原題:BERNIE

★セザール賞第一回監督作品賞ノミネート

1996年製作/フランス映画/上映時間82分

98年11月6日、HRSフナイよりビデオレンタル開始!! 1998年04月公開

公開初日 1998/04

配給会社名 0170

解説

本作の監督、アルベール・デュポンテルへのインタビュー。

−あなたの主人公は何故公立孤児院を後にするのですか?

監督:なぜなら共同作業の前提として、ジル・ローラン(シナリオの共同執筆)と僕は、主人公がそのアイデンティテイーを追い求めてゆく話を、あくまで”一般社会”・・この言葉の正確な意味においてですが・・を背景としてシナリオにしたいと願ったからです。主人公のベルニーは三十年来、自分は何者か、自分はどこから来たのかと自らに問い続けている、ノイローゼの男です。最初、彼は孤児院の外の世界を理解する鍵を多く持っていません。なぜなら三十年も孤児院で暮らしたことに加えて孤児院自体が田舎の辺鄙な場所にあったからです!。しかし彼は彼なりに、とても鋭い直感と確かな思考力を備えているのです。彼は自分の人生に何らかの意味を見出すため、すてばちで悲壮とも言えるような努力を試みます。だからこそ彼は現実にまさる世界、アメリカの推理小説からワン・フレーズに要約するなら、僕は以下のように言えるでしょう。『一人の粗野な人物が、自らの出生の悲劇をアメリカの推理小説に変質させる』と。

−どうやらパラノイアが彼の原動力の一つのようですが・・

監督:ええ、でもこのパラノイアは根拠の無いものではありません。自分は生まれながらにして見捨てられた存在だ、などという考えを受け入れる人間がいるでしょうか?誰ひとりとしていません。そこでベルニーは自らの人生について、とても単純、かつ無邪気で子供じみた、まるで漫画的なフィクションを大げさに作りあげたのです。いわば、この青年は外見では大人でも、内面は子供そのものなのです。

−なぜベルニーは、自らの人生を華麗でめくるめくような物語にではなくアメリカの推理小説もどきに仕上げたのですか?

監督:なぜなら、彼は自らの過去が余りにも荒んでいることを発見したため、暴力をもってしかその過去を粉飾することが出来なかったのです。それに彼は自分自身を正常だと信じているため、尚更そうせざるを得なかったのです。彼の内的世界は妄執に凝り固まっています。だから、現実の社会が彼に手を差し伸べることは不可能なのです。そして何の束縛もない状態の裏返しとして、彼はちょっと頭のおかしい変人になってしまいます。しかしそれは彼にとって、自らの身を護る一つの形態とも言えるのです。この映画の暴力性は彼にとっては、まさに現実そのものです。なぜなら概して現実は猥雑で残酷であることを拒まないからです。私個人はある芝居が深刻さを帯びてくると、逆に笑い転げるようになりました。逆に笑い転げるようになりました。笑わせようとして笑わせる。これは私にとっては凡庸の証し以外の何物でもありません。

−あなたにとって長編映画を監督する事は当然の成り行きだったんですね?

監督:実は『ベルニー』の前に短編映画を一本作りました。自分でシナリオを書いて、ほんとに良いものを作るための心構えが必要だったんです。とにかく私は何かを作り出す人間になりたかったんです。まぁ、そういう言い方は物事を単純化していますが。実際、私の内側に突然沸き上がるアイデアがあるんです。そこで独りごちるんですよ。俺はこいつを物語にしたいと。

−だたし、シナリオを仕上げてゆく際に、あなたは他人との共同作業も出来るわけですよね。

監督:確かにジル・ローランの手を借りなければ私は何も出来なかったでしょう。彼のお陰で私を捉えていた幻想やノイローゼともいうべきものを紙の上に表現出来たのですから。彼はシナリオを他面的に構成し、一本の道筋を付けました。私はそこにダイアローグを加え、実際の台本に仕上げたのです。時には激しく意見を戦わせましたが、最終的に我々の共同作業は映画に非常に良い効果をもたらしました。彼の協力に負うところがほんとに大きかったんです。それと同様に撮影監督のギヨーム・シフマンとも、テクニカルな部分で密接な打ち合わせを重ねましたが、彼は大変な努力をしてくれただけでなく、私の無知から生まれる、しはしば突飛なあらゆる提案にも、根気よく耳を傾けてくれたのです。そればかりか、彼自身も多くのアイデアを出してくれました。こうした点からも私はとても運が良かったと言えるでしょうね。

−今日、この種の映画を製作することは決してたやすくないと思いますが?

監督:確かに、地上波のテレビ局から制作費を得る事は難しいですね。なぜならこの種の映画をプライム・タイム放映する事が不可能なのは推して知るべしですしね。C.N.C,(註:国立映画センター/映画製作に一定の資金援助をしているが企画内容とか監督のキャリアとかに厳しい審査がある)からの援助もありませんし、乏しい資金でやりくりするしかないんです。私に関して言えばジャン−ミシェル・レイとレゾ・フィルムと固い意志、カナル・プリュス(註:フランスのペイ・テレビ局)の援助、そしてカロリーヌ・プロダクションのスタッフとの出会いに代表される様々な人々との出会いが無ければ、この映画の企画は陽の目を見なかったでしょうね。だからこうした映画を製作出来た事が、他の監督やプロデューサーに勇気を与え、様々な参考になればと心から願っているんです。

ストーリー

ノイローゼに罹った粗野の一人の男が、公立孤児院を後にした。彼はすでに30才になっており幼い時からその孤児院で育ち、十八の歳からはその孤児院で働いていたのだ。
 彼の目的・・それは自分の出生に関する真実を知ることだった。彼は自分の出生記録書類を見たいと、孤児院の管理部に申し出ていた。ところが閲覧を拒否され、彼は仕方なく事務所に押し込みを計った・・・そしてそこで、驚くべき事実を発見したのだ。

 『この子はゴミ箱で見つかった、恐らく親が遺棄したものと思われる・・』

 彼にはこの事実は受け入れがたいものだった。そこで、もっと波乱に満ちた事件の結果、孤児院に入るはめになったのだと、推測する。すなわち、彼の両親はマフィアの陰謀の犠牲者であり彼はギャングに誘拐された上、邪魔になってゴミ箱に棄てられたと考えたのだ。そして今でも両親が生きているなら、彼はきっと自分の助けを必要としているに違いないと!世間知らずの彼はまっしぐらに、手段を選ばず目的に向かって突き進む・・。

スタッフ

監督:アルベール・デュポンテル
製作:ジャン−ミシェル・レイ、フィリップ・リエジョワ
脚本:アルベール・デュポンテル、ジル・ローラン
撮影:ギヨール・シフマン
音楽:ラモン・ピパン

キャスト

ベルニー:アルベール・デュポンテル
ウィリス:ロラン・ブランシュ
ベルニーの母:エレーヌ・ヴォンサン
マリオン:クロード・ペロン
ラモンダ:ローラン・ベルタン

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