原題:NARC

2002年12月20日全米初公開

2002年/アメリカ/カラー/105分/ 配給:UIP映画

2003年11月21日よりDVD発売開始 2003年11月 2日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年5月24日より日比谷スカラ座2ほか全国公開!

公開初日 2003/05/24

配給会社名 0081

解説


ハリウッドをリードするトップ・スターであり、プロデューサーとしても『ミッション・インポッシブル』、『ザ・エージェント』、『アザーズ』など、非凡な才能を発揮するトム・クルーズが自ら製作総指揮を買って世に送り出した、注目を浴びる必見の作品がここに登場する。

鋭い人間観察と冷徹な語り口。魂を震わせる人間ドラマでありながら、スタイルは刑事たちの捜査を生々しくクールに描きだし単なるエンターテイメントを超えるクオリティを映像にみなぎらせる。新鋭ジョー・カーナハン入魂の演出は、深い人間造形に貫かれギリシア悲劇のような鮮烈な感動を呼ぶ。クルーズが惚れ込み全米の評論家たちがこぞって絶賛したのもうなづける仕上がりとなっている。そしてアメリカ社会の実像に迫りつつ、画面には生きることの哀しみと切なさが漂う。リオッタの製作会社ティアラ・ブルー・フィルムズ第1弾は、トム・クルーズと盟友ポーラ・ワグナーを製作総指揮に戴いて、さらに輝きを増した。これは2002年アメリカ映画屈指の傑作である。

ニック・テリスは正義を信じ、麻薬一掃のため囮捜査に身を投じた警官。だが、任務中に関係のない市民を誤射してしまう。深い悔悟の念に包まれ警官の職を辞そうとする彼だったが、新人潜入警官殺人事件が起き、その捜査を担当するように要請される。幼い赤ん坊を抱えた妻の反対に耳を傾けながらも、彼の人間としてのモラル、責任感は断ることを許さなかった。しかし、被害者のパートナー、ヘンリー・オーク刑事との捜査は、彼にさらに深い葛藤をもたらすものとなる……。

正義や信頼が通用しないジャングルに潜入していくうちに、次第に人間性を喪失せざるをえないNARC。映画はその苛酷な世界をリアルに切り取りながら、そこに身を置いてもなお職業人としての誇りを失わず家族を想う父親、夫でありたいと願うテリス、そして憑かれたようにパートナーを殺した犯人を追うオークの姿をみごとに浮き彫りにする。性格も仕事ぶりも正反対のふたりはお互いが触媒となって、はからずも自分の弱さを露呈しあうことになる—きれいごとではないキャラクターに血肉を通わせた俳優たちの迫真の演技がこの作品の大きな魅力となっている。

主人公テリスに扮するのは日本でも大ヒットシリーズとなった『スピード2』で注目され、ブラッド・ピットと共演の『スリーパーズ』などで知られるジェイソン・パトリツク。1990年代初頭から“アメリカ映画界最高の若手俳優”と調われた彼が、人間らしさを失うまいとあがきながら真相解明に突き動かされるヒーローを、内面的な演技で肉付けしていく。さまざまなジャンルに挑んだ経験がここに花開いたよう、この作品の豊かな表現力によって彼の存在は再び注目されている。

オークを演じるのはマーチン・スコセッシの『グッドフェローズ』に抜擢されて、演技カを称えられて以来『不法侵入』や『ブロウ』、『ハンニバル』などなど、強烈な個性をスクリーンから放ち続けるレイ・リオッタ。この脚本に惹かれた彼は、自らのプロダクションの第1回作品に選び、プロデューサーにも名を連ねている。短気で暴力的、頑なでありながらも心のうちに熱い人間性を秘めたオークを、深みのある演技で巧みに具現化。演技力に定評のあるリオッタの、まさに魂を込めたパフォーマンス。間違いなく彼の代表作の1本となった力演ぶりである。

ふたりを囲んで、『ハイヤー・ラ一二ング』や『小説家を見つけたら』など俳優としての顔を持つラッパー、パスタ・ライムス。『60 セカンズ』のチー・マクブライド、テレビの「ロボコップ」などで活躍
するクリスタ・ブリッジス、同じくテレビ版「ニキータ」のアラン・ヴァン・スプラング、『ハードボール』(V)のアン・オープンショーまで、地味ながら充実した顔ぶれが揃っている。

オリジナリティにあふれ、細部まで練った脚本を書き上げ、ふたりの火花の出るような演技を引き出したのはジョー・カ—ナハン。どこまでもリアルでテンションの高い描写のなかに、これまでの刑事サスペンスの枠を超えて人間の本質をみすえていく卓抜した演出は、これが2本自の長編劇映画監督とは思えないほどだ。

フィルムノワールの本質を理解しつつ、1970年代の刑事アクションにもオマージュを捧げてみせる。ぎりぎりするような緊張感とほとばしるエネルギーはまさにセンセーショナルの一語。製作費7000ドルのデビュー作『ブラッド・ガンツ』(V)で一部に熱狂的な支持を集めた彼だがこの作品でアメリカ映画界期待の新星として名乗りをあげた。この作品の
後もハリソン・フォード主演の『A Walk Among the Tombstones』が決定し、21世紀を背負う逸材として評価が高まっている。

どこまでもリアルにデトロイトの陰影を切り取る撮影は『25年目のキス』のアレックス・ネポンニアシー。美術は『X一メン』にも参加したグレッグ・ビールと『ビッグ・ヒット』のターヴォ・ソオドァ。編集は『ビリー・マジソン』(V)や『西洋鏡/映画の夜明け』などで知られるジョン・ギルロイ。音楽は『トラフィック』のタリフ・マルティネスなどなど、スタッフも実力派が居並ぶ。

NARC、それはアメリカの俗語で①麻薬捜査官、麻薬取締官、麻薬。②密告者、たれ込み屋③いやなやつという意味を持つ(ランダムハウス英和大辞典調べ)。この作品は、アメリカの都市のなかでもっとも貧富の差が激しく荒廃が進むデトロイトを背景に、題名通り、ひとりのもと麻薬潜入捜査官に焦点を当てる。

ストーリー


静かな住宅街に大きな物音が響いた。必死の形相の男が外に飛び出し、その後に、銃を構えてもうひとりの男が追いかけていく。追うのは麻薬潜入捜査官ニック・テリス(ジェイソン・パトリック)。彼の正体を知った売人のエルヴィンが銃を手に必死の逃亡をはかっている。裏道を、時には他人の家をすり抜けて走るエルヴィンは邪魔する男を撃ち倒し、遊んでいた幼児を抱き上げた。テリスは銃を放つが弾は犯人に命中しただけではなく、子供の母親にも当たってしまう。テリスは応急処置を施すが、妊娠していた彼女の身体からは大量の血液が流れ出した……。

18か月後、停職中のテリスは諮問委員会に呼び出された。彼と同じく潜入捜査をしていた麻薬課刑事、マイク・カルベス殺害事件の捜査に協力してほしいとの依頼で、犯人逮捕に繋がれば全面的な復職を認めるというものだった。市民を殺してしまったことの悔悟から警官という職業を辞めようと心に決めていたテリスだったが、殺人課のチーヴァース警部(チー・マクブライド)の説得に心は揺れた。資料を読むだけでもという警部の提案に背中を押されて、彼は事件報告書と向き合う。資料や報告書、現場写真を調べる彼は、カルベスの遺留品のなかから家族写真をみつけだした。妻とふたりの幼い娘と微笑むカルベス。家族を残して死んでしまったのが、もし自分だったら……テリスの心は捜査に挑む方向に傾いていく。

報告書の多くには、カルベスとパートナーを組んでいたヘンリー・オーク警部補(レイ・リオッタ)のサインが記されていた。当初は捜査の指揮をとっていたのに、なぜが外された事実を知る。遺体の第一発見者でもあり、熱血漢で知られるオークは、捜査の荒っぽさでも並外れていて、署内で注意人物とされていた。テリスは彼を捜査に戻すように進言するが、そのことから彼とチームを組むことに応じてしまう。夫が警官の現場に戻ったことは、妻オードリー(クリスタ・ブリッジス)の不安を煽った。最近で精神状態も落ち著き、育児にも協力的な申し分のない夫だが職務に誠実なあまり、囮調査中はドラッグに苦しむジャンキーそのもの。あの日々が再現されるのかと考えただけで、彼女はやり場のない怒りを覚えた。それでもオークと組んで現場に戻ったテリスは、精力的な聞き込みを開始した。

カルベスのタレコミ屋だったオクタビオを締め上げバスタブに漬かったまま2、3週間は経つとされる死体と遭遇。現場に残されていた銃が特別機動隊の銃器だったことから、テリスは警察内部から武器が流出しているのではないかと疑いはじめる。

次第に家族の話を交わす程度に打ち解けてきたテリスとオークだったが、テリスがカルベスの自宅を訪問したことに、オークば激怒した。何か引っかかりを感じたテリスは、署に戻ってカルベス夫婦について検索をかける。しかしカルベス夫人(アンナ・オープンショー)の情報は非開示処置がとられていた。納得できない彼は改めて資料にあたり始める。すると、カルベス本人がドラッグからの回復プログラムを受けていた事実に突き当たった。

一方でドラッグの前科者を洗っていくうちに、混合麻薬で救急病院に運ばれて逮捕されたシェップスに行き当たる。部屋を捜索すると冷蔵庫からドラッグと一緒に拳銃、さらには3年前に殺された刑事の警察手帳が出てくる。思わず、油断していたふたりに、シェップスは隠し持っていた銃を向ける。オークは彼を射殺するが、その前にテリスが撃たれてしまった。

入院したテリスは、見舞いにきた妻から家を出ると宣言をされる。身も心も傷を負った彼は、シェップスを犯人として事件にけりをつけようとする警察上層部に反旗を翻し、ますます捜査に打ち込んでいく。やがて、混合麻薬をシェップスに売った男ダーンネル・ペリー(パスタ・ライムス)が捜査の線上に浮かびあがり、半年前に閉鎖したタイタンズ自動車とそこに勤務していた男たちの存在が炙り出された。

膿室となっているはずの工場に直行したテリスとオークは、ダーンネルと相棒のスティーズと激しい銃撃戦の後、ふたりの身柄を確保した。オークはダーンネルの車のトランクからカルベスの銃を発見する。カルベス殺人について問いただすテリスに、ダーンネルぱ鷺樗の事実を供述していく……。

スタッフ

監督・脚本:ジョー・カーナハン
製作総指揮:トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー
撮影:アレックス・ネポンニアシー
編集:ジョン・ギルロイ
音楽:クリフ・マルティネス

キャスト

ニックテリス:レイ・リオッタ
ヘンリー・オーク:ジェイソン・パトリック
ダーネル・ビアリィ:バスタ・ライムス
チーヴァース警部:チー・マクブライド
オードリー・テリス:クリスタ・ブリッジス
マイケル・カルベス:アラン・ヴァン・スプラング
フリーマン・フランクス:アラン・C・ピーターソン

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