バスを待ちながら
原題:Lista de Espera/ the waiting list
キューバの魅力がたっぷり!
●2000年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品作品 ●2000年新ラテンアメリカ映画祭グランプリ/最優秀脚本賞受賞
2000年/キューバ・スペイン・フランス・メキシコ/カラー/106分/ドルビーデジタル/1:1.85 字幕翻訳:石田泰子/字幕監修:滝口西夏 配給:シネカノン
2002年1月19日より渋谷シネ・アミューズにてロードショー公開
公開初日 2002/01/19
配給会社名 0034
公開日メモ いつの世の中でもバス停には様々な人々が、それぞれの物語を胸に抱えながら集まって来る。そしてキューバ名物とも言える“行列”で人が溢れ返り、そこには様々な人種が混在するキューバならではの物語が紡ぎ出される。しかしその物語は、どの国のどの人種にも共通する“人と人のつながり”という普遍的でありながら、現代社会では最も希薄になりつつあるテーマを描いている。
解説
キューバのとある田舎町の海に近いバス待合所は、いつ来るかもわからないバスを何日も待つ人々で溢れ返っていた。たまにやって来るバスはいつも満席で、たった一つ残された希望であるバスの修理にも失敗し、遂にバス停は閉鎖されてしまう。その時若い技師エミリオがもう一度バスを修理しようと提案し、みんなは留まることになるが、それぞれ事情を抱え勝手なことを言い合うだけで、時間ばかりが過ぎていく。しかし次第に彼らは助け合うようになり、やがて自分の物語を語り、心の交流が始まり奇妙な連帯感が生まれてくるが…。
いつの世の中でもバス停には様々な人々が、それぞれの物語を胸に抱えながら集まって来る。そしてキューバ名物とも言える“行列”で人が溢れ返り、そこには様々な人種が混在するキューバならではの物語が紡ぎ出される。しかしその物語は、どの国のどの人種にも共通する“人と人のつながり”という普遍的でありながら、現代社会では最も希薄になりつつあるテーマを描いている。
この映画を観ればキューバで暮らす人々の素顔と日常生活が見えてくる。彼らは普段どんなものを食べ飲み、どんな音楽を聴いて踊るのか?セリフの端々にはキューバの置かれている社会状況が浮き彫りにされ、彼らが胸の内に秘めた心のユートピアまでも目にすることができるのだ。そしてこれらのすべてを爽やかな笑いと音楽にのせて、夢と現実が交錯するかのようにファンタジックに描き出し、観た後には誰もが胸にしみ入るようなあたたかい感動を呼び起こされるだろう。それは日常生活の合間で忘れてしまいがちな“本当のしあわせ”や“生きる希望”をも感じさせてくれる傑作だ。
スタッフとキャストは不朽の名作『苺とチョコレート』のチームが再び集結。監督はフアン・カルロス・タビオ。ウラジミール・クルスとホルヘ・ペルゴリアと共に再び苺とチョコレート』の黄金トリオを組み、ヒロイン役には度重なるオーディションの中から最もイメージに近かったタイミ・アルバリーニョを抜擢。音楽も再び『苺とチョコレート』のホセ・マリア・ビティエールが担当し、日本でも3度来日公演を行っている人気アカペラ・グループのボーカル・サンプリングが挿入歌で参加している。
この作品は2000年カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品されて絶賛を浴び、新ラテンアメリカ映画祭でグランプリと最優秀脚本賞を受賞し、スペインのマラガ国際映画祭では主演のタイミ・アルバリーニョが最優秀主演女優賞を受賞している。またアルトゥーロ・アランゴの原作「Lista de Espera」は、94年にコロンビアのカルロス・カストロ・サーベドラ国際賞を受賞している。そしてこの作品は恩師であり96年4月16日に亡くなった『苺とチョコレート』の監督トマス・グティエレス・アレア(エンドロールの最初に出てくる「titon」は彼の愛称)に捧げられている。
ストーリー
キューバのとある田舎町の海に近いバス待合所は、なかなか来ないバスを待つ人々で溢れ返っていた。白人、黒人そしてムラート(混血)。そして子供から老人まで。中に
は2日も待ち続けている人もいる。機械エンジニアのエミリオが着いて「列の最後は?」と尋ねた時にちょうどバスが来て大混乱になるが、バスは満員で乗れたのは職員と
称する若い娘だけだった。
そこヘジャクリーンという美しい女性が現れ「列の最後は誰?」と尋ね、先に来ていたエミリオと口論になってしまう。しかしエミリオは彼女に好意を持ったのと、行き先が違うということもあり、すぐに仲直りをして自己紹介を始めるが、彼女にはスペイン人の婚約者がいるようだった。
次にやって来た目の不自由なロランドは、大きな荷物につまずいて転んでしまう。さらにロランドは提示をすれば一番先頭に並べる身障者カードを紛失してしまっていた。それでも先頭に並ぶことを主張するが、先頭の人達は納得せず、関係ない人までも巻き込んでまた口論が始まった。そこへまたバスがやって来たが、放送された乗客の数はたったの一人だった。再び混乱が始まりみんなそれぞれの主張を繰り返すばかりで、結局乗れるはずの一人が乗る前にバスは発車してしまった。
あきらめムードが漂う中、残されたたった一つの希望は、バス停が所有する壊れたバスを修理することだけだった。
しかし一台しかないそのバスを巡って、ハバナへ向かう人とサンティアゴに行きたい人が言い争って、過ぎていくのは時間ばかり…。
バス停の所長フェルナンデスがなんとか修理を終え、まずハバナへ向かう人々が乗り込むことになった。せっかく仲良くなったエミリオとジャクリーンも互いに別れを告げる。しかしみんなが見送るそのそばから、再びバスは故障してしまう。
フェルナンデスは修理はもはや不可能だとみんなに伝え、バス停の閉鎖を宣言する。みんなはしぶしぶその場を立ち去ろうとしていたが、エミリオはもう一度みんなでバスを修理しようと提案する。はじめは訝しげだったが、結局ほとんどの人がその場に残って、彼らの小さな挑戦が始まった。
どうやらロランドも車の修理には詳しいらしく、故障の原因はエンジンではなく燃料ポンプだと指摘する。そしてポンプのピンが折れていることを突き止める。しかし夜も更けてきたので、その日はみんなベンチなどで眠ることになった。
エミリオはロランドにのせられて、ジャクリーンに「君と一緒にいたいからみんなを引き留めた」と告白する。ジャクリーンもまんざらでもない様子で会話も弾んでいたが、ふとしたきっかけでお互い気まずい雰囲気になってしまう。おまけに急に雨まで降り始め散々な気分だった。
翌朝目覚めると、夢のように美しい朝焼けが広がっていた。エミリオとジャクリーンは仲直りをして、早速みんなと一緒にピンの代用になりそうな鉄探しが始まった。みんなはピン探しをしながらそれぞれ自分の物語を語り始め、次第に彼らの中には奇妙な連帯感が生まれてくる。
やがて子供がロブスターを数匹見つけて来る。普段でさえ滅多に食べられないのに、ここ数日まともな食事をしていない彼らにとっては大御馳走だ。早速どう料理するかが話し合われ、付け合わせの食料を提供する人が何人も現れ、一気に盛り上がって来た!あり合わせの食材で料理を作り、あり合わせの椅子や板でパーティー会場を設営し、みんなで美味しい“バス・ターミナル風”ロブスター料理をほおばった。
お腹が満たされたところで、タイミング良くフェルナンデスが音楽をかけ始めた。一瞬にしてそこはダンス・パーティーに早変わりし、みんなの心がひとつになってゆく。その時再び急に雨が降り始めるが、今度の雨はまるで恵の雨のようだった。みんなシャワーを浴びるがごとく外に飛び出して行く。その頃にはみんなが悩みを打ち明け、相談に乗るような仲になっていた。エミリオもジャクリーンの手を取って雨の中に走り出した。そして二人は放置されたオン
ボロ車の中で自然に結ばれる。
次の朝ジャクリーンは、みんなに待合所をペンキで塗って奇麗にしょうと提案する。みんなも賛成し改装が始まる。
やがて倉庫に眠っていた様々な“お宝”とあらゆる物を利用して、ベッドができ、部屋ができ、図書館ができ、美しい庭ができていった。しかしエミリオとジャクリーンが楽しそうに壁にペンキを塗っている時に、スペイン人の婚約者アントニオが自家用車で駆けつける。アントニオは何事かと驚くが、ジャクリーンは「自分の発案だか引となんとか説得して、彼一人で結婚式の立会人に会いに行ってもらい、後日もう一度迎えに来てもらうようにお願いする。
誰もが幸せな気分を味わっていた。そんな時、再びハバナ行きのバスがやって来た。しかし今では誰も乗りたくなかったので、みんながロランドに乗るようにすすめた。そのまま残りたいロランドは意を決したように黒メガネを取った。「実は目が見えるんだ」。怒り出す者もいたが、一所懸命働いていた彼の目が見えることを祝福しようと言う声があがった。
その時大きな荷物を担いだ太ったメガネ男が、バスに乗り込もうとした。誰とも話さず、協力もせず、いつも一人でいた男だ。しかしロランドが彼の行く手を遮った。ロランドは彼が大荷物にミルクや肉の缶詰を隠し持っていることを知っていたのだ。
翌朝の食卓にはミルクがセットされていた。朝食を食べ終わった後、図書館を作ったアベリーノが倒れ、孫に会うために土地を売ったお金をみんなに残すと言ったまま息を引き取る。そしてアベリーノの葬式が行われている時に、再びアントニオがジャクリーンを迎えに来た。一度は車に乗り込んだが、結局ジャクリーンは残ってエミリオの元へ戻ってくるのだった。
みんながそこに留まっていた。家畜は大きくな」作物も育ち、フェルナンデスは絵の個展を開いた。すべてが上手く行っていた。それはまるでみんなの心の中にある理想郷が実現されたかのような共同生活だった。そしてジャクリーンは子供を授かり、エミリオが大きくなったお腹に耳を近づけた時、遠くから自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
エミリオは友達に起こされてベンチの上で目覚めた。今までのことはすべて夢だったのだ。待合所の壁はボロボロのままだし、太ったメガネ男は相変わらず大きな荷物を抱えている。そして死んだはずのアベリーノや食べられてしまった黒猫も生きている。しかし不思議なことにジャクリーンは自分のお腹を押さえているし、なぜかみんなも起きてきてエミリオの夢の中の出来事に符合する事を言い合っている。漢方薬、図書館、ロブスター、ミルク・・・みんなが同じ夢を見ていたのだろうか?
やがてみんなはエミリオを起こした友達の車と、今度は本当にジャクリーンを迎えに来たアントニオの車に分かれて、何もなかったかのように別れの挨拶をし、それぞれの目的地へと向かった。しかしみんなの顔には、なぜか幸せそうな衷情が浮かんでいた。
途中、休憩のために停車したが、冷水機が壊れていたのでエミリオが呼ばれた。エミリオが屈み込んで修理をしていると、「列の最後は誰?」と尋ねる女性の声がした。「僕だよ」と振り返ったエミリオは、晴れやかな笑顔を見せた。
まるで新たな恋の始まりを喜ぶかのように。
スタッフ
製作総指揮:マリエラ・ベスイエフスキー
製作:ヘラルド・エレロ、カミロ・ビベス、ティエリー・フォルテ
監督/脚本:ファン・カルロス・タビオ
共同脚本:アルトゥーロ・アランゴ、セネル・パス
原作:アルトゥーロ・アランゴ
音楽:ホセ・マリア・ビティエール
挿入歌:「水とロブスターと塩」
レネ・バーニョス
撮影:ハンス・バーマン
編集:カルメン・フリアス
美術:オネリオ・ララルデ
衣装:ナンシー・ゴンサレス
キャスト
エミリオ:ウラジミール・クルス
ジャクリーン:タイミ・アルバリーニョ
ロランド:ホルヘ・ペルゴリア
フェルナンデス:ノエル・ガルシア
レグラ:アリーナ・ロドリゲス
アベリーノ:サトゥルニノ・ガルシア
アントニオ:アントニオ・バレーロ
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