好きな人以外死んだってオッケー

第24回ぴあフィルムフェスティバル上映 第52回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品 2002年香港国際映画祭 2002年全州国際映画祭

2001年/日本/112分/35ミリ 配給:リクリ

2003年07月25日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年07月25日よりDVDリリース 2002年12月7日よりユーロスペースにてレイトロードショー公開

公開初日 2002/07/01

公開終了日 2002/07/01

配給会社名 0318

公開日メモ ある事件をキッカケについに大喧嘩をする涼となつ。相手を殴る痛みは、体が媒介となって自分に帰ってくる。でも、心の痛みは?そして、なつの妊娠。死に至るかもしれない出産の痛みに怖気づく涼。二人の愛が試される…。

解説



○芝居がエンターテインメント
木作はデジタルビデオカメラの機動性を最大阪に生かし、俳優の息遣いをそのまま画面に映し込んだ。愛し過ぎて互いの肉体的な痛みを共有するようになってしまった主人公、涼となつ。「俳優の芝
居がストレートに伝われば十分にエンターテインメント」という斎藤久志監督は突拍子もない出来事をリアルな芝居で描いていく。ふたりの「いたい関係」がストレートに響く、痛くて、おかしくて、
切ない物語だ。
○オールスターキャスト
主役は西島秀俊と唯野未歩子。西島は『ニンゲン合格』(1998年、黒沢清監督)など数々の話題作に出演し、北野武監督最新作『Dolls』では菅野美穂とともに主役を演じた他、『LAST SCENE』(中田秀夫監督)、『すべては夜から生まれる』(甲斐田裕輔監督)、本作と合せて同時期に主演映画が4本一挙公開される事になる。一方、「ネイチャーメイド」(大塚製薬)などのCMで独特の空気感を漂わせた唯野も来春公開予定の『さざなみ』(長尾直柑監督)では松坂慶子、豊川悦司を相手にヒロインを演じた。また斎藤監督のデビュー作『フレンチドレッシング』(98年)で毎日映画コンクール・新人賞受賞。以来、斎藤監督作品に欠かせない女優となっている。ふたりの脇を固めるのは原一男、廣木隆一、篠原哲雄ら名だたる映画監督の面々。中でも『パルコ・フィクション』を矢口史靖監督と共同監督した鈴木卓爾は俳優としても活躍しており、斎藤監督作品には『夏の思い出』(97年、Vシネマ)以来の出演。鈴木演じるなつに片思いの青年の姿もまた、いたい。
○スタッフ陣
斎藤久志監督は1984年のぴあフィルムフェスティバルに入選。脚本家として活動後、98年に『フレンチドレッシング』で劇場デビュー。本作は99年の『サンデイドライブ』に続く3作目となる。撮影は平野勝之。『由美香』『流れ者図鑑』『白THE WHITE』の北海道自転車三部作で知られアダルトビデオ監督としても活躍する。斎藤監督は「平野の直感的なフレームワークこそこの作品に必要」とカメラマンとしての参加を依頼。平野は自在なカメラワークで俳優の微妙な表情や動きをとらえ、監督の期待に応えた。プロデューサーの鈴木ゆたかは本作を低予算自主映画としてスタートさせた。スタッフはメインをプロが務め、多摩美術大学、日本大学芸術学部の学生総勢30人がアシスタントとして活躍した。涼となつが暮らす部屋の装飾をはじめ、いたるところに学生たちの「ものづくり」への情熱が反映されている。また、本作は第52回ベルリン国際映画祭パノラマ部門、第26回香港国際映画祭、2002年全州国際映画祭(韓国)で上映され爆笑、苦笑、歓笑を誘った。

ストーリー



なつと涼は痛みを共有することになった。その理由はふたりには解らなかった。その理由を探るよりも痛みを共有していることが、ふたりが強く結びつくことにとって都合がよかった。
 なつは元看護婦。いまは普通の会社に勤めている。社長と社員の木村、小さな会社だ。なつは涼のことが好きだ。涼がいてくれたら何もいらないと木当にモう思っている。だからなるだけ一緒にいられるように看護婦から仕事を変えた。涼はカメラマン、だった。いまもその思いを捨ててはいない。塾の教師をしながら気に入った女の子の写真をとっている。ときたま行き過ぎてしまうが、なつのことを忘れたり、裏切ったりしたとは思っていない。なぜなら、彼女達は写真の被写体だからだ。涼はなつのことが大好きだと確信している、そしてそんな自分も大好きなのだ。秋男はなつの弟、シスターコンプレックスでオタクで自転車が好きだ。自転車にコンピューターを取り付けどこへ行くにも一心同体なのだ。そして、秋男は自転車とコンピューターを取り付けどこへ行くにも一緒だ。姉の行く所、秋男の影あり。
 涼の塾へ通う女子高生・直美、彼女の性格は悪い。しかもデブ、直美が求めているのは純粋な愛だ。その事を体現するためには手段を選ばない。そんな女の子だ。もちろん愛する人は塾の教師・涼のことだ。涼の行く先々に直美の影あり。
 いたみを共有しているが故に、なつは自分の頬をはたいたり、手をつねってみたり不思議な行動をとる。いま自分が感じている痛みが、空間を飛び超えて涼に伝わる。時には涼の目覚まし代わりにまた愛の告白の代わりになつは自分を傷つける。
会社の同僚・木村は、なつがどうして自分を傷つけるのか?理由がわからない。ただ、自分の好きな人がーー木村はなつのことが好きなのだが、訳もなく自傷することに耐えられない。木村はその思いのたけをなつに伝える。しかし、なつは涼のことが好き。世界で一番涼のことが好きなのだ。涼の日常はいたい毎日だ。時には目覚ましだったり、愛の告白としてなつからいたい気持ちが届くのだ。そのどえらい毎日がじつは幸せなんだと涼は思っている。なつといたみを共有することになってからはじめは不慣れで面倒が続いたが、いまはそうではない。どこにいてもなつとつながっていることが確認できるからだ。涼はその運命を受け入れたのだ。
 木村の告白はかなえられなかった。かなわぬ恋、それもひとつの愛のかたち。秋男の理想の女性は自分の姉。直美の思いも全く届くことがない。それぞれ立場をこえて相手に届かぬ気持ちをもっている。内気な男、シスコン、ストーカー片思い同盟の結成。
 ひろみは涼の女友達。大学の同級生で涼のモデルを務めてくれた。そのひろみの夫、石川。芸術で身をなした男。画を書き、画を売ることで生きている。幼稚さと暴力性をあわせもち魅力的ではあるが、他人を否定することで己の優位性を誇示する。一時、涼に惹かれた気持ちが石川を選ぶことになった。ひろみは石川の妻だ。ある夜、石川を交え涼とひろみは再会する。慇懃に涼の写真をけなす石川。彼のこころの奥底には、妻であるひろみと涼の昔の関係に強く嫉妬する炎がもえあがっていた。相手を独占したい気持ち、それが嫉妬。涼が独占したいのはなつただひとり。なつと涼の暮らしは満ち足りている。満ち足りているふたりに影が忍び寄る、ホームレスの男だ。かれはふたりがいたみを共有していることを言い当てる。そして、痛みを共有することで人は不幸になると予言するのだ。あまりにも強く愛し合うことで、いたみを共有する病が訪れる、そしてそれは死に至る痛いだと。そんなおり、なつの妊娠は、突然おとずれた吉報だった.愛しあうふたりに子供が生まれる。なつと涼は小躍りすほど喜ぶ。喜びのあまり涼はもう一度プロポーズするくらいなつの妊娠に狂喜乱舞するが・・・。その反面、妊娠そして出産への思いをはせると未体験のいたい出来事なのだ。涼はそのいたみに思いをはせる。はたして自分に出産を無事済ませることができるのだろうか?男の俺に?

スタッフ

監督・脚本:斎藤久志
撮影:平野勝之
録音:北原慶昭、中村由美子
編集:岡田久美
衣裳:宮本茉莉
美術:富岡多美子、坪田義史、菊池春佳

キャスト

望月涼:西島秀俊
望月なつ:唯野未歩子
木村:鈴木卓爾
石川:原一男
石川ひろみ:川越美和
吉田:廣木隆一
美少年:藤間宇宙
医師:篠原哲雄
牧師:緒方明
村上:田中要次

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