ハードボイルドに始まりながら、最後にはホロリとさせてくれる、 ロンドン発 愛と友情の物語!

2000年/イギリス映画/カラー/シネスコサイズ/ドルビーSRD/上映時間:101分 配給:ギャガコミュニケーションズ

2003年06月26日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年07月02日よりDVD発売開始 2003年12月21日よりシブヤ・シネマ・ソサエティにてロードショー

公開初日 2002/12/21

配給会社名 0025

公開日メモ ハードボイルドに始まりながら、最後にはホロリとさせてくれる、ロンドン発 愛と友情の物語!

解説



ハードボイルドに始まりながら、最後にはホロリとさせてくれる、ロンドン発 愛と友情の物語!

ワン&オンリーの輝き
 かつてはNO.1だった殺し屋フィリックスも歳には勝てず、腕が落ちたことを自覚。きれいに引退したいと組織に宣言する。しかし、死以外に脱退はない!と組織はフィリックスの命を狙い始める。
 このプロットだけなら、フィルム・ノワールやヤクザ映画の一つの定番。ところが、フイリックスは父親が暮らす高級老人ホームの家賃滞納分を支払うべく新しい職業を見つける。それはなんと、密輸業者ビッグ・ボブの過保護ゆえ、子供部屋から一歩も出たことがない33歳のババの子守!
 ハードボルドに始まりながら、ここからコメディの要素が一気になだれ込み、スリルと笑いのハーモニー。しかも、最後にはホロリとさせてくれる余韻のある物語へ。若きイギリス人監督スチュワート・サッグの長編第2作『キス★キス★バン★バン』は、ワン&オンリーの輝きを放つ作品になっている。

タイトルに活むオマージュ
 原題は“KISS KISS(BANG BANG)”。劇中でババが唄う歌の1節から取られているが、映画ファンなら即二つの映画を思い出すに違いない。殺しのライセンスを持つ女王陛下のスパイ、007と『チキ・チキ・バン・バン』(68)である。
 前者のヒーロー、ジェームズ・ボンドの愛称は「ミスター・キス・キス・バン・バン」。ご存知のように、「女にはキス、男には銃口」という意味。『007/サンダーボール作戦』(65)のサウンドトラックには同名の曲も収録。原作者の故イアン・フレミングの公式サイトの名前としても使われている。
 後者は同じくフレミングの原作で、O07シリーズのスタッフが作ったミュージカル映画。子供の心を持った発明家ポッツが夢の車、チキ・チキ・バン・バン号に乗って体験する冒険の数々については説明不要だろう。

ヒネリが利いたキャスティングとノスタルジックな空気感

 『キス★キス★バン★バン』の異色ぶりは、ストーリーだけではない。
 まず、キャスティング。ミスター・キス・キス・バン・バン的ライフスタイルに憧れながらも思うようにいかない元・殺し屋フィリックスをステラン・スカルスガルドが、チキ・チキ・バン・バン的スピリッツを持つ大きな子供ババをクリス・ペンが演じている。フィリックスを『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(OO)やノルウェー映画版『インソムニア』(97)の刑事(ハリウッドのリメイク版ではアル・パチーノの役に当たる)など、へヴィなキャラクターを演じることが多いスウェーデン人に、ババを『レザボアドッグス』(91)のナイスガイ・エディ役が印象的だったアメリカ人に演じさせているなんて、ヒネリが利いている。
そして、演出、撮影、音楽、美術。フィリックスの人生へのくたびれ具合は生々しく描写する一方で、画面の色調やジョン・ダンクワース(『唇からナイフ』66)が手がけたサウンドトラックはシーンに応じて、あるときはカラー版フィルム・ノワール、あるときは60年代のおしやれスパイ映画へのりスペクトを感じる。さらに、フィリックスが古風な男であり、殺し屋の組織が創立して25年の老舗という設定もあり、インテリアは40〜50年代のフィルム・ノワールやO07シリーズの悪のアジトなどを意識した作り。結果、現代の話でありながら、全体にノスタルジックな空気が流れている。
 まるでフィリックスとババ、二人のキャラ立ちの違いのように。ハードボルド対ハートウォーミング、リアル対ファンタジー……と、本来なら反発する要素が二人三脚で映画を盛り上げていく演出のスタイルが新しい。

「キス★キス★バン★バン」が与えてくれるモノ

 後半、フィリックスは二丁拳銃と気転で、キリンのヌイグルミと水鉄砲を大事に持ったババを、組織の攻撃からかわしながら、自分が変化したことに気付く。殺し屋稼業にとって足でまといだった人生の側面人を愛し、それを守る生き方の素晴らしさに目覚めるのである。一方、ババは一気に酒、たばこ、音楽、ダンス、女性………と大人の男の愉しみを学び、危険と背中合わせゆえに輝く世界の楽
しさを体験してゆく。
 そういう意味では、『キス★キス★バン★バン』はベテランの殺し屋の人生を描いているにも関わらず、「人は一人では生きていけない」という大切なことを伝えてくれる、愛と友情の物語なのである。

ストーリー



ノスタルジックに描かれたロンドンで、
元・殺し屋と33歳の子供の冒険がはじまる!
 かつてはNo.1の殺し屋だったフィリックス(ステラン・スカルスガルド)は、昔なら楽勝だったはずの仕事をスマートにキメられず。歳には勝てないと、改めて腕が落ちたことを自覚。殺し屋の組織に入って25年。若い弟子、ジミー(ポール・ベタニー)と入れ違いに、50歳を目前に引退を決意ずる。
 しかし、「死ぬまで殺し屋」が組織の創立以来のルール。生きているうちにカタギになるのは捉破りだと、組織の二代目のボス、ハンフはフィリックスの殺しの仕切りをジミーに命じる。
 フィリックスの災難はそれだけではなかった。
 留守電を聞けば、父親ダディ・ズー(ピーター・ヴォーン)が暮らす高級老人ホーム「パーム・ヴュー」の家賃滞納の催促が入っているわ。長い春のガールフレンド、シェリー(ジャクリーン・マッケンジー)からは妊娠を告げられ、独身主義者のフィリックスは彼女への愛と自分が長年愛してきたライフスタイルとの板ばさみで苦しむわ。
 しかし、何と言っても一番の危機は、フィリックスがアンティークの密輸業者、ビッグ・ボブ(アラン・コーデュナー)から依頼された新しい職業。彼は愛するあまり子供部屋から33年間一歩も外に出さずに育てた息子、ババ(クリス・ペン)のケアをフィリックスへ頼むなり、分厚い札束と手作りのパバ用育児マニュアルだけを置いて、海外へ出かけてしまったのだ。
 ピストルと酒とたばことコロンビア産のコーヒーとパリー・ホワイトとダンスと読書と女性を愛してきた古風な男にとって、水鉄砲とキリンのデイリーだけが頼りの大きな子供のやることなすこと気に入らない。フィリックスは金に目がくらんで、このムカつく「ベビーシッター」を引き受けたことを後悔する。
 とうとう組織の銃弾が容赦なく襲い始め、フィリックスはババを連れて、ロンドンの街を逃げながらサバイバルする状況に追い込まれてしまう。
 そんな中でも、初めて見た雨の粒をなめて美味しいと感動し、フィリックスが連れていってくれたクラブで音楽とダンスと女性の素晴らしさを初体験するババ。無邪気なババの急速な成長を見守っていくうちに、いつしか殺し屋として生きていくために捨ててしまった、普通の人生に必要な愛情の数々を取り戻すフィリックス。
 だが、二人に別れの時がやってくる。

スタッフ

監督・脚本:スチュワート・サッグ
製作総指揮:ノーマ・ヘイマン&ウィリアム・ターナー
製作:ジェームズ・リチャードソン
撮影:トニー・ピアース=ロバーツ
編集:ジム・クラーク
美術:イヴ・スチュワート
衣装:オディール・ディクス・ミリョー
音楽:ジョン・ダンクワース
配給:ギャガ・コミュケーションズ Kシネマ
協力:ハピネット・ピクチャーズ
オリジナル・サウンドトラック:カッティング・エッジ

キャスト

フィリックス:ステラン・スカルスガルド
ババ:クリス・ペン
ジミー:ポール・ベタニー
ダディ・ズー:ピーター・ヴォーン
シェリー:ジャクリーン・マッケンジー
ビッグ・ボブ:アラン・コーデュナー
ミア:マルティン・マカッチョン
カット:シェンナ・ギロリー

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