原題:CUBA FELIZ

タイトルの"フェリス(FeIiz)"とは、スペイン語で「幸福」を意味する。 ハバナの"生きた肖像"ともいわれるエル・ガジョの旅は、 観る者を真のキューバ音楽の世界へと誘う。

2000年カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品

(初公開:カンヌ映画祭2000年05月13日公開)

2000年/キューバ・フランス合作/カラー/1:1,85/ドルビーSRD/1時間30分 日本語字幕:石田泰子/後援:キューバ共和国大使館/配給:アミューズ

2001年3月23日DVD発売/2001年3月23日ビデオ発売 2000年10月21日より渋谷シネ・アミューズにてロードショー公開

公開初日 2000/10/21

配給会社名 0166

解説

『ブニナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の大ヒット以来、世界中でキューバ音楽ブームが巻き起こっている。
そんな中、夢を追いかける老いたストリート・ミュージシャン”エル・ガジョ”を通じ、キューバの生活に根づいた音楽を愛する人々の姿を追ったロード・ムービーが誕生した。
それが『キューバ・フェリス』だ!

現代のトロバドール(吟遊詩人)”エル・ガジョ”
76歳の”エル・ガジョ”は、夢を追いかけギターひとつでキューバを渡り歩く孤高のストリート・ミュージシャン。
ハバナを出発したガジョは、キューバのそれぞれの町で様々な出会いを体験する。
“おんどり”を意味するガジョという名の通り、彼はいつでもどこでもギター片手に歌い続ける。
ソン(キューバ音楽の原型)の人気スター、スラム街出身のラッパー、にぎやかな老人達のバンド、ボレロ歌手、神秘的なドラム演奏家、そして村の酒飲み達…。彼らとのセッションを通じ、ガジョはキューバ音楽の真髄へと入り込んでゆく。

“フェリス”とはスペイン語で「幸福」を意味する

タイトルの”フェリス(FeIiz)”とは、スペイン語で「幸福」を意味する。ハバナの”生きた肖像”ともいわれるエル・ガジョの旅は、観る者を真のキューバ音楽の世界へと誘う。
そして、ギターひとつで生きる彼の姿は、人生において真の「幸福」の意味を我々に伝えてくれる。

日常の生活から生まれたキューバ音楽に酔いしれる

キューバ音楽は1492年にコロンブスがキューバ島に到着して以来、西洋の文化とアフリカからの黒人奴隷の大量流入など様々な人種が入り混じり独特の文化を形成して生まれたひとつの産物である。
ガジョの旅は・ハバナから島を東へ横切り、幾つかの街を経てキューバ音楽の原型と言われているソンの故郷サンティアゴ・デ・クーバを目指す。
歴史的建造物が建ち並び、年代物のアメ車が走る時間が止まっている様な街のストリートでいきなり演奏が始まる。
瞬く間に人が集まり、老いも若きもダンスに興じる。
キューバ音楽は彼らの日常の生活から生まれてきたことを実感させてくれる。そして、そこで演奏される曲にはよ”ベサメ・ムーチョ”などの何処かで聞き憶えがあるスタンダードな曲も数多く含まれている。
そして、もっとキューバ音楽の源流への旅エル・ガジョが辿った道は、キューバ音楽の歴史とオーバーラップする。
彼は、キューバの首都ハバナから東西に長いキューバ島を東へ向かう。
最初の街、マンサニージョでは即興で歌うチャランガ・グループのカンディド・ファブレと即興セッションを行う。
ソンやボレロなどのキューバン・トラディショナルの故郷といわれるサンティアーゴ・デ・クーバでは、ソンのグループ、ロス・グアンチェスの家でホーム・セッションを行ない、古い街並みの中で”ご隠居さん”を意味するロス・クバーノス・フビラードスという名を持つ老ミュージシャンたちと、世代を超えて観客と一体になる路上セッションを通じ生活の中にある音楽のパワーを感じとる。
そして、キューバ音楽の深部グアンタナモヘ。
ここでガジョは、農園などで働く奴隷たちの生活から生まれたルーツ音楽のひとつチャングイを聴く。
コーヒー農園が広がる郊外でのチャングイの演奏は、黒人奴隷たちの遠い祖先の音楽を連想させ、どこか神秘的で宗教的な印象を与える。
また、トリニダではパーショニストとしてキューバを代表するアルベルト・パブロの優しい歌声と激しいコンガの音にアフリカヘの郷愁を感じずにはいられない。
この旅は、ガジョ自身の歌い続けてきた音楽への旅であり、キューバの源流への旅にほかならない。

2000年カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品

監督はフランスのカリム・ドリディ監督。初の長編映画『ピガール欲望の街』は、ヴェネチア国際映画祭に正式出品されデヴィッド・リンチ監督をはじめ多くの批評家に大絶賛された実力派。
キューバ音楽の魅力にとりつかれたカリムは、脚本家のパスカル・レテリエールに声をかけ、生活の中から生まれたキューバ音楽の世界にカメラを向けた。
「このプロジェクトによるエル・ガジョとの出会いは奇跡のようなものである。彼と出会わなければこの映画は成り立たなかったろう」と監督は語る。
本作は2000年カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品され、観客からの熱狂的な拍手で埋め尽くされた。

ストーリー

ハバナ港。多くの貨物船が行き交う港の見える場所で、ひとりの老人が煙草を燻らせている。彼の名は、エル・ガジョ。ギターを片手に首都ハバナをさまようストリート・ミュージシャンだ。
彼はキューバを横断する形で彼の音楽のルーツを求める旅に出る。
これが彼にとって始めてのキューバ横断となる。

最初に訪れたのは、キューバ南東部の街マンサニージョ。ここでガジョは、野球に興じるこの土地が生んだスター、カンディド・ファブレと出会う。
即興で歌う彼に対して、歌で返答するガジョ。

そして、ガジョはソンの故郷サンティアーゴ・デ・クーバへ。
古い街並みを抜けロス・グアンチェスの家を訪れ、彼の名前”ガジョ=おんどり”にちなんで、名曲「おんどり君、気をつけて」で迎えられる。
その後、沈む夕陽を見ながら町が見渡せる丘でふたりのトランペッターの演奏に酔いしれる。
ガジョはお返しにギターを弾き歌う。彼の歌う歌は切なく胸に突き刺さる。

♪俺は旅の歌うたい、あてもなくさまよう、おれの人生、苦しみばかり、パズルのように、もつれて答えが出ない、だからこの酒場で、歌をうたい、酒で憂いさを晴らす、人生を狂わせた、いくつもの出来事、取り返しはきかぬ、恋をすれば、裏切られ、振り返ればただ恐ろしく、信じる心も失い途方に暮れる、神よおれに憐れみを…

翌日、キューバのご隠居さんたちを意味するグループ名を持つ老ミュージシャンのバンド、ロス・グバーノス、フビラードスと路上セッションを行う。
路上セッションは盛り上がり、観衆の中には踊り出す人も登場した。

路上で知り合ったストリート・ラッパー、ファンと、さらなるキューバ音楽の深部グアンタナモへ向かう。
グアンタナモは、チャングイ、ソンの発祥の地だ。
ここで彼らはチャングイのパーティーに迷い込む。その熱狂的なパワーに圧倒されるガジョ。

しばらくサンティアーゴ・デ・クーバで路上セッションをおこなった後、カマグエイ経由でトリニダに列車で向かう。トリニダではソロ・パーカッショニストとしてキューバを代表するアルベルト・パブロと中庭でセッションを行う。
そして、アルベルトの、コンガを演奏しながら優しく唄う「ベサメ・ムーチョ」に陶酔する。

最後にガジョが辿り着いた場所は、旅の出発店だったハバナの港だった。
また以前のように貨物船が行き来する港をじっと眺めるガジョ。
彼の咥え煙草はまるで錆び付いた夢のようにくすぶっていた…。

スタッフ

監督:カリム・ドリディ
脚本:パスカル・レテリエール,カリム・ドリディ
製作:ADRプロダクション、アラン・ロザーヌ、パスカル・ヴェルルース、ジャック・デブ
製作協力:
ル・ステユディオ・カナル・プリュス
エル・モヴィミエント・ナショナル
デ・ヴィデオ・ド・キューバ
カナル・プリュス

協力:CNC
音楽:ミシェル・ブレセ
撮影:カリム・ドリディ
照明:クリストフ・デルマ
編集:リセ・ボーリュー
音楽編集:ベアトリス・ウィック
録音:ドミニク・ヘネキン

キャスト

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