原題:RAVENOUS

血もしたたる恐怖の味。

1999年/カラー/ドルビーSR・SRD/上映時間1時間41分 字幕:松浦美奈

2001年3月2日ビデオ発売&レンタル開始 2000年3月25日ロードショー、渋谷シネパレスほか

公開初日 2000/03/25

解説

世紀末・禁断のテーマ《カニバリズム(人肉食主義)》の極限に挑み、全世界を戦慄と恐怖に震え上がらせた世紀の問題作!

 1847年、メキシコ・アメリカ戦争の最前線で死者として扱われた兵士ジョン・ボイド大尉が、死体の山のなかから意識を取り戻し、飢えと戦い人肉を食べ生き残り生還した。
 彼はさらに雪に閉ざされたシェラ・ネバダ山脈にある砦に赴任することになるが、そこで信じられないような食うか食われるか、戦慄と恐怖の世界に直面することになる。
 カリフォルニアに向かう移民グループが数ヶ月間雪に閉ざされ食料がなくなり、倒れた仲間の死体から人肉を食べて生き残ったドナー・パス事件(1846〜47)といわれる実際に起こった史実がもとになっており、カニバリズムの極限を追及した衝撃の問題作で世紀末の全世界を震撼させている。
 飢えに直面した人間がサバイバルの極限で果たして人肉を食べるのか?究極の選択を迫られた人間の間に起こるサスペンスとミステリアスなドラマとしても一級の作品になり批評家からも高い評価をえている。
 この映画にはもう一つウィーディンゴと呼ばれた古いインディアンの神話にある新鮮な人肉を食べた人間は、相手のスピリットとパワーをすべて吸収し、一度食べると食べずにいられなくなる誘惑と魔にとりつかれるという伝えが、同時にドラマに盛り込まれさらに戦慄の世界が繰り広げられる。

その肉を前に人間究極のサバイバルの選択が試される!
いま国際スターの脚光を浴びるピアースVSカーライル白熱の対決!

 「L.A.コンフィデンシャル」で野心家の刑事を演じ注目されたガイ・ピアースがボイド大尉。砦の人たちをカニバリズムの魔の世界と恐怖に誘うミステリアスな男コルホーンを「フル・モンティ」でイギリス・アカデミー賞主演男優賞を受賞し、この後007シリーズの新作では悪役を演じるロバート・カーライル。
 98年のアカデミー賞をはじめ多くの映画賞に輝き、全世界で大ヒットしたこの2作品の主演スター2人が初の共演。まさに今が旬の俳優による白熱の対決が実現した。
 砦のコックを「スクリーム」のデイビッド・アークェット、信心深い青年トフラー2等兵を「プライベート・ライアン」で注目のジェレミー・デイビス、殺害されえじきになる青年ライク2等兵を「ファースト・コンタクト」でホーク中尉を演じているニール・マクドノーの若手スター。
 砦のハート大佐を「アマデウス」「クルーシブル」などの名優ジェフリー・ジョーンズ。そのほか「交渉人」のジョン・スペンサー、「ジャッカル」のステファン・スピネラなどの演技派が熱演している。

上映禁止問題を起こした『司祭』の監督アントニア・バードが、人間の飢えと心の深淵に迫り再び世界に問う衝撃作!

 監督のアントニア・バードは「司祭」で95年ベルリン映画祭批評家賞、エジンバラ映画祭最優秀イギリス映画賞を受賞した新鋭女性監督だ。「司祭」はカトリック司祭のホモ・セクシュアルなインサイドを描いたためカトリック連盟から上映禁止問題の圧力がかかり、ローマ法王が抗議の声明文を送り世界各国で問題になった映画だが、アメリカをはじめ興行はミニ・シアターで大ヒットし、彼女を国際的に有名にしハリウッドに進出させる。この映画にはロバート・カーライルも出演し彼が国際スターになるきっかけとなる。
 彼女はタブーとされてきた問題に敢然と挑戦しつづけている意欲満々の監督で、「ラビナス」で再びカニバリズムというタブーに取組み想像を絶する世界を繰り広げた。
 オリジナル脚本はこれが第1作の新鋭テッド・グリフィン。祖父は30年代のハリウッドの映画監督ウィリアム・A・セイター、祖母はサイレント時代の人気スター、マリオン・ニクソンという名門育ちだ。
 「マネートレイン」のアダム・フィールズ、「ジュース」のデイビッド・ヘイマンがプロデュース。製作総指揮は「スノーホワイト」のティム・ヴァン・レリム。
 撮影のアンソニー・B・リッチモンドはニコラス・ローグ監督の「赤い影」などで知られ、編集はケネス・ブラナーの「ハムレット」で高い評価を得たニール・ファレル、アカデミー美術賞候補になった「レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い」のブライス・ペリンがプロダクション・デザインを担当している。
 音楽のマイケル・ナイマンは「ピアノ・レッスン」やピーター・グリーナウェイ監督の「コックと泥棒、その妻と愛人」など彼のほとんどの作品と「髪結いの亭主」などで知られる日本にもファンの多い作曲家で来日コンサートもある。彼の芸術的な完成度の高い旋律が作品に一段と風格を添えている。
 ロケーションはメキシコ、チェコ共和国とスロバキアで敢行された。

ストーリー

 1847年、メキシコ・アメリカ戦争のさなかジョン・ボイド大尉(ガイ・ピアース)は、隊長の突撃命令を受けて最前線に飛び出していった。
 戦死したと思われた彼は兵隊たちの死体の山と一緒に台車に積まれ、キャンプヘ運ばれる途中、息を吹き返したのだ。ボイドは死人から武器を奪い、極限の世界で生き残るためには手段を選ばずやっと部隊にたどり着いた。
 帰還を祝う席で出されたステーキを見て、ボイドは吐いてしまった。それを見たスローソン将軍(ジョン・スペンサー)は、「君を二度と見たくない」といってボイドをシェラ・ネバダ山脈の西にあるカリフォルニアのスペンサー砦に追いやった。
 砦の司令官ハート大佐(ジェフリー・ジョーンズ)がボイドを迎えた。「ここは1年のうち半分は雪に閉ざされて交通も途絶えてしまう」という。
 大佐が紹介したのは原住民のマーサとジョージの姉弟。コックのクリーブス(デイビッド・アークェット)、酔いどれ医師ノックス少佐(ステファン・スピネラ)、神の使者を自認するトフラー2等兵(ジェレミー・デイビス)、楽天家のライク2等兵(ニール・マクドノー)の6人。みんな一癖ある男たちだった。
 ボイドがハート大佐にメキシコでの体験を語っていると窓の外に人影が見えた。家の中に入れるとその男は凍傷で死にかけていた。手当てと看護のかいあってコルホーン(ロバート・カーライル)と名乗る男は息を吹き返した。彼は恐るべき体験を語った。
 「6人で西を目指して旅に出たが、ガイドのアイブスという男がひどい奴で、近道と教えられた方角は行き止まりの迷路で、ついに越冬することになったが食料がなくなり、最後にはお互いが殺し合い人肉を食べなければ生きていけなくなり、私も彼らを食べたが、自分が殺される番だと知り、女性が一人残っていたが逃げ出してきた。3ヶ月近くさまよってやっとここにたどり着いた」というのだ。

 ハート大佐はまだ女性が生きていると知らされ、救出に行く決心をするが、ジョージがウィーディンゴという古いインディアンの神話に「人肉を食べた人間は、食べた相手の魂を自分のものにするから、非常に強くなる」という伝えがあるので用心した方がいいと言った。
 砦にノックスとクリーブスを残してハート大佐の部隊はコルホーンの案内で目的地へと向かう。2日目にトフラーが崖から落ちライクが助けに行くが、ボイドは戻ってきたトフラーの血を見て震え上がる。夜中にトフラーが悲鳴をあげコルホーンの口に血がついており、彼は自分が信じられないので縛ってくれと言い出す。人肉食いの誘惑に勝てないのか?恐怖が彼らの間に忍び寄る。
 洞窟にたどり着き、ボイドとライクが中に入って行った。そこには骨と化した人間が吊されていた。洞窟から戻ったライクの報告を聞こうともせず、コルホーンはジョージを刺し殺す。トフラーは恐怖から逃げ出すが、コルホーンが執拗に追いかける。ボイドとライクも二人を助けに行くがなかなか見つからない。
 やっとトフラーを見つけるが彼は切り刻まれた死体となっていた。崖まで追い詰めたボイドたち。だが待ち伏せしていたコルホーンにライクも殺される。ボイドは穴のなかに身を隠し草の根をかじりながら飢えと戦うが、メキシコで死体の中から生き返った経験が再び彼にサバイバル最後の選択を迫る。ライクの死体からその肉を食べるべきか?
 記憶もさだかではなくボイドはまた生き延びて砦にたどり着いた。2週間後、ボイドはクリーブスをハンマーで殴り殺し彼にかぶりつく。ボイドの悪夢だったが、彼はマーサに「どうしたら人肉を食べる悪夢から逃れられるのか教えてくれ!」と叫ぶ。
 スローソン将軍が、失踪したハート大佐の後任だとアイブス大佐を連れてくる。コルホーンたちのガイドを務め彼らを迷路に導き入れた男だ。なんとコルホーンの生き写しではないか。ボイドは彼を見て「そいつがコルホーンだ」と叫ぶが誰も信じない。
 そこで、果たして何が起こるのか?……。

スタッフ

監督:アントニア・バ−ド
脚本:テッド・グリフィン
製作:アダム・フィールズ、デイビット・ヘイマン
製作総指揮:ティム・ヴァン・レリム
撮影:アンソニー・B・リッチモンド,B.S.C
プロダクション・デザイナー:ブライス・ペリン
編集:ニール・ファレル
指揮:マイケル・ナイマン
音楽:マイケル・ナイマン、デイモン・アルバーン

キャスト

ジョン・ボイド大尉:ガイ・ピアース
コルホーン:ロバート・カーライル
クリーブス:デイビッド・アークェット
トフラー2等兵:ジェレミー・デイビス
ハート大佐:ジェフリー・ジョーンズ
スローソン将軍:ジョン・スペンサー
ノックス少佐:ステファン・スピネラ
ライク2等兵:ニール・マクドノー

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