華の愛−遊園驚夢−
原題:Peony Pavilion/遊園驚夢
咲き誇る大輪のように強く美しく、そして儚く
2001年香港国際映画祭出品 2001年モスクワ映画祭最優秀女優賞受賞(宮沢りえ)
2000年/中国・花生映社有限公司/カラー/122分/ビスタサイズ/ドルビーSR-、ドルビーデジタル、SDDS/ 提供:グルーヴコーポレーション 配給:グルーヴコーポレーション/ギャガ・コミュニケーションズ
2002年12月20日よりDVD発売開始 2002年5月11日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー公開
公開初日 2002/05/11
配給会社名 0025/0031
公開日メモ スクリーンに絢欄たる映画のロマンが還って来た。いにしえの水の都、蘇州を舞台に滅びゆく貴族文化と押しよせる時代の波に翻弄される二人の美しい女性の絆の物語を、崑劇の名曲『遊園驚夢』に乗せて色彩豊かに華麗な映像美でかくも見事な美しきタペストリーに織り上げられた珠玉の名作である。
解説
スクリーンに絢欄たる映画のロマンが還って来た。
いにしえの水の都、蘇州を舞台に滅びゆく貴族文化と押しよせる時代の波に翻弄される二人の美しい女性の絆の物語を、崑劇の名曲『遊園驚夢』に乗せて色彩豊かに華麗な映像美でかくも見事な美しきタペストリーに織り上げられた珠玉の名作である。
その噂は2001年モスクワ国際映画祭から始まった。
香港からの初出品作品『華の愛 遊園驚夢』がコンペ部門で上映され、繊細なテーマをスタイリッシュな映像とロマンティックな楽曲で綴った本作品は国際批評家連盟賞として高く評価され、宮沢りえに最優秀女優賞という栄冠をもたらせるという快挙を果たしたのだ。
以後、この作品は東京国際映画祭でも招待作品として映像の美しさばかりか、肉体に潜む官能の焔(ほむら)の激しさに観客は溜息をもらし、ロマンチシズム溢れる感情の繊細なほころびに胸を震わせたのである。
少女のあどけなさと、男性を魅了する二面性を持つ悲劇の歌姫ジェイドをデリケートにかつ伸びやかに演じたのが宮沢りえ。この作品で押しも押される世界的女優として見事その才能を開花させた。かたや男装の麗人として颯爽と登場し、宮沢演じるジェイドと全く対極の女性を演じたのが香港映画界のみならず、わが国のCMでもおなじみのジョイ・ウォン。ブランクを全く感じさせない本格的映画復帰作である。
監督・脚本のヨン・ファンは欧米で芸術を学び、ファッション写真家として「ハーパース・バザー」「Vogue」等で活躍、4冊の写真集を出版し、84年から映画監督としても活動を開始、とりわけフランスからは97年芸術文化勲章が与えられた。またヨン・ファンの『美少年の恋』でデビューしたダニエル・ウーが二人の美しい関係をかき乱す魅力的なキャラクターで登場している。
美術担当のイム・チムラムらは妥協を許さないヨン・ファンの制作姿勢に精一杯応え年代物の衣裳やサザビーから借用した本物の翡翠やダイヤモンドなどの宝石類が用意されたほか、家具や調度品も実際に使われたアンティークものを集め、実にコンテナ44箱にのぼり、衣裳代だけでも40万ドルが投じられた。撮影後はサザビーの
オークションにかけられたり香港の博物館に寄贈されるほどだった。
その他、美しく心に響くメロディアスな楽曲を提供したのがアンソ
ニー・ロン。フレームの中に様式美や自然の風景を巧みにすくいあげたのは撮影のヘンリー・チュン。
ストーリー
美しい庭園で知られる水の都、中国蘇州。
華麗な貴族文化が華やかりし1930年頃。
欧州に端を発した戦雲はアジアにも暗い影を落としその中で没落する貴族もあった…。
折りしも銅鍋の音が響き渡り牡丹亭「遊園驚夢」を歌う黒いチャイナドレスに身を包む美しい女性ジェイド(宮沢りえ)がいた。その歌声に呼応するかのように自らの歌声を重ねるのは、タキシードを颯爽と着こなし黒髪をなでつけた
男装の麗人ラン(ジョイ・ウォン)である。色とりどりの衣装を思いおもいに身にまとい多勢の崑劇の歌手たちが名家ロン家の贅を尽くした庭園で舞い踊る。玉虫色のシャボン玉に包まれ降りしきる美しい花びらが今宵の主人公ジェイドの誕生会をいっそう華やかにする。ロン家の長の恒例の祝辞を、一族のもの、その夫人たち、さらに執事らが饗応する豪華な屋敷内を、どこか阿片の甘い香りが妖しく立ち込めていた。
昨夜の夜会のもう一人の主役ランは報国の志を持つ自立した女性だった。普段は国民学校で英語を教える進歩的な女性で、彼女もかつ
ては名家の出身である。そんなランも従兄の第5夫人として嫁いで来た可憐な女性ジェイドに何故か心惹かれ、また彼女の子供パール
の面倒もよく見るのだった。しかし彼女にはジェイド母娘の悲しみはみじんも映らなかった。
崑劇歌劇団の歌手として得月楼で大勢の観客を魅了した彼女の美しい歌声も、このだだっ広い貴族屋敷の中では、誰に聞かせるというのだろう。それゆえ名曲を互いに歌えるランの存在は彼女にとっていつしかかけがえのないものになっていた。籠に入った毛並みのい
いオウムでさえ、ジェイドには自らをなぞらえる悲しいものに映る。美しい刺繍の手を途中で止め、切り裂いてしまうほどであった。他の夫人同士との皮肉なやりとりもジェイドにはやり切れないものがあった。そんな折り、執事イー(ジャウ・ジーカン)の心遣いは彼女をなごませた。
夜更けて綴る彼の日記には何が書かれているのか。ともあれ、多勢の人間が生活するロン家の中で、ただ一人執事の彼女への計らいは慈愛に満ちたものだった。
執事たちの間で屋敷の財産が処分されるようになった頃、ロン家の主人も阿片に耽溺するようになる。ジェイドも愛娘パールと共に自らの去就を考えるようになった。ジェイドもまた阿片に傾く様をランは知りながらも彼女はそれを止めることはできない。彼女の孤独が募る中、ジェイドのお気に入りの執事イーがとうとう兵役に赴くという報に驚きを隠せないジェイドだった。
一方、ランはまた社会に貢献し、貧乏な生徒に金を分け与える自らの偽善を厭うのだった。
そんな彼女の許をジェイドが訪ねてくる。ロン家を出された母娘は困り果ててランを頼って来たのだ。心底から愛する従兄の嫁が同居する喜びと彼女のために身を尽くす使命感はランを心から高揚させる。そんなある日。そのランが教鞭を取る学校に教育部からの役人シン(ダニエル・ウー)が派遣されて来た。
女生徒たちにも人気の端正な顔立ちのシンに心ならずも魅かれていくランであった。生徒たちが口にするシンの噂に心をときめかせいつしか彼に夢中になっていた。視察から戻った彼の着替えを偶然目にするランとそれに気付くシン。二人はいつしかお互いの愛を確かめ合う。そんな感情が自分の心に潜んでいることをランはとてもジェイドには云えなかった。一方、ジェイドに第二執事イーの戦死の
報がロン家から伝えられる。その際に託された彼の日記。伝えられなかったジェイドヘの想いが綴られた日記に彼女は何を想うのだろう。
薄幸な運命にも抗えない、幸せだった筈の彼女の人生。その彼女を心から愛した身分違いの男性の想いを、彼女はただ悲しく受け止めるしかない。そして。いつもより具合の良いジェイドがパールを連れて木々が紅く染まる森林公園を散歩しているなか。ランは愛するシンと仲睦まじくたたずんでいた。二人のやりとりですべてを察するジェイド。その場を快活にとりなすシンであるが皆を先に帰すジェイド。
たった一人になり彼女のこみあげる様々な想いは堰を切ったようにあふれ来る。頬を伝う涙にこめられた彼女の人生の孤独をランは知る由もない。食事ものどを通らないジェイドにランはシンへの思いと訣別する。阿片の毒がジェイドの身体を確実に蝕んでいく。ジェイドとランは幸福だったロン家のあの華やかな宴を夢想する。若く美しいジェイドが満開に輝き彼女自身の誕生日を遊園驚夢で歌い舞ったあの懐かしい日々を。
スタッフ
脚本・監督:ヨン・ファン
助監督:チャン・ワン、ウー・シーグオ
エグゼクティプ・プロデユーサー:チェン・クンホウ
プロデューサー:アン・ホイ
ラインプロデューサー:ウォン・チュンカウ
制作:[台湾]ラン・ダーパン、[中国]バン・ナンジン
美術:イム・チムラム、ロウ・チョングオ
撮影:ヘンリー・チュン
照明:シウ・チーミン
編集:クオン・チーリョン
録音:リヨン・リクチー
衣裳:ワイ・シアオミン
音楽:アンソニー・ロン
崑曲音楽:イェー・ユンチン
崑曲監修:タオ・テイエク、ヤン・ヤオユン、
タオ・フンジェン、ティン・ロイロイ
崑曲実演:ホアン・ファンメイ、ヤン・ジュアン
キャスト
宮沢りえ
ジェイ・ウォン
ダニエル・ウー
タン・マンジア
ジャオ・ジーカン
LINK
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