原題:MARIE, BAIE DES ANGES

鮫のように美しい二人、帰れない楽園。

1997年ベネチア国際映画祭批評家週間正式出品作品 1998年サンダンス映画祭 トロント映画祭 ロッテルダム映画祭正式出品作品

1997年/フランス映画/35mm/90min/カラー/シネマスコープ ドルビーサラウンド/字幕翻訳:寺尾次郎 後援:フランス大使館/提供:マイピック+シネマテン/配給:シネマテン

2001年1月26日ビデオ発売&レンタル開始 2000年3月11日よりシネマスクエアとうきゅうにてロードショー!

ヴァヒナ・ジョカンテ:インタビュー::http://www.nifty.ne.jp/rforum/fcinema/topics/200002/12marie/index.htm

公開初日 2000/03/11

配給会社名 0173

解説

太陽、素足の少女、孤独、退屈な日々。
少年の手に握られた銃。通り過ぎていった一瞬の夏の物語。

伝説の鮫の名を持つ“天使の入江”。フランスで最も美しいといわれるコート・ダジュールの天使の入江には、太陽が心地よく降り注ぎ、照らし出された海は限りなく蒼く深く続いていく。この地を訪れた者は、誰もがみなその美しさに感嘆の声をあげずにはいられない。しかしそこではまた、不敵な眼差しの少年と少女たちが、変わることのない退屈な毎日に苛立ち自分自身を持て余していた。彼らにとって美しい風景は意味を持たず、ただ狭く閉ざされた入江があるだけなのだ。
少女・マリーはあどけなさの残る躰で男たちを挑発し、ジプシーの少年・オルソは銃をもてあそぶ。
小さな海辺での様々な出来事はふたりの接点となってつながり、いつしか互いに相手の姿が目の端に映り始め、寄り添い合う。10代の夏は残酷さと愛情を混在させ、孤独と苛立ちを包み込みながらもふたりの一瞬を切り取るように通り過ぎていく…。

東欧諸国から流れてきたジプシーたち。
そのあまりに痛ましい現実。

ヨーロッパ諸国には、社会的な事情で止むにやまれず祖国を後にしたジプシーたちが、流れ着いた先でまた新たな社会問題を巻き起こしている。子供たちは文字の読み書きを知るより先に、生きていくために犯罪へと走らされてしまう。映画の舞台となったコート・ダジュールの小さな海辺の街でも同様に土地の人々とジプシーたちの諍いが絶えず、少年や少女たちの世界にもその影が尾を引いている。
本作で長編映画デビューを果たしたマニュエル・プラダル監督は、依然ボスニア難民をめぐるドキュメンタリーを手がけた経験から、南仏の風光明媚な景色の影に隠れるような彼らのリアルな表情と生活を捉えることに成功した。

鮫のような美しさと、孤独に縁取られた“驚異的な顔”。
この作品のために探し出された瑞々しい才能たち。

本作撮影に当たり、監督たちはフランス国内外を問わず、1年あまりを割いてキャスティングにあたり、海岸、サッカー場、街なかの通りはもちろん、矯正施設や少年院などにも足を運び、保護観察中の少年・少女たちのなかにも映画初出演となる印象的な少年・少女たちを見出した。
南仏生まれの少女・マリーには、マルセイユの海岸で見つけられ、ブリジット・バルドーの再来とも評されたヴァヒナ・ジョカンテ。ジプシーの少年・オルソにはパリの北にあるロシア系ジプシー・キャンプに暮らしていたフレデリック・マルグラ。しかし撮影後ジプシーの暮らしに戻っていったフレデリックの消息は、再び分らなくなってしまっている。作品中の設定と実生活とが限りなく重なる少年・少女たちは、等身大の自分自身を瑞々しく演じきった。

ストーリー

フランスで最も美しいといわれる、眩い太陽と紺碧の海に囲まれたコート・ダジュールに伝説の鮫の名を持つ“天使の入江”がある。
海を見下ろす形で、別荘やホテルなどが建ち並び、多くの観光客がやってきては去っていく。また同じこの土地には東欧などヨーロッパ各地から流れてきたジプシーたちのキャンプや、米軍水兵の基地が共存している。
入江の少女・マリーは、まだ15歳の幼い躰でこの土地に駐屯する年上の米軍水兵たちを挑発していた。
ジプシーの少年・オルソは、観光客を乗せた長距離列車や留守の別荘に潜り込んで盗みを働き毎日の生計を立てていた。ふたりは最初の出会いから、お互いを強く意識していた。入江のさまざまな出来事がふたりの小さな接点となり、互いを目の端に捉えるようになっていく。

オルソは仲間の少年・ゴランに銃を手に入れるため盗んだ金の全てを渡すが、ゴランがその金を使いこんでしまい、結局銃を手に入れることができなかった。苛だちながらも生きていくために盗みを続けるオルソ。海辺では少年たちの諍いが絶えず、オルソはあるとき誤解がもとで何度目かの少年院に入れられてしまう。
マリーは米軍水兵のキャンプに入り浸り、パートナーを次々変えながら遊んでいうち、地元の少年からも、米軍水兵からも愛想を尽かされ、ひとりぼっちになってしまった。
少年院の野外作業を抜け出したオルソは、ひとりぼっちで森の中で踊るマリーを見付け、孤独なマリーを優しく受け入れる。ふたりは海辺を駆け回り、草原をじゃれあい、やがて愛し合う。
ふたりはつかの間、孤独と苛立ちへの小さな癒しを得たはずだった…。

スタッフ

監督・脚本:マニュエル・プラダル
撮影:クリストフ・ポロック
音響:ジータ・セルヴェーラ
編集:ヴァレリー・デセーヌ
音楽:カルロ・クリヴァル
製作:フィリップ・ロスレ

キャスト

オルソ:フレデリック・マルグラ
マリー:ヴァヒナ・ジョカンテ
ゴラン:ニコラス・ウェルベール
女婦人:アミラ・カサール

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