誰からもこよなく愛された世界一幸福な犬の物語

2003年/日本/カラー/DTSステレオ/109分/ 配給:シネカノン

2004年02月06日よりビデオリリース 2004年02月06日よりDVDリリース 2003年7月5日より銀座シネ・ラ・セット、新宿シネマミラノにて夏休みロードショー

公開初日 2003/07/05

配給会社名 0034

解説


ある日、さまよいついた野良犬がそのまま学校に住みつき、クロと名付けられて12年間の生涯のほとんどを学校で過ごした。校内を自由に閑歩し、守衛さんの夜警に付き添い、時には職員会議にまで参加.職員名筆にも番犬として記載されたクロ。彼女の死が伝わると何千人という人々が葬儀に集い、学校葬として校長が弔辞を読んだ。出会い、友人との永遠の別れ、切ない恋心、母の愛。4,800人の生徒たちと青春をともに生きた一匹の犬とモの存在に勇気づけられ、励まされた生徒や職員たちの心の交流を暖かく拙いた珠玉の感動作、それが『さよなら、クロ』である。
 1961年から長野県の松本深志高校に実在したクロの物語を、『バタアシ金魚』『トイレの花子さん』『アカシアの道』の松岡鍵司が監督、撮影は『KT』『青い春』の笠松則通。『バタアシ金魚』以来の名コンビであるふたりが強力タッグを組んで、重厚な歴史の重みを醒し出す松本深志高校でのロケを敢行、こうして郷愁を感じさせる風光明媚な景色、澄んだ空気感と愛くるしいクロの魅力をスクリーンいっぱいに描き出すことに成功した。
主演はクロと温かな交流を続ける亮介役に『ウォーターボーイズ』の妻夫木聡。テレビやCMはもちろん、映画でも話題の新作が続<今、女性誌などでも熱いまなざしを注がれる人気俳優が、17歳から28歳までの亮介の成長と変化を、大いなる共感のうちに感動的に演じきった。初恋の思いに揺れ、クロによって命を助けられるヒロイン、雪子には『スワロウテイル』『のど自慢』での透明感あふれる演技が印象深い注目株、伊藤歩。そのほか、『十五才・学校1V』の金井勇太、『GO』『青い春』の新井浩文、テレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』の佐藤陸太など、これからの日本映画界を背負って立つ期待の若手俳優が勢揃い。また、彼ら高校生を見守る大人たちも、『ハッシュ』の田辺誠、『アカシアの道』の渡辺美佐子、『カンゾー先生』の柄本明、『阿弥陀堂だより』の井川比佐志など名だたる演技派が脇を固め、より厚みある人間ドラマを構築、こうして《動物感動映画》の枠を越えた、極上の青春エンターテインメントムービーの誕生となった。  また、とかく動物映画にありがちな、過酷な撮影スケジュールゆえの動物に対する虐待的な行為(ぐったりした姿を撮るために弛緩剤を注射する、など)は、この映画では一切行なっていないことも注目に値する。ペットブームといわれる昨今、学校に犬がいることは珍しいことではないが、クロのように盲導犬でも血統書付きでもないた だの犬が、地元のみならず全国の人々からこれほどまでに愛され、千人以上の人間にモの死を見送られた話は、いまだかつて聞いたことがない。『さよなら、クロ』はモんな世界一幸せな犬の物語であり、これを見る私たちをも幸福で満たしてくれる。人の優しさに涙が出る、そんな良贋な体験を、是非スクリーンで味わって欲しい。

ストーリー

《1960年代》
長野県松本市。山里の小さな民家。少女が黒い子犬と戯れている。チリン、チリン。赤い鈴の髪飾りに子犬がじゃれている。やがて月日が経ち、黒い犬は大きくなっている。犬はあちこち少女を探し回るが、民家に人の気配はない。諦めてとほとぽと山を下る。
 朝、秋津高校に通う亮介(妻夫木聴)は、登校途中に黒い野良犬を見つけ、弁当を分け与えてやった。今年3年の亮介ことって、高校生活最後の学園祭が今、まさに間近に迫っていた。3年6組の出し物は偉人の仮装行列。トリは西郷隆盛であったが、生徒の守(佐藤隆太)たちが、せっかくの町子(三輪明日美)手作りである犬のはりぼてをふざけて踏み、壊してしまった。呆然とする生徒たちに、亮介が何事かと駆け寄ると、例の野良犬が後から付いてきて、彼の隣にちょこんと座った。雪子(伊藤歩)をはじめとするクラスメートたちは不幸中の幸いとばかりに、この黒い犬を西郷どんの大役に起用することを即決。そして、主役の西郷どん役には大嫌いの守に代わって亮介に白羽の矢が立った。果たして、期待以上の堂々たる風格のこの黒犬の登場に学園祭は大いに沸き、クロと名付けられて学校に居つ<ようになる。  クロは用務員室で寝泊まりし、校内を自由に歩いた。犬嫌いの草間先生(塩見三省)のクラスに授業中、聞入してきて、先生は顔を真っ赤にして怒るが、生徒はやんやとちゃかすばかりだ。たまりかねた草間は、溝口校長(山谷初男)に注意してもらおうと校長室に出向くが、すでに先客はソファーに座り、校長にお手などして懐いている。こうしてクロは、用務員室に住み着き、用務員の大河内〔井川比佐志)の夜警に付き添ったり、すっかりみんなの心に溶け込むのだった。  ある日、クロの姿が見えなくなった。いても立ってもいられない亮介は、授業をさぼって探しに行った。保健所の捕獲所にはたくさんの犬が収容されていたがクロの姿はなかった。担当者は.無責任に犬を飼う人間の身勝手さをぼやき、クロらしき犬は山奥の方に取り逃がしたようだと言う。亮介が山に入ると、そこに黒い犬の影が。そこには寂れた民家があった。ようや<クロを見つけ、一緒に家屋に入ると、赤い鈴の髪飾りがかけてあった。クロは大事そうに.ひたすらそれを凝視していた。クロに学校へ戻ろうと促す亮介。帰る場所のなくなったことを悟ったクロは.ようやく決意したかのように学校のある方へと歩き始めた.亮介は、クロの見つめる赤い鈴を持ち、途中で痛めた足を引きずりながらクロと緒に学校へと戻るのだった。  すっかり暗くなった校門の前には.雪子が待っていた。雪子は機嫌が悪かった。犬とはいえ亮介と意気投合した感じのクロにやきもちを妬いているのだ。そのあたり、いまいちピンと来ない亮介であった。  亮介のクラスメートで親友の孝二〔新井浩文)は、実は同時に雪子を想うライバルでもあった。そんな孝ニが今度、雪子と映画を観に行くと言う。うらやましい思いをひた隠して平静さを取り繕う亮介の姿に、孝一はたまらず笑いだし、亮介の誕生祝いに3人で行くのだと告げる。そんな他愛もない会話を交わしながらも、ふと進路の問題がふたりの頭をよぎる。孝ニは志望校を決めたという。高校3年生の彼らには、とかく悩みは尽きないものだ。 三人は揃って『卒業』を観に出かけた。  冬も押し迫ったある日の映画館。その日、亮介は風邪をひき、雪子と孝二はふたりきりで映画を観ることになった。帰り道、孝二が雪子に想いを告白した。突然のことにただ困惑する雪子に、その気ないことを直感した孝二は、付けていたマフラーを雪子の首に巻いてやると、そのままバイクで走り去ってゆく。ところが、その直後、孝ニは事故に遭い、還らぬ人となってしまう。知らせを受けて呆然とするクラスメートたち。雪子はショックのあまり夜の学校に入り、教室の窓から飛び降りようとする。が、そこに現れたのはクロだった。クロは泣き崩れる雪子の頬を伝う涙をなめた.こうして雪子は我に返り、命をとりとめるのだった。 《十年後》 クロはすっかり高校の名物犬になり、学校の名簿にも載って、それがマスコミに取り上げられたりしている。そんなことは、クロにとってはどこ吹く風。相変わらずたくさんの高校生たちの卒業を見送り、また入学を出迎えている。高校3年生で牛乳配達のアルバイトをしている緊治(金井勇太)は毎朝クロに配達の牛乳を分けてやっていた。進学をあきらめている賢治は、喧嘩相手の矢部(内野謙太)とともに、いつも保健室の結城先生(余貴美子)の常連生徒だった。かつては親友だったが、いつの間にか仲違いしてしまったふたりは、担任の三枝先生(田辺誠一)にとっても頭の痛い存在だった。  一方、新米の獣医になったばかりの亮介は、1日友の守の結婚式に出席するため、久々の帰郷を果たしていた。孝二の死があって以来、お互いの想いを告げることなく別れた雪子とも10年ぶりの再会となった。今、雪子は結婚に失敗し、実家から離れて、ひと り暮らしをしているという。亮介は久しぶりにクロに会いに母校へと足を運ぶ.クロはすっかり老犬なっていたが、食欲がないのは、年のせいばかりではなかった。実はクロは.手術をしなくては直らない、子宮に膿が溜まる病に冒されていたのだった。そのことを偶然、保健室で耳にした賢治は、クロを助けるため、その手術費を集める募金箱をこつそりと校内に置いた。それを知ったクラスメートたちは、総出で募金を手伝い.いざ箱を回収してみるとそこにはずっしりとお金が貯まっていた。そのほかにも、クロの無事を祈るメッセージやお守りなど、人々の暖かい気持ちがたくさん詰まっていたのだった。  こうして、亮介が執刀を手伝い、手術は無事、成功した。それから数ヶ月後住み慣れた学校で天寿を全うしたクロの死は、その日のうちに全校に伝えられ、町の人々にも広まっていった。講堂で葬儀が行われ、卒業生や近所の人など押し掛けた大勢の参列看たちは、その死を悼み、それぞれのクロヘの思い出を懐かしんでいた。そして、牧野校長(渡辺美佐子)の弔辞が場内に流れる。亮介と雪子もまたクロの葬儀の参列をきっかけに人生の新しい幸せに目覚めたようである……。

スタッフ

監督:松岡錠司
製作:李鳳宇、遠谷信幸、石川富康
原作:藤岡改造「職員会議に出た犬・クロ」(郷土出版社刊)
撮影:笠松則通
照明:石田健司
録音:柿澤潔
美術:小川富美夫
装飾:小池直実
編集:普嶋信一   

キャスト

木村亮介:妻夫木聡
五十嵐暫子:伊藤歩
神戸孝二:新井浩文
斎藤守:佐藤隆太
宮本伸二:近藤公園
横川町子:三輪明日美
大河内徳次郎:井川比佐志
三枝昭吾:田辺誠一
草間敏岳:塩見三省
結城えり:余貴美子

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