原題:C'est Quoi La Vie?

力を抜いて 自然に息を吐くだけ ほら 歌えるでしょう

1999年フランス映画際横浜出品作品 1999年トロント国際映画祭出品作品 2000年香港国際映画祭出品作品

1999年9月8日フランス公開

1999年/フランス/115分/Dolby SR / 配給:プレノンアッシュ

2002年2月23日より新宿武蔵野館3(シネマカリテ) にて公開

公開初日 2002/02/23

配給会社名 0065

公開日メモ 普通の人生の中にある不思議と偶然を優しく描いたヒューマン・ストーリー。

解説


人生とは何なのだろう?どんな意味があるというのだろう?困難に直面したとき、誰もがふとそんな思いを抱かずにはいられない。この問いをタイトル(原題:Ces’t quoi la vie?)「人生って何?」)に持つ本作は、決してその解答を性急に結論づけたりはしない。しかし、戸惑いながらもしっかりと大地に根を下ろして生きる人々の姿は、あるひとつの確信を与えてくれる。日々を大切に暮らしていれば、いつの口かきっと「うつくしい人生」に出会うことができるのだと。カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデューを迎えた『夜のめぐり逢い』(88)で長編デビューを果たし、
フランス映画界の新品として期待を集めた監督、フランソワ・デュペイロン。いくつかの作品を撮ったのち長い沈黙に入った彼は以前から抱いていた企画に着手することになる。そして生まれた5年ぶりの作品が「うつくしい人生」である。撮影が行われたのは、フランス111南部ミティ・ピレネー地方のなかでも最も野生的な自然が息づくセヴェンヌ国立公園。現代フランスを舞台に、息をのむような風景のなかで日常の小さな奇蹟をちりばめながら、自分らしさの発見という永遠のテーマが描かれていく。
そして1999年のサンセハスチャン映画祭。圧倒的な支持を得た本作は見事にグランプリを受賞し、映画祭側は「深い洞察と自然愛に裏打ちされたポジティブな精神と繊細な映像美によって、人生の困難を克服する勇気を与えてくれる作品」として、本作のために異例の特別賞(OCIC賞)を設けるに至った。テュペイロン自身の新しい人生を感じさせる久しぶりの新作は、フランス国内で
も人々の胸にあたたかく力強い感動を呼びおこした。黄味がかったフィルターを通して自然の息吹を丁寧に汲み上げるのは、日本人カメラマン、テツオ・ナガタ。フランスのマスコミ陣は、こぞって彼の映像を絶賛した。心に沁み入る音楽は、大島渚監督の『マックス・モン・アムール』(86)など多くの作品を手がけたベテラン、ミシェル・ポルタルが担当。さらに、日系アメリカ人ブライアン・ヤマコシによる琴の即興演奏が、それぞれのシーンに神秘的な余韻を残している。
ニコラ役には”迷える世代”に生まれたエリック・カラヴァカ、ニコラをやさしく導いていく祖父役には、87歳にしてなお俳優人生を謳歌するジャンク・デュフィロ。この1人の共鳴しあう演技によって、カラヴァカはセザール賞最優秀新人男優賞、デュフィロはサンセバスチャン映画祭最優秀男優賞を受賞した。そしてニコラが恋に落ちるマリア役のイザベル・ルノー。カトリーヌ・プレイヤ監督の『堕ちてゆく女』(96)で広く認知された彼女は、巨匠テオ・アンゲロプロス監督の「永遠と一日」(98)で大役を好演。本作では特徴的な美しい瞳と凛とした表情に深みが加わり、大人の女性ならではの柔らかさで物語を包む。また、セドリック・クラピッシュ監督の『家族の気分』(96)でセザール賞を受賞した名
脇役ジャン=ピエール・ダルッサンの厚みのある存在感が、父と息子の交流を味わいゆたかに刻み付けている。

ストーリー

南フランスのある田舎町。牧畜を営む一家の息子ニコラは、このまま農場にとどまるべきか迷っていた。とりあえずの恋愛、都会への漠然としたあこがれ。同じく家を出たいと考えている妹。日々は淡々と過ぎていく。友人たちと夜遊びに繰り出して牛の出産も満足に手伝えないニコラに、祖父は遠い日の自分の姿を重ね、優しく諭すのだった。
牛乳工場からの入金が滞り、一家の財政は危機に陥っていた。父は種や農機を買うために膨大な借金を抱え込む。弱りきった父親が息子に言えるののは、「種がまける限り、金持ちにはなれないが何とか食べていける」という言葉だけだった。
ある日車で街へ出かけたニコラは、帰り道に美しい女性、マリアを送ることになる。かつてオペラ歌手だったマリアは、夫を事故で失い、村はずれの山で自活していた。彼女は徹夜明けのニコラを気遣い運転を交替する。目的地に着いて眠りから覚めたニコラの前に、マリアの微笑があった。おだやかな気品をたたえた栗色の瞳。たった一度の出会いと知りながら、ニコラは恋に落ちてしまう。しかし狂牛病の惨禍を被った一家は破産に追いこまれ、
絶望した父親は自殺をはかる。葬儀の後、祖父母は老人ホームヘ、母はスーパーマーケットで働きはじめ、家族は離れ離れになる。責任を一身に背負ったニコラは地元の作物をパリのレストランに直売する事業に乗り出すが、ささいな不注意ですべてが失敗に終わる。さらに母親の長年の不貞が発覚する。農場と家族。馴れ親しんでいたものたちが崩れていくとき、平凡に生きることさえ難しい。限りなく続く青空を前に考え込むニコラ。妹を連れて老人ホームを訪ねたニコラに、祖父は「太陽が見たい、大地の匂いを感じていたい」とつぶやく。そのとき本当に大切なものの存在に気づいたニコラは、家族を集めて山上の小さな家に移り住み、みずから荒れた野を耕していこうと決心する。土の感触や鳥たちの声に生気を取り戻す祖父と、昔ながらのチーズ作りをなつかしむ祖母、無邪気に遊ぶ妹に囲まれて、ニコラは少しずつ大地に向き合い馴染んでいく。

スタッフ

監督・脚本:フランソワ・デュペイロン
製作:モーリス・ベルナール
撮影:テツオ・ナガタ
音楽:ミシェル・ポルタル、ブライアン・ヤマコシ
編集:ベルナール・サシャ
録音:ピエール・ギャメ、ジェラール・ランプ
美術:パトリック・デュラン
キャスティング:ブリジッド・モワドン
衣裳:カトリーヌ・ブシャール

キャスト

ニコラ:エリック・カラヴァカ
祖父:ジャック・デュフィロ
マリア:イザベル・ルノー
祖父:クロディーヌ・マヴロ
父:ジャン=ピエール・ダルッサン

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