あの子を探して
原題:NOT ONE LESS 一個群不能少
遠い遠い空の下、元気でいてね、 迎えにいくから。 あの子はどこ?綺麗な光が腕白な迷子を探してる…。
99年ベネツィア国際映画祭グランプリ金獅子賞受賞作品 中国映画の全貌 2007にて上映::http://www.ks-cinema.com/schedule.html
1999年/コロンビアピクチャーズフィルム/1時間46分/ヴィスタヴィジョン/SR 字幕:水野衛子
2007年09月26日よりDVDリリース 2004年12月22日よりDVD発売開始 2001年8月10日DVD発売&レンタル開始 2001年8月10日ビデオ発売&レンタル開始 2000年7月1日より渋谷東急文化村ル・シネマにて
チャン・イーモウ監督記者会見::http://www.nifty.ne.jp/rforum/fcinema/topics/200004/12anoko/index.htm
公開初日 2003/03/08
配給会社名 0042
解説
小学校の代用教員ウェイ先生は13歳の女の子。ある日、クラスで一番腕白な少年チャンが、出稼ぎに行った都会で迷子になってしまった。ウェイはチャンを探すため、たった一人で町に出たけれど……。
世界の3大映画祭を制した中国の巨匠チャン・イーモウ(張芸謀)監督に、奇跡ともいえる2度目のヴェネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)をもたらしたのが本作。少女ウェイが健気に逞しく教え子を探す姿を、美しい映像とナチュラルなユーモアで描き出した爽やかな涙の感動作です。
デビュー作「紅いコーリャン」でベルりン映画祭金熊賞(グランプリ)を獲得して以来、「秋菊の物語」でヴェネチア映画祭金獅子賞、「菊豆」で米アカデミー外国語映画賞ノミネート、「生きる(未公開)」でカンヌ映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞し、名実ともに世界の頂点に立った監督。これまで、コン・リー(鞏俐)という華やかな女優を得て、めくるめくような色彩感覚で情念漂う愛憎の世界を作り続けてきた彼が、今回は一転。純朴で清らかシンプルだけれども心のこもった贈り物のような映画を届けてくれました。”優しさと教育は光。光が子供たちと世界を変える”というメッセージで、見る者すべての心をピュアな気持ちで包み込んでくれます。
舞台は中国の小学校。ここへ、1ヵ月間学校を離れることになったカオ先生の代わりに、村長から代用教員に指名された少女ウェイがやってきます。
可愛いけれど、やんちゃで生意気な28人の生徒たち。「生徒が一人もやめなかったら褒賞金をあげる」というカオ先生の言葉を信じて、子供たちを懸命に見張り続けるウェイ。しかしある日、いつもウェイを困らせてばかりいた少年チャンが都会へ出稼ぎに行ってしまいます。ウェイはチャンを連れ戻そうとしますが、町に出るバス代すらありません。みんなで切符のお金を稼ぐには、レンガをいくつ運べばいいか?チャンの奪還計画はあっという間に算数の授業に早変わり。子供たちは一生懸命レンガ工場で働いて、なんとか先生を送り出しました。
けれど、都会に着いたウェイを待っていたのは、チャンが行方不明になったとの知らせ。街の喧噪に驚きながらも、人々のくれる優しさと偶然に支えられながら奔走するウェイ。はたして、彼女はチャンをみつけ出すことができるのか?
最初はお金ほしさに始めた代用教員の仕事。しかし、ウェイはしだいに子供たちの純真さに触れ、一緒に学ぶことの楽しさに気づいていきます。チャンを探し出したいという強い思いは、やがてウェイに人の絆と愛の大きさを知らせることになるのです。そして、彼女がやり遂げたこと、それによってつかんだ喜びは、現代人が失ってしまった生の感情や逞しさをまるごと私たちに伝えてくれます。可愛らしくて清らか好供たちの心は、きっと見る者の心も癒してくれるに違いありません。
監督は「観客は以前にも増して共感できるキャラタクターを求めていると思う。そして、この映画で描かれた感情はとてもリアルで人を感動させるものだ」と語っています。彼はコン・リー主演の「秋菊の物語」でもドキュメンタリー的な手法で何気ないリアリティを生み出しましたが、今回は一人もプロの俳優を使うことなく、登場人物そのもののようなキャストから嘘のない本物の感情を引き出してみせます。たとえばウェイを演じた13歳の少女ウェイ・ミンジ(魏敏芝)は、全国で2千人以上もの候補者の中から選ばれた河北省の中学校の生徒。チャンを演じた10歳のチャン・ホエクー(張慧科)も河北省の小学校に通っています。また、村長もカオ先生もテレビ番組司会者も、実際に同じ職業の人々。監督は出演者全員にその状況に彼らが置かれたらどうするかを問い、彼らが答えたようにカメラの前で演じさせました。彼らの存在そのものから漂う巧まざるエモーションは、静かにじわじわと私たちの心に染み込んで、いつの間にか胸を熱くし、涙を溢れさせるのです。
中国の小さな村の素朴な情景の中に、魅力的なキャラクターを瑞々しく写し撮った撮影は、ティエン・チュアンチユアン(田壮壮)監督の「青い凧」「盗馬賊」やイム・ホー監督の「息子の告発」で知られる名手ホウ・ヨン(侯泳)。北京電影学院の撮影学科でイーモウのクラスメートだった人だけに、監督とは絶妙のコンビネーション。ドキュメンタリー的でありながら優しい表情に包まれた映像の奥行きが映画全体を豊かに息づかせています。生活感のあるリアルな美術は、これまでのイーモウ監督の全作品を担当してきたツァオ・ジュウピン(曹公平)。イーモウ監督の「Keep Cool」のほか、チャン・ウェン(姜文)監督の「太陽の少年」やチェン・カイコー(陳凱歌)監督の「花の影」で記録を担当したチャイ・ルーが今回は編集を担当。そのほか、中国最高のスタッフが結集して、イーモウ監督のオリジナルなビジョンを見事に具現化しています。
ストーリー
中国、河北省赤城県チェンニンパオ村にあるシュイチアン(水泉)小学校。1年から4年まで28人の生徒たちを教えているカオ先生が、病気になった母親の看病するためにひと月ほど学校を離れることになった。村長はカオ先生の代わりに子供たちの面倒を見る代用教員としてウェイ・ミンジをみつけてくる。ウェイは中学も満足に卒業していない13歳の女の子。生徒とたいして歳も違わない彼女に代理が務まるはずもない。カオ先生は村長に抗議するが、片田舎でこんな仕事を引き受けてくれる人などほかにはいない。
学校では学年の初めに40人いた生徒たちがだんだん減り、今では28人になっていた。もう一人たりともやめさせるわけにはいかない。カオ先生は、そうウェイに言い聞かせると、もし留守の間にだれもやめなければ報酬を1O元増やすと約束する。
こうしてウェイの先生としての生活が始まった。名前を読み上げて出席をとり、黒板に書いた文章を書き取らせるのが授業。生徒たちがこれで何かを学べるかどうかなど彼女には関心がない。彼らが教室にいてくれさえすれば、報酬とカオ先生の褒賞金がもらえるからだ。彼女は一日の大半を教室のドアの外に座って生徒たちが逃げださないように見張って過ごすことになった。
そんなウェイの最大の悩みは1O歳の少年チャン・ホエクーだった。賢いけれど腕白な彼は、ことあるごとに彼女のじゃまをして困らせていた。ある日、教室から逃げ出したチャンを追いかけて捕まえようとしたウェイは、チョークの箱を落としてバラバラにしてしまう。しばらくして学級委員をしている少女チャン・ミンシエンの日記を読み、カオ先生がどんなに苦労してこのチョークを手に入れたかを知ったウェイは、少女の前でチャンに謝らせ、弁償させることにする。
ところが翌日、ウェイが教室に入って行くとチャンの姿が見当たらない。心配になって彼の家を訪れたウェイは、病気の母親からチャンが家計を助けるために町に出稼ぎに行ったことを知らされる。大変だ!ミン・シンホンという足の速い女の子が、スカウトされて町に行ってしまっただけでも、一人減っているのに、チャンが学校をやめたらカオ先生の10元がもらえない。彼の後を追って連れ戻すしかない。しかし、町へ出るにはバス代がいる。ウェイは生徒全員からお金を集めたものの、片道の金額にさえ届かない。そんなとき、一人の生徒が近くの工場でレンガ運びをして金を稼ぐことを思いつく。
パス代は片道3元。チャンは帰路だけだから合計9元。レンガを一つ運べば5角だから、9元集めるためには……。教室は実地の算数の勉強の場となった。計算が終わって工場に出かけた先生と生徒たちは、誰もいないので勝手にレンガを運び始めた。ところが、作業が終わった頃に工場長が現れ、「余計なことをした」と怒りだす。けれど、事情を聞いた工場長は、生徒たちに同情して15元を渡してやる。帰り道、子供たちは余ったお金でコーラを買い、みんなで一口ずつ飲んで渇いた喉を潤すのだった。
子供たちの心は達成感でいっぱい。バス代の9元を手に、勇んで停留所へ向かった。しかし、実際のバス代は片道20元。工場長の話では一万個運んで40元だから、とても稼げる金額ではない。そこで、子供たちが考えたのが”タダ乗り”。ウェイは乗客に紛れ込んでバスに乗り込んだ。しかし現実はそう甘くない。荒野の真ん中でバスから放り出されたウェイは、それでも何とかヒッチハイクをしながら町にたどり着いた。
チャンの母親から聞いた住所を探してアパートにやって来たウェイ。しかし、彼と一緒に町に来た少女は、チャンが駅のトイレに入ったきり見失ったと言う。仕方なくウェイは、少女の1日の工賃を払って二人の足取りを再現。手がかりはゼロ。駅の構内放送で呼びかけてもらうが応答はない。そこで、有り金をはたいて紙と筆を買い、尋ね人広告を書くことにするが、ウェイはチャンに会えるのだろうか?
スタッフ
監督:チャン・イーモウ
撮影:ホウ・ヨン
美術:ツァオ・ジュウピン
音響:ウー・ラーラー
編集:チャイ・ルー
音楽:サン・バオ
脚本:ツー・シアンション
キャスト
本人:ウェイ・ミンジ
本人:チャン・ホクエー
チャン村長:チャン・ジェンダ
カオ先生:カオ・エンマン
テレビ局の受付:フォン・ユイメン
テレビ番組司会者:リー・ファンファン
チャン氏:チャン・イーチャン
煉瓦工場のオーナー:シイ・ジャンチン
チャンの母:リウ・ハンジ
テレビ局のマネージャー:ウー・ワンルー
駅のアナウンス係
文具店の店員:ワン・シュウラン
テレビ局のディレクター:フー・シンミン
レストランの経営者:バイ・メイ
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