大林宣彦監督20周年記念作品。

☆ゆうばり国際・冒険ファンタスティック映画祭98出展作品::http://www.nifty.ne.jp/fanta/yubari/index.htm

1998年/日本映画/スーパー16mm作品/カラー(一部モノクロ)/テレビ版74分/劇場版90分 配給::PSC

2001年6月25日DVD発売 2000年9月30日より横浜西口名画座にて公開

公開初日 2000/09/30

配給会社名 0074

解説

昭和20年(1945年)、太平洋戦争が終わった年、広島県尾道市立土堂小学校2年生の大林宣彦少年は、おもちゃの映写機に付属していた映画フィルムに丹念に「絵」を描いてアニメーションを作りあげた。ステッキ片手にぴょこぴょこ歩き、落とし穴にはまるマヌケな紳士。威厳があって滑稽な、当時の日本の大人……そのキャラクターの名前は「マヌケ先生」。7歳の少年が作ったアニメ映画の誕生だった。
すべての映画ファン、そして「モノを作り出す」という夢や情熱を心に持つすべての人たちにぜひ見てもらいたい映画笑って泣いて勇気を与えてくれる大娯楽作、それが『マヌケ先生』です。

もちろん「尾道二部作」で知られる大林映画のファンにはたまらない作品。今までほとんど語られることのなかった映画監督・大林宣彦の少年時代(小学校1〜2年生)の思い出を描くと同時に、現代人が失ってしまった大切な「心」を再確認するファンタジー・ドラマでもあります。
大林少年は軍医であった父の駐屯地の広島市を訪ね、原爆投下一週間前に訪れています。広島県出身の大林宣彦と原爆の関係は、映画ファンならずとも興味深いテーマ。映画『マヌケ先生』では、この事実を元に、終戦前後の広島・尾道の生活ぶりを通して、今や日本を代表する映画監督となった大林宣彦の原点、失われてしまった日本人の美しい生き方が紹介されます。7歳の大林少年の心に浮かんだ言葉が、なぜ「マヌケ」だったのか、そして、なぜ「先生」なのか? 疑問はつきません。また、アニメーション「マヌケ先生」は、大林映画ファンにとっては長らく「幻の作品」として話題になっていた作品でもありますが、この作品の中でその行方も明らかになります。
主役の映画監督・馬場毬男(大林監督の劇場用映画第1作『HOUSE/ハウス』のとき用意されていたペン・ネーム。イタリアの怪奇映画作家マリオ・バーヴァのもじり)役として、凝りに凝った扮装で大林宣彦(を思わせる人物)を熱演するのは『おかしなふたり』『ふりむけば愛』に主演し(『HOUSE/ハウス』にも特別出演!)、大林映画との縁も深い三浦友和。そして、ご存知元クレイジー・キャッツの人気者にして多くの喜劇映画に主演してきた谷啓が「なぞの紳士」として登場、登場人物のみならず観客をも煙に巻く怪演を見せてくれます。毬男の少年時代を演じるのは厚木拓郎。元気でわんぱくな監督の少年時代を見事に演じ、続いて大林宣彦監督作『あの、夏の日———とんでろ じいちゃん』『淀川長治物語・神戸篇 サイナラ』でも主役を演じている。脇を固めるのは、大林映画にゆかりの深い人気者揃い。
竹内力(『彼のオートバイ、彼女の島』『ミナミの帝王』シリーズ)、南野陽子(『青春デンデケデケデケ』に客演)、丹波哲郎(『007は二度死ぬ』『四月の魚』)、風吹ジュン(『蘇る金狼』『水の旅人』『麗猫伝説』)、洞口依子(『あした』)、松田洋治(『はるか、ノスタルジィ』『もののけ姫』)、林泰文(『青春デンデケデケデケ』)、小林稔侍(『さびしんぼう』)など。この作品がデビューとなった有坂来瞳は、TVのドラマ・バラエティでひっぱりだこの人気者になっている。

総監督・大林宣彦のもと、演出を担当したのは『転校生』『さびしんぼう』など尾道三部作で助監督を務め、『四月の魚』『風の歌が聴きたい』などでは大林と共同脚本を手がけている内藤忠司(監督作として『金なら返せん!』『乙女物語2・お嬢さま危機イッパツ』など)。撮影監督には『アイコ16歳』(大林宣彦プロデュース)でデビュー、『タイムリープ』『モーニング刑事。』などで大活躍の人気監督・今関あきよしが初挑戦。音楽は大林組常連の學草太郎(『SADA』『あした』『風の歌が聴きたい』)。劇中、重要な存在となるアニメーションは「日曜洋画劇場」のオープニング・アニメをてがけた相馬宏充が担当。谷啓が日本映画黄金期を彷彿とさせるナンセンスな主題歌「マヌケ行進曲」を歌っているのも話題。マキ凛子による詩情あふれる挿入歌「活動写真の歌」も聞き物である。
戦後50年を越え、戦争の悲惨さをただ伝えるだけではなく、エンターテイメントとして「戦争の記憶」や「日本人の心」を現代人に再認識させる作品が待ち望まれています。いまだに続けられる原爆実験が世界中の良識ある人々を憤らせ、東京中心の政治・経済システムが破綻しかけている昨今、被爆地・広島からこそ発信されるべき「人類」へのメッセージとして『マヌケ先生』は、あえて広島発のドラマ(中国放送/TBS系・69分)として先行テレビ放映されました。映画版『マヌケ先生』は98年のゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭で招待上映され大好評を博しました。

ストーリー

映画監督である馬場毬男は、忙しい旅の途中で、おかしなことばかりしでかす不思議な紳士と出会う。列車に揺られるうち、いつしか馬場は少年時代を回想していた……友だちと一緒に駆けまわった尾道の細い路地、原爆投下直前の広島旅行、ヒゲをきゅっきゅっと鳴らして整えていた威厳ある祖父、いつもオナラをしていたヤクザのオジサン、ちょっぴり憧れたきれいなお姉さん、怖かったが親しみもあった学校の先生や校長先生、映写機をみつけフィルムに絵を描いて活動漫画(アニメーション)を作っていた思い出、毎日登っていた山の上のタンク岩そして、不思議な紳士こそが、馬場の少年時代に重要な役割を果たしていたある人物だったことがわかり、ふたりの追いかけっこは町中を大騒ぎにまきこむ。その時、馬場は時空を超え、懐かしい家族と再会することに……。

スタッフ

総監督:大林宣彦
監督:内藤忠司
撮影監督:今関あきひこ
美術:竹内公一
アニメ監督:相馬宏充
編集:大林宣彦
脚本:冠木新市、内藤忠司、大林宣彦
キャステイング・ディレクター:大林千茱萸
ライン・プロデューサー:本多隆司
製作:門田大地(中国放送)、久保聡(バンダイ・ビジュアル)、石熊勝己(PSC)

キャスト

馬場毬男:三浦友和
謎の紳士:谷啓
馬場九八郎:竹内力
馬場文子:南野陽子
辰村千栄子:風吹ジュン
孫蔵:ミッキー・カーチス
おとこ先生:林泰文
おんな先生:洞口依子
若い兵隊:松田洋治
馬場五十鈴:入江若葉
馬場右太衛門:丹波哲郎

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