原題:owl

生き残ったのは女。 すべてを見ていたのは梟。

第16回東京国際映画祭・NCFメディア・セレクション2003出品作品::http://www.tiff-jp.net/

2003年/日本/カラー/ビスタサイズ/119分/ 配給:近代映画協会、シネマ・クロッキオ

2004年08月25日よりDVD発売開始 2004年新春シアター・イメージフォーラムにてロードショー

© 2003 近代映画協会

公開初日 2004/02/07

配給会社名 0118/0196

解説


 今年、創立五十二周年を迎える近代映画協会が、九十才の監督・新藤兼人を迎えて、監督が長年構想してきた「ふくろう」を「三文役者」につづいて製作する。
 製作・新藤次郎、撮影・三宅義行、照明・山下 博、音楽・林 光、録音・武 進、のいつもの新藤スタッフ、美術を新藤監督自身が取組む。
 映画製作のきびしい現状の中で、いまや古典となった「裸の島」の精神に戻り、映画づくりの原点に立ち返って、作品に必要とされるスタッフと要求されるかぎりのリーズナブルな予算で、智恵と情熱を結集する映画づくりに挑戦したいと老いを知らぬ九十才の監督は燃えている。
 内容は、戦後の「開拓村」という舞台で国策にほんろうされた庶民を描く。母と娘に焦点をあてて、過酷な現実を如何に生き抜いていったか、限りなく重いテーマを、サスペンス豊かに、あくまでもリアリズムを超えてデフォルメされた喜劇性の中に描くもの。
 題の示す「ふくろう」は現世の顛末を夜の森の中で一部始終を見ている。美術監督としての新藤監督は、ふくろうの生態研究に没頭して一年、人間とふくろうのからむ映像美を狙って、またも新境地に挑戦する。
 俳優は、主役の母に、大竹しのぶ、娘には伊藤歩(「ユマニテ」所属。岩井俊二監督「スワロウテイル」でアカデミー賞新人俳優賞、優秀助演女優賞)が、二百人のオーディションの中から抜擢され、そのフレッシュな魅力が期待十分である。
 ほか、主な役に抜擢された異色キャストは、故伊丹十三の息子、池内万作(「東宝芸能」所属。最新作「突入せよ!—『浅間山荘事件』」。また、音楽グループ「LP&F」での活躍など多才。)
 蟹江敬三の息子、蟹江一平(「青年座」所属。「すずらん」「光の雨」「陽はまた昇る」。TV、舞台に活躍)。
 あと若手に、大地泰仁(「東俳企画」所属。子役からTV、舞台、映画最新作「模倣犯」。)
 他、いつもの新藤作品に登場する、原田大二郎、木場勝己、柄本明、塩野谷正幸、六平直政、田口トモロヲ他、いずれも個性豊かな面々と異色俳優、魁三太郎(NHK「お江戸でござる」)が抜擢され、かなしくもおかしな世界が、力強く充実した映像で、楽しませてくれる。

ストーリー



 東北のある開拓村で殺人事件がおきた。
開拓村には、当初二十家族が入植したが、不毛な土地の開拓は容易ではなく、つぎつぎと脱落して村を離れ、最後に残ったのは三十八歳の母と十七歳の娘だった。
 この母の両親は、国策にのって満州開拓民となり、敗戦で辛じて一命を保ち、裸で引揚げてきたが、渡満の際に故郷の土地を売り払っていたので、帰るべき土地がなく、再び僻地の開拓地に入植したのだった。
 荒涼たる不毛の地を耕作地に転換するのは不可能に近いことだった。両親は苛酷な労働で飢えて死んだ。二十歳になっていた娘は結婚したが、亭主は都会へ出稼ぎに出たまま姿を消した。こうして、廃墟となった村に女ふたりが残ったのである。
 開拓村の山の向こうにダムの建設がはじまり、ここで働く者たちがくるようになった。
電気料金を払わなかったので、止められていたが、料金を払うと電気屋がきた。止められていた水道の料金を払うと水道屋が水を出しにきた。
 県の引揚援護課の役人もきた。麓の警察の巡査もきた。
 そして、この家を訪れた人たちは、みなどこかへ姿を消した。つまりいなくなったのである。ふしぎな事が起きたのだ。
 そして、母と娘の姿も消えた。
 そして、一年後、飢えた熊が迷いこんできて、人間の骨をくわえだし、警察の知るところとなり、九体の人骨が堀り出されたが、誰が、なぜ、やったのかわからなかった。
 だが、この謎の殺人事件を一部始終見ていたものがいた。
 それは、家の背後の森に棲んでいる梟であった。

スタッフ

製作:新藤次郎
原作・脚本・監督・美術:新藤兼人
ラインプロデューサー:桑原一仁
撮影:三宅義行
音楽:林光
照明:山下博
録音:武進
編集:渡辺行夫
助監督:山本保博
監督助手:金丸雄一
撮影助手:林雅彦
照明助手:大橋陽一郎
録音助手:尾崎聡
編集助手:富永美代子
ネガ編集:渡辺晶子
美術助手:沖山真保
装飾:相田敏春
衣裳:鈴木淳
美粧:新井みどり
タイミング:小椋俊一
オプチカル:関口正晴
効果:佐々木英世
宣伝担当:花安静香
製作経理:吉野三保子
製作進行:本藤雅治

キャスト

ユミエ(母):大竹しのぶ
エミコ(娘):伊藤歩
ダム男A:木場勝己
ダム男B:柄本明
ダムかんとく:原田大二郎
電気屋:六平直政
電気屋上司:魁三太郎
水道屋:田口トモロヲ
巡査:池内万作
引揚援護課の男:蟹江一平
浩二(エミコの幼なじみ):大地泰仁

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