原題:PHÖRPA

1999年カンヌ国際映画祭出品 1999年モントリオール世界映画祭出品 1999年トロント国際映画祭出品 1999年プサン国際映画祭出品 2000年サンダンス国際映画祭出品 2000年香港国際映画祭他正式出品

1999年/ブータン・オーストラリア共同製作/35mm/カラー/93分 日本語字幕:松岡葉子/特別協賛:アディダス ジャパン株式会社/ 協賛:富士写真フィルム株式会社/提供:キングレコード、オンリー・ハーツ、パンドラ 配給:パンドラ

2001年9月5日DVD発売/2001年9月5日ビデオ発売&レンタル開始 2001年1月27日よりBunkamura ル・シネマにてロードショー決定!

公開初日 2001/01/27

公開終了日 2001/03/30

配給会社名 0063

公開日メモ 近年イラン、インド、ヴェトナムとさまざまなアジアの国の特色あふれる映画が公開されてきたが、ついにその極め付けとも言える作品が公開される。神秘の国といわれ、異文化ファンの憧れの的ブータンが、オーストラリアと共同でつくった映画『ザ・カップ 夢のアンテナ』である。

解説

 近年イラン、インド、ヴェトナムとさまざまなアジアの国の特色あふれる映画が公開されてきたが、ついにその極め付けとも言える作品が公開される。神秘の国といわれ、異文化ファンの憧れの的ブータンが、オーストラリアと共同でつくった映画『ザ・カップ 夢のアンテナ』である。映画完成と同時にカンヌ、トロント、モントリオールなど、世界各地の映画祭で引っ張りだことなり、数多くの観客を動員する異常人気ぶりで話題を呼んだ。 本物の僧院に撮影機材を持ち込んでのオールロケーション。プロの俳優は一人も出演していないばかりか、出演者のほとんどが実際に修行中の僧侶たちという、映画史上、他に類を見ない作品だ。 実際の修行僧たちが繰り広げる、異空間での出来事のようなファンタジックな物語。しかしこれが何と実話というのも人気の秘密。

監督・脚本は、本国ブータンで知らぬ人はいないというほどのチベット仏教の高僧でもあるケンツェ・ノルブ。それだけに、一般にはうかがい知ることのできない、僧院内での生活を余すところなくスクリーンに映し出す。 ただの異文化映画として話題を集めたのではないこの作品、それもそのはず、プロデューサーは「ラストエンペラー」「戦場のメリークリスマス」など、多くの大ヒット作品を手掛ける名プロデューサー、ジェレミー・トーマス。常に意欲作を手掛ける彼が、総力をあげてプロデュースにあたったのもうなずける作品となった。

現代文明とは遠く離れた異境ヒマラヤの山麓にひっそり佇む仏教寺院。ゆったりと流れる時間、そこで繰り広げられるサッカー大好きの少年修行僧たちの、厳しい修行ながらも、笑いに溢れた楽しい日々の暮らし…。 どこまでも青く広がる空、雲、新鮮な空気、少年たちの澄んだ目の輝きは、私たちが遠い日に置き去りにしてしまった夢や希望、心優しさを思いださせてくれる。 一見のどかに見える大自然の中での彼らの暮らしに、宝石のようにちりばめられた少年同士の友情、親子の愛、少年と大人との葛藤。そして、大人たちの溢れるばかりの愛情…。 どれをとっても、人工的でないナチュラルな感動が、ストレートに観る者の胸に伝わってくる。これこそが、全世界で人気を呼んでいるこの作品の秘密といえよう。

ストーリー




 さわやかな風の吹くヒマラヤの山麓。少年僧ウゲンとロドゥ、そしてその仲間たちは僧院で先生のおしえを受けながら、のどかな日々を送っていた。そんなある日、母親と別れて新入りの幼い少年ニマとパルディンが、遠路はるばる僧院にやって来た。ニマの貧しい母は、何かあったら役立てるようにと、高価な金時計を息子に持たせ、僧院長に渡すようにといってきかせる。しかし僧院長は、「しまっておきなさい」と時計を返し、心細く、不安で一杯の二人に、「頑張って勉強するように」と、あたたかい励ましのことばを贈るのだった。
 ウゲンたちは実は、気もそぞろで修行にも身が入らず、先生も頭を痛めている。広がる草原とわたる風のほかには何もないような僧院で、彼らはなんとサッカーのワールドカップに夢中になっていたのである。少年僧たちは、ワールドカップの放映が真夜中になるのは地球が丸いからだと実感する。ウゲンたちは夜中にこっそり僧院を抜け出して、野原にぽつんと建っている民家まで、テレビ中継を見に行く。ところが熱中して騒々しく応援するあまり、「坊主は帰れ」と追い出されてしまった。仕方なく僧院に戻ると先生に見つかり、一喝される。しかしウゲンたちはもうすぐやってくる決勝戦の日のことを考えると、いてもたってもいられない。
 日に日にサッカー熱は高まるばかり。考えあぐねた末ウゲンとロドゥは、何と、僧院の中でサッカーを見せてほしいとに先生に直談判をしたのだ。難しい顔をする先生たち。僧院長は、おわん(カップ)をめぐって、真夜中に世界各国が戦争をするなんてへんだなあ、と理解できない。
  「暴力は?」
  「ありません」
  「セックスは?」
  「皆無です」
 先生たちは結局、決勝戦を見たら、その後は勉強に励むと少年僧たちに約束させて、僧院でテレビを見ることを許してくれる。喜びに湧きあがる少年僧たち。だが、どうしたら中継が見られるのか? 僧院にはテレビも何にもないのだ。そこでパラボラアンテナとテレビを借りて来ようと画策する。急がなくては! 決勝戦の放映まで、あと半日しか残っていない!
 ウゲンはみんなからお小遣いを集めてまわった。ところがあと少しだけ足りない。インド人の商人は全く値下げに応じないうえ、足下を見て、決勝戦はレンタル代も割高だ。そこでウゲンは、新入りのニマが大切にしている、もう会うことのできない母親のくれた金時計を、無理を言って借りてしまう。それを担保にやっとアンテナを借りることができたが、しかしウゲンはその時計を返してもらう当てがないのである。アンテナが僧院にやってきた。大歓声のなか、みんなが集まってきた。先生も興味しんしんでカーテンの陰から様子をのぞいている。
 大騒ぎでアンテナを設置している少年たちの中で、ひとりニマだけが哀し気な顔をしていた。サッカーを一番見たかったウゲンも、寂しそうにしているニマの表情が、気になってしかたがない?。テレビはいっこうに映らず、時間だけが過ぎてゆく。決勝戦の開始時間が迫ってくる。果たして彼らはワールドカップの決勝戦を見ることができるだろうか? そしてウゲンは担保に入れたニマの大事な金時計を取り戻すことができるだろうか?
もう、夜のとばりもすっかりおりて、月はこうこうと、その輝きを増し始めていた…。

スタッフ

監督・脚本:ケンツェ・ノルブ
製作:ジェレミー・トーマス(『ラストエンペラー』『戦場のメリークリスマス』)
  フーマン・マジット
撮影:ポール・ウォレン
編集:ジョン・スコット
美術:レイモンド・スタイナー
録音:ブロンウィン・マーフィー
音楽:ダグラス・ミルズ

キャスト

ゲコ(先生):ウゲン・トップゲン
ロドゥ:ネテン・チョックリン
ウゲン:ジャムヤン・ロゥドゥ
僧院長:ラマ・チュンジョル
マニ車を回す行車:ゴドゥ・ラマ
いつも寝ている僧侶:ティンレイ・ヌディ
料理している僧侶:クンザン
パルデン:クンザン・ニマ
ニマ:ペマ・ツンドゥプ

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