原題:hurricane streets

思春期が、一番美しい時だと、誰にもいわせない。 そこは、夢の居場所。

'97年サンダンス映画祭 監督賞・撮影賞・観客賞受賞 第10回東京国際映画祭ヤングシネマ・コンペンション出品 モーガン・J・フリーマン監督 ブレンダン・セクストン・サード第1回主演作

1997年/アメリカ映画/カラー/ビスタサイズ/89分/日活

2000年4月21日よりビデオレンタル開始 1999年8月28日よりシブヤ・シネマ・ソサエティにて公開

ビデオ時に変わった場合の題名 ハリケーン・ストリート

公開初日 1999/08/28

配給会社名 0006

解説

大人たちに見捨てられた少年少女たちは、いつの時代も自分が置かれている閉塞状態から逃げ出すことを夢見て生きている。安息できる「スペース」は一体、地球のどこにあるんだろう、と。
トリュフォーの名作「大人は判ってくれない」から最近の「KIDS」へ、傷つきやすい思春期の少年が犯罪に手を染めていくローティーンを描いた映画は、社会環境の悪化にともない、その姿をクールに生々しく変化させている。そのなかに新たな希望の一ページを記すような、魂あふれる新鮮な映画が登場した。いまや次代を担う逸材監督の発掘場となっているサンダンス映画祭で、観客賞、監督賞・撮影賞の3冠を獲得した、モーガン・J・フリーマン監督の衝撃のデビュー作だ。
舞台はNYのロア・イーストサイド。主人公は15歳の夏を迎えたストリート・キッド、マーカス。仲間たちと万引きを繰り返す彼の不安と絶望、夢と恋、そして脱出をめぐる切なくもピュアーな思春期ストーリーだ。マーカスは父親を亡くし、母親は服役中。バーを経営する祖母のもとで育てられているが、彼の不安は増すばかり。彼の夢は、母親が出所したら、一緒に生まれ故郷のニュー・メキシコへ帰ること。が、彼の夢は次第にうち砕かれていく。そんななか、父親の虐待に怯える14歳の少女との出会いが、彼に新たな希望と旅立ちを決意させる展開だ。
少年マーカスの視線を通し、都市の物憂い雰囲気がドキュメンタルな映像でリアルに捉えられていくシャープな演出。彼が使うぜんそく用の吸器も都市の閉塞状況をシンボリックに示す感じで、としの澱んだ空気が一層彼にのしかかる。かといって、最新の「KIDS」のような無軌道にキレる少年たちは出てこない「人を殺したり、ヤクを売ったわけじゃない」と警察で抗弁するマーカスは、自分なりの論理感を貫くピュアーな少年像「ウェルカム・トゥ・ドールハウス」で注目されたブレンダン・セクストン・サードが、抑えた演技で思春期の不安を等身大で演じているのが印象的で、全米公開時も彼の体現するティーン像に共感する若者たちが多かったといわれる。彼が大人たちが仕掛けたハードルを飛び越え、愛するメレーナと列車で脱出するスリリングな展開は、90年代流の「卒業」といった趣。ただし、彼の先に「スペース」はあるのか。放心したような最後のマーカスの表情。彼の視線の先に危うい不安な未来を突きつけてくる。
共演の少年少女たちはいずれもキャリアの浅い新人ばかり。チップ役のデヴィッド・ローランド・フランクは英国の舞台を経験しているが映画は2本目。ベニー役のカルロ・アルバンは「セサミ・ストリート」のレギュラー、デブのハロルド役のアントン・マックリーンはTVCMの売れっ子だが映画は初出演、ルイス役のムツン・ガント、爽やかな少女のイメージを醸すレーナ役のイザドラ・ヴェガはいずれも映画初出演。脇をかためる大人たちは祖母役にウディ・アレンの「マンハッタン殺人ミステリー」「アメリカの災難」などのリン・コーエン、メレーナの父親役にスパイク・リーの「ドゥ・ザ・ライトシング」のショーン・エリオット、母親役にインディ映画のベテランでハル・ハートリー作品などで知られるエディー・ファルコ。そして、「ウェルカム・トゥ・ドールハウス」でブス役を好演し、その後「54・フィフティー・フォー」などで活躍中のヘザー・マタラッゾがメレーナの友だちアシュレー役でカメオ出演している。撮影はエンリック・ケディアックで、NYのロア・イーストサイド(川や橋の情景などのロケが効果的)をリアルな質感で捉えた映像も見ものだ。

ストーリー

NYマンハッタンのロア・イーストサイド。夏休みに入った高校生のマーカス(ブレンダン・セクストン・サード)は、チップ、ハロルド、ルイス、ベニーという4人の仲間と店で万引きするストリート・キッズのリーダーだ。盗んだあとは待機しているチャリンコで素早く逃走。CDやスニーカーなどの盗品は小学生相手に売りさばく。彼らは川沿いの爆弾シェルター跡に設けた地下の隠れ家で、一息つく。ここは彼らが安らげる唯一の場所だ。
マーカスは父親を5歳で失い、母親(イーティー・ファルコ)は密入国者を手助けした罪で服役中。バーを経営する祖母のルーシー(リン・コーエン)のもとで暮らしている。が、ぜんそく持ちで吸引機を使っているマーカスには、空気が薄汚れた都会は安息の場所じゃない。彼の夢は母親が仮出所したら、生まれ故郷のニューメキシコに帰ることだ。叔父がきっとニューメキシコ行きの飛行機のチケットを送ってくるはずだ、と彼は信じて疑わない。祖母の店に出入りする元ヒッピーの中年男マック(L.M.キット・カーソン)は、そんなマーカスを父親のような眼差しで見つめていた。
マーカスは15歳の誕生日の前日、14歳の少女メレーナ(イザドラ・ヴェガ)と出会い、すぐに恋におちた。彼女を誕生日に誘った。でも、メレーナの父親は娘の行動に厳しく目を光らせ、夜の外出を許さない。メレーナは父親の目を盗み、マーカスのもとへ行き、誕生会の贈り物に帽子を贈った。誕生日の翌日、念願の飛行機のチケットが届いた。夢は近づいたかに思えた。
しかし、マーカスの周りでは、ハリケーンの到来を予感させる暗雲がたれ込み始めた。仲間はますます犯罪意識がエスカレートし、自動車を盗む計画まで出る始末。とくにチップ(デヴィッド・ローランド・フランク)はマイアミから来たチンピラ2人に感化され、タトゥーを入れたり、ヤクに手を出したり、危ない道につき進もうとしていた。そんな中、警察にマークされていたマーカスが小学校の前で刑事に補導された。「ひとつ、ふたつものを売っただけ。人を殺したり、ヤクを売ったわけじゃない」とうそぶくマーカスに「お前も母親のようになるぞ」と刑事から意外なことを聞かされた。母親の罪は殺人罪だったのだ。母親に面会したマーカスは、殺した相手が父親だったと知った。父親の暴力に耐えかねての犯行だった。マーカスの心のなかでニューメキシコ行きの夢が壊れていく。
彼が隠れ家にもどると、警察に追われ逃走中のマックが来ていた。警察に追われケガをしていた。マーカスは彼にニューメキシコ行きのチケットを渡した。マックが密かに送ったチケットとも知らずに。
マーカスの思いはいまや、メレーナに向かっていたが、川縁で密かにデートを楽しむふたりをメレーナの父親が容赦なく引き裂いた。彼女を救い一緒に旅立にでたいという想いが、マーカスの心をめぐる。犯罪がエスカレートすることに反対だったマーカスも、旅費の足しにするため、ルイスの手引きでアパートに押し入ることを決意する。決行前、マーカスはメレーナの家を訪れ、親父を殴り倒し、メレーナを連れもどした。「旅に出よう」とマーカスはメレーナを誘った。ペンシルバニア駅で明朝10時に落ち合うことを約束した。マーカスは仲間と犯行に及ぶが、そのころ、メレーナの父親はマーカスの隠れ家を探しあて彼らの帰りを息を潜めて待っていた・・・。

スタッフ

監督:モーガン・J・フリーマン
脚本:モーガン・J・フリーマン
   モーリー・マグワイア
製作総指揮:L.M.キット・カーソン
      シンシア・ハーグレーヴ
製作:ギル・ホーランド

キャスト

ブレンダン・セクストン・サード
イザドラ・ヴェガ

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