卍 まんじ
2005年/日本/80分 配給:アートポート
2006年04月28日よりDVDリリース 2006年3月25日よりユーロスペースにてレイトショー
(c)2005 アートポート
公開初日 2006/03/25
配給会社名 0014
解説
禁断の果実の味を知ってしまった女。その先に待つのは世にも美しき地獄。
女と女。肉体と肉体。欲望と欲望。些細な好奇心からはじめた遊戯がいつしか陶酔へと変わり、許される肉欲に自我を開放しながら気づかぬうちに破滅へと向かう。そこにあるのは嘘か真か。幻か現実か。ただひとつ確かなのは、一度足を踏み入れてしまった禁断の世界を失って生きるこの世は地獄、ということだけ…。
文豪・谷崎潤一郎によって1928年(昭和3年)に発表された問題作「卍」。同性愛をテーマに、稀有な経験を告白するひとりの女の説話体で描かれたこの小説は、昭和がはじまったばかりの日本にセンセーションを巻き起こした。古くは鬼才・増村保造監督が手がけた若尾文子と岸田今日子主演作や、樋口可南子が体当たりの熱演を見せた作品、果てはドイツとイタリアの合作など、今までに幾度となく映画化されたこの官能物語を原作に、当代きっての異端監督とふたりの美しい女優により、今ここに新たな衝撃作が誕生した。
弁護士の夫を持ち、社会的にも経済的にも恵まれた生活を送る女、園子。何不自由なく毎日を過ごす彼女の前に現われた妖艶な女、光子。美術学校で出会ったふたりは、光子の提案によって奇妙な関係を結ぶ。それは光子の婚約を破談にするため、ふたりが同性愛であるかのごとくふるまうこと。当初は戸惑った園子ではあったが、光子の神々しいまでの美しさに魅了され、園子の夫をも巻き込んで次第に悦楽の迷路にまよいこんでいく。本作はそんな園子の回想を通し、究極のエロスとタナトスが大胆に描かれるのである。
主演の園子に、写真家・荒木経惟に見初められて以来、8年の長きに渡って彼の創作活動のミューズとなり続けた秋桜子。視線ひとつで女の嫉妬と悦びを体現する彼女は、さすが天才アラーキーを虜にした魅力に満ち溢れている。対する光子に『フィラメント』『花と蛇2』の不二子。眩しい肢体を惜しげもなくさらけ出し、エキセントリックな役柄に説得力を与える。また園子の夫、謙二にドラマ「教師びんびん物語」で一生を風靡し、近年は『花と蛇』『コアラ課長』などで存在感を発揮する野村宏伸。不二子の婚約者に『恋する幼虫』『真夜中の弥次さん喜多さん』をはじめ、映画、舞台、テレビで強烈な個性を放つ荒川良々。監督・脚本は『クルシメさん』『恋する幼虫』「楳図かずお恐怖劇場」の一編『まだらの少女』と、その特異な作風が絶大な支持を集め、カルトな人気を誇る井口昇。背徳の物語をコミカルなまでにカリカチュア化し、究極の純愛映画の域にまで高めた彼の手腕が存分に堪能できる。
ストーリー
出会いは、天王寺のとある美術学校だった…。
弁護士を夫にもつ裕福な園子(秋桜子)は、学校の校長に「あんたの絵はちっともモデルに似とらんようですや。誰ぞ他にモデルあるのんではありませんか」と揶揄され、悔しさのあまり泣いていた。すると背後からそっとハンケチを差し出す女性がいた。それがモダンな洋装の光子(不二子)だった。彼女によると、校長は光子の金持ち息子との結婚話を破談にするために、2人を同性愛者に仕立てて陥れようとしているのだという。
「なぁ、いっそのこと同性愛ごっこしているところを見せびらかして、校長に泡ふかせてやりたいわ!」
意気投合した2人は早速手を握り合い歩き出した。
ところが、2人の付き合いは、本当に“ごっこ”を越したものとなるのだった。園子は夫が不在の間に光子を家に呼び、昼日中から肌を重ね合わせるようになる。園子は光子の美しい肉体にすっかり魅せられてしまった。
しかし、その関係はすぐに園子の夫、謙二の知るところなり、2人は会うことを固く禁じられてしまう。光子への思いが限界に達した時、園子は顔中に湿疹が出来てしまう。心配した夫はしぶしぶ光子との付き合いを許すことにした。
そして再び、夫公認のもと、これまで以上に濃厚な付き合いを繰り返すようになった園子と光子だったが、そんな日々はいつまでも続かなかった。実は、光子には婚約者がおり、その男がどうしようもない奴だったのだ。綿貫というその男は言葉巧みに園子に近づき、“2人で光子を愛し、抜け駆けは許さない”という誓約書に血判を押させた。そして、その誓約書を謙二に突きつけ脅迫してきたのだ。
光子は園子に、睡眠薬を飲んで昏睡状態になり、綿貫に心中したと思わせようと提案。二人は寄り添い、同時に薬を口に流し込んでいく・・・。朦朧とした意識の中で、園子は光子と謙二が接吻しながら倒れていくのを見た。あれは幻だったのか、現実だったのか・・・。
スタッフ
原作:谷崎潤一郎『卍』(中央公論新社刊)
監督・脚本:井口昇
キャスト
秋桜子
不二子
荒川良々
吉村実子
野村宏伸
LINK
□公式サイト□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す