原題:koroshi

第53回カンヌ国際映画祭”監督週間”正式出品 第22回モスクワ国際映画祭正式出品 第17回古湯映画祭招待作品

2000年/日本映画/カラー作品/ヴィスタサイズ/モノラル/上映時間:1時間26分 製作:ミュージアム 制作:ミュージアムピクチャーズ 制作協力:ジャスト/アンシャンテ/モンキータウンプロダクション 配給:株式会社ミュージアム

2002年11月22日よりDVD発売開始 2000年11月4日公開 2001年5月21日ビデオ発売

公開初日 2000/11/04

配給会社名 0080

公開日メモ リストラされたどこにでもいる平凡な中年男が、愛する家族のため殺し屋としてスカウトされたとしたら?一見、奇想天外なストーリー・ラインながらも、その実、現代社会の不毛の中を、もがきながらも生きようとする男の人生を鋭く描いた問題作『殺し』。

解説

「多分、人生というのは、一台の乗合バスで、長い旅を続けていくことなんだろう。偶然居合わせた乗客たちと、探り合い、憎み合い、ののしり合い、それでも分かち合うことを願い、あきらめず、旅を続けていくことに違いない」
もし、リストラされたどこにでもいる平凡な中年男が、愛する家族のため殺し屋としてスカウトされたとしたら?一見、奇想天外なストーリー・ラインながらも、その実、現代社会の不毛の中を、もがきながらも生きようとする男の人生を鋭く描いた問題作『殺し』。
まさに20世紀最後の年をしめくくるにふさわしい秀作の登場である。
本作品は、2000年の第53回カンヌ国際映画祭”監督週間”部門に正式出品され上映終了後、熱狂的な声援と拍手喝采で迎えられた。そして、その熱気は第22回モスクワ国際映画祭正式出品をも果たした。
その独特の映像世界は、また新たに国内外の映画ファンを魅了すること必至であろう。
監督・脚本は、注目の最新作となる小林政広。主人公の浜崎には、96年公開のショーン・ペン監督作品『クロッシング・ガード』でジャック・ニコルソンと共演といった国際的活動や、今年の春に公開された『オーディション』が2000年度ロッテルダム映画祭で国際批評家連盟賞を受賞するなど、新境地を切り開き続けている”表現者”石橋凌。今回も、ワークホリックな中年男という、これまでにない新たなる魅力を開花させた好演を見せてくれている。
浜崎の妻・和子には、『走らなあかん、夜明けまで』をはじめ、映画やCM、テレビドラマと幅広い活躍を続けている大塚寧々。
そして、浜崎を殺し屋にスカウトする謎の”男”には、日本映画界が世界に誇る名優・緒形拳が扮している。さらには『CLOSING TIME』で監督の分身ともいえる主人公の脚本家を演じた深水三章や、『ホワイトアウト』の光石研といった、第1級の個性派俳優たちが脇を固めてくれている。

舞台は雪深き北の町。その白い世界の中で、殺し屋の話であるにもかかわらず、殺しそのものが画面に表れることはない。
また、劇中でのいわゆる映画音楽を排したことを一例に、装飾めいた要素を一切剥ぎ落とすことによって醸し出される、ストイックかつスタイリッシュな世界観。
さらに主人公の朴訥とした寂しげな心象をモノローグなどなど、ありとあらゆる映像と音楽のセンスとテクニックを、照っていぢて描出させることにより、殺す者と殺される者との悲哀がまざまざと浮き彫りにされていく。
それはまるで、ダーク・ファンタジーのように幻想的であると同時に登場人物の心情をリアルに描かれることによって、殺伐とした”今”縮図としても、見事に成立しているのだ。2000年3月、北海道でオールロケを敢行して完成さぜた。

ストーリー

これは、雪に閉ざされた、ある北の町の出来事である——。サラリーマンの浜崎(石橋凌)は、3ヵ月ほど前に長年勤めた会社をリストラされてしまっていたが、そのことを未だ妻の和子(大塚寧々)に打ち明けることができないままでいる。
娘は今、アメリカのコロラド州に留学していて、今日もその仕送りを和子にせがまれたばかりだ……。
勤めていた頃は、毎日毎日残業で、土曜日まで駆り出されていた。
あの頃はせめて日曜日くらい寝て過ごしたいと思っていたが、今はただ空しいだけの日々が過ぎていく。毎朝きちんと出社するふりをして、パチンコ屋で日がな一日を過ごす。昼食は、車の中でパンと牛乳。それがもう日課になりつつある。
そして毎月、退職金の振り込まれた秘密の口座から、会社名義で妻が管理する普通預金に給料を振り込むことでごまかしてきたが、その退職金の残りも僅かになってきた……。
そんなある日、突然謎の”男”(緒形拳)が浜崎の前に現れる。”男”は、殺し屋のスカウトマンだった。
「どうして、僕に人殺しができると思ったんですか?」「勘です。僕の勘は当たるんです」”男”は、浜崎の今置かれた状況から家庭の事情まで、すべて知っていた。
ひとり殺して500万円。戸惑う浜崎が口を挟む間もなく、男はとうとうと仕事の心得を語り始めていく。「……最後にこれだけは、絶対に守ってほしいことがある。それは、相手と目を合わせないこと。相手が人気のない場所に向かったら走って近づいて、後ろから後頭部に拳銃を当てて、すぐさま引き金を引く……」
浜崎は、結局断り切れないままに、殺しを引き受けることになってしまった。最初の仕事は、数年前に会社が倒産して失業し、今も怠惰な毎日を送るという、浜崎と境遇も似た男(光石研)である。
「私が私でないような……」そんな想いを胸に、浜崎”男”に言われた通りに彼を射殺する。初めての人殺しに興奮覚めやらぬ浜崎は、その夜、和子を激しく抱いた……。
久しぶりに、浜崎の労働意欲がわいて来た。早速、次の仕事を”男”に催促する浜崎。その豹変ぶりに”男”もたじろぐほどである。次の仕事の標的も、やはりリストラの憂き目に遭った男だった。
「殺しの味は、柑橘系」もはや臆することもなく、引き金を引く浜崎。その夜、彼はまた和子を抱き、さらにはダンスを踊る……。
浜崎は取り懸かれたように、次々と仕事をこなすようになっていった。
しかし、ついに彼自身の知り合いが標的になる日がきてしまう。かつての上司であり、浜崎よりも先にリストラされ、今はタクシーの運転手をしている下條(深水三章)である。しかも、依頼人は彼自身だという。迷いながらも下條のタクシーに乗り、仕事を終えようとする浜崎だったが…。

スタッフ

監督・脚本……小林政広
製作……北側雅司
    中島仁
プロデューサー……佐々木志郎
         國實端恵
         小野誠一
撮影監賢……佐光 朗
照明……木村匡博
録音……瀬谷 満
音響効果……福島行朗
編集・ポストプロダクションプロデューサー……金子尚樹
アシスタント・プロデューサー……岡村直子
助監督……猪腰弘之
制作進行……波多野ゆかり
ロケーション・コーディネイト……南 博之
ヘア・メイク……木村晴美
スタイリスト……目須田晶子

キャスト

石橋 凌……浜崎祐司
大塚寧々……妻・和子
光石 研……小松公雄
山本隆司……長谷川靖
深水三章……タクシー運転手(下條郁夫)
緒形 拳……仕事・依頼者(市原)

LINK

□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す