太田義則
記録: 中田秀子
助監督: 清水 浩
製作担当: 小宮慎二
製作管理: 山崎義人

キャスト

ビートたけし
 
岸本加世子
 
大杉 漣
 
寺島 進
 
白竜
 
渡辺 哲

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