ウルトラミラクルラブストーリー
脳みそなくても心臓止まっても ぼくの恋は死なない
2009/日本/35mm/120分/アメリカンヴィスタ/カラー/DTSステレオ 配給:リトルモア
2009年5月30日(土)より、青森県内先行ロードショー 2009年6月6日(土)より、ユーロスペース、シネカノン有楽町2丁目、シネマート新宿他にて全国順次ロードショー
(C) 2009「ウルトラミラクルラブストーリー」製作委員会
公開初日 2009/05/30
配給会社名 0093
解説
町子先生に好かれたい。町子先生と一緒にいたい。
だからぼくは、脳みそなくても心臓止まっても死なない!
青森で農業をしながら一人で暮らす子どもみたいな青年・水木陽人。畑のキャベツは青虫のせいで今日も穴だらけだ。ある日陽人は、東京からやって来た保育士の町子に生まれてはじめての恋をした。けれど町子が青森に来たのはカミサマと呼ばれる占い師に会うため。なぜなら事故で死んだ元カレの首がまだ見つかっていないから…。でも陽人はそんな噂なんておかまいなし。町子先生と両思いになりたい!その気持ちだけで幼稚園に出向いては町子に迷惑ばかり掛けている。ある日、畑で遊んでいるときに陽人の身体に”ある出来事”が起きる。いつもの陽人をほんの少し変えるその出来事は、次から次へとあり得ない事態を巻き起こして─。
一面の田んぼに農薬散布のヘリコプター。やりたい放題の子どもたち。世界はいつもデタラメだらけ。青森と東京、子どもと大人、陽人と町子…。混沌も矛盾も飲み干して、それでも誰かといたいと願うこと。動物だって人間だって、願えばきっと進化する!常識なんか蹴散らして前代未聞、”ウルトラ”に”ミラクル”なラブストーリー、電光石火のごとくここに誕生!!!
松山ケンイチ主演最新作!!
舞台は日本の青森県。麻生久美子と共に描き出す、誰も見たことのない恋と奇跡の物語。
『デトロイト・メタル・シティ』『L change the WorLd』『人のセックスを笑うな』など作品ごとにまったく違う表情を見せる松山ケンイチが新たに挑んだのは、故郷・青森を舞台にしたヘンテコ農業青年の恋のおはなし。全篇津軽弁のセリフを伸び伸びと言い放ち、プリミティブな身体であちこちに飛び跳ねて、スクリーンいっぱいに陽人の生の輝きを満たしている。その圧倒的な存在感は昨今の日本映画に類を見ないほど。そして陽人に慕われながらも元カレのトラウマから抜け出せない、少しヘンで秘密めいた東京の女・町子に麻生久美子が出演。暗さと奇妙さ、母性と狂気、様々な要素を内包する町子をしなやかに演じきり、衝撃のラストを締める。他に、陽人の幼なじみで性格の悪い太役に人間の可笑しみと狂乱を描く劇団「はえぎわ」率いるノゾエ征爾や、映画史上稀に見るまさかの役に出演を快諾したARATAなど若手最有力俳優が登場。さらに陽人の祖母であり強靭な精神の持ち主・もつ役に渡辺美佐子、どこかとぼけた町で唯一の老医者・三沢役に原田芳雄、インチキくさいけど時々本当っぽい占い師・カミサマ役に藤田弓子など、超ベテラン俳優も見事集結!
また、子役はすべて地元青森での公募オーディションにより決定、大人も地元俳優を多数起用するなど、青森という土地と津軽弁のリアリティに徹底的にこだわり、子どものような乱暴さと純粋さに満ちた横浜監督独特の世界観を登場するすべての俳優が完璧に体現、その世界をキラキラとまぶしく彩る。
2007年度日本映画監督協会新人賞受賞、横浜聡子監督ついにメジャーデビュー!!
エンディングテーマは映画初挑戦の100s!!
この奇想天外なラブストーリーを生み出したのは、前作の自主映画『ジャーマン+雨』で2007年度日本映画監督協会新人賞を受賞し数えきれないほどの賛辞を集めた映画界の超新星・若干30歳の横浜聡子監督。出身地・青森県を舞台にした全篇津軽弁の脚本で同郷の松山ケンイチに陽人役をオファー、まさかの青森出身監督×青森出身俳優×全篇津軽弁×オール青森ロケが実現した。松山ケンイチをはじめ、町子をのぞくすべての登場人物が津軽弁を話す本作、各俳優はあらかじめ方言テープを聞き練習、撮影に挑んだという。
また『天然コケッコー』コンビの撮影・近藤龍人と照明・藤井勇や、『パークアンドラブホテル』の録音・加藤大和、『BABEL』にアートディレクターとして参加している美術・杉本亮、インディーズからメジャーまで幅広く手掛ける編集・普嶋信一、多様なジャンルで人気のスタイリスト・伊賀大介、ノイズや即興演奏の音楽活動と同時に映画音楽も多く手掛ける音楽・大友良英など、横浜聡子の世界観に魅了された先鋭スタッフたちが参戦、満を持してのメジャーデビューを支える。
そしてエンディングを飾るのは中村一義率いるロックバンド”100s”!監督からのオファーを受けて、約2年の沈黙を破るシングル「そりゃそうだ」を初の映画主題歌としてリリース決定!衝撃のラストを一気にエンディングへと運んでゆく。
ストーリー
ホワイトボードに一日の行動が記されている薄暗い部屋。目覚まし時計の音が鳴る。床に寝転がっていた陽人。起き出して庭の洗濯物のシーツを頭からすっぽりかぶる。どこからか聞こえるヘリコプターの音。その頃。大きな荷物を引いてこの町へやって来た町子。ヘリコプターの音がする。空を見上げる。田舎町。低空飛行のヘリコプターが一面に広がる田んぼに農薬を散布している…。
もつの家。テレビを見ながらご飯を食べているもつ。陽人がやって来る。
陽人「あっちゃ(ばあちゃん)、農薬ちょうだい。キャベツさ撒ぐはんで(撒くから)」
もつ「農薬?まいねえ(だめ)」相手にされない。
三沢医院。動き回る陽人に聴診器を当てる三沢医師。
陽人「ねえ、薬けろ!」
三沢「アホか、やらねえじゃ」ままならない診療に、怒って陽人をつまみだす三沢医師。
神棚のある大広間。深刻な顔つきで座っている町子。白装束を羽織った“カミサマ”が祝詞を読んでいる。畳の上に置かれた要(ルビ:かなめ)の写真。
カミサマ「彼、亡くなってるべ。なして死んだ」
町子「車運転してて事故に遭って死にました。…死んだとき、首が飛んでしまったんです。まだ首、見つかってないんです…」
ふすまの隙間から中をのぞく2人の子どもたち。
かねしろ幼稚園。漫才をする2人の子ども、奈央と志乃。新しい先生の町子が園児たちに挨拶をしている。そこへ聞こえて来た野菜売りの声。「陽人だ!」園児たちがざわめく。芋掘り大会の担当として陽人に挨拶をする町子。「よろしく!!」陽人は、町子と無理矢理握手をした。子どもたち、陽人にちょっかいを出す。
夕方のかねしろ幼稚園。子どもたちと町子が親の迎えを待っている。突然窓からのぞく陽人の顔。びっくりする町子。「先生の顔ば見たがったんだ。一緒に帰るべ」陽人は、断る町子の手を無理矢理引っ張り窓から力づくで出そうとする。「やめて!助けて!」暴れる町子。そこへ小太郎の父が来て陽人を羽交い締めにした。後ろにひっくり返る陽人と町子。大笑いする子どもたち。
キャベツ畑。もつから外出禁止令が出てどこにも行けない陽人、小学生と遊びながら畑に首だけ出して埋まってみた。可笑しくてゲラゲラ笑う2人。小学生、近くにあった噴霧器で農薬をあたり一面に撒く。顔面農薬だらけの陽人。笑い続ける2人。次第に夜になって…。
三沢医院。ベッドに横たわる陽人が目を覚ます。傍らにもつと三沢医師がいる。「…静かだじゃ…」いつもとは違う大人しい話し方で話す陽人…。
翌日のかねしろ幼稚園。陽人がやって来る。
町子「門からこっちに入らないでください!」
陽人「この前は失礼なことしてすみませんでした。町子先生、仕事終わるまで待ってていい?」
以前と打って変わって礼儀正しい陽人に困惑する町子。
夕方の帰り道。陽人と町子が並んで歩く。
町子「陽人さん、なんか人が変わったみたい」電話番号の交換をする2人。
陽人「町子先生、明日仕事のあと二人で街さ行かねえが?」町子無言になる。
陽人「好きな人いるとか?片思い?」両思い、と嘘をつく町子。沈黙。
農共倉庫。幼なじみの太が発声練習をしながら作業をしている。遊びに来た陽人、ふざけていたら突然ゲロを吐いてしまう。倉庫を飛び出し走る陽人。つんざくようなヘリコプターの音が頭の中で鳴り響く。息切れしながら空を見上げる陽人。ヘリコプターはいない。
再び農共倉庫。もつの仏壇から金を取り走り込んで来た陽人、汗だくだ。
「太、緊急事態だ!農薬ちょうだい!」
「まいね」一蹴する太に陽人は盗んできた万札を見せた。
カミサマの家。生きてる者は死んでる者の声にひたすら耳を澄ますんだ、と諭される町子。ふすまの隙間から奈央と志乃が飛び出して来る。町子の携帯電話に“公衆電話”の表示。
その夜。倉庫から大量の農薬を持ち出した太と陽人。陽人、太から初めて町子の噂話を聞く。その頃、部屋でぼんやりしていた町子の携帯電話が突然鳴った。着信を要からだと思い込み急いで出る町子。ところが電話は一方的に話し続ける陽人だった。電話は切れてしまう…。
陽人、自宅の小屋でひとり農薬をシャワーのように浴びている。
夜道。陽人と町子、帰り道を一緒に歩く。町子は生物の進化についての話をした。町子先生と両思いになりたいと話す陽人、突然胃を押さえしゃがみ込んだ。心配そうに覗き込む町子に陽人は「行ってけ」と言いながら去ってゆく。
三沢医院。陽人に聴診器をあて首を傾げる三沢医師。心臓の音がほとんど聞こえない。病院から町子に電話をかける陽人。「町子先生、わー心臓ほとんど止まってらんだ」
町子「え、なに?心臓?止まってる?」
陽人「町子先生、わー(俺)町子先生と結婚して、一緒に住みてえんだ」
突然のプロポーズに動揺する町子。「結婚はできないよ…」。
道端。ふざけながら道を歩く陽人。そこを首のない体が通り過ぎる。「要が!?」「ああ」首のない体が答えた。陽人は要にずっと手紙を出し続けていたのだ。他愛のない話をして要はどこかに去っていった。別れ際、陽人は要から靴をもらった。いつまでも手を振る陽人。
夜。幼稚園からの帰り、町子はふいに陽人の家に向かう。その頃、三沢医院では横たわる陽人の心臓が止まり死亡が確認されていた。
ところが翌日。陽人は普通に農作業をしている。「死亡診断書出してまった、どうすべ?」三沢医師に電話をするもつ。子供たちを連れて通りかかった町子、陽人の胸に耳を当て心臓の音が聞こえないことを確かめる。そのとき、陽人の靴が要のものだと気づく。
陽人の家。陽人の体調についての日記を書く町子。食事の時間、陽人は何も食べない。
数週間後。検査のため、オーディションに向かう太と3人で東京に向かう。電車の中でふざけ合う3人。ところが陽人、黄色い帽子をお土産にもつの家に帰って来た。「東京さ行くのやめた」
陽人の小屋。やって来た町子、農薬を浴びている陽人を見つけてしまう。
「ばか、死んじゃうじゃない!」怒りながら陽人に水をかける町子、子どものようにはしゃぐ陽人。「見ていることしかできない。私に何ができるのか…」自問する町子。
朝の森。歩いている陽人と町子。
「わー町子先生に好かれてえんだ。結婚してずっと一緒にいたい。農薬がわーの薬なんだ」そう話す陽人に町子は「そんなのに頼ったってしょうがないじゃない!私もう一緒にいるでしょ?なるべく長く一緒にいるから。ね?」と答えた。
喜びのあまり急に走り出した陽人。猟師が森の中を歩いている。茂みの中を黒い影が素早く動く。轟く銃声、倒れる陽人。
町子「陽人さんがふたたび死んだ」
もつの家。陽人の葬式。町子、ひとり黄色い帽子をかぶって畑仕事をするもつに声を掛ける。そこへたくさんの子どもたちが駆けて来る。子どもたちと一緒に畑の野菜を引っこ抜き始める、もつと町子。
陽人の部屋。残されたカセットテープレコーダーを再生してみる町子。壁のホワイトボードには、自分が死んだら脳みそを町子にあげると、陽人の字で書かれている。
森。町子が子どもたちと一緒に歩いている。リュックの中には瓶に入った陽人の脳みそ。はしゃぐ子どもたち。森の中、4人は輪になって座る。「耳澄ましてみよ」町子がささやく。真ん中に置かれた陽人の脳みそ。どこからかテープレコーダーの陽人の声が聞こえて来る。茂みの向こう、黒い影がうごめく。町子、立ち上がり瓶を手にして、そして──。
スタッフ
監督・脚本:横浜聡子
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
録音:加藤大和
美術:杉本亮
装飾:酒井拓磨
編集:普嶋信一
衣裳:伊賀大介、荒木里江
ヘアメイク:清水ちえこ
音楽:大友良英
記録:奥定正掌
助監督:野尻克己
製作担当:福井一夫
プロデューサー:中野朝子、土井智生
エンディングテーマ:100s「そりゃそうだ」(FIVE D plus/avex entertainment Inc.)
製作:「ウルトラミラクルラブストーリー」製作委員会
(フィルムメイカーズ、バップ、日活、WOWOW、ホリプロ、日販、角川書店、ミュージック・オン・ティーヴィ、リトルモア)
製作プロダクション:リトルモア、フィルムメイカーズ
支援:文化庁
配給・宣伝:リトルモア
配給協力:日活
宣伝協力:Lem
キャスト
松山ケンイチ
麻生久美子
ノゾエ征爾
ARATA
藤田弓子
原田芳雄
渡辺美佐子
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