原題:A LA VERTICALE DE L'ETE

『青いパパイヤ』『シクロ』のトラン・アン・ユン監督最新作

2000年第53回カンヌ国際映画祭 ある視点部門正式出品

2000年3月24日フランス公開

2000年/フランス/112分/DTS/Dolby Digital/ドルビー・デジタル/日本語版字幕:古田由紀子 提供:日本ビクター/アスミック・エースエンタテインメント/角川書店 配給:日本ビクター/アスミック・エース エンタテインメント

2002年1月25日DVD発売&レンタル開始 2002年1月25日ビデオ発売&レンタル開始 2001年7月14日よりbunkamuraル・シネマにて公開

トラン・アン・ユン監督来日模様::http://cinema.fan.to/topics/topics.php?number=102&tosi=2001&tuki=03

公開初日 2001/07/14

配給会社名 0007

公開日メモ 母の命日に集まった3人姉妹。誌上あふれる静謐で暖かい物語

解説


《今最も期待される映像作家、トラン・アン・ユン監督最新作》
1993年、長編デビュー作の『青いパパイヤの香り』でカンヌ国際映画祭に新風を巻き起こしカメラドールに輝いたトラン・アン・ユン。2作目の『シクロ』では95年ヴェネチア国際映画祭グランプリを獲得。独特の美学で常に我々を魅了してきた彼の5年ぶりになる待望の新作『夏至』は、再び2000年のカンヌ国際映画祭”ある視点”部門に正式出品を果たした。一貫してヴェトナムを舞台に人と人との絆や心の触れ合いをモティーフにしてきた監督が今回はひとつの家族に焦点を当て、家族ゆえの、夫婦ゆえの機微を繊細なタッチで描きだした。独自のスタイリッシュさはそのままに温かな眼差しと優しい語り口、そして静かな官能に、トラン・アン・ユンの新しい側面が発見できる。

《幾つになっても、恋する女は美しい》
『シクロ』の撮影の合間に訪れたハノイにインスパイアされて出来たという本作は、落ち着いたハノイの風情そのままに、優美な官能性をたたえている。
主人公は年代の違う3人の女たち。40前後であろう長女スオンは若い母、30代前半の次女カインは新妻、そして23歳の三女リエンは恋愛中と、女性なら誰もがいつかは体験する3つのステージで起こる様々な事件…秘密、裏切り、誘惑、失望、誤解、疑惑、別れ、そして信頼。恋の苦悩や秘密は、彼女たちをより美しくする。それらの積み重ねは夫婦、姉弟、家族の歴史を作り、そして新しい絆が編まれていく。
カフェを舞台にしている点は、本作の重要なポイントとなっている。街の中にありながら外の喧騒とは隔絶され、独特の時間がゆったりと流れるカフェ。その空間が醸し出す空気が、小津を敬愛するという監督の静謐な画面とあいまって、独特のたおやかなリズムを作りだしている。
静かな語り口と独特の映像美はそのまま、人生を見つめる眼差しが温かいのは、『シクロ』撮影後に監督自身にも家族が増えたからだろうか。本作は妻イエン・ケーと娘ラン・ケーに捧げられている。

《ヴェテラン陣が揃う、魅力的なキャスト、スタッフ》
キャストには、ヴェトナムを代表する俳優たちが配された。三女リエンにはトラン・アン・ユン作品ではおなじみ、監督夫人でもあるトラン・ヌー・イエン・ケー。純情さを残すブラザーコンプレックス気味の末っ子を瑞々しく演じている。長女スオンには『シクロ』のグエン・ニュー・クイン。次女の夫キエンには『季節の中で』の詩人ダオ先生が印象的だったチャン・マイン・クオン。
プロダクション・デザインは『ふたりのべロニカ』のブノワ・バルー。『シクロ』に続いてのコラボレーションとなる。撮影は『花様年華』でクリストファー・ドイルとともに数々の賞に輝くマーク・リー。音楽は前2作同様トン・タ・ティエが担当。静かな緊張感をたたえたスコアは、作品に品格を添えている。また、ヴェトナムの国民的音楽家チン・コン・ソンのヒット曲やルー・リードなどのナイーヴなボッブスが効果的に挿入されている。

ストーリー


母親の命日に集まったスオン、カイン、リエンの3姉妹とその兄弟ハイ。3人の姉妹はとても仲が良く、何でも語り合い、分かち合っていた。しかし彼女たちは各々に、誰にも言えない心の秘密を抱えていた。
長女スオンはカフェの女主人。夫クオックはハノイ植物学会専属のカメラマンで国中を旅しながら植物図鑑のために写真を撮っている。ふたりの間に子供はいるが、過去の流産が尾を引いて、夫婦関係は安定していなかった。夫には愛人とその子供がおり、スオンもまた行きずりの青年と逢瀬を重ねていた。
次女カインは新婚。ライターの夫キエンは処女小説を書き上げようとしていたが、最後の仕上げに行き詰まっている。妊娠していることを知り夫に打ち明けるが、他の姉妹にはまだ内緒にしたい。
三女リエンは23歳の学生。役者の卵の兄ハイとふたりでアパートに暮らし、姉のカフェを手伝っている。
近所の幼なじみの青年トアンと仲が良く、兄と恋人同士に見られることを楽しんでいるが、最近恋人とはうまくいっていない。
命日の酒宴。キエンが彼女たちに、母が本当に愛したのは父ではなく初恋の人トアンだったと、大胆な仮説を唱えた。しかし、両親は最後まで深く愛しあっていたはず。父より1ヶ月早く生まれた母が亡くなった1ヶ月後に父が亡くなり、丁度同じだけの時間を生きたのがふたりの愛が深かった何よりの証拠。両親を理想の夫婦としていた姉妹の心は揺らぐ。
誘惑、失望、告白、誤解、疑惑、別離。女たちの秘密と苦悩を経て、これまで家族が思慮深く巧みに隠してきたものが暴かれていく。愛する人、家族、姉妹。彼女たちの互いに呼応しあう絆は、再び癒されるのだろうか。
1ヶ月後には、また父の命日がやって来る…。

スタッフ

監督・脚本・台詞:トラン・アン・ユン(「シクロ」「青いパパイヤの香り」)
音楽:トン・タ・ティエ(「シクロ」「青いパパイヤの香り」)
撮影:マーク・リー(「花様年華」「戯夢人生」)
美術:ブノワ・バルー(「シクロ」「ふたりのべロニカ」)
音声:フランソワ・ワルディーシュ
衣装:スーザン・ルー
編集:マリオ・バティスティル
ヘアドレッサー:ローラン・ブランシャール
メイクアップ・アーティスト:エヴリン・ビヨ
特殊効果:オリヴィエ・ゼネンスキ
製作:クリストフ・ロシニョン

キャスト

長女スオン:グエン・ニュー・クイン
次女カイン:レ・カイン
長男ハイ:ゴー・クアン・ハイ
三女リエン:トラン・ヌー・イエン・ケー
長女の夫クオック:アンクル・フン
次女の夫キエン:チャン・マイ・クオン
長女の不倫相手トゥアン:レ・トゥアン・アイン
フオン:レ・ゴック・ズン
ガン:ドアン・ヴィエト・ハー
ホア:レ・ヴー・ロン
ムイ:ドー・ハイ・イエン
トアン:ホアン・ラム・トゥン
漁師:グエン・フイ・コン
スオンの子リトル・マウス:トラン・ヌー・ラン・ケー
クオックと愛人の子:リトル・フン

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