原題:Ten

世界が乗りこみ、運命は回転する—

2002年9月18日フランス初公開

2002年/フランス・イラン映画/カラー/上映時間94分/35mm(DV撮影)/1:1.66/DTS 配給・宣伝:ユーロスペース

2003年8月2日より、ユーロスペースにてロードショー

公開初日 2003/08/02

配給会社名 0131

解説


世界が乗りこみ、運命は回転する—

■アッバス・キアロスタミが女性の視点で見つめた、世界のすがた。
 イランの首都テヘラン。女性が身につけるチャドルがなければ、そこがどの街かもわからぬまま、ひとりの女が永遠の時間のなかを運転する。彼女のバックグラウンドはほとんどわからない。名前すら授けられていない。車は、初めからそう決められていたかのように、街中の人々を次々に乗せては降ろしてゆく。まるで偶然がいつも間にか乗りこみ、降りていくように。元夫に預けてある彼女の息子、神への信心のみで生きる老女、罪悪感を抱くことすら忘れてしまった娼婦の哀しみと女の嫉妬、愛を失い相容れない人生に思いをはせる女。世界の片隅で語られる、小さな場所での些細な会話。ヒーラーのような存在の彼女の元で、女たちは不満を語り、喪失に震え、静かな諦観を表明する。まるで泉のように水をたたえるかのごとく、世界の片隅で真実は永遠に語られていく。
 自身の生きるありふれた場所にこそ、真実が存在することを改めて知らされる珠玉の作品。初めて女性の視点から、世界を見つめたアッバス・キアロスタミ最新作の誕生です。

■静謐な時間に身を預ける女性たち。その美しさと哀しみと。
 10のシークエンスは、<10話>でのドライバーの女性と息子との会話に始まり、最後の<1話>、同じ息子との会話で終わりを迎える。息子との4つのシークエンスに挟まれる形で、姉や友人、見ず知らずの女性たちとの対話が、車の中で交わされる。車の中での人間模様という点ではジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』が、女性のリアルな行き様を伝えるという点では『彼女を見ればわかること』などが想起されるだろう。カメラが偶然に捕らえた研ぎ澄まされた言葉、不用意にこぼれおちた言葉。必然におこることや、期待されていること、毎日繰り返されることは何も語らない。ただ偶然だけが語りかける。キアロスタミはその偶然をモチーフに変えていく。
 またイスラム圏の映画としてはほとんど描かれてこなかった、現代に生きる女性たちのリアルな行き様や考えが伝えられている点も特筆すべき内容の作品となっている。

ストーリー


<10話> 昼の街・息子アミンと主人公の対話
「アミンはママの子だけど、ママものじゃないわ。世界のものよ。世界で生きている。」
「いったい僕はどうすればいいんだ?」
「ただ真実を見ればいいのよ」

<9話> 昼の街・姉との対話
「そばにいたいと思う気持ちは自然よ。愛する者のそばにね」

<8話> 昼の街・老女との対話
「人間、身軽な方が幸せに生きられるわ」
「死ぬ時は、来た道を戻るだけ」

<7話> 夜の街・娼婦との対話
「必要なもの?セックスとラブとセックスよ」
「あたしがため息つくのは、今が不幸だからじゃない。昔の不幸がそうさせるだけ。あまりにも深く愛しすぎただけ」

<6話> 昼の街・婚約中の女性との対話
「願いはかなうかしら?」
「きっと大きな願いなのね?あるいは欲張ったとか?」
「そうでもないわ」

<5話> 昼の街・息子アミンとの対話
「キスしてくれないの?」
「イヤだ」

<4話> 夜の街・離婚した友人との対話
「彼を失ったと言うけど、人生は失うことなしに生きてはいけないわ。何かを得て何かを失う。その繰り返し。そして今は失う時なの」

<3話> 昼の街・息子アミンとの対話
「ママは分かってない。皆が自分と同じだと思っている」

<2話> 昼の街・ふたたび婚約中の女性との対話
「なぜ泣くの?失うことはつらいことよ。とてもつらいわ。でもいつもなにかを失うのね」
「わからないわ」
「お願い泣かないで。—泣きながら笑ってる」

<1話>
「いつがいい?」
「いつでも」

スタッフ

監督+編集:アッバス・キアロスタミ
製作:マリン・カーミッツ、アッバス・キアロスタミ
使用楽曲:ハワード・ブレイク‘Walking in the air’
配給:ユーロスペース

キャスト

マニア・アクバリ
ロヤー・アラブシャヒ
キャタユン・タレブザデー
マンダナ・シャルバフ
アメネ・モラディ
アミン・マヘル
カムラン・アードル
モルテザ・タバタバイ
バフマン・キアロスタミ
マスタネー・モハジェル
マズダク・セパンル
レザ・ヤズダニー
ヴァヒド・ガーズイ

LINK

□IMDb
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http://www.mk2.com/ten/index.html
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