原題:BOYs DOn'T CRy

自分自身を思い出すための勇気を描いた衝撃の実話。

第72回アカデミー最優秀主演女優賞 ゴールデン・グローブ賞・最優秀主演女優賞 ニューヨーク映画批評家協会賞・最優秀主演女優賞 ボストン映画批評家協会賞・最優秀主演女優賞

1999年/カラー/ドルビーSR・SRD/上映時間:1時間59分 字幕:松浦美奈

2008年01月18日よりDVDリリース 2005年02月04日よりDVD発売開始 2001年2月2日DVD発売/2001年2月2日ビデオ発売&レンタル開始 2000年7月8日より渋谷シネマライズほかロードショー

©1999 TWNTIETH CENTURY FOX

公開初日 2000/07/08

配給会社名 0589

解説

 1993年、ネプラスカ州フォールズ・シティ。アメリカの心臓部に位置するこの町で、衝撃的な事件が発生した。町外れの傾きかけた農家で、二人の”女性”の死体が発見されたのだ。最初は単に血なまぐさい殺人事件と思われていたが、やがて被害者の一人ブランドン・テーナと犯人たちの物語か明らかになるにつれ、その背景が想像よりはるかに根深いことがわかってきた。
 ブランドン・ティーナは澄んだ瞳が美しい小柄な青年だった。小さな町のコミュニティに突然現れたこの青年には、不思議なカリスマ性が備わっていた。だれもが彼のチャーミングな雰囲気に引き寄せられ、女たちは憧れの眼で見つめた。しかし、彼には重大な秘密があった。彼はみんなが思っているような”彼”ではなかったのだ。
 表面的には女性たちの理想のボーイフレンドだったブランドン。しかし実は、”彼”はティーナ・ブランドンという女性だった。性同一性障害によって間違った肉体の中に閉じこめられてしまったディーナは、ブラントンとして生をる道を選んだ。ブラントンはラナと出会い、恋に落ちた。ラチはすべてを理解した上でブランドンを愛した。しかし、彼の秘密が明らかになったとき、悲劇の幕が切って落とされる−−−。

 「ボーイズ・ドント・クライ」はアメリカでも最も保守的といわれる地域で起だった実話をもとに、ブラントン・ティーナの生と死を通じて、アメリカの若者の心を探ろうとする。と同時に、性的アイデンティティのあり方について考え、同性愛に対する嫌悪と不寛容の本質に鋭く迫っていく。混沌と欲望と暴力の立ちこめるこの映画の中から現れてくるのは、愛を求めてさまよえるアメリカ人の姿なのだ。
 センセーショナルな事件を真摯に見据え、ドラマチックでパワフルな映画を作り上げたのは、これが初の劇場用長編映画となる女性監督キンバリー・ピアース。ロザンゼルス・タイムスが昨年末に大々的に特集したアメリカ映画の”ニュー・ニュー・ウェーブ”の記事でも、「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟、「マグノリア」のポール・卜ーマス・アンダーソン、「シックスセンス」のM・ナイト・シャマラン、「サ・ビーチ」のダニー・ボイルらと並び、21世紀のアメリカ映画を担う才能として大きく取り上げられている。彼女は関係者へのインタビューに自分想像力を加えなから、ブラントンの心と魂を探り、謎に満ちた物語を再構築していく、フィクションとノンフィクションを巧妙に混ぜ合わせることによって、事実の裏にある事実を見つめ、ブラントンの人生を浮き彫りにするのだ。
 彼女は単に病理学的な見地での回答を与えようとはしないし、ブラントンを神格化することもない。だれかを裁いたり、悲劇を生んだ社会的環境を安易に批判するのではなく、冷静に、品格をもって、主人公たちの心の痛みを伝えようとする。
 ピアース監督は、トルーマン・カポーティやノーマン・メイラーらが切り開いたジャーナリスティックーな”ノンフィクション・ノベル”や、「俺たちに明日はない」「地獄の逃避行」などのアリカ犯罪映画にインスピレーションを受けたという。飾り気を取り払った率直な語り口だからこそ、心に響く少年たちの生き様。それは、閉鎖的な田舎町での息詰まるような生活に倦み疲れたアウトサイダーの、純粋なラブ・ストーリーと見ることもできよう。多様化した価値観か複雑に絡み合う現代における、もう一つの「理由なき反抗」といえるかもしれない。ブラントンとラナは、シェームズ・ティーンやナタリー・ウッドと同じように、愛とアイデンティティと”家”を求めてもがいていたのである。
 そして、この映画が成功した最大の要因は、ブラントンに扮したヒラリー・スワンクの並外れた存在にある。美しい瞳と角張ったあご、華奢でスリムな肉体はイノセントな少年そのもので、ブラントンの持っていたカリスマ性をうかがわせる。また、「KlDS」「Gummo」などで強烈な印象を残すクロエ・セヴィニーがセクシーな恋人ラナに扮し、ブラントンの”秘密”を受け入れていく過程を説得力をもって演じている「ウェルカム・ドールハウス」「ハリケーン・クラブ」のブレンダン・セクストン三世、「仮面の男」「アナザー・デイ・イン・パラダイス」のピーター・サースガードらも、リアルな演技でこの物語を真実味あるものにしている。
 なお、この作品は1999年ベネチア映画祭の現代映画部門、トロント映画祭の現代映画部門、ニューヨーク映画祭で上映されて好評を博し、ヨーロッパ映画祭では非ヨーロッパ映画部門にノミネート。シカゴ映画祭で最優秀女優賞(ヒラリー・スワンク)に輝き、ストックホルム映画祭では、最優秀脚本賞、最優秀女優賞、国際批評家連盟賞、観客賞を総なめ。さらに,全米批評家協会賞、ニューヨーク映画批評家協会賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞の他にゴールデン・クローヴ賞ドラマ部門で主演女優貫を受賞するなど、今年の映画賞レースのダークホース的存在となっている。

ストーリー

 1993年、ネプラスカ州リンカーン。20歳になるブラントン(ヒラリー・スワンク)は髪を少年のようにカットし、ジーンズとフランネルのシャツにカウボーイ・ハットといういでだちで町に出かける用意をしていた。従兄でゲイのロニー(マット・マクグラス)は「フォールス・シティの連中はオカマを殺す」と警告するが、ブラントンにとって”男”としての人生こそ正しい道に思われた。
 ブラントンはフォールズ・シティヘと向かった。彼は地元のバーで、若い未婚の母キャンディス(アリシア・ゴランソン)、マッチョな男ジョン(ピーター・サースガード)や彼の弟分的なトム(ブレンダン・セクストン三世)らと知り合った。地元の男たちにはない、ソフトなしゃべり方と優しい表情。ここでは、だれもがブラントンの不思議な魅力に魅了された。女たちにとって彼ほ理想のボーイフレンドだった。そして、ブランドンは彼らの仲間ラナ(クロエ・セヴィニー)を見たとたん、恋に落ちる。
 ジョンは元詐欺銅。不良グループのボス的存在でラナの母親の恋人だが、実はラナに惚れている。ジョンの刑務所仲間だったトムは、忠実なパートナーにして暴力的な若者。彼らは徒党を組み、酒を飲んではパーティに明け暮れていた。退屈な日常にいらだち、キレる寸前の状態だった。
 ブラントンはジョンたちと微妙な均衡を保ちつつ、仲間として受け入れられた。だれもが彼が男だと信じ切っていた。しかし、”彼”の本名はティーナ・ブランドン。以前に車を盗んで逮捕された”彼女”は、その日、裁判所への出廷を命じられていたが、”彼”の頭の中はラナのことでいっぱいだった。ラナの働く工場へ行ったブランドンは、彼女をデートに誘い出す、初めてのキス、草原でのセックス……。翌日、キャンディスたちに促されたラナは、ブラントンとのデートを嬉しそうに語った。ラナに惚れているジョンも、相手がブラントンなら「譲れる」ような気でいた。
 しかし、転機は思わぬときにやって来た。裁判所から召還されていたブランドンは、ある日、免許証からティーナとばれて女性用の留置場に放り込まれる。面会に現れ、真実を教えてくれるようたのむラナ。プラントンは彼女に、自分が男性と女性双方の性的要素を持って生まれてきた性同一性障害者であることを打ち明ける。ラナはブランドンのことを理解しようとした。たとえ彼がティーナという女性であろうと、ラナの愛は変わらなかった。しかし、ほかの者たちにとってはそうではなかった。
 町の人々は新聞の”ティーナ逮捕”という見出しを見て驚いた。出所して家に戻ってきたブラントンを、ジョンやラナの母親らは「ヘンタイ!」「化け物」となじった。そして、その悲劇は起こった……。

スタッフ

監督:キンバリー・ピアース
脚本:キンバリー・ピアース、アンディ・ビーネン
製作:ジェフリー・シャープ、ジョン・ハート、
    エバ・コロドナー、クリスティーン・ウァッション
製作総指揮:パメラ・コブラー、ジョナサン・セリング、
    キャロライン・カプラン、ジョン・スロス
共同製作:モートン・スウィンスキー
製作補:ブラツドフォード・シンプソン
撮影:ジム・デノールト
編集:リー・パーシー、A.C.E.、トレイシー・グレンジャー
プ□タクション・デザイナー:マイケル・ショウ
衣裳デザイナー:ピクトリア・ファレル
音楽スーパーバイザー:ランドール・ポスター
音楽:ネーサン・ラーソン
ライン・プロデューサー:ジル・フットリック
キャスティング:ビリー・ホプキンス、
    スザンヌ・スミス、ケリー・バーデン、ジェニファー・マクナマラ

キャスト

ブランドン・ティーナ:ヒラリー・スワング
ラナ:クロエ・セヴィニー
ジョン:ヒーター・サーズカード
トム:プレンタン・セクストン三世
ケイト:アリソン・フォーランド
キャンディス:アリシア・ゴランソン
ロニー:マット・マクグラス
ブライアン:ロプ・キャンベルー
ラナの母親:ジャネッタ・アーネット

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