2007年/日本/1時間49分/ヴィスタサイズ/ドルビーSR 配給:アスミック・エース

2007年11月09日よりDVDリリース 2007年5月26日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋他全国公開

公開初日 2007/05/26

配給会社名 0007

解説


97年度「本の雑誌」ベスト10 第一位に輝いた佐藤多佳子の長編小説を、『愛を乞うひと』で日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞ほか数々の映画賞を総なめにした平山秀幸が待望の映画化。〝感動のアルチザン〟がまた一つ、観る者の心にジワーッと沁みこむ作品を贈りだす。
情緒溢れる東京の下町を舞台に、不器用な人間たちが、お互いを想い、共に成長し、新しい一歩を踏み出そうとする、人情と友情と愛情の物語『しゃべれども しゃべれども』。
人間の、日本人の奥ゆかしさと暖かさにホロッと涙するような、優しく愛おしく爽やかな感動作がここに誕生した。

古典を愛する二つ目の落語家・今昔亭三つ葉。思うように腕も上がらず、悩んでいる彼のもとに、「落語を、話し方を習いたい」とひょんなことから三人の変わり者たちが集まってくる。すこぶる無愛想で口下手な美人・十河五月、勝気なためにクラスになじめない大阪から引っ越してきた少年・村林優、毒舌でいかつい面相の元プロ野球選手・湯河原太一……。ところが彼らは集まるごとに言い争い、なかなか落語も覚えない。そんな彼らをまとめなくてはならない三つ葉は、密かに想いをよせていた女性が来年結婚することを知り、また一つ、つまずいてしまう。
落語は上達しない。教室はうまくいかない。女にフラれた。どん底の三つ葉を救ったのは、尊敬して止まない師匠・小三文の十八番「火焔太鼓」だった。〝師匠の噺が好きだ。落語が好きだ〟とあらためて実感した三つ葉は、一門会でその「火焔太鼓」に挑戦することを決意する。一方、なんとか「まんじゅうこわい」をマスターした十河と村林も、発表会の開催を決める。果たして、それぞれの気持ちは、本当の想いは伝わるのだろうか……。

『しゃべれども しゃべれども』は、しゃべりのプロである落語家と彼のもとに集ったワケありの生徒たちをモチーフに、現代を生きる人間たちに欠如しがちなテーマ=〝人と人とのコミュニケーション〟の大切さや〝想いを伝えること〟の尊さを真摯に描いていく。「これは、当たり前に生活している人たちの身の丈にあった映画」と語る平山秀幸は、生徒たちが三つ葉に挑んでくる言動やそれを思うように受け止められない三つ葉の表情で、彼らが抱えているコンプレックスやプライドを浮き彫りにする。そして、冷たく凍りついた心が少しずつ溶け出し、自信と勇気がもてるまでを、観客は「がんばれ!」と心の中で応援しながら見守ることになる。さらに十河と三つ葉のラストシーンは、気持ちを言葉にすることはもちろん、時には言葉のないコミュニケーションが一番心に響くということを爽やかに謳い上げている。
原作が誕生してから10年。「想いを伝えることの大切さ」を描く本作は、悲しく酷たらしい様々な事件が世間を騒がせている今だからこそ心に響く、極めて今日的な作品であるといえよう。

主人公の今昔亭三つ葉には、TOKIOのメンバーとしての活躍もさることながら、TVのヴァラエティやトーク番組、CM、ドラマ「ダンドリ!」や映画『ファンタスティポ』など多方面の活躍により幅広い層の支持を集める国分太一。本作が映画単独初主演となり落語にも初挑戦、誠実で真っ直ぐな人物像を見事に演じきる。三つ葉の教室に通うことになる十河五月に、モデルのほか、映画『深呼吸の必要』やドラマ「僕の歩く道」等でも絶大なる人気を誇る香里奈。臆病なひねくれものという難しい役どころを魅力的に表現する。同じく生徒の一人となる小学生・村林優役には、関西オーディション(その段から落語を完璧にマスターして登場、平山監督の度肝をぬいた!)で発掘された新星・森永悠希。そして三人目の生徒・湯河原太一には、映画を中心に八面六腑の活躍を続ける個性派・松重豊。また三つ葉の祖母・外山春子に八千草薫が扮し、これまでのイメージとは一味違う気風のいい女性像を披露し、さらには三つ葉の師匠・今昔亭小三文を伊東四朗が演じ、茶目っ気のある存在感と見事な落語で存分に楽しませてくれる。
原作は、最新三部作「一瞬の風になれ」が話題の今、最も注目される女性作家・佐藤多佳子。脚本は『お引越し』『学校の怪談』の奥寺佐渡子、撮影に『ターン』『空中庭園』の藤澤順一、照明は『愛を乞うひと』『レディ・ジョーカー』の上田なりゆきなど、熟練のベテランスタッフが感動の世界を丁寧に紡いでいる。
そして、主題歌を〝等身大の歌〟で日本中から共感を得ているゆずが担当。映画の世界感にインスパイアされたメロディと歌詞が、ラストシーンの幸福感をさらに生き生き清清しく盛り上げてくれる。

ストーリー


今昔亭三つ葉は、二つ目の落語家。普段から着物を纏い、落語は古典だけと決めている。同期の噺家たちは時代遅れだと笑うが、変える気はない。しかし、高座にあがっても客はまばらで、真打には程遠い。師匠である今昔亭小三文の真似ばかりで、自分の落語を見つけられずにいる。

小三文が講師を務めるカルチャースクールの話し方教室に同行した三つ葉は、生徒の中に無愛想だが美人、まるで黒猫のような容姿の女性、十河五月を見つける。小三文の講義途中に退室した十河の態度が気に食わない三つ葉は、追いかけて何故出て行くのか問い質す。「あの人、本気でしゃべってないじゃない!」と十河。戸惑う三つ葉は、今度自分が喋る生の落語を聞きに来いと言う。

三つ葉の本名は外山達也。祖母の春子と二人暮しで、家で茶道を教える春子の生徒、実川郁子に惚れている。ある日、その郁子から相談を持ち掛けられる。大阪から引っ越してきた甥っ子が新しい小学校に馴染めず、苛められているというのだ。落語を覚えて人気者になって欲しいと願う郁子の頼みを三つ葉は断りきれない。

二つ目が集まる早朝寄席。「すげえ美人が来てる!」と騒ぐ若手噺家たちを尻目に高座にあがった三つ葉を、十河が客席から見つめる。思わぬ珍客に頭が真っ白になってしまい、上手く話せず落ち込む三つ葉に、十河はどうしたら喋れるようになるのかと聞いてくる。
外山家に集まった郁子の甥・村林優と十河。二人のために話し方教室を始める事になった三つ葉だが、落語しか教えられない。自己紹介もろくに出来ない十河と、関西弁で調子の良い事ばかりの村林。「まんじゅうこわい」をやってみせても反応もなく、三つ葉は今後が心配になる。

 外山家の教室の噂を聞き、怪しい男が訪れる。巨体にサングラスと大きなマスク。大の阪神ファンの村林は、見るからに怪しいこの男が元プロ野球選手の湯河原太一だと言い当てる。今は解説者になったが、あがり症で話し下手な湯河原は、なんとか克服したいと思っていた。しかし無愛想な十河、お調子者の村林に、不器用な湯河原という組合せがうまくいくはずもなく、早速衝突してしまう。

ひょんなことから十河とほおずき市へ行くことになった三つ葉。別人のような十河の浴衣姿に見惚れるが、どうにも十河は機嫌が悪い。ほおずきを買ってやると言っても、いらないと言う。聞くと、去年のほおずき市に一緒に来た男にフラれたらしい。静かに涙を流す十河に、かける言葉が見つからない三つ葉。数日後、十河の実家のクリーニング屋に、ほおずきが届けられる。三つ葉からだ—十河に笑みがこぼれる。

話し方教室はなんとか続いているが、湯河原はやる気がない。それどころか村林の落語を子供だましだと馬鹿にし、彼が応援する阪神の悪口を言う始末。「それ、解説で言えば?」野球中継も偉そうにやればいいと十河に罵られた湯河原は、怒って出て行ってしまう。
られた湯河原は、怒って出て行ってしまう。

図書館で会った郁子と歌舞伎の約束をした三つ葉は、喜び勇み、金を工面してチケットを用意する。しかし渡そうと思った日、彼女が来年結婚することを知ってしまう。自分の想いを伝えられず、心にもなく祝福する三つ葉。チケットをご祝儀としてあげてしまい、彼女が作ってきた妙な味の弁当をヤケ食いする。

落語は上達しない。話し方教室は上手くいかない。好きな女にフラれた。どん底の三つ葉が向かったのは末広亭。小三文の落語を聞いた三つ葉はあらためて実感する。「俺は師匠の噺が好きです。八代目小三文にはなれないかもしれない。それでも俺は喋ります」そう言った途端、倒れこむ三つ葉。郁子の弁当が腐っていたのだ。病院で点滴を受けながら、小三文から一門会の開催を聞いた三つ葉は、師匠の十八番「火焔太鼓」に挑戦することを決める。

枝雀師匠の上方落語「まんじゅうこわい」を覚えた村林は、湯河原に見せつけてやると言う。それを伝えに湯河原が手伝う焼き鳥屋にやってきた三つ葉は、毒舌だが経験があるからこそ話せる湯河原らしい野球の解説をすすめる。しかし逆に湯河原から「お前はどうなんだ」と問われ戸惑うのだった。

クラスのボス・宮田と野球対決をすることになった村林に、湯河原がバッティングを教える。感謝する村林に湯河原は伝える。「阪神、好きなんだろ。逃げるな。好きなものから逃げると一生後悔する」

十河も江戸版の「まんじゅうこわい」を覚え、上方版を喋る村林とともに発表会をやる事が決まった。三つ葉の一門会も近づき、それぞれが稽古に熱中する日々。しかし三つ葉はあいかわらず自分の「火焔太鼓」をつかめず、小三文から呆れられる始末。一門会まで話し方教室を休みたいと十河に伝えにきた三つ葉は、なぜ落語教室に来ているのか問いかける。「みんな、本気でなんとかしたいって思ってる。今のままじゃだめだから、なんとかしようって」十河の言葉が胸に響く三つ葉。

そんな中、村林がいなくなったと連絡が入る。宮田との野球対決に負けたのだ。皆で必死で探した末、外山家の押入れに隠れていた村林を見つけた三つ葉は、思わず手を上げてしまう。泣き出す村林を見て、三つ葉は我に返る。落ち込み、屋台で酒に酔った三つ葉は、十河と湯河原に教室をやめると言い出す。「落語やったって性格変わんないぞ。どうなりたいんだよ。好かれたいのか?」怒りながら、何を言っても嫌われない三つ葉のようになりたかったと告げて立ち去る十河の背中を、三つ葉は複雑な心境で見つめる。

翌日はいよいよ一門会。二日酔いの三つ葉は寝坊して会場に駆け込む。満席なのに、体調は最悪。お囃子が鳴り始める。もう後には引けない。舞台袖で深呼吸する三つ葉。腹を据えて高座に向かって歩き出した。

ついに「火焔太鼓」を披露する三つ葉。そして発表会「まんじゅうこわい東西対決」を控える十河と村林、そして湯河原。それぞれの気持ちは、本当の想いは伝わるだろうか……。

スタッフ

監督:平山秀幸
原作:佐藤多佳子(新潮文庫刊)
脚本:奥寺佐渡子
製作:『しゃべれども しゃべれども』製作委員会
プロデューサー:渡辺敦、小川真司
撮影:藤澤順一
照明:上田なりゆき
録音:小松将人
美術:中山慎
編集:洲崎千恵子
音楽:安川午朗
音楽プロデューサー:安井輝
落語監修・指導:柳家三三、古今亭菊朗
主題歌:ゆず「明日天気になぁれ」

キャスト

国分太一
香里奈
森永悠希
松重豊
八千草薫
伊東四朗

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