花
真実の愛 私を忘れないで…
2002年/日本/35mm/アメリカンビスタ/106分/ 製作:ビーワイルド、アーティストフィルムズ 配給:ザナドゥー
2004年06月04日よりビデオリリース 2004年06月04日よりDVDリリース 2003年11月1日、テアトル新宿にてロードショー公開
公開初日 2003/11/01
配給会社名 0103
公開日メモ 脳に動脈瘤が発見され、突然死になるといわれた主人公の青年が東京から鹿児島まで30年前に別れた妻の遺品をホスピスに受け取りに行く初老の弁護士のドライバーを引き受けることになる。旅の途中での葛藤や友情を描きながら、自分自身を再認識していくロードムービー。
解説
本作品の原作は「GO」で直木賞を受賞した金城一紀が、他者との対話を通じて自分を見つめるというモチーフに描いた短編集「対話篇」に収録された同名小説「花」。「花」は彼がこれまで描いてきた若い世代の心の葛藤などの熱いイメージを一新させ、人間をまっすぐ見つめ、人間のより内面的な部分を掬い上げるように描き、話題を呼んだ。突然の動脈瘤によって生きる希望を失いかけた青年と、亡き妻を弔う旅に向かう末期ガンの初老の男。年齢も生き方も違う男二人が一台の車で旅をし、お互いの人生を語り、これからの人生を思う。いつしかそれは親子にも似た関係となり…。
人は語ることで人を理解し、絆をつくる。一見、簡単なことだが、現代人が忘れかけた大切な乙とをやさしく映像化している。監督は数多くのテレビドラマを演出し、本作品で長年の夢である映画監督デビューを果たした西谷真一監督。『ラブホテル』を観て以来、相米慎二への憧れを抱き、テレビドラマ界で活躍しつつも、映画の企画書や自作のテレビ作品を相米慎二へ送り続けていた。そんな西谷監督の思いに『風花』『刑務所の中』などの製作・若杉正明を始めとして、脚本・奥寺佐渡子(『お引越し』)、また撮影`町田博、照明・木村太朗(『風花』)等、相米作品に関わったスタッフが集結。まるで西谷監督の相米慎二への片想いの背中を押すように作品に参加。『風花』で小泉今日子と浅野忠信が使用したピンクの4WDを水色に塗り替え、新たなロードムービーがスタートした。完成した本作品は西谷監督とスタッフ全員が相米慎二へ宛てた最後のラブレターなのである。
また、国内外から高い評価を受け、今、その活躍が最も期待される人気クラシックギタリスト・村治佳織が映画音楽に初挑戦。自らのイメージで選曲そして映像に合わせて演奏した、A.バリオスやG.レゴンディのギターの名曲が野崎と鳥越のその時々の心情をまるで理解するかのように二人を優しく包み、映像と相まって観る者の心に優しく響く。
サラリーマン・野崎を演じるのは『天使の牙』『荒神』『スカイハイ』と映画出演が続く大沢たかお。いつ死ぬかわからない恐怖と絶望、孤独感を胸に秘め、鳥越を労わるという難役を好演。初老の弁護士に日本映画界の名バイ・プレイヤー柄本明が存在感のある演技を魅せる。また、鳥越の青年時代に若手俳優の中でもっとも注目を浴びる加瀬亮。他、牧瀬里穂、西田尚美、樋口可南子、南果歩、椎名桔平、仲村トオル、遠藤憲一、藤村志保といった豪華な出演陣が野崎と鳥越の旅を時に可笑しく、時にやさしく見守り、スクリーンに大輪の花を咲かせるように競演している。
ストーリー
どこにでもいるサラリーマン・野崎陽一郎(大沢たかお)が動脈瘤によって突然倒れた。医師(南果歩)からは一刻も早い手術を勧められたが、その手術には命の保障が無い上、たとえ成功しても記憶が喪失する可能性を伴うものだった。
会社を辞め、手術同意書は白紙のまま野崎は現実から逃避するように日々を過ごしていた。そんな時、毎朝アパートの前で出くわす男(仲村トオル)からバイトの話が持ち込まれた。期間は1週間。仕事の内容は、依頼主を鹿児島まで連れて行く運転手。その依頼主とは25年の歳月をかけて再審請求をし続けた冤罪事件に勝訴し、最近マスコミを大いに賑やかした弁護士・鳥越弘(柄本明)だった。
出発の日。野崎が指定された待ち合わせ場所で待っていると、よれたスーツに白髪混じりの男・鳥越がやってきた。簡単な挨拶を交わすと、鳥越は持っていたコンビニ袋からデニムシャツとスニーカーを取り出し着替え始めた。野崎が目的地までの順路を説明すると鳥越はあえて高速を使わず、国道1号、2号、3号とただひたすら西に下って鹿児島・指宿まで行くようにと指示をした。
年齢も立場も違う二人に共通の話題があるはずもなかった。会話といえば鳥越が野崎の運転に文句をつけるぐらい。いくらバイトとはいえ、旅の目的も知らされず、鳥越の指示通り国道で鹿児島へ向うというこのバイトが無意味なものに思えてきた野崎は、車から降りようとした。
すると、今まで固く閉ざされていた鳥越の口からこの旅の目的が語られた。25年前に別れた妻が鳥越宛に遺品を残し、鹿児島・指宿のホスピスで先日亡くなった。しかし、鳥越はそんな妻の顔をすっかり忘れてしま
っていた。その上、写真などの手がかりは一切残っていない。妻の顔すら思い出せない自分に、その遺品を受け取る資格があるのか…思い悩ん
だ鳥越はかつて新婚旅行で通った同じ道を同じ方法で辿ればその妻の顔を思い出すかもしれないと、この旅を決意した。そんな理由があったとは知らず、軽はずみな自分の行動に後悔する野崎。再び野崎はハンドルを握り、思い出を辿る旅が始まった。
1964年春
田舎道。赤い車。運転するのは若かりし頃の鳥越(加瀬亮)。助手席の女性は「胸の振り子」を陽気に歌う。鳥越は夢の中でぼんやりと過去を
思い出し始めていた…
助手席の鳥越は薬を飲み、眠ってしまった。あまりにも静かに眠る鳥越が気になり、野崎が脇見した瞬間、トラックと衝突しそうになる。
急ブレーキ。鳥越はその衝撃に目を覚ました。野崎は鳥越が寝ている間に自分を襲った孤独感から、自分の病気のこと、手術のこと、手術して記憶が亡くなったら自分が自分でなくなるのではないかという不安感、そして恋人・千香子(西田尚美)との関係…これまで胸に仕舞いこんでいた感情が次から次へと溢れ出した。野崎は鳥越の前で素直になっている自分を不思議に思った。
「そう簡単に死ぬもんか」鳥越はそう言って遠慮がちに野崎の背中に手をやった。野崎が質問し、鳥越が答える。やがて鳥越は細い糸を紡ぎだすように、少しずつ記憶を取り戻し始めた。
名前は恵子(牧瀬里穂)。駆け落ち同然の結婚。ふたりとも弁護士を目指していた。転んだ恵子を鳥越がとっさに助けた、そんな些細な出来事
から二人の付き合いが始まった…
しかし、肝心の恵子の顔は思い出すことができないでいた。いつしか野崎は恋人と向き合うこと、そして
自らの病気と向き合うことの大切さを鳥越の思い出から教えられていた。そして、野崎はそんな鳥越に父の面影を重ねていた。そんな中、鳥越が倒れた。旅の中断を迫る野崎に鳥越は決して首を縦にふらなかった。別れた妻が残した遺品を受け取りにひたすら西へ向う旅は続けられた。亡き妻・恵子が鳥越に残したものとは…
スタッフ
原作:金城一紀「花」小説すばる3月号掲載
監督:西谷真一
企画・製作:若杉正明
プロデューサー:甲斐真樹、田辺順子
脚本:奥寺佐渡子
音楽:村治佳織
スペシャルサンクス:相米慎二
キャスト
大沢たかお
柄本明
加瀬亮
牧瀬里穂
西田尚美
樋口可南子
南果歩
椎名桔平
仲村トオル
遠藤憲一
藤村志保
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