第46回ベルリン国際映画祭 銀熊賞 第23回ゲント・フランダース国際映画祭 グランプリ

東陽一監督作品 35mm/カラー・ビスタサイズ/1時間52分 芸術文化振興基金助成映画/文部省選定

1996/07/13公開

公開初日 1996/07/13

解説

大雨の日、川のようになってしまった道ばたに「鯉か鯰がかくれていて、バサッと跳ねると、ぼくの身体に戦慄が走り抜けてゆくのだった」これは、この映画の原作となった絵本作家田島征三の自伝的エッセイ「絵の中のぼくの村」(くもん出版刊)の一節。まわりの自然環境と、自分との境界がまだはっきりと区別されずに、地つづきにつながっている幼い時期のぞくぞくする感覚が語られている。
 自然と自分との区別がむずかしいばかりでなく、この少年にはもうひとり、自分と区別することがむずかしい兄弟がいた。
 セイゾウには一卵性双生児の兄があって、その名前をユキヒコという。愛情も強ければ、喧嘩のときの争いも激しい。「征彦は自分の力で動かすことのできない、もう一人の自分であった。」

ストーリー

夏の終わり、京都に住む双子の兄征彦のアトリエを、弟の征三がたずねてくる。二人ではじめて合作する絵本の打ち合わせのためだ。
 絵本は、兄弟が高知県の田舎の村で過ごした、夢のような少年時代の物語。二人の描いた故郷の絵から、映画は、昭和23年の高知県の田舎村にとぶ。
 やさしい母と、めったに帰ってこない父、そして思春期の姉にかこまれた、絵が好きでいたずらも好きな厄介な双子、勉強はそっちのけで、ナマズをつかまえ、鳥と格闘し、ときにはよその畑をあらしたりもする。
 セイゾウと気持ちを通わせながら、結局は傷つけられていく貧しい少女。ボロを着た神のように、ある日ふらりとやってくる少年センジ。水の中から突然聞こえてくる「相撲取ろう」という不気味な声。そしてそのすべてを、村の守護神のような三人の不思議な老婆が大木の枝に坐ってじっと眺めている……

スタッフ

原作:田島征三「絵の中のぼくの村」くもん出版刊
監督:東陽一
脚本:東陽一、中島丈博
音楽:カテリーナ古楽合奏団
撮影:清水良雄
美術:内藤昭
装飾:安田彰一
照明:武山弘道
録音:弦巻裕
助監督:井坂聡
プロデューサー:藤沢克則、萩原吉弘
製作:山上徹二郎、庄幸司郎

キャスト

田島征三(子役):松山慶吾
田島征彦(子役):松山翔吾
田島瑞枝・母:原田美枝子
田島健三・父:長坂京三
タジマのジンマ:小松方正
ツネエ:岩崎加根子
ヒロタ校長:上田耕一
田島郁子・姉:真々田瑞季
センジ:田宮賢太朗
ハツミ:山内美佳
区長(特別出演):
中島丈博
田島征三
田島征彦
田島英子

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