原題:L' Annulaire

この靴をはいたまま、彼に封じ込められていたいんです

2005年/フランス/カラー/100分/ 配給: エレファント・ピクチャー

2007年03月02日よりDVDリリース 2006年9月23日よりユーロスペースにてロードショー

公開初日 2006/09/23

配給会社名 0244

解説


全国の書店員が選ぶ第一回本屋大賞、そして第55回読売文学賞に輝いた『博士の愛した数式』の映画化とヒットが記憶に新しい小川洋子。1991年には、「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞している。まるで大人のための童話とも言えるほど、少しだけ現実離れしていて思わず背筋がゾクっとしてしまうような美しい物語を多数発表しており、多くの読者を魅了している作家である。『薬指の標本』は、フランスでは「L’ANNUIRE」(薬指)というタイトルでACTES SUDから出版されている。原作を読んだフランス人のディアーヌ・ベルトラン監督は、“示唆に富んだ印象的な世界観”と“少しのアクシデントがヒロインを何が起こってもおかしくない状況に追い込んでいくストーリー展開”に大きく心を動かされ刺激を受けたという。映画化する際の脚色にあたって、男に従属する女の顔の下にある、一体「何」がこのイリスという、若く美しい女性をヒロインたるものにしたかという部分がポイントになると思った。そして、イリスはどうすれば欲望が導く先へ行けるのかを知っていて、例えそれが危険だったとしても自分の意思で何とかそこへ行こうとする。ただ従順なだけの女ではないというところが彼女をヒロインたらしめる点であると理解した上で演出した。
小川洋子はどの小説でも、まずは場所と手がかりとなる事実のみから始め、空間がはっきりとしたところで人物を登場させる。そして物事や肉体を決して分析にならぬよう感情抜きで観察する。

あまりにも密やかな愛の物語。イリスは不思議な雰囲気をたたえた標本技術士に惹かれ、新しい世界に足を踏み入れた。

この物語は、働いている工場での不慮の事故で薬指の先端を失ってしまい、その不幸な出来事をきっかけにイリスがそれまで送ってきた生活のバランスを崩すことから始まる。かつての生活と新しい生活。そこにはどうしても埋めなければならない溝が生じ、新しい未来への道を選び取ることへのきっかけとなっていく。そしてさらに標本技術士との出会いが、イリスが新しい世界に足を踏み入れる決定的なきっかけとなる。彼女の新しい生活の拠点となる標本室は、物語に緊張感を与える大切な場所となる。そこは最小限の家具と色しかない静寂の場所だが、イリスにとっては標本技術士の存在を肌で感じることができる“生”の場所である。彼女はそこにある全てのものに意味を見出し、危険の予兆が何度あったにも関わらず、その静寂にずっと身を置いていたいと思ってしまうのだ。

ヒロイン・イリス役には、“シャルロット・ゲンズブール”“ヴァネッサ・パラディ”に続くフレンチロリータ、スーパーモデルのオルガ・キュリレンコをキャスティング。謎の多い標本技術士にはベテラン俳優マルク・バルベ。

若さゆえの無防備さと美しさ、そして控えめだけれども男性の胸をざわつかせる存在感を兼ね揃えたヒロイン・イリスのキャスティングが最初の難関だった。ベルトラン監督は、美しくて自然であり、そして繊細な人物を求めていた。そしてベルトラン監督がイリス役に選んだのは、13歳の時にモスクワの地下鉄でスカウトされたウクライナ出身のモデル、オルガ・キュリレンコだった。オルガは、ヴァンクリーフ&アーペル、ヘレナ・ルビンスタイン、クラランスなどの一流ブランドの広告を飾り、エル、フィガロ、マリクレール、グラマーなど一流ファッション誌の表紙も多数飾っていた。ベルトラン監督はオルガのことを「彼女は骨の髄までイリスでした。彼女に残る微かなロシア語のアクセントまでが、よそ者の雰囲気を醸し出していました。誰が見ても文句のないキャスティングだったと思います。」と言う。
そして標本技術士には、存在感とカリスマ性を備えたベテラン俳優マルク・バルベをキャスティングし、スクリーンテストの段階で2人がそれぞれの役にぴったりだと監督は確信した。本作は2005年5月にフランスで公開され、ジャーナリストたちからの高い評価を得た。

ストーリー

スタッフ

原作:小川洋子
監督:ディアーヌ・ベルトラン
製作:ブリュノ・ベルテミー
撮影:アラン・デュプランティエ
美術:ティエリー・フランソワ
音楽:ベス・ギボンズ
衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
配給:エレファント・ピクチャー

キャスト

オルガ・キュリレンコ
マルク・バルベ
スタイプ・エルツェッグ
エディット・スコブ
アンヌ・ブノワ
ハンス・ジシュラー
ソチグイ・クヤテ
ドリア・アカー
ルイ・ド・ヴィンター

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