コールドマウンテン
原題:Cold Mountain
2003年/イギリス・イタリア・ルーマニア合作/カラー作品/全9巻/4,226m/ スコープサイズ/ドルビーSRD/上映時間:155分/字幕翻訳:戸田奈津子 配給:東宝東和株式会社
2004年09月15日よりビデオレンタル開始 2004年09月15日よりDVD発売開始 2004年4月24日より日劇3ほか全国ロードショー
公開初日 2004/04/24
配給会社名 0002
解説
『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞に輝いたアンソニー・ミンゲラ監督が壮大なスケールで描く至高のラブストーリー
激動の時代に生まれた純粋すぎる恋──21世紀の「風と共に去りぬ」
たった一度の口づけで、互いが運命の相手だと知ったインマンとエイダ。南北戦争によって引き裂かれた2人は、堅く心に誓いあう。インマンは、命を賭けてエイダの元に帰り着くことを。エイダは、何があっても彼の帰りを待ち続けることを……。
アカデミー賞9部門を受賞した『イングリッシュ・ペイシェント』で文芸ロマンの巨匠の座を不動のものにしたアンソニー・ミンゲラが、ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、レニー・ゼルウィガーという当代最高のキャストを迎えて放った『コールドマウンテン』。全米公開と同時に絶賛の嵐を巻き起こし、本年度アカデミー賞6部門ノミネート、英アカデミー賞13部門ノミネートの快挙を成し遂げ、ゴールデン・グローブ賞最優秀助演女優賞を始め幾多の賞に輝く本作は、全米図書賞を受賞したチャールズ・フレイジャーのベストセラー小説の完全映画化。恋人が待つ故郷に向けて500キロの道のりを歩み始めた男と、彼を待つためにその場所を離れまいと誓った女が、ただ1つの愛を貫くために繰り広げる生の闘いを、壮大なスケールの叙事詩として描きあげた至高のラブストーリーである。
あなたの瞳を想えば3歩、
唇を夢見て5歩──必ず、帰る。
時代は、南北戦争末期の1864年。南軍兵士としてヴァージニア州の戦場に送られたインマンは、ゲリラ戦に出撃を命じられた結果、瀕死の重傷を負って病院に収容される。回復を待つ間、彼の脳裏に浮かぶのは、3年前に離れた故郷コールドマウンテンの懐かしい情景。そして、出征前にただ一度だけ口づけを交わした恋人エイダの面影だった。この世に1つだけ確かなものがあるとしたら、それは彼女への愛をおいて他にない。その想いに駆り立てられたインマンは、脱走兵として死罪に問われるのを覚悟で、故郷への道を歩み出す。一方、その間に父を亡くす不幸に見舞われたエイダは、生活の手段を失い、窮地に立たされていた。明日の食べ物にも事欠く苦境の中、インマンとの再会だけを心の支えに生きるエイダ。そんな彼女に、救いの手をさしのべる流れ者の女ルビー。彼女の指導を受け、辺境の地で生き抜く術を身につけていくエイダ。そして遂に、エイダの元へ、インマンが帰り着く日がやって来る……。
何度も死の危険と遭遇し、誘惑や裏切りの試練にさらされながら、ひたすら故郷への道を歩み続けるインマン。ホメロスの『オデュッセイア』を彷彿させる彼の波乱に満ちた旅路を、戦争の傷跡を残しながらも、希望を捨てずに逞しく生きる人々のエピソードと共に辿るドラマは、一方で、深窓の令嬢から大地の女に生まれ変わっていくエイダの劇的な成長ぶりを情感豊かに描き出し、観る者の心を揺さぶる。そんな2人の心を結び合わせるシンボルとして、そびえ立つコールドマウンテンの厳しいまでの美しさ。それと呼応するように、極限まで研ぎ澄まされたインマンとエイダの愛。その純粋にして崇高な輝きを、格調の香り高い映像詩の中に封じ込めた本作は、21世紀に誕生した本格ラブストーリーの最高峰として、永く記憶されるものとなるだろう。
現在の映画界でなし得る、
最高に贅沢なキャスティング
主人公インマンを演じるのは、ミンゲラ監督の前作『リプリー』でアカデミー賞候補となり、一躍スターの階段を駆け上ったジュード・ロウ。ロマンスに突き動かされる主人公を演じるにふさわしい美貌の持ち主である彼は、今回もその魅力を十二分に発揮。さらに、故郷を離れて、自分の心は汚れてしまったのではないかと恐れるインマンの繊細さを見事に表現し、観る者に深い感慨をもたらす。そのインマンをどこまでも愛し抜くエイダに扮するのは、『めぐりあう時間たち』でオスカー女優の仲間入りを果たし、名実ともにハリウッドの頂点に立ったニコール・キッドマン。ただ”待つ女”から、強い意志を持って”待つことを選ぶ女”へと変貌するエイダは、現代女性の深い共感を呼ぶに違いない。ニコールは、『風と共に去りぬ』でスカーレット・オハラを演じたビビアン・リーに勝るとも劣らない大女優の存在感を、鮮やかに大スクリーンの中に刻みつけている。彼女と互角の大熱演を見せるのが、エイダのサバイバルの師となり、稀有な友情を育んでいくルビーを演じたレニー・ゼルウィガーだ。『ブリジット・ジョーンズの日記』と『シカゴ』で2年連続オスカー候補となったゼルウィガーにとって、ヴァイタリティ溢れる自然児のルビーはかつてないチャレンジングな役柄。が、出版前に原作を読み、この役柄に惚れ込んでいたという彼女は、エイダとの関係を通じて女らしさを開花させていくルビーに生き生きとした生命力を吹き込んだ。
この完璧なトリオに加え、脇を支える役者陣にも錚々たるスターが揃った。エイダに惜しみない愛情を注ぐ父のモンロー牧師に扮するのは、『普通の人々』から『スペース・カウボーイ』まで、100本を超える映画で活躍を続けているドナルド・サザーランド。だらしなくも憎めないルビーの父スタブロッドには、『ギャング・オブ・ニューヨーク』のブレンダン・グリーソン。インマンが旅の途中で出会う不良牧師には、『リプリー』『マグノリア』などで名バイ・プレイヤーとして活躍するフィリップ・シーモア・ホフマン。同じく、インマンと旅の途中で出会う戦争未亡人には、新『スター・ウォーズ』シリーズのクィーン・アミダラ役でおなじみのナタリー・ポートマン。その他、デイムの称号を持つ英国の名舞台女優アイリーン・アトキンス、『ヘヴン』『ギフト』のジョヴァンニ・リビシ、『サイダーハウス・ルール』のキャシー・ベイカー、『ニル・バイ・マウス』のレイ・ウィンストンといった面々が、印象に残る名演を披露し、鉄壁のアンサンブルを奏でている。
『イングリッシュ・ペイシェント』の
超一流スタッフが再結集
「近年のアメリカ文学の最高傑作」と称されたチャールズ・フレイジャーの原作を、寓話性に富む愛の神話に仕立てあげた脚本は、監督のアンソニー・ミンゲラ自身が担当。回想シーンを巧みに取り混ぜながら、2つの場所にある2つの魂が互いに引き合う姿を、ドラマティックに語り継いでいく構成に、『イングリッシュ・ペイシェント』でも見せた希代のストーリー・テラーぶりを遺憾なく発揮している。
そのミンゲラを強力にサポートするスタッフには、『イングリッシュ・ペイシェント』で各部門のアカデミー賞に輝いた超一流の顔ぶれが再結集した。アメリカの原風景を余すことなくカメラに捉え、一編の映像詩を紡ぎ上げた撮影監督は、『刑事ジョン・ブック/目撃者』『レインマン』でもオスカー候補にあがったジョン・シール。編集は、過去2作でミンゲラと組んでいる他、フランシス・フォード・コッポラ監督とのコラボレーションでも知られるウォルター・マーチ。衣装デザインは、やはりミンゲラ組の一員で、『めぐりあう時間たち』でもオスカー候補になったアン・ロス。素朴な美しさを湛えた旋律を通じて主人公たちのピュアな心情を物語る音楽を手がけたのは、米仏で活躍するガブリエル・ヤール。さらに、プロダクション・デザインを、『ギャング・オブ・ニューヨーク』をはじめ過去6度アカデミー賞にノミネートされているダンテ・フェレッティが担当。ルーマニアの地に、19世紀のノースカロライナを築き上げる大仕事に挑戦し、エピックの趣を湛えた作品の世界観の構築に多大な貢献を果たした。
ストーリー
コールドマウンテン──その名を聞くだけで、胸が痛くなる
帰りたい──あなたがいるから
還らなければ──魂のいるべき場所へ 1864年夏、ヴァージニア州のピーターズバーグ。北軍の包囲攻撃にさらされる南軍の要塞で、インマン(ジュード・ロウ)は不安な朝を迎えた。この戦争に駆り出されてから3年、疲労と食糧不足を耐え忍ぶ日々を送ってきた彼にとって、唯一の心の支えは、出征前に1度だけ口づけを交わした恋人のエイダ(ニコール・キッドマン)と、生きて再会する日が来ることを信じるだけ——。別れの日に彼女に手渡された本と銅版写真、そして3通だけ届いたボロボロの手紙を握りしめながら、インマンは静かにエイダの面影に思いを馳せる。その時、北軍が地下のトンネルに仕掛けた爆弾が炸裂。続いて、一気に要塞を攻め滅ぼそうとする北軍の総攻撃が始まった。かろうじて瓦礫の下からはい出たインマンは、同郷の少年オークリー(ルーカス・ブラック)を助けようと敵の中に飛び込んでいく。だが、その甲斐もなく、オークリーはインマンに看取られて息を引き取った。「先にコールドマウンテンに帰る」という一言を残して。
ノースカロライナ州のコールドマウンテン。険しくも美しい大自然に抱かれたこの山間の開拓地に、モンロー牧師(ドナルド・サザーランド)と娘のエイダが移住してきたのは、3年前のことだった。村の男たちと共に教会の建築に携わっていたインマンは、エイダを一目見た瞬間から、磁器のように白い肌をした彼女の美しさと聡明な輝きに魅せられる。エイダもまた、自然と共に生きるインマンの寡黙で実直な人柄に、街の男にはない魅力を感じた。ほんの束の間の見つめ合い、わずかな言葉の会話だけで、日に日に惹かれ合う2人。インマンは、教師をしていた亡き父の楽譜に、そっと自分の銅版写真を忍ばせてエイダに贈る。そのお返しに、エイダはウィリアム・バートラムの本と自分の銅版写真を持ってインマンのアパートを訪れる。それは、南軍兵士としてインマンが出征する日のことだった。募る愛しさに突き動かされて、エイダを抱き寄せ、口づけをするインマン。あわただしく行進の列に加わった彼の耳には、「お帰りを待っているわ」というエイダの声がいつまでも甘く響いていた。
北軍の陣地を急襲するゲリラ作戦に駆り出されたインマンは、喉に敵の弾丸を受け、瀕死の重傷を負って病院のベッドに横たわっていた。慰問に訪れた1人の女性が、高熱にうなされたインマンにエイダからの手紙を読んでくれる。「まだ戦っているのなら、戦うのをやめて戻って来て。お願いです。戻って来て……」インマンは気付くのだった。自分にとってたった1つ確かなものがあるとしたら、それはエイダへの愛をおいて他にない。もうこれ以上1秒も彼女の他に命を捧げたくはない。1864年9月、歩けるまでに回復したインマンは、夜明けと共に病院を抜け出し、黙々と海岸沿いの道を歩み始めた。辿り着けるかどうかも定かではないコールドマウンテンを目指して。
その頃、コールドマウンテンに残ったエイダも、人生最大の試練にさらされていた。どんな時も自分を優しく見守ってくれた父が、突然この世を去ったのだ。教養はあっても野良仕事などしたことのないエイダは、たちまち生活の手段を失い、明日の食べ物にも事欠く状況に追い込まれる。だが、何があってもインマンの帰りを待ち続けると決めた彼女には、コールドマウンテンを離れるつもりはなかった。そんなエイダの痩せ細る姿を見かねて、隣人のサリー(キャシー・ベイカー)は、流れ者の女ルビー(レニー・ゼルウィガー)をエイダの農場に向かわせた。凶暴な雄鶏を「悪魔の使い」と言って恐れるエイダの目の前で、いともたやすくその鶏の首を絞めるルビー。男も顔負けの農耕の腕と知識を持つ彼女に、エイダは、逞しく生きる術をたたきこまれていく。
一方、徒歩でコールドマウンテンを目指すインマンの旅路は、想像以上に困難なものとなった。道中、黒人奴隷を妊娠させて追放された牧師のヴィージー(フィリップ・シーモア・ホフマン)と道連れになった彼は、脱走兵狩りの危機をどうにか切り抜けた後、牛の解体に手を貸した農夫ジュニア(ジョヴァンニ・リビシ)の小屋で一晩を明かすことになる。が、一見気のいい男に見えたジュニアは、2人を義勇軍に売り飛ばしてしまう。ヴィージーや他の脱走兵と共に鎖でつながれ、絶望の道のりを歩み出すインマン。すると、その行く手に、北軍兵の姿が。南北両軍の銃撃にさらされながら、決死の脱走をはかったインマンは、負傷しながらもただ1人生き残り、山羊飼いの老婆マディ(アイリーン・アトキンス)に拾われる。彼女は、インマンを自分の山小屋へ連れ帰ると、阿片と山羊の血肉でインマンの傷を癒した。「この世には定められた筋書きがあるんだよ」というマディの言葉を胸に、インマンは再びコールドマウンテンへの道を辿り始める。
コールドマウンテンでは、元地主のティーグ(レイ・ウィンストン)率いる義勇軍によって、執拗に脱走兵の捜索が行われていた。サリーの一家に狙いを定めた彼らは、軍を離脱して納屋に隠れていたサリーの息子たちと、夫のエスコー(ジェームズ・ギャモン)を殺害。さらに、サリーに手ひどいリンチを加える。銃声を聞いて彼女の牧場に駆けつけたエイダとルビーは、瀕死のサリーに介抱の手を尽くした。
そんなある日、エイダの農場に泥棒が入る。捕えられた男は、なんとルビーの父スタブロッド(ブレンダン・グリーソン)だった。幼い頃から飲んだくれの父に苦労させられっぱなしだったルビーにとって、それは涙の再会とはいえない出来事だった。しかも、スタブロッドが南軍の脱走兵とあっては、なおさら農場には置いておけない。それでも情を感じずにはいられない父に、ルビーは食糧とコートを与え、山へ送り出すのだった。
その頃、土砂降りの雨の中を歩むインマンは、一夜の休息を求め、ある農家の扉を叩いた。応対に出たセーラ(ナタリー・ポートマン)は、ゲティスバーグの戦いで夫を亡くした若き未亡人で、父親の顔を知らない乳飲み子を抱えていた。インマンを警戒しながらも家の中に迎え入れた彼女は、彼に食事と寝床を提供する。深夜、彼女のベッドに呼ばれるインマン。夫とよく似た背格好のインマンに、何もしないでただそばに寝てほしいと話すセーラ。それが彼女の望みだった。むせび泣く彼女の肩を優しく抱くインマン。それぞれの愛する人を胸に描きながら、2人は眠りにつくのだった。
翌朝、飢えた北軍兵がやって来る。寸前に窓から外へ逃れたインマンは、セーラが兵士たちにレイプされそうになるのを見て、急いで舞い戻る。2人の兵士を倒した彼は、まだ年若い1人の兵士を逃がしてやろうとするが、セーラは彼の背中に向けて、憎しみをこめた銃弾を放つ。
山の中で野宿していたスタブロッドとバンド仲間のパングル(イーサン・サプリー)、ジョージア(ジャック・ホワイト)が、義勇軍に発見されたのは、彼らがエイダやルビーたちとクリスマスを祝った翌晩のことだった。ティーグと腹心のボジー(チャーリー・ハナム)は、スタブロッドを脱走兵と見破ると、その場で処刑を決行する。ただ1人難を逃れたジョージアから知らせを受けたルビーは、無益な殺し合いに腹を立てながら、埋葬の道具を携えて、エイダと共に現場へ向かう。
幸いにもスタブロッドには、まだ息があった。彼を山小屋へ運び、応急処置を施すルビー。エイダは、彼のために食料を探して猟銃を手に山道を進む。彼女が首尾良く七面鳥を仕留めたその時、銃口の向こうに、黒い帽子とコートの人影が浮かび上がった。「行かないと撃つわよ」と、威嚇の言葉を投げつけるエイダ。その口調に驚きの反応を示した相手が、来た道を引き返そうとした時、ようやく彼女は気付く。あれほど待ちこがれていたインマンが、ついに自分の元へ帰って来たことに……。
スタッフ
監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ
製作:シドニー・ポラック、ウィリアム・ホーバーグ
アルバート・バーガー、ロン・イェルザ
製作総指揮:イアイン・スミス
共同製作:ティモシー・ブリックネル
撮影監督:ジョン・シール
編集:ウォルター・マーチ
美術:ダンテ・フェレッティ
衣装:アン・ロス
音楽:ガブリエル・ヤール
原作:チャールズ・フレイジャー「コールドマウンテン」(新潮文庫刊)全米図書賞受賞
サントラCD:ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル
提供:ミラマックス
キャスト
インマン:ジュード・ロウ
エイダ・モンロー:ニコール・キッドマン
ルビー・シューズ:レニー・ゼルウィガー
モンロー牧師:ドナルド・サザーランド
セーラ:ナタリー・ポートマン
ヴィージー:フィリップ・シーモア・ホフマン
ジュニア:ジョヴァンニ・リビシ
ティーグ:レイ・ウィンストン
スタブロッド:ブレンダン・グリーソン
サリー・スワンガー:キャシー・ベイカー
エスコー・スワンガー:ジェームズ・ギャモン
マディ:アイリーン・アトキンス
ボジー:チャーリー・ハナム
渡し舟の少女:ジェナ・マローン
パングル:イーサン・サプリー
ジョージア:ジャック・ホワイト
オークリー:ルーカス・ブラック
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