渇き
原題:Thirst / Bakjwi
韓国で大ヒットを記録! 吸血鬼になった牧師の葛藤を禁断の愛とともエロチックかつ、 ファンタジックに描く、バンパイア・スリラー!
第10回東京フィルメックス クロージング作品 2009 第62回 カンヌ国際映画祭/審査委員賞
2009年/韓国/カラー/133分/ 配給:ファントム・フィルム
2010年07月23日よりDVDリリース 2010年2月27日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
(C)2009 CJ Entertainment inc., Focus Features International & Moho Film. ALL RIGHTS RESERVED.
公開初日 2010/02/27
配給会社名 0442
解説
カンヌ映画祭に一大センセーションを巻き起こした
パク・チャヌク監督の驚くべき新境地!
代表作『オールド・ボーイ』を含む“復讐3部作”などで世界中にその名を轟かせ、韓国映画界を牽引するパク・チャヌク。一作ごとに型破りなテーマと作風で観る者を圧倒してきた彼が新たに放つ『渇き』は、実に10年越しという念願の企画を実現させた入魂作である。2009年カンヌ国際映画祭コンペティション部門での上映の際には、会場に居合わせたすべての観客を驚嘆させ、審査員賞を受賞。並外れた独創性を秘めた鬼才が、このうえなくセンセーショナルな新境地に踏み出した。
まれに見る奇想と衝撃に満ちたこの映画は、神の教えに忠実な聖職者サンヒョンが、異国の研究施設を訪ねるところから始まる。そこで新種ウイルスのワクチン開発実験に身を投げ出した彼は、死の病に冒されながらも奇跡的に一命を取り留める。ところが韓国に戻ったサンヒョンは、治療時の輸血の影響によってバンパイアへと変貌を遂げていた。人の血を吸わずには生きられない体となった彼は、テジュという謎めいた人妻とめぐり合い、ただならぬ胸騒ぎを覚える。やがて血と官能の渇きに喘ぐサンヒョンは、テジュとのめくるめく情事の快楽に酔いしれ、後戻りできない背徳の罪を重ねていくのだった……。
神父と人妻が堕ちていく〈血〉と〈官能〉に彩られた罪深き愛の物語
バンパイアは言わずと知れたヨーロッパ生まれの架空の魔物であり、その禍々しくも神秘的な魅力ゆえに、数多くの小説や映画のモチーフになってきた。しかしパク・チャヌク監督が創造したバンパイアは、過去のどのどれにも似ていないばかりか、恐怖やファンタジーに重点が置かれがちなこのジャンルの枠を超越したテーマを探求している。
こともあろうにカトリックの神父が吸血鬼になってしまう意表を突いた導入部に続いて描かれるのは、抑圧された人生を送ってきた薄幸の人妻との禁断のラブ・ストーリーである。狂おしい愛の目覚めが聖職者の信仰心を根こそぎ揺るがし、堕ちれば堕ちるほど高まる残酷な歓び。さらには血に飢えた主人公サンヒョンが殺人の誘惑にも駆られ、道徳と欲望の狭間で悶え苦しむ姿を通して“罪”という奥深い主題を掘り下げていく。また、彼との出会いによって鬱屈した日常から解き放たれ、艶やかに生まれ変わっていくヒロイン像も鮮烈そのもの。主役ふたりが危ういほどの情熱をほとばしらせるラブ・シーンには濃密なエロティシズムが匂い立ち、これまでも一貫して人間の業をあぶり出してきたパク・チャヌク監督の真骨頂というべき圧巻の名場面となった。
斬新なアクション演出やブラックなユーモア感覚、美術や小道具といったディテールにも冴えを見せるパク監督が、脚本を執筆するうえでインスパイアされたのはフランスの文豪エミール・ゾラの「テレーズ・ラカン」。犯罪に手を染めた女の転落人生を描いたこの小説を、バンパイア神父の破滅的な愛の物語へと換骨奪胎したアイデアは特筆ものである。
韓国屈指の名優と新たなミューズが魅せる男の切なさ、そして女の魔性のミステリー
異色の主人公サンヒョンを演じるのは、『殺人の追憶』『グエムル〜漢江の怪物〜』などの話題作で次々と主演を務め、近作『グッド・バッド・ウィアード』での軽やかな暴れっぷりも記憶に新しいソン・ガンホ。長年の盟友であるパク監督のオファーに応え、体重を10キロ減量したスリムな変身ぶりで難役を見事に演じきった。バンパイアという超人めいたキャラクターに人間の弱さや切なさを吹き込んだ情緒豊かな演技は、韓国きっての実力派俳優ならではの離れ業といえよう。
『オール・ボーイ』のカン・ヘジョン、『親切なクムジャさん』のイ・ヨンエを凌ぐほどのインパクトを放つテジュ役のキム・オクビンは、この映画最大の発見といっても差し支えない。日本では無名の新進女優ながら、女神と魔女を思わせるふたつの貌を持つヒロインに扮し、女という生き物のミステリアスな多面性を体現。加えてソン・ガンホとの大胆露出も辞さないセックス・シーンをこなし、劇中でみるみる輝きを獲得していくその変わりようは、まさに新たなスター女優の誕生を予感させる。シッチェス・カタロニア国際映画祭では主演女優賞に輝いた。
そして『JSA』『復讐者に憐れみを』でもパク・チャヌク、ソン・ガンホと組んだシン・ハギュンが、カメレオン俳優の面目躍如たる存在感でガンウ役を怪演。その母親であるラ夫人を演じるのは、「冬のソナタ」「カインとアベル」といった人気TVシリーズで韓流ファンにも顔なじみのベテラン女優キム・ヘスクである。
ストーリー
謹厳実直なカトリックの神父サンヒョンは、病院で重病患者たちを看取ることに疲れ果て、自らの祈りが届かぬ現実に無力感を募らせていた。ただ人助けをしたいと願うサンヒョンは、アフリカの荒野にぽつんとたたずむ研究所を訪れる。この施設では人を死に至らしめる謎のウイルスに対するワクチンの極秘開発が進められていた。その実験に身を投じたサンヒョンは間もなく発病し、死亡するのだが、正体不明の血液を輸血されて奇跡的な復活を果たす。やがてミイラ男のような姿で帰国した彼は“包帯の聖者”と呼ばれ、信者たちに崇められるのだった。
そんなある日、小さな韓服店を営むラ婦人から病弱な息子のために祈ってほしいと頼まれたサンヒョンは、幼なじみのガンウと久しぶりに再会する。これをきっかけに彼らの家に出入りするようになったサンヒョンは、ガンウの妻テジュとめぐり合う。テジュはいかにも地味で無愛想な女だったが、あどけなさの中に不思議な色気をのぞかせ、自らを厳しく律するサンヒョンの心をかき乱していく。
実はサンヒョンの身には、この世ならぬ異変が起こっていた。聴覚や嗅覚が研ぎすまされ、太陽光を浴びられない体になった彼は、何と研究所での輸血の影響でバンパイアに変貌してしまったのだ。もはや人の生き血を吸わねば生きていけない存在となったサンヒョンは、誰かを殺めるわけにもいかず、夜な夜な病院に忍び込み、昏睡中の入院患者の血をチューブですすって飢えをしのぐ。サンヒョンには驚異的な治癒能力や、建物の屋根から屋根へと自在に移動できる跳躍力も備わっていた。
いつしかお互いを強く意識するようになったサンヒョンとテジュは、ある夜、ラ婦人の店の片隅で唇を貪るように求め合う。神に仕えるサンヒョンは、それでもなお背信を犯すまいと自らを戒めるが、身内から噴き上がる獣の欲望には抗えない。エキセントリックな義母とマザコンの夫との歪んだ日常に抑圧されてきたテジュも、猛烈なまでにサンヒョンに惹かれていた。ついに病院のベッドで結ばれたふたりは、異様な興奮状態の中でかつて体験したことのない快楽に身を焦がしていく。テジュの華奢な肩口には、サンヒョンが噛みついた傷からうっすらと血が滲み出していた。
サンヒョンがバンパイアだという事実を知ったテジュは、恐怖におののいたにも関わらず、その後もなぜか彼との逢瀬を重ね、いっそう挑発的な態度をとるようになった。ぐんぐん艶めかしさを増すテジュの虜となったサンヒョンは、ある時テジュの太股に虐待によるものらしい生々しい傷跡を見つけ、ガンウへの憎しみを抱く。そして真夜中に湖へ釣りに出かけた際、ボートの上でガンウに飛びかかり、かなづちの彼を溺死させるのだった。
もはや人の道を踏み外したふたりの行く手には、知る由もない数奇な運命が待ち受けていた・・・。
スタッフ
監督:パク・チャヌク
脚本:パク・チャヌク、チョン・ソギョン
撮影:チョン・ジョンフン
照明:パク・ヒョンウォン
音楽:チョ・ヨンウク
キャスト
ソン・ガンホ
キム・オクピン
キム・ヘスク
シン・ハギュン
パク・イナン
ソン・ヨンチャン
オ・ダルス
チェ・ヒジン
ソ・ドンス
イ・ファリョン
ラ・ミラン
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