原題:VICTOR...PENDANT QU'IL EST TROP TRAD.

子供のように生きよう。前と違った人生を・・・。 たとえ頭をぶつけても、それは不思議な天使と出会うため。

第28回ロッテルダム映画祭国際批評家賞

1998年12月16日フランス初公開

1998年/フランス/88分/カラー/1:1.66/ドルビーSR/日本語字幕:古田由紀子 配給:オンリーハーツ

2002年11月16日より新宿武蔵野館にてロードショー公開 2001年7月28日俳優座トーキナイトにてロードショー

公開初日 2001/07/28

公開終了日 2001/09/02

配給会社名 0016

公開日メモ 『クリスマスに雪はふるの?』でデビューし、その独特の作風と完成度で絶賛を博し、セザール賞第1回監督作品賞、ルイ・デリュック賞等数々の賞に輝いた女性映画監督サンドリーヌ・ヴェッセ。 彼女の待望の第2作が、この『ヴィクトール 小さな恋人』である。

解説



『クリスマスに雪はふるの?』でデビューし、その独特の作風と完成度で絶賛を博し、セザール賞第1回監督作品賞、ルイ・デリュック賞等数々の賞に輝いた女性映画監督サンドリーヌ・ヴェッセ。
彼女の待望の第2作が、この『ヴィクトール 小さな恋人』である。
この映画の主人公ヴィクトールは、夢見がちで感受性豊かな10歳の少年。彼は汚れのない純真な精神と無垢な肉体をもつ天使とも言うべき存在だ。物語は彼が、残酷にも現実の世界を眼前に突きつけられて、家をとび出す事から始まる。
彼が行き着いた先は眩いばかりの光に包まれた夜の移動遊園地。ここでヴィクトールが出会うのは、みな現実の社会とうまく折り合いをつけられない人々だ。たとえばミック。彼は優しい心をもつナイーブな青年だが、生きていくことに不器用であり、愛する女性トリシュに、自分の気持ちを伝えることができない。そしてトリシュ。彼女は死んだ姉を弄んだ男たちや父親を憎みながら、娼婦として生きることを選んだ女性。彼らはそれぞれ、自分たちの問題を抱えながらも、優しくヴィクトールを迎え入れるのだが…。
「夢が現実になったら”これはこの『ヴィクトール 小さな恋人』に出てくる、心優しくも現実の社会の前に傷つき、自分の夢を見失い喘ぐ人々の願いだった。夢を持つことの素晴らしさ、夢を現実にすることの素晴らしさを、この映画は、確実に思い出させてくれる。

現代フランス映画界において、最もユニークな存在として異彩を放つサンドリーヌ・ヴェッセは、レオス・カラックス監督の『ポンヌフの恋人』の美術助手として映画界入りし、カラックスの強いすすめで脚本を書き、その後、彼女の実力を高く評価した女優ジャンヌ・モローの強力なバックアップを受け、監督デビューを果たした。フランスの国立映画学校(IDHEC)出身者が大半を占める現代のフランス若手映画監督たちとは一線を画す存在でもある。
その彼女の描く世界は、プロヴァンスに代表される田園風景の中の豊かな光と優しさに満ち溢れた世界であり、そこで語られる寓話や人々の物語は、現代社会で暮らす人々へのあたたかいメッセージであり、都市傾向をことさら強調する現代映画への秘められたアンチテーゼでもある。
「夢?それは自由でいること。映画を撮るのは自分が自由になるため」と語る監督のサンドリーヌ・ヴェイセは、映画から徹底してメッセージ色を排除し、ただ散歩するように自由に豊かで優しい世界を作り出した。
瑞々しい感性で少年ヴィクトールを演じたのは、『クリスマスに雪はふるの?』のポール役で知られるジェレミー・シェイ。
そして、トリシェを演じたのは、フランシス・ユステールの舞台などで知られるリディァ・アンドレイ。ヴェッセ監督は、彼女がリデイアである前にトリシェであるために、見えるところ見えないところ構わず、この女優の美しさを壊そうと考えたと言う。
撮影は前作同様エレーヌ・ルヴァール。ヴェッセ監督の瑞々しい感性をそのまま表現した映像は、人々に感動と陶酔を与えた。
また、プロデューサーも前作同様『カルテット』のアンペール・バルザンが務めた。
なお、サンドリーヌ・ヴェッセ監督最新作『マルタ……、マルタ』は、2001年カンヌ国際映画祭監督週間オープニング作品であるとともに、第9回フランス映画祭横浜2001での上映も決定している。

ストーリー


ヴィクトールは、夢見がちで、感受性の強い10歳の男の子。今日もベッドの上で、天井から吊るした飛行機の模型を見ながら、一人想像の世界で遊ぶ。飛び回る飛行機、こだまする爆音。彼は時折り聞こえてくる不思議な声に気がついた。
「ママンの部屋から声が…」
しかし、そこで彼が見たものは、父親と母親の異常な性行為の情景だった。
逃げるように家を飛び出したヴィクトール。彼がたどり着いたのは、まばゆい光が交錯する夜の移動遊園地。その風景は、まるで彼が頭の中で描いていた夢の世界の続きのようでもあった。
帰る場所を失ったヴィクトールは、何度も何度も回転飛行機に乗り続け、やがて気絶してしまう。そんなヴィクトールを見つけたのは遊園地で働く青年ミックだった。ナイーブで優しい青年ミックは、愛する女性トリシュに自分の気持ちを伝えることができないでいた。ヴィクトールはミックに連れられてトリシュのアパルトマンへ行き、そこで暮らすことになる。美しくも孤独なトリシュ。彼女にはかつて姉がいた。その美しい姉は自殺未遂をし、その後遺症から精神に異常をきたした。その後姉は、多くの男たちから死ぬまで性の玩具として弄ばれ続けた。父親もそんな男たちのひとりだった。
心に深い傷を負ったトリシュは娼婦となり、姉を弄んだ男たちを、そして父親を憎みながら生きていた。
そんな彼女の生き方も、少しずつ変わり始めた。ヴィクトールとの奇妙な共同生活が、昔穏やかで幸福だつた頃の彼女を思い出させたのだ。
そして届いた父親の死の報。トリシュは、憎んでいたはずの彼の死を悲しんでいる自分に驚いた。もはや自分が父を許していることを知ったのだ。
やがてカーニバルが終わり、ミックの遊園地も移動の準備を始めていた。
トリシュは荷物をまとめ、眠っているヴィクトールに「必ず戻るから待ってて」と書置きを残して出かけていった。別れの時は確実に近づいていた。
ひとりトリシュを待つヴィクトール。時折、トリシュが自分を置いてどこか遠くへ行ってしまうのではないかと不安になったが、そんな彼にミックは「今日はトリシュの誕生日だ。きっと彼女は戻ってくる」と言う。
はたしてヴィクトールは、大好きなトリシュとの暮らしを続けることができるのか?またトリシュは、ヴィクトールとの「夢の家族」を現実にすることができるのだろうか?

スタッフ

監督:サンドリーヌ・ヴェッセ
脚本:サンドリーヌ・ヴェッセ
原案:デニス・ベロック
『Les Ailes de Julien(ジュリアンの翼)』
(TUM/MICHEL DE MAULE版)
製作:アンペール・バルザン
撮影:エレーヌ・ルヴァール
編集:マチルド・グロスジャン
助監督:ケタル・ゲニン
音声:ディディエ・サン
美術:トマス・ペックル
衣装:ナタリー・ラウル
進行:ミシェル・グリモー

キャスト

ヴィクトール:ジェレミー・シェイ
トリシュ:リディア・アンドレイ
ミック:マチュー・ラネ
ロベール:スカン・ゲニン
ミックの母:シャンタル・マルベール
ミラ:ポーレット・ベンソン
マレーヌ・トリシュ:ニコル・リシャール
ヴィクトールの母:マリリン・デストール
ヴィクトールの父:ローラン・フリュルー
コンシエルジュ:カテリーヌ・ウィンターマン
パン屋:アンドレ・ヴェッセ

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