原題:Six-Pack

暗闇で微笑む殺人鬼——今日も誰かが殺される

2000年4月26日フランス公開

2000年/フランス/シネスコ/ドルビーSRD/108分/ 配給:コムストック

2002年1月25日ビデオ発売&レンタル開始 2001年6月2日よりシネスクエアとうきゅうにて独占ロードショー公開

公開初日 2001/06/02

配給会社名 0028

公開日メモ フランスの小説家、ジャン・ユーグ・オペルの原作『シックス・パック』をもとに作られ、人間の"究極の悪=快楽殺人"をテーマに、するどく胸をえぐるような描写と登場人物の感情の変化など、細部までこだわったサイコ・サスペンス映画として世界各国で話題を呼んだ作品である。

解説


パリを震撼させる連続女性殺人事件が発生した。手掛かりはなく、被害者の女性たちは残忍な手口で殺害されている。快楽殺人的な犯人を追う二人の刑事は、見えない糸をたぐり寄せながら、事件の深層に入り込んでいく。そして犯人のヒントを手に入れ罠を仕掛けた時、彼らの目の前に衝撃な事実が浮かび上がる!

サイコ・サスペンス映画は、常に根強い人気のもとに世界でも着実にヒットを飛ばしているジャンルである。『サイコ』『洋達の沈黙』または『セブン』といった過去の猟奇殺人をテーマにした数多くのサスペンス映画からも、アメリカが本場という観念があったが、『シックス・パック』はフランスのテイストを残した異色のサイコ・サスペンスとして一躍話題に、地元フランスでは公開当初から大反響を呼び、見事大ヒット・ロングランを飛ばした。

本作品は、フランスの小説家、ジャン・ユーグ・オペルの原作『シックス・パック』をもとに作られ、人間の”究極の悪=快楽殺人”をテーマに、するどく胸をえぐるような描写と登場人物の感情の変化など、細部までこだわったサイコ・サスペンス映画として世界各国で話題を呼んだ作品である。

ジャン・ユーグ・オペルはノワール系の小説8作の他に、少年向けの冒険怪奇小説など多数の著書であり、1995年にはフランスの推理小説大賞でグランプリを受賞した実力派作家である。そして今回、原作を読んですぐに映画化を決めたアラン・ベルベリアン監督は原作が持つ独自の世界観を残して、なお印象的な光や音楽で構成された映像と合わせ、観るものを引き込んでしまう美しいサスペンス作品に仕上げている。アラン・ベルベリアン監督は、『カンヌ殺人事件』などのヒット作を手掛け、サスペンス作品には定評がある監督で、常に観客の度肝を抜く作風でも知られている。

この作品の見所は何と言っても、登場人物それぞれの、台詞では表現されていない心理状況が上手く演技で表現されている点である。リシャール・アンコニナ扮する主人公の主任刑事官ナタンは、連続猟奇殺人事件に異様なほど関心を持ち、最後まで犯人追跡を止めない。彼は、口数が少なく古いタイプの刑事だが、この事件に関してはアメリカまで飛んで犯人の手掛かりを捜そうとしていた。本編では述べられていないが、実は彼の家族は異常犯罪に犯された被害者であり、だからこそナタンの犯人に対する執着はすさまじいものがあった。一方、ナタンの相棒である新米刑事、ソールは法学部を卒業したエリートお坊ちゃんである。初めはナタンを見くびっていたが、次第にナタンの仕事ぶりに関心、ついには自らの命をかけてまで犯人逮捕に協力していく。監督は、ありきたりなサスペンス映画を創ることを何よりも怖れ、あえてファッショナブルにテンポの良い作品に仕上げた。そのためには、登場人物の私生活の描写などはなくし、ある意味、無機質感を演出していった。

そしてもうひとつの見所は、やはりキャスティングの魅力である。フランス映画界ではベテラン俳優として貫禄のリシャール・アンコニナ(『チャオ・パンタン』他)、『TAXi』で一躍世界的に注目を浴びた若手俳優、フレデリック・ディーファンタル、そしてカトリーヌ・ドヌーヌとマルチェロ・マエストロヤンニの娘、キアラ・マエストロヤンニ(『プレタ・ポルテ』『そして僕は恋をする』他)の3人がそれぞれの魅力を醸し出し、今までにない上品なサイコ・ムービーとなっている。

異常犯罪者をジワジワと追い詰めていく狂気のサスペンス・ストーリーではあるが、登場人物全てがどこかしなやかで静かな魅力を持ち、それ故にこの作品は今まで観たこともない不思議な雰囲気を漂わせる上質のサスペンス映画となっている。

ストーリー




ある縁日の夜、一人射的小屋を後にした女は、ある男の存在に気づいていた。初対面の2人はひと気のない場所へ向かい、隙を見た男はいきなり彼女の洋服を剥ぎ取り、ナイフで女の腹を切り裂き、その場を去っていった。

女の無残な死体は1週間後に発見された。同じ手口で殺された女性はこれで5人目である。主任刑事官ナタン(リシャール・アンコニナ)と相棒のソール(フレデリック・ディーファンタル)は目撃者もないこの一連の残虐な犯罪に苛立ちを隠せずにいた。今回も犯人は、被害者の腹を裂き、膣と肛門に指で乱暴に傷をつけ、歯を鈍器で打ち砕き、口の中で射精している。そんな犯人の手口に戦慄を覚えるナタンとソール。今までの被害者の特徴や犯行現場から同一犯人と断定、犯人を割り出そうとしていく2人だが、目撃者もなく、なかなか犯人を絞り込む事が出来ない。ただ時間だけが過ぎていくのだった。

ナタンは精神分析医、異常犯罪に詳しい研究家などから様々な情報を聞き、過去の異常犯罪の歴史から、アメリカ人による犯罪の可能性が浮上してきた。そこで、ナタンはシカゴへ向かい、ある凶悪犯罪者との面会を行った。服役中の老人は、かつて9人もの妊婦の腹を裂き、胎児を奪って自分の子供として育てようとしたおぞましい過去を持つが、一見するとその老人はごく普通の家庭人としか映らない。老人はただ”悪”という認識なく服役、そんな凶悪犯を見て愕然とするナタン。そんなナタンをアメリカ滞在中案内していた元FB1捜査官は、ナタンの追跡している犯人は通称”シックス・パック”ではないかと断言する。

一方、相棒のソールがコンピュータを使って縁日での写真の奥に潜む男の影を照合していくと、なんとアメリカ大使館内の文化担当官であるダグラス・フォスター・ブレイド(ジョナサン・ファース)という男が浮上してきた。2人は国家警察に大使館での捜査依頼をしようとするが、外交官特権を停止してまでの犯人追跡は却下されてしまう。

自己利益だけを追求する国家警察から捜査を見放されたナタンとソールはある強行手段に出た。女性のオトリを使って、犯人をおびき寄せ、2人で現行犯逮捕することであった。そこで、白羽の矢が立ったマリーヌ(キアラ・マエストロヤンニ)は盗聴器、携帯電話を常備、人が集まるボーリング場に行き、犯人をおびき出そうとする。ある日、ボーリング場にいるはずのマリーヌからの無線連絡が途絶えてしまい、不審に思った2人は犯人追跡に向かうが、はたして彼女を犯人から守ることが出来るのか?衝撃的な結末が2人を襲う。

スタッフ

製作:アラン・サルド
監督・脚本:アラン・ベルベリアン
原作:ジャン=ユーグ・オペル
撮影:ジャン=フランシス・ロビン
編集:キャサリン・レナールト
音楽:エリア・クミラル

キャスト

ナタン:リシャール・アンコニナ
ソール:フレデリック・ディーファンタル
マリーヌ:キアラ・マストロヤンニ
ブレイド:ジョナサン・ファース
トーマス:フランシス・ベルレアンド
ダディ・ハリー:フランク・フォンテイン
ポール・ベネッテイ:ベルナール・クレッソン

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