アメリ
原題:Amélie/Le Fabuleuy Destin d'Amelie Poulain
カリコレ2016 カリテ・ファンタスティック!シネマセレクション2016 第54回英国アカデミー賞オリジナル脚本賞、プロダクションデザイン賞受賞
2001年/フランス/カラー/ドルビーデジタルDTS/121分/ 配給:アルバトロスフィルム
2016年7月16日より公開 2006年12月02日よりDVDリリース 2004年12月03日よりDVD発売開始 2002年08月02日よりDVD発売&レンタル開始 2002年11月17日よりお正月第1弾シネマライズにて公開
(C)2001 UGC IMAGES-TAPIOCA FILM-FRANCE 3 CINEMA-MMC INDEPENDENT-Tous droits reserves
公開初日 2001/11/17
配給会社名 0012
公開日メモ 2001年上半期のフランス映画のなかで、あらゆる意味でもっとも話題になった作品、それが『アメリ』だ。まず4月末の公開一週間でいきなり120万人もの観客を動員したこと。それを受けて、5月のカンヌ映画祭に出品されなかったことに対してマスコミが事務局側の判断を揶揄し、論争を巻き起こした。
解説
2001年上半期のフランス映画のなかで、あらゆる意味でもっとも話題になった作品、それが『アメリ』だ。まず4月末の公開一週間でいきなり120万人もの観客を動員したこと。それを受けて、5月のカンヌ映画祭に出品されなかったことに対してマスコミが事務局側の判断を揶揄し、論争を巻き起こしたこと。さらにその後も衰えることなく膨張する動員数と称賛の声に、今度は反旗を翻すかのように一部の批評家が、「移民がきれいに排除された復古的、右寄りの映画」と批判した等々。そんなわけで公開数ヶ月を過ぎた現在も話題は収まらず、ロングラン・ヒットを続けているのである。実際、映画の評判を聞いてシラク大統領やジョスパン首相までもが鑑賞したというのだから、その加熱ぶりは推して知るべしだろう(先出の批判的な意見は、レトロなパリの良さを描いたこの作品が、政治家たちにプロパガンダとして用いられるのを恐れたゆえの、いささか作意的な行為でもあった)。
いずれにせよ確かなことは、『アメリ』がそれだけ多くの人に愛されたという事実だ。その一番の理由は、情緒あふれるモンマルトルを舞台にしたこのチャーミングなコメディが観客を温かな気分に誘うから。
ジュネらしさの最たるものといえばまず、徹底して作り込んだその映像。“古き良きパリの姿”というのはあくまでエスプリに関してであり、実際はたんにレトロにこしらえているわけではない。むしろその非リアリスティックな色調、メトロや通りのポスター一枚に至るまですべて貼り替えた(あるいは合成した)キッチュな装飾等は、この物語をどこにもない、シュールなおとぎ話として成立させている。
登場人物にしてもどこか妙なクセを持った者ばかりだ。いやむしろ、だれもがひとつやふたつは隠し持っている奇妙な面をジュネは嬉々としてフィーチャ−してみせる。『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』に見られた、いささかグロテスクで邪悪な志向性を思い出すとき、この作品が風変わりでありながらも万人受けする映画として踏み止まっているのは驚きですらあるだろう。だがそれは、「観た人が幸せな気分になるような映画を作りたかった」というジュネの思いに、そしておそらく彼自身、楽しみながら作っていたことに因るのではないか。
『アメリ』はまたキャスティングの点でも素晴らしい。ヒロインのオドレイ・トトゥは『エステサロン/ヴィーナス・ビューティ』で注目を浴びてはいたものの、これまで主役をはったことのないほぼ新人。だが監督が絶賛する天性の勘の良さとしっかりした演劇的下地が相まって、これ以上はない適役ぶりを披露している(正直、当初予定されていたというエミリー・ワトソンに決まらなくて良かったと思う)。ちなみに今作で彼女は、ジュエリーのショパールが毎年ブライテスト・ホープの女優に与えるショパール賞を受賞。すでに2002年のセザール女優賞の有力候補とも噂されている。
相手役のマチュ−・カソヴィッツは言わずもがな、フランスきっての若手人気監督であると同時に『天使が隣で眠る夜』、自作の『アサシンズ』などで異才を発揮する俳優。「本業は監督。役者業にとくに魅力は感じない」と公言する彼だが、ジュネが「カメラに愛される役者」と称えるだけに、ひとたびスクリーンに現れると磁石のような魅力を発揮するのはさすがだ。さらに脇を固める面子には、人気コメディアンのジャメル、常連組のドミニク・ピノンやリュフュス、イザベル・ナンティ等、「クセのある顔」が集結している。
ストーリー
少女アメリの遊び相手は空想の中の世界。ちょっと冷たいパパと神経質なママのもとで、変わった力を手に入れた。不思議な動物とお話したり、金魚の“クジラちゃん”と仲良くしたり。両手の指先にラズベリーを差しこんで、はじからパクパク食べるのも好き。隣の意地悪な男には、最高の手で仕返しもする。大人になったアメリは、古いアパートで一人暮らし。アメリの生活は、とてもシンプル。趣味は、クレーム・ブリュレのカリカリの焼き目をスプーンで壊すことと、サンマルタン運河で水切りすること(水切りによさそうな石を道端で拾ってはポケットに忍ばせている)。そして、周囲の人々を観察し、想像をたくましくすること。
アメリはモンマルトルのカフェ“ドゥ・ムーラン”で働いている。サーカスの曲馬乗りだったマダムが経営するその店の人たちはみんな、アメリのことが大好きな様子。たとえば煙草売り場の鬱病気味のジョルジェット。彼女が嫌いなのは“汝の胎の実もまた祝福せらせり”という祈りの言葉を聞くこと。ウェイトレスのジーナは骨をポキポキ鳴らすのが好き。ジーナにふられ、嫉妬に燃えている常連客のジョゼフは梱包用ビニールのプチプチをつぶすことが唯一楽しみ。
ある日、22歳のアメリに決定的な事件が起こる。ダイアナ妃の事故のニュースに目を奪われ、アメリの手元からすべり落ちた香水瓶の蓋。それをきっかけに、アメリはとあるウダツのあがらない中年男の人生を優しく希望のあるものに変えてしまう。その事件は、アメリに人生の目的を発見した!と思わせた。彼女は、まわりの誰かを今よりちょっとだけ幸せにすることの喜びを見つけたのだ。
それ以来、他人のさまざまな人生に人知れず干渉し、お節介をやくためのあらゆる悪戯を考え出すアメリ。その対象になったのは、一日中ポルト酒を啜って過ごしているアパートの女管理人(愛を捧げた夫は浮気相手と南米に逃走後、交通事故死)、アーティチョークを宝石のように扱う食料品店のリュシアン(意地悪な店主にバカだのノロマだのといじめられている)、一生をルノワールの贋作製作に捧げる“ガラス男”ことデュファイエル老人、そして“ドゥ・ムーラン”の人々だった。なかでも薄暗い部屋に籠りきりのデュファイエル老人とは、気心が知れて仲良くなった。偏屈そうに見えるけれど、アメリのことをあたたかく見守っているデュファイエル氏は、他人の幸せばかりを考えて自分のことには手がまわらない彼女がとても心配だ。
順調に楽しいイタズラを続けるアメリだったが、不思議な青年ニノとの出会いで彼女の作戦はかき乱される。遊園地のお化け屋敷とセックスショップで働く彼は、スピード写真のブースのまわりに落ちている破り捨てられた写真のコレクターである。彼は、拾った証明写真に何度も写っている謎の男を探し回っている。彼の奇妙な捜索活動もまた、アメリとの出会いによって混乱をきたすのだった。
ある日、ニノの大事なコレクションが詰まったアルバムを拾ったアメリ。彼女はニノにも悪戯を仕掛けようとするが、いつもと様子が違う。アメリは、いつの間にかニノに恋をしていた。だが、自分の人生にはまるで引っ込み思案の彼女は、ニノの前に姿を現わし恋に向き合うことより、彼とかくれんぼすることを選ぶ。ニノはアメリが仕掛けたゲームの果てに、ようやくアルバムを取り返した。そこには“私に会いたい?”というメッセージつきの写真が。ニノもまたアメリのことがどんどん気になっている。ニノは“いつ、どこで?”と記したビラをそこらじゅうに貼ってまわる。それを見たアメリは、またもや茶目っ気たっぷりに、“ドゥ・ムーラン”にいると伝える。
ついにカフェにやってきたニノ。大接近して心臓が破裂しそうなアメリ。しかし緊張のあまり、アメリは名乗ることができない。楽しかったかくれんぼも、もう終りに近づいている。泣きながら、また一人の部屋で空想に逃げるアメリ。しかし、自分の殻に閉じこもることにかけてはエキスパートの“ガラス男”が優しく手を差し伸べる。恐る恐る扉を開けるアメリ。
そしてついに、ニノの腕の中に飛び込み自分の幸せを見つけるのだった。
スタッフ
製作:クローディー・オサール
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、ギョーム・ロ-ラン
撮影:ブリュノ・デルボネル
特殊効果:イヴ・ドマンジュー
音楽:ヤン・ティルセン
サントラ盤:東芝EMI
ノベライズ:リトル・モア刊
提供:ニューセレクト、テレビ東京、博報堂
後援:フランス大使館
配給:アルバトロス・フィルム
キャスト
オドレイ・トトウ
マチュー・カソヴィッツ
ヨランド・モロー
ジャメル・ドゥブーズ
イザベル・ナンティ
ドミニク・ピノン
セルジュ・メルリン
LINK
□公式サイト□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す